又は(または)・若しくは(もしくは)とは?
意味・法令用語としての使い分け方・
契約書レビュー時の注意点などを
分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「又は(または)」とは、複数の事柄のうちいずれかを選択できることを意味する接続詞です。英語でいう“or”に該当します。例えば「A又はB」は、「AかBのうちいずれか」という意味になります。
「若しくは(もしくは)」も「又は」と同じ意味ですが、法律文書では厳密に使い分けられています。「又は」は上位のカテゴリーを選択的に並べる際に、「若しくは」は下位のカテゴリーを選択的に並べる際に用いられます。
【「又は」「若しくは」の使い分けの例文】
・日常での文章:おやつには、リンゴかバナナかチョコレートかクッキーを食べるつもりだ。
・法律での文章:おやつには、リンゴ若しくはバナナ又はチョコレート若しくはクッキーを食べるつもりだ。
→「フルーツ:リンゴ・バナナ」と「お菓子:チョコレート・クッキー」でカテゴリー分けがされていることが、接続詞で分かるこの記事では接続詞の「又は」「若しくは」について、基本から分かりやすく解説します。
※この記事は、2023年10月12日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
又は(または)・若しくは(もしくは)とは|意味・使い分けのルールを分かりやすく解説
「又は(または)」とは、複数の事柄のうちいずれかを選択できることを意味する接続詞です。英語でいう“or”に該当します。
「若しくは(もしくは)」も「又は」と同じ意味ですが、法律文書では厳密に使い分けられています。
「又は」の意味・使い方
例えば「A又はB」は、「AかBのうちいずれか」という意味になります。
- 2つから選択するときの例文
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・日常での表現:昼食では、リンゴかバナナを食べるつもりだ。
・法律上の表現:昼食では、リンゴ又はバナナを食べるつもりだ。
3つ以上の事柄から選択する場合は、「A、B又はC」のように、最後の事柄の直前に「又は」と記載します。これは「A・B・Cのうちいずれか」という意味です。
- 3つから選択するときの例文
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・日常での文章:昼食では、リンゴかバナナかブドウを食べるつもりだ。
・法律での文章:昼食では、リンゴ、バナナ又はブドウを食べるつもりだ。
(買主の追完請求権)
「民法」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
第562条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 略
民法562条1項は、売買契約の契約不適合責任に基づく履行の追完請求権について定めたものです。
「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」とありますが、これは「種類・品質・数量のうちいずれか」が契約の内容に適合していないときという意味です。
いずれかの契約不適合が存在する場合には、買主は売主の契約不適合責任を追及できます。
また、履行の追完請求の方法については、「買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる」と記載されています。
これは、買主が
- 目的物の修補
- 代替物の引渡し
- 不足分の引渡し
のうち、いずれかを選択できるという意味です。
※ただし、常に買主が履行の追完請求の方法を選択できるわけではありません。目的物の性質上、請求方法が限定される場合もあります(例えば引き渡すべき物が不動産の場合、代替物の引渡しと不足分の引渡しは不可能なので、目的物の修補のみ請求可能)。
また民法562条1項ただし書のとおり、売主による履行の追完方法の変更が認められることもあります。
「若しくは」の意味・使い方・「又は」との使い分け
「若しくは(もしくは)」の意味は、「又は」と同じです。例えば「A若しくはB」は、「AとBのうちいずれか」という意味になります。
ただし法律文書では、「若しくは」と「又は」は厳密に使い分けられています。
具体的には、「又は」は上位のカテゴリーを選択的に並べる際に、「若しくは」は下位のカテゴリーを選択的に並べる際に用いられます。
- 「若しくは」「又は」の使い分けの例文
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・日常での文章:おやつには、リンゴかバナナかチョコレートかクッキーを食べるつもりだ。
・法律での文章:おやつには、リンゴ若しくはバナナ又はチョコレート若しくはクッキーを食べるつもりだ。【意味】
おやつに食べるつもりなのは、以下のうちいずれか
[リンゴ 若しくは バナナ] 又は [チョコレート 若しくは クッキー]「若しくは」「又は」を使い分けることで、並列されたもののカテゴリーを表現できる。
今回の例文では、「フルーツ=リンゴ・バナナ」と「お菓子=チョコレート・クッキー」でカテゴリー分けがされている。
(保佐人の同意を要する行為等)
「民法」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
第13条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
(1)~(5) 略
(6)相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
(7)~(10) 略
2~4 略
民法13条1項は、保佐人の同意を要する被保佐人の行為について定めています。
※被保佐人=精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分であるため、家庭裁判所によって保佐開始の審判を受けた者。被保佐人が行う法律行為の一部については、保佐人の同意が必要となります。
同項6号には、保佐人の同意を要する行為の一つとして「相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること」が挙げられています。
この部分は、まず「又は」によって、
「相続の承認若しくは放棄」又は「遺産の分割」
という2つの大きな(上位)のカテゴリーが並べられています。
次に「若しくは」によって、相続の「承認」と「放棄」という2つの小さな(下位の)カテゴリーが並べられています。
【意味】
被保佐人が以下のいずれかを行うときは、保佐人の同意が必要
①相続の
├承認
└放棄
②遺産の分割
「又は」「若しくは」と「並びに」「及び」の違い|例文とともに解説
「並びに(ならびに)」「及び(および)」とは、複数の事柄を並列してならべる際に用いられる接続詞です。
「又は」「若しくは」は英語でいうと”or”で、例えば「A又は(若しくは)B」は、「AとBのうちいずれか」という意味です。
これに対して、「並びに」「及び」は英語でいうと”and”です。例えば「A並びに(及び)B」は、「AとBの両方」や「AとBはいずれも」という意味になります。
「並びに」と「及び」の使い分け方は、「又は」と「若しくは」の使い分け方と同じです。「並びに」は上位のカテゴリーを並べる際に、「及び」は下位のカテゴリーを並べる際に用いられます。
「又は」「若しくは」が使われることの多い文書の例
「又は」「若しくは」が使われることの多い文書としては、以下の例が挙げられます。
①契約書・覚書・合意書など
②同意書・誓約書・念書など
③法令の条文
契約書・覚書・合意書など
契約書・覚書・合意書は、複数の当事者による合意内容をまとめた法律文書です。
同意書・誓約書・念書など
同意書・誓約書・念書は、一方の当事者が相手方に対して提出する法律文書です。
法令の条文
これまで民法の例を挙げたように、法令の条文にも「又は」「若しくは」が用いられています。
法令の条文では、「又は」と「若しくは」が両方用いられていたり、「並びに」「及び」など他の接続詞と「又は」「若しくは」が併せて用いられていたりすることが多いです。
「又は」「若しくは」に関する契約書のレビュー時のチェックポイント
契約書をレビューする際には、接続詞として「又は」「若しくは」がよく登場します。「又は」「若しくは」に関連して、契約書のレビュー時に注意すべき主なポイントは以下のとおりです。
①漢字表記とひらがな表記のいずれかに統一する
②「又は」「若しくは」との使い分けには特に注意する
ポイント1|漢字表記とひらがな表記のいずれかに統一する
「又は」「若しくは」の表記は、漢字で「又は」「若しくは」と記載しても、ひらがなで「または」「もしくは」と記載しても構いません。
しかし、同じ契約書の中で「又は」「若しくは」(漢字表記)と「または」「もしくは」(ひらがな表記)が混在していると、体裁の観点から違和感があります。
そのため、漢字表記とひらがな表記のいずれかに統一することが望ましいでしょう。「並びに(ならびに)」「及び(および)」などの他の接続詞や、「全て(すべて)」「例えば(たとえば)」などの副詞も同様です。
表記ゆれを修正するためには、ワープロソフト(Microsoft Wordなど)の検索機能と置換機能を活用しましょう。例えば、文書全体について「または」を「又は」に、「もしくは」を「若しくは」に置換すれば、一挙に表記を統一できます。
ポイント2|「並びに」「及び」との使い分けには特に注意する
「又は」と「若しくは」の使い分けを誤ったとしても、契約条項の意味に違いはありません。
これに対して、「又は」「若しくは」(=or)と「並びに」「及びは」(=and)は、文脈によっては全く違う意味になることがあります。
(例)
「A又はBに対して通知しなければならない」
→AとBのうちいずれかに通知すればよい
「A及びBに対して通知しなければならない」
→AとB両方への通知が必要
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