【2025年度】社会保険料の計算方法とは?
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この記事のまとめ

社会保険料は、保険の種類ごとに計算方法が異なります。

・社会保険は、健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険の5つからなる公的な保険です。
・計算方法は、それぞれの保険で異なり、健康保険や厚生年金保険では「標準報酬月額」がポイントとなります。
保険料率の定期的な改定や徴収ミスへの対応に注意が必要です。
 
本記事では、社会保険料の計算方法について解説します。

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社会保険はさまざまな種類があるため、保険料の計算が難しいです。

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社会保険料の計算は「標準報酬月額」など重要なポイントをおさえて行う必要があります。計算方法や注意点などを理解して、適切な保険料を算出してください。

※この記事は、2025 年8月20日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

社会保険料とは

社会保険料とは、国が運営する公的な保険制度である「社会保険」を維持するために、会社と従業員がそれぞれ負担する保険料のことです。

私たちの生活には、病気やケガ、失業、高齢化による退職、介護などさまざまなリスクが潜みます。そうしたリスクが発生した際に、必要な給付を受けて安定した生活を送れるようにするのが、社会保険の目的です。

社会保険は、加入者全員が保険料を出し、いざというときに備える「相互扶助」のもと成り立っています。各種給付は私たちにリスクが降りかかった際の拠り所となるため、その財源となる社会保険料は適切に納めなければなりません。

社会保険の種類と負担割合

社会保険は、以下の5つで構成される公的な保険です。

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 介護保険
  • 雇用保険
  • 労災保険

健康保険・厚生年金保険・介護保険の3つは「狭義の社会保険」と呼ばれ、雇用保険・労災保険は「労働保険」と呼ばれます。まずはそれぞれの保険の目的と、各保険料の負担割合についての理解を深めます。

健康保険

健康保険は、業務外の病気やケガの治療費負担を軽くするための医療保険制度です。

最も身近なのが、医療費の支払いです。健康保険の加入者が病院で治療などを受けた際、窓口では1〜3割の医療費を負担します。医療費が全額負担でないのは、健康保険による給付があるためです。

また、出産前後の収入を補填する「出産手当金」や、業務外での病気やケガで療養する際の収入を補填する「傷病手当金」といったお金も、健康保険から給付されます。

保険料は、会社と従業員で折半して負担します。

厚生年金保険

厚生年金保険は、会社員や公務員が加入する公的年金制度で、老後の生活保障(老齢年金)が目的です。

イメージしやすいのは、65歳から受け取れる「老齢厚生年金」です。受給資格期間が10年以上ある全ての人が受け取れる国民年金(基礎年金)に上乗せされる形で支給されるため、老後の収入が増えます。

このほか、病気やケガで障害が残った際に受け取れる「障害年金」や、加入者が亡くなった場合に遺族へ支払われる「遺族年金」も厚生年金保険のひとつです。

保険料は、健康保険と同様に、会社と従業員で折半します。

介護保険

介護保険は、社会全体で介護を支え合うための制度です。保険による給付で、在宅・施設での介護サービス費用の負担が、原則1〜3割で済みます。

介護保険には原則40歳から加入し、64歳まではほかの保険料と同じように給与から差し引かれます。保険料は会社と従業員とで折半しますが、65歳以降は居住地の自治体ごとの算定基準をもとに納める必要があります。

雇用保険

雇用保険は、労働者が失業した場合の生活支援や、育児・介護休業を取得した際の所得補償を目的とした保険制度です。

受給する可能性が高いものとしては「基本手当」(失業給付)が挙げられます。基本手当は、失業期間中の収入を補填する手当です。失業中も定期的に収入が入ることで、再就職活動に専念できます。

このほか、育児のために会社を休んだ従業員に支給される「育児休業給付金」や介護のために会社を休んだ際に支給される「介護休業給付金」、スキルアップのために指定の講座を受講した際に費用の一部が助成される「教育訓練給付金」などが受けられます。

保険料は会社と従業員で支払いますが、折半ではありません。それぞれ指定の料率のとおりに、保険料を納めます。

労災保険

労災保険は、従業員が業務中や通勤中にケガ、病気、あるいは死亡といった労働災害に遭った場合に、本人や家族の生活を保障する制度です。正社員だけでなく、パートアルバイトなど全ての労働者が加入対象です。

労災認定を受けた場合、労災保険から「療養(補償)給付」が支給され、治療費に充てられます。療養で働けない場合は「休業(補償給付)」が支給されます。

保険料はほかの保険と異なり、全額会社が負担します。従業員の給与から保険料が天引きされることはありません。

社会保険料の計算の基礎となる「標準報酬月額」

健康保険料と厚生年金保険料の計算では「標準報酬月額」が計算の基礎となります。標準報酬月額への理解を深めれば、計算ミスの防止にもつながります。標準報酬月額について詳しく解説します。

標準報酬月額とは

標準報酬月額とは、社会保険料の計算を分かりやすくするために、毎月の給与を一定の幅で区切った等級のことです。社会保険料は、残業代などで毎月変動する給与額ではなく、この等級に基づき保険料を計算します。

計算の対象となる報酬には、以下のようなものが含まれます。

  • 基本給
  • 役職手当
  • 通勤手当
  • 住宅手当
    など

例えば、ある従業員の基本給や手当の合計額が295,000円だったとします。これは、保険料額表の「290,000円~310,000円」の等級に該当するため、標準報酬月額は「300,000円」です。

保険料を計算する際は、等級を必ず確認し、適切な等級で計算するのが重要です。

年1回の見直し「定時決定(算定基礎届)」

標準報酬月額は「定時決定」により見直されます。定時決定とは、全従業員の標準報酬月額を、実際の給与額に合わせて年に一度見直す手続きのことです。

毎年7月1日時点の全被保険者を対象に、その年の4月・5月・6月の3カ月間に支払われた給与の平均額を算出します。この金額に基づき、従業員の新しい標準報酬月額を決定するのです。新しい標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月までの1年間の社会保険料計算に適用されます。

定時決定は、昇給などで変動した従業員の給与実態を保険料に適切に反映させ、公平性を保つために行われる重要な手続きです。変動の結果は「算定基礎届」という書類にまとめ、7月10日までに加入する健康保険組合や管轄の年金事務所へ提出します。

大幅な報酬の変動があった場合の手続き「随時改定(月額変更届)」

大幅な報酬変動があった際は「随時改定」により標準報酬月額を見直します。随時改定とは、昇給や降格などによって給与が大幅に変動した際に、年に一度の定時決定を待たずに、年の途中で標準報酬月額を見直す特別な手続きです。

対象となるのは、以下の全てを満たした場合です。

  • 昇給などで基本給などの「固定的賃金」に変動があった
  • 変動後の継続した3カ月間の給与平均から算出した標準報酬月額がこれまでの等級と比べて「2等級以上」の差が生じた
  • 3カ月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である

例えば、7月に昇給し、7・8・9月の給与平均に基づく新しい標準報酬月額が、従来の等級より2等級以上高くなった場合、会社は「月額変更届」を提出し、10月分の保険料から新しい等級で計算します。

手続きを怠ると保険料の徴収ミスにつながるため、賃金に大きな変動があった際は、随時改定に該当しないかを速やかに確認することが重要です。

社会保険料の計算方法

5つの社会保険料の計算方法と計算例を解説します。それぞれの方法をおさえて、適切に保険料を徴収するようにしてください。

健康保険の計算

健康保険料の計算式は、以下のとおりです。

  • 標準報酬月額×健康保険料率

端数については50銭以下を切り捨て、50銭超は切り上げて計算します。ただし、労使協定を締結している場合は50銭以上を切り上げることも可能です。

算出した保険料額は、会社と従業員で半分ずつ負担します。健康保険料率は地域によって変わるため、会社の所在地が変われば保険料も変わる可能性があります。

東京都に所在する会社で働く、標準報酬月額30万円の人を例に、健康保険料を計算してみます。東京都の2025年度の健康保険料率(全国健康保険協会)は、9.91%です。よって、計算結果は以下のようになります。

  • 30万円×9.91%=29,730円

なお、実際に負担する金額は、上記の半分の金額です。そのため、会社が負担する金額は14,865円です。

厚生年金保険の計算

厚生年金保険料の計算式は、以下のとおりです。

  • 標準報酬月額×18.3%

保険料率は、2017年9月から全国一律で18.3%に固定されています。算出した保険料は、健康保険料と同様に会社と従業員で折半します。会社の実質負担割合は、9.15%です。

標準報酬月額が30万円の従業員を例に、厚生年金保険料を計算すると、以下のようになります。

  • 30万円×18.3%=54,900円

保険料の合計は54,900円、実際に会社が負担する額は27,450円です。

なお、賞与に対しても同様の保険料率を掛けて、保険料額を計算します。また、計算の際は標準報酬月額の変動に注意しましょう。

介護保険の計算

介護保険料の計算式は、以下のとおりです。

  • 標準報酬月額 × 介護保険料率

保険料は、健康保険料などと同様に、会社と従業員で折半します。基本的には、健康保険に上乗せされる形で徴収します。

東京都で働く45歳で標準報酬月額30万円の従業員を例に、介護保険料を計算してみます。2025年度の介護保険料率は1.59%のため、計算結果は以下のとおりです。

  • 30万円×1.59%=4,770円

よって、会社は半額の2,385円を負担します。健康保険料との合計した会社の負担額は、17,250円です。

雇用保険の計算

雇用保険料の計算式は、以下のとおりです。

  • 毎月の賃金総額 × 雇用保険料率(労働者負担分)

雇用保険料は、計算基礎に標準報酬月額ではなく、賃金総額を用います。失業手当などの給付額が離職前の賃金額に基づいて決まるため、保険料も実際の賃金に合わせて計算する仕組みだからです。

ほかの保険料と同じく会社と従業員で負担しますが、会社のほうが負担割合が大きいです。

2025年度の雇用保険料率は、従業員が0.55%、会社が0.9%です。ただし、一部業種では以下のように異なります。

  • 農林水産・清酒製造事業:従業員が0.65%、会社が1.0%
  • 建設の事業:従業員が0.65%、会社が1.1%

例えば、一般の事業所に勤める人の月の賃金総額が32万円だった場合、保険料は以下のようになります。

  • 従業員負担額:320,000円×0.55%=1,760円

算定の基礎や保険料率などを、ほかの保険料と混同しないよう注意が必要です。

労災保険の計算

労災保険料の計算式は、以下のとおりです。

  • 全従業員へ支払う年間の賃金総額 × 労災保険料率

労災保険料は、全額を会社が負担することとなっています。労働災害のリスクは事業活動に伴い発生するため、その責任を事業主が負うという考え方に基づきます。

保険料率は、業種ごとの災害リスクに応じて決められています。例えば、食料品製造業なら5.5/1,000、採石業なら37/1,000、卸売業・小売業なら3/1,000といった具合です。

卸売業で年間賃金総額が1億円の会社を例に、労災保険料を計算してみます。卸売業の場合、労災保険料率は0.3%のため、計算結果は以下のとおりです。

  • 1億円×0.3%=30万円

よって、年間で30万円の保険料を納めます。

社会保険料を計算する際の注意点

社会保険料を計算する際は、以下の3点に注意が必要です。

  • 保険料率の定期的な改定
  • 賞与についても社会保険料の計算が必要
  • 徴収ミスの際の確実な清算

法改正情報をおさえていなかったり、徴収ミスがあったりすると、従業員に迷惑をかけてしまいます。最新情報の把握やチェック体制の整備など、ミスの発生しにくい環境をつくることが求められます。

保険料率の定期的な改定

社会保険料の保険料率は、定期的に改定されます。とくに、健康保険料率、介護保険料率、雇用保険料率は、医療費の動向や雇用情勢といった社会経済の変化に応じて、財政バランスを保つために毎年見直される可能性があるのです。

例えば、健康保険料率は例年3月頃に都道府県単位で改定され、4月納付分(3月分の給与)から適用されます。前年度の保険料率を使い続けてしまうと、全従業員の計算を誤ってしまう可能性もあるのです。

保険料率が改定されていないか、法改正も含め必ずチェックしてから、計算に取り掛かることが推奨されます。

賞与についても社会保険料の計算が必要

社会保険料は、毎月の給与だけでなく、賞与からも同様に徴収が必要です。賞与も労働の対価である「報酬」の一部とみなされ、保険料計算の対象となります。

また、賞与を支払った日から5日以内に、管轄の年金事務所へ「被保険者賞与支払届」の提出が必要です。賞与の支給が決定したら、社会保険料の計算・控除、支払届の提出までをひとつの業務セットとして管理し、適切なスケジュールで対応します。

徴収ミスの際の確実な清算

どれだけ注意していても、社会保険料の計算ミスが発生する可能性は否めません。万が一ミスが発覚した場合、迅速に対応していくのが望ましいです。

社会保険料は税金とは全く別の制度であるため、年末調整で安易に相殺するのではなく、原則として当該従業員と現金で直接清算します。例えば、徴収不足が判明した場合は、速やかに従業員への説明と同意取得を行い、差額を翌月の給与から控除するか、別途支払ってもらうかなどを話し合い、合意を書面で残します。過払いの場合は、差額を計算し速やかに返金します。

徴収ミスは従業員の信頼を損なう重大な問題です。誠実かつ迅速に対処をして、さらなるトラブルに発展するリスクを防ぐことが重要です。

社会保険料の計算に関するよくある質問

社会保険料の計算に関する質問や疑問をまとめました。計算時の参考にしてください。

産休・育休中の従業員の社会保険料の扱いは?

産前産後休業および育児休業の期間中、健康保険と厚生年金保険の社会保険料は、従業員負担分・会社負担分ともに免除されます。休業により給与が支払われない、または大幅に減少する期間中の従業員の経済的負担を軽減するための措置です。

免除を受けるためには、会社が管轄の年金事務所へ「産前産後休業取得者申出書」または「育児休業等取得者申出書」を提出します。手続きが完了すると、休業を開始した日の属する月から、終了した日の翌日が属する月の前月までの期間の保険料が免除されます。

この免除期間中も被保険者資格は継続し、将来の年金額の計算においては保険料を納付したものとして扱われます。従業員が育休・産休に入る際は、忘れずに手続きしてください。

入社月、退職月の社会保険料の計算方法は?

社会保険料は月単位で計算するのが原則です。従業員が入社した月は、たとえ月末1日の入社であっても1カ月分の保険料が発生し、日割り計算は行われません。一方で、月の途中で退職した場合は、その月の社会保険料は原則としてかかりません。

ただし、月末に退職した場合は注意が必要です。例えば8月31日に退職した場合、資格喪失日は翌日の9月1日となるため、8月末日時点ではまだ被保険者です。したがって、8月分の社会保険料は発生し、徴収する必要があります。

退職日を正確に確認し、漏れなく社会保険料を徴収するのが重要です。

賞与の社会保険料の計算方法は?

賞与からも社会保険料が徴収されますが、基本的には給与と同じような計算をします。

健康保険・厚生年金・介護保険の場合、税引き前の賞与の額から1,000円未満の端数を切り捨て「標準賞与額」に保険料率を掛けて計算します。一方、雇用保険料の計算では、切り捨てをしない「賞与の総支給額」に保険料率を掛けます。

例えば、賞与総額が555,500円の場合、健康保険料は555,000円を基に計算しますが、雇用保険料は555,500円を基に計算します。保険ごとの計算の仕方を理解して、適切に計算を進める必要があります。

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参考文献

全国健康保険協会「令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」

厚生労働省「令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内」

厚生労働省「労災保険料率」

監修

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遠藤良介 社会保険労務士(愛知社労士会所属)
Reメンバー労務オフィス
労務相談、社会保険・労働保険手続き、社内規定類作成、ライフプランニング相談ほか