契約書のリーガルチェックとは?
社内でやる場合の流れ・外部に依頼した場合の費用・
やり方などを分かりやすく解説!
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※この記事は、2024年2月7日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
契約書のリーガルチェックとは
「契約書のリーガルチェック」とは、契約書を法的な観点から問題がないかチェックすることをいいます。契約審査などとも呼ばれることもあります。
リーガルチェックを行う人|法務担当or弁護士
契約書のリーガルチェックを行うのは、主に
- 会社内の法務担当者
- 会社から依頼を受けた弁護士
です。
法務担当者は、社内事情と法的観点の両方を踏まえつつ、契約書の一次チェックを行います。その後、法務担当者が必要に応じて顧問弁護士などに二次チェックを依頼するのが一般的です。
リーガルチェックすべき契約書の例
企業が締結する契約書は、基本的にその全てについてリーガルチェックを行うべきです。
リーガルチェックを行うべき契約書としては、以下の例が挙げられます。
・業務委託契約書
・秘密保持契約書
・金銭消費貸借契約書
・売買契約書
・ライセンス契約書
など
リーガルチェックが重要な理由
契約書のリーガルチェックが重要であるのは、主に以下の理由によります。
理由1|法令違反を回避するため
理由2|自社に不利な条項を是正するため
理由3|トラブルに発展した際のリスクを減らすため
理由4|自社が実現したい取引内容を盛り込みビジネスを行いやすくするため
理由1|法令違反を回避するため
まず、法律の規定は、強行規定と任意規定に分かれます。
- 強行規定・任意規定とは
-
・強行規定:契約で法令と別の内容を定めたとしても、法令が強制的に優先して適用される規定
・任意規定:契約で法令と異なる内容を任意で定めた場合、法令よりも契約の内容が優先して適用される規定(ただし契約で別の内容を定めない場合は、自動的に法律のルールが適用される)
強行規定に違反する契約条項は無効となってしまうので、契約書の中に存在する場合は修正しなければなりません。
また、各種の業法においては、契約書の中に絶対に規定しなければならない事項が定められていることもあります。例えば、建設業法19条では、建設工事の請負契約に規定すべき事項が定められています。
規定しなければならない契約条項が抜けていると法令違反になってしまうため、リーガルチェックの際に追記しなければなりません。
理由2|自社に不利な条項を是正するため
相手方が契約書のドラフトを作成した場合には、自社にとって不利益な契約条項が含まれている可能性が高いです。また、自社がドラフトを作成した場合でも、相手方が自社にとって不利益な契約条項を追記してくることがあります。
自社に不利益な契約条項のうち不合理なものについては、リーガルチェックの中で発見して、契約締結前に交渉をしなければなりません。
理由3|トラブルに発展した際のリスクを減らすため
取引におけるリスクを減らすことを目的として、契約書にはトラブル発生時の対応手順やルールを定めるのが一般的です。
しかし、このトラブルが網羅されていなかったり、発生時の対応手順やルール自体に問題があったりするといざというときに機能しません。
そこで、リーガルチェックにおいてリスクを洗い出して分析をし、必要に応じて契約書に明記・修正することも重要になります。
理由4|自社が実現したい取引内容を盛り込みビジネスを行いやすくするため
契約書は、実際に取引を行う際のルールブックとしても機能します。
リーガルチェックにおいては、取引内容が契約書へ適切に反映されているかどうかもチェックします。もし記載に誤りや不足があれば、取引の実態を反映するかたちになるように修正をする必要があります。
リーガルチェックを社内で実施する場合の流れ
- リーガルチェックを社内で実施する場合の流れ
-
①リーガルチェックを受け付ける
②契約書の全体像や論点を把握する
③契約書に修正・コメントを入れ、担当部署へフィードバックする
④相手方と交渉を行う
⑤内容が確定したら契約書を締結する
流れ1|リーガルチェックを受け付ける
まず、取引(契約)を所管する部署から法務担当者がリーガルチェックを受け付けます。
リーガルチェックを受け付けたら、業務状況や取り扱い分野などを踏まえて、適任と思われる法務担当者に割り当てましょう。
流れ2|契約書の全体像や論点を把握する
リーガルチェックの最初の段階で重要なのは、契約書の全体像や論点を把握することです。
法務担当者は、契約書全体に目を通した上で、重要と思われる条項を把握します。
過去に同種の契約書を締結している場合には、内容を比較して異なる点や特殊な条項が含まれていないかを確認しましょう。新規の契約である場合は、自社にとって不利益な条項や、法令に違反する条項が含まれていないかどうかをチェックする必要があります。
流れ3|契約書に修正・コメントを入れ、担当部署へフィードバックする
契約書に不適切な条項が含まれている場合は、変更履歴を付して修正を行い、その理由もコメントとして記載します。
担当部署に対しては、修正内容とその理由について、必要に応じて説明を行いましょう。
流れ4|相手方と交渉を行う
担当部署は、法務担当者の修正コメントを踏まえて、必要に応じて自部署においてもコメントの追加・調整を行った上で、相手方に対して契約書を返送します。
契約書の内容が固まるまで、Wordファイル上のコメントなどで、相手方とやりとりをします。ファイル上での交渉がまとまらない場合は、対面や電話で直接やり取りをすることも選択肢の一つです。
流れ5|内容が確定したら契約書を締結する
相手方との交渉を経て、契約書の内容が確定したら最終版を作成し、双方が署名捺印・記名押印・サインなどを行って契約を締結します。
- 署名捺印……自署(サイン)+押印
- 記名押印……印字された当事者名+押印
- サイン……自署のみ
リーガルチェックを弁護士に依頼する場合の流れ
- リーガルチェックを弁護士に依頼する場合の流れ
-
①チェックしてほしい契約書と申し送り事項を用意する
②弁護士にリーガルチェックを依頼する
③チェック結果を確認する
④相手方と交渉を行う
⑤内容が確定したら契約書を締結する
流れ1|チェックしてほしい契約書と申し送り事項を用意する
契約書のリーガルチェックを、外部の弁護士に丸投げするのは望ましくありません。外部の弁護士は社内の事情に詳しくないケースが多いからです。
社内事情を踏まえて適切にリーガルチェックを行うためには、法務担当者による前捌きが重要になります。まずはチェックを依頼したい契約書を決めた上で、弁護士への申し送り事項をまとめましょう。
流れ2|弁護士にリーガルチェックを依頼する
法務担当者による一次チェックが完了し、申し送り事項もまとまったら、実際に弁護士へメールなどで連絡してリーガルチェックを依頼します。
顧問弁護士であれば、顧問契約の枠内で対応してもらえる場合もありますが、多くの場合は個々のリーガルチェックについて弁護士費用が発生します。正式にリーガルチェックを依頼する前に、かかる費用の詳細を弁護士に確認しましょう。
流れ3|チェック結果を確認する
弁護士によるリーガルチェックの結果は、契約書ファイルへのコメントなどで法務担当者へ連絡されるのが一般的です。法務担当者は、弁護士によるコメントの内容を確認し、疑義がある場合には弁護士に再度確認します。
法務担当者における確認が完了したら、所管部署へ契約書ファイルを回付します。また、所管部署向けに補足説明などをすべき場合は、弁護士のコメントに法務コメントを併記するなどの対応を行いましょう。
流れ4|相手方と交渉を行う
弁護士によるコメントを踏まえて、会社としてのコメントバックの内容を決定し、それを反映した契約書ファイルを所管部署が相手方に対して返送します。
その後は契約書の内容が固まるまで、相手方との間でコメントを往復させます。
流れ5|内容が確定したら契約書を締結する
契約書の内容が確定したら最終版を作成し、双方が署名捺印・記名押印・サインなどを行って契約を締結します。締結した契約書は、整然と保存しておきましょう。
リーガルチェックを弁護士に依頼したときの費用
リーガルチェックを弁護士に依頼する際の費用は、依頼先の弁護士によって異なります。
顧問契約を締結している場合は、その枠内で対応してもらえることもあります。顧問契約の費用も弁護士によって異なりますが、月額5万円から20万円程度とされるケースが多いです。
スポットで契約書のリーガルチェックを依頼する場合は、1通当たり数万円から数十万円程度が想定されます。
リーガルチェックのやり方|確認すべきポイント
リーガルチェックにおいては、不備のない契約書を作成するため、内容面・形式面の双方を確認しましょう。具体的に確認すべき主なポイントを紹介します。
内容面
内容面では、主に以下の事項を確認しましょう。
- 確認ポイント
-
・契約類型に応じた重要な条項
→業務委託契約であれば業務内容や報酬、売買契約であれば目的物・代金・契約不適合責任など、契約類型に応じた重要な条項は重点的に確認します。・ひな形や過去事例と異なる条項
→自社のひな形や過去に締結した契約書と異なる条項には、自社にとって不利益な内容や法令上不適切な内容が含まれている可能性があるので、重点的にチェックします。・相手方が追加してきた条項
→相手方が追加してきた条項には、自社にとって不利益な内容が含まれている可能性が高いので、重点的にチェックすべきです。
形式面
形式面では、主に以下の事項を確認しましょう。
- 確認ポイント
-
・契約書タイトル
→契約書の内容が一目で分かるようなタイトルを付けましょう。・契約書の調印者
→当事者の情報が間違っていないか、当事者に含めるべき者が抜けていないかなどをチェックします。・契約締結日
→実際に契約を締結する日に間違いがないことを確認します。・誤植や条ズレの有無など
→誤字・脱字や表記揺れ、条文番号を修正した際の条ズレなどがないかどうかを確認します。・印紙税の有無
→契約書が印紙税の課税文書に当たるかどうかを確認し、当たる場合は所定額の収入印紙が貼付されていることを確認します。
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