出資法違反に当たる行為は?
刑事罰や違反を避けるためのチェックポイントを
分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

出資法」とは、出資金の受け入れ、預り金、浮き貸し、金銭消費貸借契約における媒介手数料・金利・保証料などに関する規制を定めた法律です。

出資法では、以下の行為が禁止されています。これらの行為は、いずれも刑事罰の対象です。
・「元本保証」などを示して出資金を受け入れること
・業としての預り金をすること
浮き貸し等をすること
・上限を超える金銭消費貸借の媒介手数料の契約・受領
・金銭の貸し付けに関する高金利・高保証料

企業としては、
・不特定多数から出資を受け入れる際には元本保証をしないこと
・貸し付けを行う際には上限金利を必ず確認すること
などを徹底しましょう。

この記事では、出資法違反に当たる行為やその刑罰、出資法違反を避けるためのチェックポイントなどを解説します。

ヒー

出資法、はじめて聞く法律です。

ムートン

意外と身近な法律ですよ。例えば、「元本保証といってお金を集めたり、違法な高金利で金を貸し付けたりして、逮捕された」といったニュースを、たまにみかけることがありますが、これらは出資法違反によるものだったりします。

※この記事は、2024年3月18日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 出資法、法…出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律

出資法とは

出資法」とは、次のような行為に関する規制を定めた法律です。

  • 出資金の受け入れ
  • 預り金
  • 浮き貸し
  • 金銭消費貸借契約における媒介手数料・金利・保証料 など

出資法の目的は、「一般市民が、事業者に出資したりお金を預けたりする際に、事業者から搾取されて損害を被ってしまうのを未然に防止すること」にあります。

出資法と金融商品取引法との違い

出資法と関係の深い法律として「金融商品取引法」が挙げられます。

金融商品取引法は、出資法よりも、さらに幅広い行為に対しての規制を定めています。金融商品取引法による主な規制の内容は、以下のとおりです。

① 上場会社の開示(ディスクロージャー)規制
② 金融商品取引業者に対する規制(販売・勧誘に関するルールと禁止行為)
③ 不公正取引規制(インサイダー取引等規制)

ムートン

金融商品取引法の詳細については、以下の記事を併せて参照ください。

出資法違反に当たる行為|具体例も併せて解説!

出資法では、以下の行為が禁止されています。これらの行為は、いずれも刑事罰の対象です。

  • 「元本保証」などを示して出資金を受け入れること
  • 業としての預り金をすること
  • 浮貸し等をすること
  • 上限を超える金銭消費貸借の媒介手数料の契約・受領
  • 金銭の貸付けに関する高金利・高保証料

違反行為1|「元本保証」などを示して出資金を受け入れること

何人も、不特定かつ多数の者に対し、後日出資の払い戻しとして「出資金の全額もしくはこれを超える金額に相当する金銭を支払うべき旨」を明示して(または暗黙のうちに示して)、出資金の受け入れをしてはなりません(法1条)。

ムートン

一般市民に対して、あたかも出資金が返ってくるような誤解を与えかねない誇大広告的な出資の勧誘が禁止されています。

(違反例)
「3カ月後に10%の利息を付けて出資金を払い戻します」と言って勧誘し、不特定かつ多数の顧客から出資を受けた。

違反行為2|業としての預り金をすること

他の法律の規定によって認められている者を除き、何人もとして預り金をしてはなりません(法2条1項)。

預り金」とは、不特定かつ多数の者からの金銭の受け入れであって、次に掲げるものをいいます(同条2項)。

① 預金、貯金または定期積金の受け入れ
② 社債、借入金その他いかなる名義をもってするかを問わず、①と同様の経済的性質を有するもの

ムートン

預り金規制は、一般市民の財産保護し、かつ社会の信用制度や経済秩序を維持することを目的とする規制です。

(違反例)
・年3%の利息を付与することを約束して、不特定かつ多数の顧客から預金を受け入れた。

違反行為3|浮き貸し等をすること

金融機関の役員・職員などは、その地位を利用し、自己または当該金融機関以外の第三者の利益を図るため、

  • 金銭の貸し付け
  • 金銭の貸借の媒介
  • 債務の保証

をしてはなりません(法3条)。

ムートン

これらの行為は「浮き貸し」と呼ばれるもので、金融機関の信用を損なう行為であるため禁止されています。

(違反例)
銀行の従業員が、「融資のことはよく分かっているから安心して」などと言って当事者を安心させ、金銭消費貸借の貸主と借主の間の契約締結を仲介し、手数料を受け取った。

違反行為4|上限を超える金銭消費貸借の媒介手数料の契約・受領

金銭の貸借の媒介またはその保証の媒介を行う者(以下、媒介者)は、貸借または保証料の金額の5%を超える、

  • 手数料の契約
  • 手数料の受領

をしてはなりません。なお、貸借または保証の期間が1年未満の場合は、5%を日割りした割合が手数料の上限となります(法4条1項、2項)。

なお、媒介者が受ける金銭は、礼金調査料その他いかなる名前であっても、手数料とみなして上記の規制が適用されます(同条3項)。

(違反例)
知り合いの社長同士の間で行われる金銭消費貸借を媒介して、借主から借入額の10%に相当する手数料を受け取った。

※借主・貸主の双方から借入額の5%以内の手数料をそれぞれ受け取ることは、出資法に違反しません。

金銭の貸し付けにおける高金利・高保証料

金銭の貸し付けについては、高すぎる金利保証料を設定することが禁止されています(法5条~5条の4)。

ムートン

消費者金融業者などが、一般市民から不当に金利等を搾取する事態を防止することが目的です。

高金利の処罰

金銭の貸し付けについて、以下の上限を超える割合による契約をした者は刑事罰の対象となります(法5条)。

原則年109.5%
※うるう年については年109.8%、1日当たり0.3%
金銭の貸し付けを業として行う者年20%

(違反例)
顧客に対して100万円を貸し付け、半年後に200万円を返済する旨の金銭消費貸借契約を締結した。

※利息制限法の上限金利(元本額に応じて15%~20%)を超える部分の利息は、出資法に違反しない場合でも無効(利息制限法1条)

ヒー

利息制限法と出資法で、どちらの規制に従えばいいんでしょう?

ムートン

結論、どちらにも従う必要がありますが、利息制限法と出資法の上限金利規制には、次のような違いがあります。

利息制限法と出資法

■利息制限法の上限金利:超過すると民事上無効になるという定め
■出資法の上限金利:超過すると刑事罰を受けるという定め

高保証料の処罰

金銭の貸し付けの保証人が、貸し付けの利息と合算して貸付額の年20%を超える割合となる保証料の契約をしたときは、刑事罰の対象となります(法5条の2第1項)。

なお、貸し付けの利息が変動利率のケースでは、

  • 変動の上限がある場合はその上限利率
  • 上限がない場合は年10%

を貸し付けの利息の割合とみなして、上記の規制が適用されます(同条2項)。

(違反例)
消費者金融に対して顧客が負う100万円の借入債務(年利15%)を、保証料10万円で1年間保証した。

→貸付額に対して保証料が年10%、利息と合算して年25%になり、違反となる

保証料がある場合の高金利の処罰

すでに保証が設定されている貸付債権について、貸主が後から利息を増加した結果、利息と保証料を合算して年20%を超えることになったときは、貸主が刑事罰の対象となります(法5条の3)。

(違反例)
消費者金融業者が顧客に対する100万円の貸付債権(年利10%)を、保証人が保証料10万円で1年間保証した。消費者金融業者はその後、保証期間中に顧客との間で変更契約を締結し、貸付債権の利息を年利15%に引き上げた。

→利息と保証料の合算利率は当初年20%だが、利息の増加によって年25%になり、違反となる

利息・保証料の計算方法

利息と保証料の計算方法については、以下のルールが定められています(法5条の4)。

  • 貸し付けまたは保証の期間が15日未満であるときは、これを15日とみなして利息または保証料を計算する。
  • 利息を天引きする方法による金銭の貸し付けについては、借主への交付額を元本額として利息を計算する。
  • 1年分に満たない利息を元本に組み入れる場合には、元利金のうち当初の元本を超える金額を利息とみなす。
  • 貸主が貸し付けに関して受ける金銭は、公租公課や公的機関に支払う手数料など一部の例外を除き、名目の如何を問わず利息とみなす。
  • 保証人が保証に関して受ける金銭は、公租公課や公的機関に支払う手数料など一部の例外を除き、名目の如何を問わず保証料とみなす。

出資法違反に当たる行為の刑罰一覧

出資法違反に当たる行為をした者に科される刑罰は、下表のとおりです。

違反行為条文法定刑
・金銭の貸し付けを業として行う者による、違法な高金利の契約法8条2項、9条1項2号10年以下の懲役または3,000万円以下の罰金(併科あり)
 
※法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者が違反行為をしたときは、法人に対しても1億円以下の罰金
・違法な高金利または高保証料の契約(金銭の貸し付けを業として行う者による場合を除く)法8条1項、9条1項1号5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(併科あり)
 
※法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者が違反行為をしたときは、法人に対しても3,000万円以下の罰金
・「元本保証」などを示して出資金を受け入れること
・業としての預り金をすること
・浮き貸し等をすること
・上限を超える金銭消費貸借の媒介手数料の契約・受領
法8条3項、9条1項3号3年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科あり)
 
※法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者が違反行為をしたときは、法人に対しても300万円以下の罰金

出資法に違反しないためのチェックポイント

企業が出資法違反を犯さないためには、特に以下の2点に十分注意しましょう。

① 不特定多数から出資を受け入れる際には、元本保証をしない
② 貸し付けを行う際には、上限金利を必ず確認する

不特定多数から出資を受け入れる際には、元本保証をしない

不特定かつ多数の者に向けて出資を勧誘する際には、出資金額以上の額が必ず返ってくることを保証してはなりません。

ムートン

出資はあくまでもリスクを伴うものであり、元本割れのリスクがあることをきちんと説明することが大切です。

貸し付けを行う際には、上限金利を必ず確認する

他人(他社)に対して資金を貸し付ける際には、出資法上の上限金利を必ず確認しましょう

利息」という名目でなくても、元本の返済以外に受け取る金銭は、一部の例外を除いて利息とみなされるので注意が必要です(法5条の4第4項)。

また、出資法以外に利息制限法の上限金利にも注意しなければなりません。元本額に応じて、下表の上限利率を超える金利は無効となります(利息制限法1条)。

元本額上限利率
10万円未満年20%
10万円以上100万円未満年18%
100万円以上年15%

出資法違反で逮捕された後の刑事手続きの流れ

出資法違反で逮捕された場合、以下の流れで刑事手続きが進行します。

① 逮捕~勾留請求
② 起訴前勾留~起訴・不起訴
③ 起訴後勾留~公判手続き
④ 判決・上訴・刑の執行

流れ1|逮捕~勾留請求

逮捕後は、警察官や検察官による取り調べが行われます

検察官は、被疑者の身柄を引き続き拘束する必要があると判断した場合には、裁判官に対して勾留(身柄の拘束)を請求します。裁判官は、罪証隠滅や逃亡のおそれなどがあると判断した場合には勾留状を発します。

勾留請求は、逮捕から72時間以内に行われることになっています(刑事訴訟法205条2項)。勾留請求が行われなかったときは、被疑者は釈放されます。

流れ2|起訴前勾留~起訴・不起訴

裁判官によって勾留状が発せられた場合には、逮捕から起訴前勾留に移行します

起訴前勾留の期間は、最長20日間です(刑事訴訟法208条)。その間は引き続き、警察官や検察官による取り調べが行われます。

期間満了までに、検察官は被疑者を起訴するかどうかを判断します。正式起訴された場合は起訴後勾留に移行し、不起訴となった場合は被疑者が釈放されます

なお、100万円以下の罰金または科料が求刑される場合に限り、略式起訴が行われることがあります。略式起訴の場合は、起訴後勾留には移行しません。

流れ3|起訴後勾留~公判手続き

起訴後勾留の期間は、起訴後2カ月間で、1カ月毎に更新が認められています(刑事訴訟法60条2項)。ただし、起訴後勾留への移行後は、裁判所に対する保釈請求が可能です(同法89条、90条)。

起訴後勾留の期間中は、弁護人と相談しながら、公判手続きに向けた準備を整えます。

公判手続きは、検察官が犯罪要件を立証し、被告人側がそれに反論するかたちで進みます。被告人としての方針は大きく分けて、

  • 罪を認めて情状酌量を求めるか
  • 罪を否認して争うか

の2通りです。

流れ4|判決・上訴・刑の執行

公判手続きの審理が熟した段階で、裁判所が判決を言い渡します。一審判決については高等裁判所に対する控訴、控訴審判決については最高裁判所に対する上告が認められています。

控訴・上告の手続きを経て判決が確定し、有罪の場合は刑が執行されます。ただし、執行猶予付き判決が確定した場合には、一定期間刑の執行が猶予されます。

ムートン

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参考文献

金融庁ウェブサイト「貸金業法のキホン」