労働基準法における労働時間のルールは?
法定労働時間・上限規制・
法的リスクなどについて分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

労働基準法では、労働時間に関するさまざまなルールが定められています。主なルールは以下のとおりです。
① 法定労働時間
時間外労働・休日労働
③ 深夜労働
④ 休憩
⑤ 特殊な労働時間制

なお、管理監督者など一部の労働者については、労働時間に関するルールの全部または一部が適用されません。

企業としては、勤怠管理システムといった機械的な方法を用いるなどして、労働時間を正しく把握する必要があります。また、勤務形態によって異なる労働時間のルールを正しく理解して適用することも大切です。

この記事では、労働基準法における労働時間のルールを幅広く解説します。

ヒー

労働基準法における労働時間の基本的なルールについて知りたいです。

ムートン

労働基準法には、法定労働時間や時間外労働、特殊な労働時間性などさまざまな規定があります。規制や違反時のリスクも含め、詳しく解説していきましょう。

※この記事は、2025年11月22日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

目次

労働基準法における労働時間のルール一覧

労働基準法では、労働時間に関するさまざまなルールが定められています。主なルールは以下のとおりです。

① 法定労働時間
② 時間外労働・休日労働
③ 深夜労働
④ 休憩
⑤ 特殊な労働時間制

次の項目から、各ルールの具体的な内容を解説します。

法定労働時間|労働時間の上限に関するルール

労働基準法では「法定労働時間」が定められています。企業が労働時間を管理するに当たっては、法定労働時間のラインを意識しなければなりません。

労働時間は原則として、法定労働時間を超えてはならない

法定労働時間」とは、原則的な労働時間の上限です。

使用者は原則として、労働者に法定労働時間を超える労働をさせてはなりません(労働基準法32条)。法定労働時間を超える労働を指示できるのは、36協定(後述)を締結している場合に限られます。

法定労働時間は「1日8時間・1週40時間」が原則|ただし例外あり

法定労働時間は原則として、1日当たり8時間、1週当たり40時間とされています

ただし例外的に、特例措置対象事業場においては、法定労働時間が「1日8時間・1週44時間」となります。

特例措置対象事業場とは

以下のいずれかの業種に該当し、かつ常時使用する労働者が10人未満の事業場

(a) 商業
→卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業

(b) 映画・演劇業
→映画の映写、演劇、その他

(c) 保健衛生業
→病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業

(d) 接客娯楽業
→旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業

また、特殊な労働時間制においては、法定労働時間について特別のルールが適用されます。詳しくは「特殊な労働時間制|通常とは異なるルールが適用される勤務形態」で解説します。

法定労働時間と所定労働時間の違い

法定労働時間は、労働基準法で定められた労働時間の上限です。これに対して「所定労働時間」は、労働契約や就業規則によって定められた労働時間です

所定労働時間は、法定労働時間の範囲内で定める必要があります。

時間外労働・休日労働|長時間労働の制限や残業代などに関するルール

過度な労働によって労働者が健康を害するリスクを防ぐため、労働基準法では「時間外労働」と「休日労働」に対する規制が設けられています。

時間外労働とは

時間外労働」とは、法定労働時間を超える労働です
例えば、労働者が1日に9時間働いた場合、法定労働時間(8時間)を超える1時間分が時間外労働に当たります。

なお、所定労働時間を超えているものの、法定労働時間を超えない部分は「法定内残業」と呼ばれており、時間外労働とは区別されます。
例えば、労働者が1日に9時間働いた場合において、所定労働時間が7時間30分であるとします。1時間30分の残業時間の内訳は、法定内残業が30分、時間外労働が1時間です。

休日労働とは

休日労働」とは、法定休日における労働です

使用者は労働者に対し、週1回または4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません(労働基準法35条)。この規定によって付与が義務付けられた休日を「法定休日」、法定休日における労働を休日労働といいます。

なお、法定休日以外の休日は「法定外休日」と呼ばれています。法定休日と法定外休日が混在している場合は、以下の要領で法定休日が決まります。

法定休日の決まり方

(a) 労働契約や就業規則に定めがある場合
→その定めに従います。

(b) 労働契約や就業規則に定めがない場合
【法定休日が週1日の場合】
日曜から土曜までを1週間として、最も後ろに位置する休日が法定休日となります。

【法定休日が4週間を通じて4日の場合】
対象となる4週間のうち、最も後ろから数えて4日間の休日が法定休日となります。

時間外労働・休日労働をさせるには「36協定」の締結が必要

使用者が労働者に時間外労働または休日労働をさせるには、事業場ごとに、労働組合または労働者の過半数代表者との間で労使協定を締結しなければなりません(労働基準法36条)
時間外労働・休日労働に関する労使協定は、条文番号に由来して「36協定」と呼ばれています。

36協定に定めるべき事項

36協定には、以下の事項を定める必要があります(労働基準法36条2項、労働基準法施行規則17条1項)。

・適用する労働者の範囲
・対象期間(時間外労働、休日労働をさせることができる期間)
・時間外労働、休日労働をさせることができる場合
・時間外労働の上限時間
・休日労働の上限日数
・36協定の有効期間
・1年の起算日
・時間外労働の上限※を超えないこと

※時間外・休日労働時間の合計が月100時間未満、かつ2カ月~6カ月の平均が月80時間以内

36協定によって認められる時間外労働は、原則として「月45時間・年360時間」が上限(限度時間)とされています(労働基準法36条3項・4項)。この上限を超えて時間外労働をさせるには、36協定において以下の特別条項を定めなければなりません(同条5項)。

36協定の特別条項の内容

・1カ月の時間外労働+休日労働の合計時間数
※100時間未満

・1年の時間外労働の時間数
※720時間以内

・限度時間の超過が認められる回数
※1年のうち6回(6カ月)以内

・限度時間の超過が認められる場合
※具体的な記載が必要(「繁忙の場合」などの抽象的な記載は不可)

・限度時間を超過した労働者に対する健康福祉確保措置

・限度時間を超過した労働に係る割増賃金率

36協定を締結する際の手続き

36協定を締結する際の手続きの流れは、以下のとおりです。

(a) 労働組合または労働者の過半数代表者との交渉

(b) 36協定の締結

(c) 就業規則の変更

(d) 36協定・就業規則の労働者に対する周知

(e) 労働基準監督署に対する36協定の届出
※常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の変更も届け出る必要があります。

なお36協定は、労働基準監督署に対する届出を行って初めて効力を生じます。届出がなされていない36協定は無効です

時間外労働・休日労働の上限規制

36協定を締結している場合でも、時間外労働の上限は原則として「月45時間・年360時間」です(労働基準法36条3項・4項)

36協定に特別条項を定めれば、上記の限度時間を超えることができますが、その場合も以下の制限を遵守しなければなりません。

  • 1カ月の時間外労働と休日労働の合計は100時間未満
  • 1年の時間外労働は720時間以内
  • 限度時間の超過が認められる回数は、1年のうち6回(6カ月)以内
  • 坑内労働など、健康上特に有害な業務に従事する労働者の時間外労働は1日当たり2時間以内
  • 2カ月~6カ月間における時間外労働と休日労働の合計は月平均80時間以内

時間外労働・休日労働の割増賃金率

時間外労働または休日労働をした労働者に対して、使用者は以下の割増賃金を支払う必要があります(労働基準法37条1項)。

時間外労働:通常の賃金に対して25%以上
※月60時間を超える部分については、通常の賃金に対して50%以上

休日労働:通常の賃金に対して35%以上

深夜労働|午後10時から午前5時までの割増賃金のルール

労働基準法では、「深夜労働」に関する割増賃金のルールが定められています。

深夜労働とは

深夜労働」とは、午後10時から午前5時までに行われる労働です

深夜から早朝にかけての労働は、労働者の心身に対する負担が大きいと考えられます。そのため、できる限り深夜労働を抑制する目的で割増賃金のルールが定められています。

深夜労働の割増賃金率

深夜労働をした労働者に対し、使用者は通常の賃金に対して25%以上の割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法37条4項)

深夜労働の割増賃金は、時間外労働や休日労働の割増賃金と重複して適用されます。
例えば、法定休日の午後10時から午前5時までに労働をした場合は、休日労働と深夜労働の割増賃金が両方発生し、割増率は合計60%以上となります。

休憩|労働時間の途中で付与すべき休憩のルール

長時間連続して働くことは、労働者の心身への負担が大きいと考えられます。そのため労働基準法では、一定時間以上働く労働者に対して休憩を付与することを使用者に義務付けています。

労働者に付与すべき休憩時間

使用者は労働者に対し、少なくとも以下の時間の休憩を付与しなければなりません(労働基準法34条1項)

(a) 労働時間が6時間を超える場合
→45分

(b) 労働時間が8時間を超える場合
→1時間

※労働時間が6時間以下の場合は、休憩の付与は不要

休憩時間に関する3原則|途中付与の原則・一斉付与の原則・自由利用の原則

休憩時間の付与については、以下の3原則が定められています。使用者は、これらの原則を遵守しなければなりません。

(a) 途中付与の原則(労働基準法34条1項)
休憩時間は、労働時間の途中に与えなければなりません。出勤時間を遅らせたり、退勤時間を早めたりして代用することは認められません。

(b) 一斉付与の原則(同条2項)
休憩時間は原則として、事業場の労働者全員に対して一斉に与えなければなりません。ただし労使協定の定めがあれば、休憩時間を分散して付与することも認められます。

(c) 自由利用の原則(同条3項)
休憩時間は、労働者を完全に労働から解放しなければなりません。指示を受けたらすぐ対応できるように待機させているような状況では、休憩時間として認められません。

特殊な労働時間制|通常とは異なるルールが適用される勤務形態

労働基準法では、以下の特殊な労働時間制が認められています。これらの労働時間制では、これまで解説した原則とは異なる労働時間のルールが適用されます。

変形労働時間制

変形労働時間制」とは、一定期間を平均した労働時間が法定労働時間を超えないように、各日の労働時間を変化させることができる制度です

労働基準法では、以下の3つの変形労働時間制が認められています。

(a) 1カ月単位の変形労働時間制
対象期間が1カ月以内の変形労働時間制です。
1週間当たりの労働時間の平均が40時間以内となる範囲内で、対象期間中の労働日の労働時間を変化させることができます。

(b) 1年単位の変形労働時間制
対象期間が1カ月を超え、1年以内の変形労働時間制です。
週平均労働時間が40時間以内となる範囲内で、各日の労働時間を変化させることができます。ただし、あまりにも労働時間が偏り過ぎないようにするために、一定の制限を遵守しなければなりません。

(c) 1週間単位の非定型的変形労働時間制
規模30人未満の特定の事業に限り、労使協定によって1週間単位で毎日の労働時間を弾力的に定めることができます。対象となる事業は小売業、旅館および料理・飲食業です。

フレックスタイム制

フレックスタイム制」は、労働者が始業時刻と終業時刻を自分で決められる制度です

フレックスタイム制では、最長3カ月間までの「清算期間」について、所定労働時間に相当する「総労働時間」が定められます。フレックスタイム制が適用される労働者の残業代は、総労働時間を基準に計算します。

裁量労働制

裁量労働制」は、業務の具体的な進め方や時間配分などを労働者の裁量に委ねる制度です。裁量労働制の労働者は、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間数働いたものとみなされます(=みなし労働時間)。

労働基準法では「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2つが認められており、それぞれ対象業務の種類や導入手続きが異なります。

(a) 専門業務型裁量労働制
省令・告示により定められた20種類の業務に限り認められる裁量労働制です。導入に当たっては、労使協定の締結が必要になります。

(b) 企画業務型裁量労働制
事業の運営に関する事項に関する企画・立案・調査・分析の業務につき認められる裁量労働制です。導入に当たっては、労使委員会の決議が必要になります。

労働時間のルールが適用されないケース

以下のいずれかに該当する労働者には、これまで解説してきた労働時間のルールの全部または一部が適用されません。

① 農林の事業・水産の事業の労働者
② 管理監督者
③ 機密の事務を取り扱う労働者
④ 監視・断続的労働に従事する労働者
高度プロフェッショナル制度が適用される労働者

農林の事業・水産の事業の労働者

以下のいずれかの事業に従事する者には、労働時間・休憩・休日に関する規定が適用されません(労働基準法41条1号)。

  • 土地の耕作、開墾の事業
  • 植物の栽植、栽培、採取、伐採の事業
  • その他農林の事業(林業を除く)
  • 畜産の事業
  • 養蚕の事業
  • 水産の事業

管理監督者

管理監督者」とは、経営者と一体的な立場にある労働者をいいます。管理監督者には、労働時間・休憩・休日に関する規定が適用されません(労働基準法41条2号前段)

管理監督者に当たるかどうかは、役割・裁量・待遇などの観点から、経営者と一体であると言えるかどうかを総合的に評価して判断します。単に「管理職」であるだけでは、管理監督者に当たるとは限りません

なお管理監督者であっても、深夜労働(午後10時から午前5時までの労働)をした場合は深夜手当(通常の賃金の25%以上)を支払わなければなりません。また、管理監督者にも年次有給休暇は付与する必要があります。

機密の事務を取り扱う労働者

「機密の事務を取り扱う労働者(機密事務取扱者)」とは、経営者または管理監督者の活動と一体不可分の職務を行う労働者です。機密事務取扱者には、労働時間・休憩・休日に関する規定が適用されません(労働基準法41条2号後段)

例えば、経営者専属の秘書などは機密事務取扱者に当たると考えられます。

監視・断続的労働に従事する労働者

監視または断続的労働に従事する労働者は、使用者が労働基準監督署長の許可を受けた場合に限り、労働時間・休憩・休日に関する規定の対象外となります(労働基準法41条3号)

監視」とは、通常時は身体または精神的緊張の少ない監視の業務です。例えば守衛・門番・計器類の監視員・踏切番などが挙げられます。

断続的労働」とは、休憩時間は少ないものの、手待ち時間が多い業務です。例えば炊事番・用務員・専属運転手・マンション管理人などが挙げられます。

高度プロフェッショナル制度が適用される労働者

高度プロフェッショナル制度」とは、高度な専門知識を有する年収1075万円以上の労働者に対し、業務の進め方などについて広い裁量を与える制度です。労使委員会決議によって導入することができます。

高度プロフェッショナルが適用される労働者には、労働時間・休憩・休日・深夜の割増賃金に関する規定が適用されません(労働基準法41条の2)

労働基準法における労働時間のルールに違反した場合の罰則

労働基準法に定められた労働時間のルールに違反した場合は、労働基準監督官から是正勧告を受けることがあります。是正勧告を受けたら、速やかに違法状態を是正して、その結果を労働基準監督署へ報告しなければなりません。

是正勧告に従わない場合や、違反そのものが悪質である場合には、刑事罰が科されることがあります。
違反者は「6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」に処されるほか、法人(会社)も「30万円以下の罰金」に処されます(労働基準法119条1号、121条)。

労働時間の管理に関する企業の注意点

企業は、労働基準法違反の状態が生じないように、労働時間を正確に把握する必要があります。タイムカードや勤怠管理システムなどを活用して、労働時間を機械的に記録することが望ましいです

また、変形労働時間制・フレックスタイム制・裁量労働制などを導入している場合は、通常とは異なる労働時間のルールが適用されます。勤務形態ごとのルールを正しく理解し、その内容に沿って労働時間を適切に管理してください

ムートン

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