面接とは?
目的・面談との違い・
人事担当者が知るべき法的リスクと
回避策などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

面接とは、求人の応募者に企業の面接担当者が直接会って話を聞くことで、職務への適性や能力を見極めるために行う採用フローです。

面接は採用活動において、応募者の人柄や適性を知ることができる重要なプロセスです。しかし面接担当者の振る舞いや質問内容によっては、企業の信頼低下や法令違反となる場合もあります。

この記事では、面接の基本的な内容や種類、避けるべき質問事項、面接トラブルの防止策について詳しく解説します。

ヒー

新卒採用の面接を担当することになりました。面接って、「志望動機は?」「学生時代に力を入れたことは?」などを聞くんですよね? 注意点はありますか?

ムートン

面接は事前準備と当日の対応が大切です。評価基準や質問事項をまとめた上で、してはいけない質問内容などにも注意しましょう。面接の基本を解説します!

※この記事は、2025年4月14日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

面接とは

面接とは、求人の応募者に企業の面接担当者が直接会って話を聞くことで、職務や企業への適性や能力を見極めるために行う採用フローです。採用選考において重要なプロセスであり、ほとんどの企業で実施されています。

面接の目的

面接の目的は、応募者の人柄、コミュニケーション能力、企業への適性など、履歴書や職務経歴書だけでは分からないことを確認することにあります。また、応募者側も面接担当者と直接会話することで、具体的な職務内容や条件、社員の人柄や職場の雰囲気を把握できます。

面接は企業の面接担当者と応募者の双方にとって、お互いを見極める重要な機会となります。

面接と面談の違い

面接」と「面談」は似ていますが、主な目的が異なります。

面接は、採用活動として行います。応募者の評価を目的として、採用可否を判断するために実施します。

面談は、選考ではなく情報交換相互理解を目的として実施します。例えば「カジュアル面談」は、選考前に企業を知ってもらうために行われます。

ムートン

「面接」と「面談」で使い分けがされていますが、その性質は名称だけでなく実際の内容で判断されることに注意すべきです。

面接以外の採用活動

選考方法には、面接以外にもさまざまな方法があります。

面接以外の採用活動の例

書類選考:履歴書や職務経歴書からスキルや経歴を確認
適性検査:性格や能力が基準を満たしているかを確認
筆記試験:業務に必要な知識などを確認
リファレンスチェック:前職の上司や同僚に応募者の評価を確認する方法

採用活動の際は、これらの選考方法を組み合わせて総合的に応募者を評価することが効果的です。

面接の種類

個人面接

個人面接は、応募者1人と面接担当者1人または複数名で行う面接の形式です。最も一般的で、1人に対して深く対話ができるため、人物評価を重視する場面で行うと効果的といえます。

応募者の志望動機、価値観などについて詳しく聞くことができ、評価の精度が高まるのが特徴です。

集団面接

集団面接は、複数の応募者が同時に面接を受ける形式です。効率的に選考を進められるため、採用活動の初期段階でよく実施されます。

他の応募者との比較がしやすいですが、1人当たりの対話時間は限られます。

グループディスカッション

グループディスカッションは、応募者同士で役割を決めで特定のテーマについて話し合い、発表を行う面接方法です。発言内容だけでなく、協調性リーダーシップ論理的思考力なども評価されます。

組織の一員として適応できるかどうかを評価することが可能です。

オンライン面接(WEB面接)

オンライン面接(WEB面接)は、パソコンやスマートフォンを通じてオンラインで実施する面接方法です。移動の負担がないため、遠方の応募者や時間的制約のある応募者に対して面接を実施することができます。

柔軟な対応が可能である一方で、直接対面するよりも情報量が減るため、雰囲気・身だしなみなどの印象を判断しづらい特徴があります。

AI面接

AI面接は、AIが応募者の表情や話し方、言葉遣いなどの分析を行い、評価する面接方法です。比較的新しい方法で、面接担当者が直接対応する必要がないため、企業の業務効率化にもつながります。

先入観のない状態で評価が可能な一方で、応募者の本来の意図とは違った判断をされる可能性があります。

面接の基本原則|人事担当者が知っておくべきルール

採用活動において、面接は応募者の適性や人柄を見極める重要な機会です。一方で、面接担当者の振る舞いや言動で、応募者からの信頼を失ってしまうこともあります。以下では、採用活動に責任を持つ人事担当者が、面接担当者に伝えるべき3つの基本姿勢や注意点について解説します。

面接担当者が守るべき3つの基本姿勢

①公平・公正な対応

面接担当者は、応募者によって態度を変えることなく、誰に対しても公平・公正な基準により評価を行うことが原則です。例えば、年齢性別容姿国籍などに影響されて態度が変われば、応募者から差別的と捉えられ、企業イメージを損なう可能性があります。

公平・公正な対応を徹底するためには、あらかじめ評価基準質問事項を統一して、明文化しておくことも重要です。
また、他の応募者と比較するような発言をすることも避けた方がよいでしょう。「先ほどの方はとても優秀で」といった言及は、応募者の評価に不要であり、不公平感や不安感を与え、信頼を損なう原因になります。

②事前準備を怠らないこと

面接前には、事前準備として質問事項やポイントを整理しておくことが重要です。例えば、「前職で〇〇の経験をされていますね」といった具体的な言及ができれば、応募者は「きちんと目を通してくれている」と感じ、安心感を得られます。逆に「どんな仕事をしてきましたか?」など、書類に書かれている内容を改めて尋ねられると、自分に興味を持たれていない、とネガティブな印象を与えかねません。

面接担当者が事前に応募書類を読み込んで、職歴志望動機のポイントを把握しておくことで、面接当日に的確なやり取りが可能になります。

③信頼関係を築く意識を持つこと

面接は採用に関する評価を行うだけでなく、企業と応募者の相互理解を深める場でもあります。応募者の人柄や本音を引き出すには、緊張を和らげるなどの雰囲気作りが大切です。

否定的なリアクション圧迫的な質問はできるだけ避け、相手の話をしっかりと聞く姿勢を示しましょう。「もっと詳しく教えていただけますか?」といった言葉で相手への興味を示すことでも応募者の印象は大きく変わります。

応募者と信頼関係を築くことができれば、人柄や価値観といった応募者の本質的な部分が見えてきて、より有意義な面接となります。

面接で聞いてはいけないNG質問5選

面接の質問内容によっては、悪意がなかったとしても差別的または違法とみなされる可能性があります。

また、職業安定法は「求職者等の個人情報の取扱い」を規定しており(同法5条の5)、採用選考に必要のない個人情報(業務の目的達成に必要な適性・能力以外の個人情報)を収集することは職業安定法に違反します(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)。

具体的には、以下のような内容の質問は避けるようにしましょう。

面接でのNG質問の例

① 結婚・家族構成
×「ご結婚の予定はありますか?」
×「ご両親のお仕事は?」
→本人の能力とは無関係かつ、プライバシーに踏み込む内容であり避けるべきです。

② 宗教・信仰
×「どの宗教を信仰していますか?」
×「宗教行事には参加しますか?」
→宗教や信仰に関する質問は、内容によっては信教の自由を侵害する可能性があるため避けた方がよいでしょう。
「信仰によって採用の評価が変わるのでは」と応募者に不信感を持たれる可能性があります。

③ 政治的信条
×「支持政党を教えてください」
このような質問は「企業が政治的信条を評価対象にしている」と誤解を与えかねず、応募者の信頼を損なう恐れがあります。

④ 妊娠・出産に関すること
×「妊娠のご予定はありますか?」
女性応募者に対して妊娠・出産の予定を質問することは、セクシャルハラスメントに該当します。また、応募者に「ライフプランが面接の評価に関係する」と受け取られる恐れもあります。

⑤ 身体的特徴・健康状態
×「身長・体重を教えてください」
×「病歴を教えてください」
業務に関係する情報を除き、身長・体重・持病など、本人の身体的特徴に関する質問は避けるべきです。「内面ではなく見た目や健康状態で評価するのか」と誤解されるリスクもあり、企業イメージの低下につながります。

ムートン

ハローワークの調査では、「応募者から「本人の適性・能力以外の事項を把握された」と指摘があったもののうち、「家族に関すること」の質問が多くを占めています。」とされています。特に注意しましょう。

引用元|厚生労働省公正採用選考特設サイト「求職者のみなさまへ」

面接担当者の「言葉遣い」で差別とみなされる危険な表現

面接担当者が「ただの雑談」「人柄を知るため」として発した質問でも、差別的・偏見的な内容を含むことはあります。このような自分自身で認識できていない思い込みや偏見のことを「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」といいます。

アンコンシャス・バイアスに基づく発言は、差別的・不適切な質問と見なされる恐れがありますので、予め質問事項を決めておくなどの対策をすることが重要となります。

アンコンシャス・バイアスに基づく発言の例

×「血液型がA型ってことは几帳面なんですね」
×「全然B型っぽくないですね」
この質問は無意識のうちに「A型=几帳面」「B型=自己中心的」など、血液型といった一部の情報だけで個人の性格を決めつけてしまう思い込み、偏見が含まれています。

×「女性だから細かい仕事が得意だよね?」
性別に基づいた固定観念を含む発言は、アンコンシャス・バイアスと捉えられる恐れがあります。
自分の性別が評価に含まれていると受け止められる可能性があり、不快感や不安感につながります。また、入社後の配属や業務分担にも偏りが生じるのではないかという懸念を持たれかねません。

×「うちの会社は体育会系出身が多いけど、大丈夫そうですか?」
この質問は「体育会系=体力がある・根性がある」という思い込みが前提となっており、学歴・経歴によるアンコンシャス・バイアスの一例です。文化系や非体育会系出身の応募者に対しては「社風が合わない」という印象を与え、無意識の排除につながる可能性があります。

面接に関するトラブルの防止策|法的リスクを最小化するためには

面接担当者の教育・研修

面接は人事担当者だけでなく、事業部などの役職者が行うことも多く、知識不足により法令違反不適切な質問によるトラブルが発生することがあります。

こうしたトラブルを防止するためには、面接担当者に対する定期的な研修の実施やマニュアル整備が重要です。具体的には、面接時のフローを作成し、模擬面接で実践するなどの流れで面接担当者に意識付けを行うことが効果的です。

質問内容の適法性チェック

面接での質問は、業務遂行に関連性があるものに限定すべきです。

「結婚の予定」「家族構成」「信仰・宗教」といった質問は、個人のプライバシーの侵害につながる恐れがあり、面接の評価に無関係の情報であることがほとんどです。あらかじめ質問内容を精査し、「本当に必要な質問なのか」「法的に問題はないか」といったチェックを行う必要があります。

面接記録の適正管理

面接内容の記録は、後日トラブルが生じた場合の重要な証拠となります。ただし、業務と無関係な個人情報の記録や、差別的意図のあるメモなどは、企業にとってリスクとなる恐れがあります。記録は面接評価の判断材料に限定し、適正に管理・保管しましょう。

オンライン面接の注意点

近年はオンライン面接が普及しつつありますが、通信環境やプライバシーへの配慮、録画の可否など、対面での面接とは異なる配慮が必要となります。

例えば、応募者が自宅から面接に参加する場合、周囲の生活空間が映り込む可能性があります。その際は、映り込んだ背景への不適切な指摘や、無意識の評価を行わないように注意が必要です。また、面接の録画を行う場合は、録画の目的を説明し、必ず本人の同意を得るようにしましょう。

ムートン

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参考文献

厚生労働省ウェブサイト「公正採用選考特設サイト」