業務委託契約とは?
雇用契約や請負契約との違い・
メリットとデメリット・
契約条項などを分かりやすく解説!

この記事のまとめ

業務委託契約」とは、委託者が受託者に対して業務を委託し、受託者がこれを受託する契約です。

業務委託契約の特徴は、委託者と受託者が互いに対等な立場で締結する点です。この点は、労働者が使用者の指揮命令下で働く雇用契約と大きく異なります。
その一方で、業務委託契約は内容によって、請負契約委任契約準委任契約のいずれかに分類されます。

また、業務委託契約には、委託者・受託者のそれぞれにとってデメリット・デメリットの両面があります。

業務委託契約書には、主に以下の事項を定めます。取引の内容に沿って、適切な条項を定めましょう。
・委託する業務の内容
・発注・受注の手続き
・納品・検収の方法
・報酬
・受託者の禁止事項
・知的財産権の帰属
・再委託
・契約の有効期間・更新等
・その他

この記事では業務委託契約について、雇用契約や請負契約などとの違い、メリットとデメリット、契約条項などを解説します。

ヒー

業務委託契約書の作成は注意が必要だと聞きました。具体的にはどんなことに気を付ければよいですか?

ムートン

まずは、その業務委託契約が、法的に請負契約・委任契約・準委任契約のどれに当たるのか把握しましょう。委託内容の詳細の理解も欠かせません。詳しく見ていきましょう。

※この記事は、2023年10月26日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

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業務委託契約とは

業務委託契約」とは、委託者が受託者に対して業務を委託し、受託者がこれを受託する契約です。

業務委託契約の特徴は、委託者と受託者が互いに対等な立場で締結する点です。この点は、労働者が使用者の指揮命令下で働く雇用契約と大きく異なります。

なお、業務委託契約はその内容によって、請負契約・委任契約・準委任契約のいずれかに分類されます。

業務委託契約と雇用契約の違い

雇用契約」は、労働者が使用者の指揮命令下で働く契約です(民法623条)。労働者は使用者に対して弱い立場となることが多いため、労働者保護を目的とした各種の労働法労働基準法など)が適用されます。

これに対して業務委託契約は、委託者と受託者が互いに対等な立場で締結します。

受託者は委託者の指揮命令を受けるのではなく、自らの裁量によって業務を行います。そのため業務委託契約には、雇用契約とは異なり労働法は適用されません。

ムートン

ただし、業務委託契約の形式をとっていても、実態として指揮命令関係が存在する場合には「偽装請負」に当たるおそれがあるので注意が必要です。偽装請負については後述します。

業務委託契約の種類|請負契約・(準)委任契約との関係

請負契約」は、請負人が仕事を完成することを約し、注文者がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する契約です。
委任契約」は、委任者が受任者に対して法律行為を委託し、受任者がこれを受託する契約です。委託の対象が法律行為ではない事務の場合は「準委任契約」となります。

業務委託契約は、仕事の完成を目的とする場合と、業務(事務)の遂行そのものを目的とする場合があります。
仕事の完成を目的とする業務委託契約は請負契約業務の遂行そのものを目的とする業務委託契約は委任契約または準委任契約に当たります。

業務委託契約のメリット

業務委託契約には、委託者と受託者のそれぞれにとってメリットがあります。

委託者にとってのメリット

委託者にとっての業務委託契約の主なメリットは、以下の各点です。

①自社のニーズに応じて業務を発注できる
必要な分だけ業務を発注できるので、無駄な人件費を抑えられます。雇用契約とは異なり、会社として社会保険料を負担する必要もありません。

②外部の専門的人材やノウハウを活用できる
自社だけでは対応が困難な業務についても、受託者側の専門的人材やノウハウを活用して、効率的かつ適切に対応できます。

受託者にとってのメリット

受託者にとっての業務委託契約の主なメリットは、以下の各点です。

①仕事の進め方を自由に決められる
委託者の具体的な指示に拘束されず、受託者が自ら仕事の進め方や時間配分などを決められます。

②仕事の進め方次第で効率よく報酬を得られる
仕事の進め方などを工夫して効率化すれば、時間当たりの収益を増やせる可能性があります。

業務委託契約のデメリット

その一方で業務委託契約には、委託者と受託者のそれぞれにとってデメリットもあります。

委託者にとってのデメリット

委託者にとっての業務委託契約の主なデメリットは、以下の各点です。

① 社内にノウハウが蓄積されにくい
実際の業務を外部者である受託者が行うため、委託者側にはノウハウが蓄積されにくい傾向にあります。

② 業務の進め方を具体的に指示できない
受託者による仕事の進め方や時間配分などを具体的に指定できないため、品質やスケジュールの管理が困難となる場合があります。

受託者にとってのデメリット

受託者にとっての業務委託契約の主なデメリットは、以下の各点です。

① 受注が安定するとは限らない
発注量や発注時期などについては委託者に裁量があるため、安定して業務を受注できるとは限りません。

② 仕事の効率が悪いと収益性が低くなる
業務委託報酬は作業時間ではなく、成果に応じて決まるケースが大半です。そのため、仕事の効率が悪いと、時間当たりの収益性が低くなってしまいます。

個人事業主と業務委託契約をする際の流れ

企業が個人事業主と業務委託契約を締結する際の流れは、大まかに以下のとおりです。

① 委託先の選定
業務を委託する個人事業主を選定します。ウェブサイト上で公募する方法や、紹介などに頼る方法、SNSを通じて探す方法などが考えられます。

② 契約条件の交渉
業務の内容や報酬などの契約条件について、委託先候補の個人事業主と交渉します。

③ 業務委託契約書の締結
個人事業主との間で合意した契約条件を反映した業務委託契約書を作成し、締結します。紙で締結する場合と、電子契約を締結する場合があります。

④ 契約書の保存
締結した業務委託契約書を保存します。会社法上の保存期間は10年です(会社法432条)。
電子契約については、電子帳簿保存法に従って保存する必要があります。

業務委託契約に定めるべき主な事項

業務委託契約書に定めるべき主な事項は、以下のとおりです。

① 委託する業務の内容
② 発注・受注の手続き
③ 納品・検収の方法
④ 報酬
⑤ 受託者の禁止事項
⑥ 知的財産権の帰属
⑦ 再委託
⑧ 契約の有効期間・更新等
⑨ その他

委託する業務の内容

受託者が行うべき業務の内容として、以下の事項などを明記します。

・業務の内容
・業務の提供方法
・納品物の仕様
など

発注・受注の手続き

業務委託契約では、全ての業務に共通して適用するルールを定める一方で、個々の発注・受注は個別契約(または発注書・発注請書)に基づいて行うのが一般的です。

この場合は業務委託契約において、発注・受注の手続きにつき以下の事項などを定める必要があります。

・業務の具体的な内容は個別契約(または発注書)で定める旨
・委託者の受託者に対する発注の方法(書面、メールによる発注書の送付など)
・受託者による受注の方法(書面、メールによる発注請書の送付など)
など

納品・検収の方法

受託者が委託者に対して成果物を交付することを「納品」、委託者が納品を受けた成果物の状態をチェックする作業を「検収」といいます。

業務委託契約に基づいて何らかの成果物が生み出される場合は、納品・検収について以下の事項などを定めましょう

・納品方法
・検収期間
・検収結果の通知方法
・修正などの上限回数
など

報酬

業務委託報酬については、以下の事項などを定めましょう。

・業務委託報酬の金額、計算方法
(例)「総額○○万円とする」「1個当たり○○万円とする」

・業務委託報酬の支払時期
(例)「当月において完成した仕事に対応する業務委託報酬を、翌月末日までに支払う」

・業務委託報酬の支払方法
(例)「業務委託人が別途指定する銀行口座に振り込む方法によって支払う」

受託者の禁止事項

受託者による適正な業務の遂行を確保するため、受託者の禁止事項を定めることがあります。

(例)
・知的財産権の侵害の禁止
・正当な理由のない納品遅延の禁止
など

なお、受託者が委託者のオフィスで業務を行うことになっている場合、受託者に対して服務規程の遵守を求める例がよく見られます。
しかし、受託者に服務規程の遵守を課した場合、偽装請負に当たるおそれがあるので注意が必要です。偽装請負については後述します。

知的財産権の帰属

業務委託契約に基づいて発生する知的財産権が、委託者と受託者のどちらに帰属するかを定めておきましょう。納品をもって受託者から委託者に移転させるケースが多いですが、受託者が権利の一部を留保するケースもあります。

なお著作権のうち、翻訳権・翻案権(著作権法27条)および二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(著作権法28条)については、委託者に移転させる場合はその旨を明記しなければなりません
動画・音楽・文章など、コンテンツの制作を業務内容とする場合は注意が必要です。

(例)
「本契約に基づいて発生した著作権(著作権法第27条および第28条に基づく権利を含む)その他の知的財産権は、受託者による納品時をもって、全て委託者に移転する。」

再委託

委託者が第三者に対して業務を再委託できるかどうかも、業務委託契約に明記しておきましょう。再委託を認める場合には、その条件についても定めます(受託者の承諾、受託者が指定する者への委託に限る、制限なしなど)。

また、再委託先の責めに帰すべき事由によって委託者に生じた損害は、全て受託者が賠償する旨も定めておきましょう。

契約の有効期間・更新等

業務委託契約の有効期間および更新の手続きについて、以下の事項を定めましょう。

・契約の始期と終期
・自動更新の有無、ある場合は期間
・解約申入れの手続き
・契約終了後も存続する条項
など

その他

上記のほか、業務委託契約には以下の事項などを定めるのが一般的です。

・反社会的勢力の排除(暴力団員等に当たらない旨、暴力的な要求行為等をしない旨など)
・秘密保持(秘密情報を原則として第三者に開示しない旨など)
・損害賠償(契約違反時の損害賠償の範囲など)
・契約の解除(契約を解除できる場合の条件や手続きなど)
・合意管轄(契約に関する紛争の提訴先となる裁判所の指定)
など

業務委託契約を締結する際の注意点

業務委託契約を締結する際には、以下の各点にご注意ください。

① 「偽装請負」に要注意
収入印紙の貼付が必要な場合がある

「偽装請負」に要注意

偽装請負」とは、実質的に「労働者派遣」または「労働者供給」であるのにもかかわらず、「請負契約」や「業務委託契約」に偽装する行為です。不当な労働者の待遇の悪化・不安定化を防ぐため、偽装請負は法律によって禁止されています。

業務委託が偽装請負に当たるかどうかは、契約の定めにかかわらず、業務の実態から判断されます
例えば、委託者が受託者(またはその従業員)に対して、仕事の進め方や時間配分などについて具体的な指示を行っている場合は、偽装請負に当たるおそれがあります。また、受託者に対して服務規程の遵守を求めていることも、偽装請負と判断される要素の一つになり得るので注意が必要です。

偽装請負に関与した企業は、刑事罰や行政処分の対象となるほか、その事実が報道されれば社会的評判が毀損されてしまいます。
委託者としては、受託者に対して仕事の進め方や時間配分などを指示しない、服務規程の遵守を求めないなど、偽装請負と判断されないための配慮をしなければなりません。

偽装請負の詳細については、以下の記事を併せてご参照ください。

収入印紙の貼付が必要な場合がある

業務委託契約が請負契約(=第2号文書)に当たる場合は、収入印紙の貼付が必要です。また、業務委託契約が継続的取引の基本契約書(=第7号文書)に当たる場合も、収入印紙の貼付を要します。

<第2号文書の印紙税額>
契約金額印紙税額(原則)印紙税額(建設工事請負契約書)
1万円未満非課税非課税
1万円以上100万円以下200円200円
100万円超200万円以下400円200円
200万円超300万円以下1,000円500円
300万円超500万円以下2,000円1,000円
500万円超1,000万円以下1万円5,000円
1,000万円超5,000万円以下2万円1万円
5,000万円超1億円以下6万円3万円
1億円超5億円以下10万円6万円
5億円超10億円以下20万円16万円
10億円超50億円以下40万円32万円
50億円超60万円48万円
契約金額の記載のないもの200円200円
<第7号文書の印紙税額>
4,000円
※契約期間が3カ月以内であり、かつ更新の定めがないものは非課税

なお、業務委託契約を電子契約で締結する場合には、収入印紙の貼付は不要です。
印紙税については、以下の記事を併せてご参照ください。

ムートン

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