レイオフとは?
リストラとの違い・日本では難しい理由・
人件費を削減する方法などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「レイオフ」(layoff)とは、再雇用を前提として、労働者を一時的に解雇することをいいます。人件費を削減しつつ、他社への人材やノウハウの流出を防ぐ目的で、海外ではしばしばレイオフが行われます。
派生して、業績悪化時の再雇用を前提としない整理解雇をレイオフと呼ぶこともあります。日本では解雇規制が厳しいため、レイオフはほとんど行われていません。一方的なレイオフは整理解雇に該当するところ、整理解雇の4要件を満たすことは難しく、違法と判断される可能性が高いです。
労働者との合意によってレイオフを行うことは可能ですが、あまり現実的ではありません。レイオフ以外の人件費を削減する方法としては、以下の例が挙げられます。
・希望退職者を募集する
・退職勧奨を行う
・業務を効率化する
・残業を許可制にする
・ワークシェアリングを推進するこの記事ではレイオフについて、日本では難しい理由や、人件費を削減するその他の方法などを解説します。
※この記事は、2025年2月7日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
レイオフとは
「レイオフ」(layoff)とは、再雇用を前提として、労働者を一時的に解雇することをいいます。人件費を削減しつつ、他社への人材やノウハウの流出を防ぐ目的で、海外ではしばしばレイオフが行われます。
派生して、業績悪化時の再雇用を前提としない整理解雇をレイオフと呼ぶこともあります。
レイオフの2種類の意味|一時解雇と整理解雇
レイオフは、再雇用を前提としている点に注目して「一時解雇」と呼ばれることがあります。一時的に職場から離脱させるものの、将来的には戻ってきてもらうということです。
ただし日本では、解雇は一般に「懲戒解雇」「整理解雇」「普通解雇」の3種類に分類されます。
このうち整理解雇は、業績不振が原因で人件費をカットするために行うものです。レイオフは整理解雇に該当します。
レイオフの目的
レイオフの目的は、人件費を削減しつつ、他社への人材やノウハウの流出を防ぐことです。
レイオフをした労働者に対しては、原則として賃金を支払う必要がなくなります。その結果、人件費の削減が可能となって業績の回復につながります。
また、レイオフした労働者を再雇用すれば、貴重な人材やノウハウを回復できるとともに、他社への流出を防ぐことができます。
ただし、労働者がすでに転職している場合は、復職を強制することはできないと考えられます。
レイオフとリストラ・解雇の違い
レイオフおよびそれと似た言葉である「リストラ」と「解雇」の関係性を整理しておきましょう。
- レイオフ・リストラ・整理解雇
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・レイオフ
→再雇用を前提として、労働者を一時的に解雇することをいいます。
整理解雇のうち、再雇用が前提とされているものがレイオフに当たります。また、レイオフはリストラの一種でもあります。・リストラ
→人件費を削減するため、労働者を退職させることをいいます。整理解雇を指すケースが多いですが、退職勧奨なども含む場合があります。・整理解雇
→業績不振が原因で、人件費を削減するために労働者を解雇することをいいます。
レイオフのメリット
レイオフの最大のメリットは、人件費を削減できることです。レイオフ期間中の賃金の支払いは不要となるため、経営の合理化につながります。
また、将来の再雇用を前提とすることにより、レイオフした労働者に他社への転職を思いとどまらせることができる可能性があります。ただし、転職しないことを強制することはできません。
レイオフのデメリット
レイオフのデメリットは、使用者が一方的に行うと労働者とのトラブルに発展するおそれがある点です。
レイオフは整理解雇に当たるところ、後述するように、日本では解雇について厳しい制限が設けられています。
使用者の都合でレイオフを行った場合、労働者が不当解雇を主張して争ってくる可能性が高いです。多くの場合、解雇に関する争いでは使用者が不利な立場に置かれてしまいます。
また、レイオフした労働者が他社へ転職すると、人材やノウハウが流出してしまう点にも注意が必要です。
日本でレイオフはできない?
日本では解雇規制が厳しいため、レイオフはほとんど行われていません。一方的なレイオフは整理解雇に該当するところ、整理解雇の4要件を満たすことは難しく、違法と判断される可能性が高いです。
労働者との合意によってレイオフを行うことは可能ですが、あまり現実的ではありません。
レイオフは「整理解雇」に当たる
使用者が一方的に行うレイオフは、法的には「整理解雇」に当たります。
日本では、解雇について厳しい制限が設けられています。「解雇権濫用の法理」により、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効となってしまいます(労働契約法16条)。
整理解雇に当たるレイオフに対しても、解雇権濫用の法理が適用されます。次の項目で解説するように、整理解雇については4要件に照らして、解雇権の濫用に当たるかどうかが判断されます。
日本で働く労働者を整理解雇するための要件
整理解雇が適法であるか、それとも違法であるかは、実務上以下の4要件に従って判断されます。
- 整理解雇の4要件
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① 人員削減の必要性
高度の経営危機に陥っており、整理解雇が真にやむを得ない状態であることが求められます。② 解雇回避努力義務の履行
整理解雇を回避するため、事前に十分な代替手段を講じることが必要です。(例)役員報酬の削減、希望退職者の募集、新規採用の抑制、労働時間の抑制、会社資産の売却、出向など
③ 被解雇者選定の合理性
整理解雇をする労働者を選ぶに当たっては、合理的な基準を設けた上で、その基準を適切に運用する必要があります。④ 解雇手続きの妥当性
整理解雇を実施する前に、対象となる労働者や労働組合に対して、解雇の必要性などを十分説明して納得を得るよう努めなければなりません。
日本の解雇規制は厳しい|一方的なレイオフは違法の可能性が高い
日本に比べて解雇に関する規制が緩やかな諸外国では、レイオフが比較的幅広く行われているケースもあります。
これに対して日本では、解雇権濫用の法理はかなり厳格に運用されています。整理解雇については、前掲の4要件を全て満たしている場合でなければ、適法と認められる可能性は低いです。
したがって、深刻な経営危機に陥っている場合を除き、人件費を削減する目的で気軽にレイオフを行うことは、日本では難しいと言わざるを得ません。
労働者との合意によるレイオフは可能
使用者が一方的にレイオフをするのではなく、労働者との合意により、再雇用を約束したうえで一時的に退職してもらうことは可能です。この場合、解雇に関する厳格な規制は適用されません。
しかし、再雇用がいつになるかが分からない状態で、労働者が不安定な立場に追いやられることを受け入れる可能性は低いでしょう。労働者との合意によってレイオフと同様の状態を作り出すのは、現実的であるとは言えません。
人件費を削減する必要がある場合は、レイオフではなく、次の項目で紹介する方法を試みましょう。
レイオフ以外の人件費を削減する方法
日本ではレイオフが認められにくいので、人件費を削減するなら別の方法を用いるのが賢明です。
レイオフ以外の人件費を削減する方法としては、以下の例が挙げられます。
- 希望退職者を募集する
- 退職勧奨を行う
- 業務を効率化する
- 残業を許可制にする
- ワークシェアリングを推進する
希望退職者を募集する
人件費を削減する方法の代表例として挙げられるのが、希望退職者を募集することです。
希望退職者の募集に応じるかどうかは、完全に労働者の判断に委ねられているので、解雇に関する厳しい規制は適用されません。
希望退職者を募集する際には、退職金の上乗せなどのメリットを提示するケースがよく見られます。企業にとっては一時的に退職金などの出費が発生しますが、長期的には労働者の数が減少し、人件費を減らすことができます。
希望退職者を募集する場合、対象となる労働者の範囲を適切に定めることが重要です。企業にとって重要性の高い労働者が大量に辞めてしまうことがないように、対象労働者の範囲を慎重に検討しましょう。
退職勧奨を行う
退職してほしい労働者に対して、個別に退職勧奨を行うことも考えられます。
退職勧奨とは、使用者が労働者に対して任意の退職を促すことです。実際に退職するかどうかが労働者の判断に委ねられている限り、解雇に関する厳しい規制は適用されません。
退職勧奨を受けた労働者は、すんなり退職に応じるケースもある一方で、退職を拒否するケースもあります。
難色を示す労働者を説得するためには、退職金の上乗せなどのメリットを提示するのが効果的です。一時的に大きな出費が発生しても、長期的なスパンでは人件費を減らすことができます。
退職勧奨を行うに当たっては、労働者に対して退職を強要してはなりません。
例えば、「退職勧奨に応じないと懲戒解雇をする」「仕事がない部署に左遷する」などと言った場合は、退職強要に該当します。このような言動をしてはいけません。
また、退職強要を疑われる言動を避けることに加えて、退職勧奨を行う環境にも配慮すべきです。
例えば、上司や同僚などをたくさん動員して退職勧奨を行うと、事実上退職を強要しているのではないかと疑われるおそれがあります。長時間にわたって対象者を部屋に閉じ込めた場合なども同様です。
退職強要は実質的な解雇であるため、厳格な解雇規制によって違法と判断される可能性が高いです。また、退職強要はパワハラにも該当し、使用者が労働者に対して損害賠償責任を負うリスクもあります。
退職するかどうかを対象者が自由に判断できるように、退職強要を疑われるような言動や環境は厳密に排除しましょう。
業務を効率化する
残業が多すぎて人件費が嵩んでしまっている場合は、業務の効率化に取り組みましょう。業務の効率化に成功すれば、労働時間が減って人件費を抑えることができます。
業務を効率化する方法としては、以下のような例が挙げられます。自社の状況に照らしてふさわしい方法を選択しましょう。
- 業務を効率化する方法の具体例
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・ITツールを活用する
→タスク管理、社内コミュニケーション、データ保存などに関してITツールを導入すると、スムーズに業務を行うことができるようになります。近年では、生成AIを業務に活用する企業も増えています。・会議の実施方法を見直す
→不必要な会議をなくす、事前にアジェンダを共有して時間を短縮する、オンライン実施を原則とするなど、会議の実施方法を適切に見直せば労働時間の短縮につながります。・業務の範囲を絞る
→採算がとれない業務や無駄な業務を廃止して、中核的な業務に注力するなど、労働者が担当すべき業務の範囲を適切に限定すれば、労働時間を短縮することができます。・マニュアルなどを整備する
→定型的な業務についてはマニュアルや手順書を整備しておけば、業務の質を安定させることができるとともに、労働時間の短縮にもつながります。・多様な労働時間制を導入する
→フレックスタイム制や裁量労働制など、労働者の特徴やニーズに合わせた多様な労働時間制を導入すれば、仕事に対するモチベーションが向上して業務の効率化につながる可能性があります。
残業を許可制にする
残業時間を抑制するためには、残業を許可制にすることも考えられます。労働者が残業をする際には、上司などを通じて残業の申請をすることを義務付けたうえで、許可のない残業に対しては残業代を支払わない運用を確立しましょう。
ただし、所定労働時間内に完了するのが困難な業務量を課している場合は、許可していない残業についても、使用者側の指揮命令に基づくものとして残業代が発生することがあるのでご注意ください。
ワークシェアリングを推進する
「ワークシェアリング」とは、業務を複数の労働者に分担させて、労働者1人当たりの労働時間を短縮する取り組みです。
ワークシェアリングによって、時間外労働や休日労働などによる割増賃金の発生を防げる場合は、人件費の削減につながる可能性があります。
ただし、雇用する労働者が増えることによって、労務管理のコストが上がる面もあります。
自社の状況に照らしてシミュレーションを行い、メリットが大きいと判断した場合には、ワークシェアリングを推進しましょう。
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