建設業法とは?
概要・主な規制内容・違反時の罰則などを
分かりやすく解説!

おすすめ資料を無料でダウンロードできます
【2020年10月施行】 建設業法の新旧対照表 (解説つき)
この記事のまとめ

建設業法とは、建設業者の資質向上や、建設工事請負契約の適正化等を図るための規制を定めた法律です。例えば、住宅やビルの施工に関する契約などに適用されます。

建設業者は、国土交通大臣または都道府県知事の許可を受けた上で、建設業法上の各種規制を遵守しなければなりません。違反した場合は営業停止や許可取消しなどの行政処分、さらに刑事罰の対象となるため要注意です。

この記事では、建設業法について、概要・主な規制内容・違反時のペナルティなどを解説します。

ヒー

建設業って、3K(きつい・汚い・危険)といわれてきた業界ですよね。法令も守られているのか、ちょっと心配です…。

ムートン

現在は働き方改革などと合わせて改善が進んでおり、新3K(給与・休暇・希望)の実現のための取り組みもされています。法令遵守のポイントを押さえて、適正な契約や施工を実現することで、発注者も保護されますし、安全な建築物が建設されます。よく理解しておきましょう。

※この記事は、2023年2月16日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

建設業法とは

建設業法とは、建設業者の資質向上や、建設工事請負契約の適正化等を図るための規制を定めた法律です。例えば、住宅やビルの施工に関する契約などに適用され、施工業者(請負人)は建設業法のルールを遵守しなければなりません。

建設業法の目的

建設業法の目的は、法規制によって主に以下の2つの流れを促し、建設工事の適正な施工を確保して発注者(施主)を保護することです(建設業法1条)。

① 建設業者の資質向上
建設業者の許可制や行為規制を定め、財務基盤やガバナンス体制の整備を促します。

② 建設工事請負契約の適正化
建設工事請負契約に定めるべき事項や、契約条件に関する規制などを定め、不合理な内容の契約が締結されることを防ぎます。

2020年施行|建設業法改正のポイント

2020年10月1日より、

✅ 建設業の働き方改革の促進
✅ 建設現場の生産性の向上
✅ 持続可能な事業環境の確保

という3つの観点から、以下の内容を要点とする改正建設業法が施行されました。

ポイント1│注文者に、著しく短い工期による請負契約の締結を禁止する
ポイント2│注文者に、工期に影響を及ぼす事項について、事前の情報提供義務を課す
ポイント3│建設業者に、工程の細目を明らかにして見積もりを行う努力義務を課す
ポイント4│元請に、下請代金のうち「労務費相当分」を現金払いとする義務を課す
ポイント5│請負契約の書面の記載事項に、「工事を施工しない日・時間帯」の定めを追加する
ポイント6│工事現場の技術者(元請の監理技術者・下請の主任技術者)のルールを合理化する
ポイント7│認可行政庁が、建設資材製造業者に対して改善勧告・命令ができるようになる
ポイント8│許可要件から「5年以上の経験者」を除外し、経営業務管理責任者に関するルールを合理化する
ポイント9│合併・事業譲渡等に際して、事前認可手続きを新設し円滑に事業承継できる仕組みを構築する
ポイント10│下請が元請の違法行為を密告したときに、元請が、下請を不利益に取り扱うことを禁止する
ポイント11│工事現場における下請の建設業許可証掲示義務緩和

改正内容の詳細は、以下の記事をご参照ください。

ムートン

改正の重要な部分についてはこの記事でも紹介していきますよ。

建設業法に定められる主なルール

建設業法ではさまざまなルールが定められていますが、その中でも主要なものは以下の3点です。

各ルールの詳細につき、次の項目から詳述します。

建設業法のルール1|建設業の許可制

建設業法の大きな柱の一つが、建設業の許可制を定める規制です。

建設業を営もうとする者は、2以上の都道府県に営業所を設ける場合は国土交通大臣の、1の都道府県に営業所を設ける場合は都道府県知事の許可を受けなければなりません(建設業法3条)。
ただし、以下のいずれかの条件を満たす工事に限って受注する場合には、例外的に許可不要とされています(建設業法施行令1条の2第1項)。

① 1件の請負代金の額が500万円未満(建築一式工事の場合は1500万円未満)の工事
② 建築一式工事のうち、延べ面積が150㎡未満の木造住宅を建設する工事

建設業とは

建設業」とは、元請・下請などいかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいいます(建設業法2条2項)。

建設業の許可は、建設工事の種類ごとに以下のとおり細分化されており、対応する許可を取得しなければなりません(建設業法3条2項)。いずれも5年ごとの更新が必要です(同条3項)。

・土木工事業
・建築工事業
・大工工事業
・左官工事業
・とび・土工工事業
・石工事業
・屋根工事業
・電気工事業
・管工事業
・タイル・れんが・ブロック工事業
など

一般建設業と特定建設業

建設業は、下請契約の有無およびその金額に応じて「一般建設業」と「特定建設業」の2種類に大別されます。

一般建設業
特定建設業に該当しない建設業をいいます(建設業法3条6項・1項1号)。

特定建設業
建設業のうち、発注者から直接請け負う1件の建設工事につき、その工事の全部または一部を、下請代金が4500万円以下(建設工事業の場合は7000万円以下)の下請契約を締結して施工しようとするものをいいます(同法3条6項・1項2号、建設業法施行令2条)。

特定建設業の許可を受ければ、一般建設業・特定建設業の両方を行うことができます。これに対して、一般建設業の許可を受けている場合には、特定建設業を行うことはできません(建設業法16条)。

建設業法のルール2|建設工事の請負契約に関する規制

建設工事請負契約に関する規制も、建設業法における大きな柱の一つです。具体的には、以下のルールなどが定められています。

・建設工事の請負契約に定めるべき内容
・現場代理人の選任等に関する通知
・注文者の禁止行為
・建設工事の見積り等
・工期等に影響を及ぼす事象に関する情報の提供
・契約の保証
・一括下請負の禁止
・下請負人の変更請求
・工事監理に関する報告
・元請負人の義務

建設工事の請負契約に定めるべき内容

建設工事請負契約では、以下の事項を定めなければなりません(建設業法19条)。

① 工事内容
② 請負代金の額
③ 工事着手の時期・工事完成の時期
④ 工事を施工しない日または時間帯の定めをするときは、その内容
⑤ 請負代金の全部または一部の前金払または出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期・方法
⑥ 当事者の一方から設計変更または工事着手の延期もしくは工事の全部もしくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更・請負代金の額の変更または損害の負担・それらの額の算定方法に関する定め
⑦ 天災その他不可抗力による工期の変更または損害の負担・その額の算定方法に関する定め
⑧ 価格等(物価統制令2条に規定する価格等をいう)の変動・変更に基づく請負代金の額または工事内容の変更
⑨ 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
⑩ 注文者が工事に使用する資材を提供し、または建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容・方法に関する定め
⑪ 注文者が工事の全部または一部の完成を確認するための検査の時期・方法・引渡しの時期
⑫ 工事完成後における請負代金の支払の時期・方法
⑬ 契約不適合責任または当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
⑭ 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
⑮ 契約に関する紛争の解決方法

ヒー

むむむ、項目が多いですね…。

ムートン

国土交通省が建設工事標準請負契約約款を用意しています。契約の際はこういったものも活用できます。

現場代理人の選任等に関する通知

請負人は、請負契約の履行に関して工事現場に現場代理人を置く場合は、以下の事項を書面または一定の情報通信により通知しなければなりません(建設業法19条の2第1項・3項)。

✅ 現場代理人の権限に関する事項
✅ 現場代理人の行為について、注文者の請負人に対する意見申出の方法

注文者が工事現場に監督員を置く場合も、同様の方法で請負人に以下の事項を通知する必要があります(建設業法19条の2第2項・4項)。

✅ 監督員の権限に関する事項
✅ 監督員の行為について、請負人の注文者に対する意見申出の方法

注文者の禁止行為

注文者には、以下の行為がそれぞれ禁止されています(建設業法19条の3~19条の5)。違反した場合は、国土交通大臣または都道府県知事による勧告公表の対象となります(建設業法19条の6)。

× 不当に低い請負代金
× 不当な使用資材等の購入強制
× 著しく短い工期

建設工事の見積り等

建設業者は、建設工事請負契約を締結するに当たり、経費の内訳・工事の工程ごとの作業・準備に必要な日数を明らかにして、建設工事の見積もりを行うよう努めなければなりません(建設業法20条1項)。

また、注文者から請求があったときは、建設業者は注文者に対し、請負契約の締結前に見積書を交付することが義務付けられています(建設業法20条2項・3項)。

工期等に影響を及ぼす事象に関する情報の提供

以下のいずれかの事象が発生するおそれがあると認めるときは、注文者は建設業者に対し、請負契約を締結するまでに、その旨および当該事象の状況把握のため必要な情報提供しなければなりません(建設業法20条の2、建設業法施行規則13条の14)。

① 地盤の沈下、地下埋設物による土壌の汚染その他の地中の状態に起因する事象
② 騒音、振動その他の周辺の環境に配慮が必要な事象

契約の保証

請負代金の一部を前払いする場合、注文者は建設業者に対して、前金を支払う前に保証人を立てることを請求できます。ただし、保証事業会社による工事または1件の請負代金額が500万円未満の工事は、この限りではありません(建設業法21条)。

一括下請負の禁止

建設業者が請け負った建設工事を、一括して他人に請け負わせることは禁止されています(建設業法22条)。
一括下請負(いわゆる「丸投げ」)は、発注者が建設業者に寄せた信頼を裏切ることになる上、施工責任が曖昧になり、商業ブローカー的不良建設業者の輩出を招きかねないためです。

一括下請負の禁止に抵触しないように、元請は自ら以下の事項を行う必要があります。

✅ 施工計画の作成
✅ 工程管理
✅ 品質管理
✅ 安全管理
✅ 技術的指導
など

下請負人の変更請求

建設工事の施工につき、著しく不適当と認められる下請負人があるときは、注文者は請負人に対してその変更を請求できます。ただし、注文者の書面等による承諾を得て選定した下請負人については、この限りではありません(建設業法23条)。

工事監理に関する報告

請負人は、建設工事の施工について、建築士から工事を設計図書のとおりに実施するよう求められた場合において、これに従わない理由があるときは、直ちに注文者に対してその理由報告しなければなりません(建設業法23条の2)。

元請負人の義務

元請負人には、以下の事項が義務付けられています(建設業法24条の2~24条の8)。

✅ 施工に関する事項を定める際、あらかじめ下請負人の意見を聴くこと
✅ 請負代金の支払いを受けた日から1カ月以内かつできる限り短い期間内に、下請負人に対して下請代金を支払うこと
✅ 下請負人から建設工事が完成した旨の通知を受けた日から20日以内かつできる限り短い期間内に、完成確認の検査を完了すること
✅ 下請負人が申し出たときは、直ちに建設工事の目的物の引渡しを受けること(工事完成時期から20日以内の引渡日が特約されている場合を除く)
✅ 上記の義務に違反する行為につき、国土交通大臣・都道府県知事・公正取引委員会・中小企業庁長官に対する通報をしたことを理由として、下請負人に対し、取引の停止その他の不利益な取り扱いをしないこと
✅ 特定建設業者が注文者となった下請契約では、下請負人による目的物の引渡しの申出から50日以内、かつできる限り短い期間内に下請代金の支払期日を定めること
✅ 発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者は、建設業法および労働法令に違反しないよう、下請負人の指導等に努めること
✅ 発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者は、下請代金が4500万円以上(建築一式工事の場合は7000万円以上)になるときは、施工体制台帳を作成して工事現場ごとに備え置くこと
など

建設業法のルール3|主任技術者・監理技術者の設置

現場管理に関するルールとして主要なものは、主任技術者監理技術者等の設置に関する規制です(建設業法26条以下)。

主任技術者・監理技術者を置くべき場合

主任技術者とは、建設業者が設置する、工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる担当者です。所定の教育課程を修めるか、該当する建設工事に関する10年以上の実務経験を有するか、または国土交通大臣による認定を受ける必要があります。
建設業者が請け負った建築工事を施工するときは、主任技術者を置かなければなりません(建設業法26条1項)。

監理技術者も主任技術者と同様、工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる担当者です。所定の検定試験に合格する(もしくは免許を受ける)か、該当する建設工事につき2年以上の指導監督的な実務経験を有するか、または国土交通大臣による認定を受ける必要があります。
発注者から直接建築工事を請け負った特定建設業者は、下請代金が4500万円以上(建築一式工事の場合は7000万円以上)になるときは、監理技術者を置かなければなりません(建設業法26条2項)。

主任技術者:施工計画の作成、工程・品質管理、指導などの適正な工事施工の確保を行う
監理技術者:主任技術者の役割に加えて、下請負人の調整や総括的指導を行う

現場専任制|一定金額以上の公共工事等に適用

公共工事などのうち、請負代金額が4000万円以上(建築一式工事の場合は8000万円以上)のものについては、工事現場ごとに専任主任技術者監理技術者専任で設置しなければなりません(建設業法26条3項本文)。

ただし、監理技術者については例外的に、監理技術者補佐を工事現場ごとに専任で設置すれば、監理技術者は2つの工事現場まで兼務できます(建設業法26条3項但書き・4項)。

建設業法に違反した場合の罰則(ペナルティ)

建設業法に違反した場合、以下のペナルティの対象となります。

✅ 国土交通大臣・都道府県知事による指示・営業停止処分
✅ 建設業者の許可取り消し
✅ 刑事罰

国土交通大臣・都道府県知事による指示・営業停止処分

建設業法に違反するなど、不適正な業務を行っている建設業者に対し、国土交通大臣または都道府県知事は、是正のための必要な指示をすることができます(建設業法28条1項・2項・4項)。

建設業者が当該指示に従わないときは、1年以内の営業停止処分を受ける可能性があります(建設業法28条3項・5項)。

建設業者の許可取り消し

建設業法違反の情状が特に重い場合や、営業停止処分に違反した場合には、国土交通大臣または都道府県知事により、建設業の許可取り消される可能性があります(建設業法29条1項8号)。

それ以外にも、一般建設業または特定建設業の許可基準を満たさなくなった場合や、1年以上営業を休止した場合などが許可取り消しの対象です(建設業法29条1項各号)。

刑事罰

建設業法に違反する行為には、刑事罰の対象となるものもあります。主な処罰対象行為と法定刑は、以下のとおりです。

・無許可で建設業を営む行為
・特定建設業の許可を得ず下請契約を締結する行為
・営業停止、営業禁止処分違反
・不正な許可の取得
3年以下の懲役または300万円以下の罰金(建設業法47条)
※法人についても、両罰規定により1億円以下の罰金(同法53条1号)
・主任技術者、監理技術者の不設置
・報告義務違反、虚偽報告
・検査の拒否、妨害、忌避
100万円以下の罰金(同法52条)
※法人についても、両罰規定により100万円以下の罰金(同法53条2号)

この記事のまとめ

建設業法の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

おすすめ資料を無料でダウンロードできます
【2020年10月施行】 建設業法の新旧対照表 (解説つき)

参考文献

国土交通省「監理技術者制度運用マニュアル」

国土交通省関東地方整備局建政部建設産業第一課「建設工事の適正な施工を確保するための建設業法[令和5.1版]」

国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン[第8版]」