副業とは?厚生労働省による定義や
メリット・デメリットを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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副業とは、本業以外の仕事に従事することです。
・厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」において、副業を「本業以外の就業」と明記しています。
・政府も副業を推進しています。
・副業を認めることで従業員の生活の安定や、定着率が向上する可能性があります。本記事では、副業について、基本から詳しく解説します。
※この記事は、2025 年6月30日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
副業とは
副業の基本的な定義と、複業・兼業・ダブルワークとの違いについて紹介します。
- 厚生労働省による副業の定義
- 複業・兼業・ダブルワークとの違い
企業が従業員の副業に対応するためには、上記の観点を押さえておくことが重要です。
厚生労働省による副業の定義
副業とは、本業以外で収入を得るために行う仕事全般のことです。
法令上に明確な定義はありませんが、厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」において、副業を「本業以外の就業」と位置づけています。企業には原則として副業を認める方向での検討が求められており、働き方改革の一環として推進されています。
複業・兼業・ダブルワークとの違い
副業と似た用語に「複業」「兼業」「ダブルワーク」があります。これらは一般的には以下のような意味合いで使い分けられます。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 副業 | 本業を主とし、空いた時間を活用して行う補助的な仕事。収入補填やスキル習得が目的。 |
| 複業 | 複数の業務を本業として並立させる働き方。「会社員×起業家」のように、それぞれに主軸を持つケース。 |
| 兼業 | 本業以外に、別の企業の会社員や自営業として仕事を掛け持ちすること。本業と同様に労力をかけて働く。 |
| ダブルワーク | 2つ以上の仕事を同時に行うことを意味し、アルバイトの掛け持ちなどが該当する。 |
どの形態が適しているかは、従業員の目的やライフスタイルによって異なります。
企業としては、就業規則において定義を明確にし、それぞれの働き方への対応方針を整理しておくことが望まれます。
副業推進の社会的背景
副業が注目されるようになった社会的な背景と、政府・企業・従業員それぞれの意識の変化について見ていきます。
- 厚生労働省による「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の公開
- 企業・労働者の考え方の変化
内閣官房が発表した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」では「労働者の多様なキャリア形成を促進する等の観点から、副業・兼業を推進する旨」が決定され、政府も副業を推進しています。
参考資料:厚生労働省「副業・兼業の促進に関する取組について」
厚生労働省による「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の公開
2018年に厚生労働省が発表した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、企業に副業を原則認める方向での対応を促すものでした。これにより、副業を前向きに考える企業が少しずつ増えています。
また、モデル就業規則もあわせて見直され、勤務時間外であれば他社の業務にも従事できることが明記されました。ただし、業務に支障が出る、秘密保持の観点で問題があるといった場合には、適切な制限を設けることも可能とされています。企業としては、リスクと従業員の希望のバランスをとりながらルールを整備していくことが大切です。
企業・労働者の考え方の変化
以前は「副業=人材流出のリスク」というイメージが強かった一方で、今では「人材育成や満足度向上のチャンス」として、副業を前向きに捉える企業が増えてきました。
また、働き方改革による「時間外労働の上限規制」も、副業を後押しする要因のひとつといえるでしょう。企業は残業を抑えざるを得ず、従業員は残業代を得にくくなったことで、労使双方の利害が一致し、副業が広まりやすい環境が生まれています。
さらに、従業員側でも、副業を収入アップだけでなく、スキルアップやキャリア形成の手段として活用する傾向が強まっています。とくに、リモートワークが普及したことで、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方が可能になり、副業に挑戦しやすい環境が整いつつあるといえます。
従業員に副業を認めるメリット
企業が従業員に副業を認めることで、従業員だけでなく組織全体にとってもさまざまなメリットが生まれます。主なメリットは以下のとおりです。
- 副業で得た経験を本業に活かせる
- 人材の定着率や満足度が向上する
- 副収入を得ることで従業員の生活が安定する
企業側が知っておくべきメリットについて詳しく紹介します。
副業で得た経験を本業に活かせる
副業を通じて新たなスキルや知識を身につけることで、本業にもプラスの影響が期待できます。たとえば、Webライティングやデータ分析、SNS運用といった副業での経験は、報告書の作成や情報発信、業務改善などに活かせる経験です。
異なる分野に触れることで視野が広がり、柔軟な発想や課題解決力も養われやすくなります。企業側にとっては、研修コストをかけずに人材が成長するという意味でも、大きなメリットといえるでしょう。
人材の定着率や満足度が向上する
副業を認めることは、従業員のやりたいことを応援する姿勢として受け止められ、会社への信頼や満足感を高めるきっかけになります。その結果、働きがいが増し、離職率の低下にもつながるでしょう。
実際に副業制度を導入している企業のなかには、従業員満足度の向上や定着率の改善といった成果を得ている事例もあります。従業員の多様な価値観を尊重することは、採用・定着の両面で重要なポイントとなります。
副収入を得ることで従業員の生活が安定する
副収入があることで、住宅ローンや教育費などの経済的な不安を軽減でき、安心して本業に取り組める点がメリットのひとつです。たとえば月に3〜5万円の収入があるだけでも、生活のゆとりにつながる方もいるでしょう。
収入に余裕が生まれることで、スキル習得のための学習や資格取得への投資にも積極的になりやすく、個人の成長を後押しする結果にもつながります。こうした好循環が組織全体の活性化にもつながっていくのです。
副業を認めるデメリット
副業にはメリットが多い一方で、企業として注意しておくべきリスクや課題も存在します。副業制度を導入・運用するうえで、企業が押さえておきたいポイントは以下のとおりです。
- 情報漏えいのリスクがある
- 労働時間の管理が難しくなる
- 生産性低下や健康管理上のリスクがある
デメリットを理解し対策を整えることで、副業制度をスムーズに運用できます。
情報漏えいのリスクがある
副業を通じて、本業で得た機密情報や業務ノウハウが意図せず外部に漏れてしまうリスクがあります。とくに同業他社や競合分野での副業を認める場合には、企業の信頼や競争力に関わる事態にもなりかねません。
情報漏えいのリスクを防ぐためには、就業規則において秘密保持義務や競業避止に関するルールを明確にし、必要に応じて誓約書を取り交わすなどの対策が求められます。
労働時間の管理が難しくなる
副業を認めることで、企業にとっては労働時間の通算管理が複雑になります。労働基準法では、複数の職場で働く従業員の労働時間は通算して管理しなければならないため、本業と副業を合わせて法定の上限を超えていないか確認が必要です。
とくに、副業先の勤務実態が把握しにくい場合には、労働時間の把握や残業代の適正な支払いに課題が生じることがあります。そのため、勤怠システムの整備や申告ルールの明確化など、運用面での工夫が求められます。
生産性低下や健康管理上のリスクがある
副業によって労働時間が長くなると、心身の疲労が蓄積しやすくなり、本業のパフォーマンス低下や健康リスクが高まります。とくに夜間や休日に副業を行うケースでは、十分な休息が取れず、集中力や判断力に悪影響を与える恐れもあります。
企業としては、従業員の健康管理にも配慮し、必要に応じて副業の内容や時間についてヒアリングを行うなど、状況に応じた対応を行うことが大切です。
副業を解禁する際に企業が行うべき実務
副業を安心して運用するために、企業側が準備しておきたい実務のポイントを以下の3つに分けて紹介します。
- 就業規則の整備
- 労働時間の管理
- 健康状態の管理
副業を社内で認めるには、上記のポイントを理解し、あらかじめルールや管理体制を整えておくことが大切です。
就業規則の整備
副業を認める場合は、まず就業規則の見直しが必要です。
就業規則に副業について明記する場合に、記載すべき項目は以下のとおりです。
| 項目名 | 内容の説明 | 備考・補足 |
|---|---|---|
| 副業の定義 | 副業に該当する行為を明確化 | あいまいな範囲を防ぐため、例示を添えると効果的 |
| 許可・届出の要否 | 副業を許可制とするか、届出制とするかを規定 | 許可基準や判断プロセスを合わせて明記するとよい |
| 禁止・制限事項 | 競業行為や機密漏洩、公序良俗違反、健康や本業への支障が出る副業などの禁止 | トラブル防止の観点から詳細に記載が必要 |
| 申請・届出の手続き | 申請書の提出方法、必要書類、判断・通知のフローを明示 | フォーマットや担当部署も記載すると実務に役立つ |
| 労働時間の管理方法 | 本業・副業の労働時間通算方法や「管理モデル」の運用について記載 | 労働基準法に基づき、上限規制の遵守が前提 |
| 会社の責任範囲 | 副業中の事故・損害等に対する会社の免責事項を明記 | 労災やトラブルが発生した際のリスク管理として重要 |
| 健康管理への配慮 | 長時間労働を避けるよう注意喚起、健康保持のための留意点を記載 | 労働時間・睡眠不足への配慮として盛り込む企業が増加 |
| 情報共有の方法 | 起算日の違いや上限設定など、労働時間調整に必要な情報の共有ルールを設定 | 管理モデル導入時の確認書・通知様式例の使用も有効 |
厚生労働省が公開しているモデル就業規則では、「勤務時間外に他の会社等で働くことができる」と明記されており、この内容を参考にしながら、自社に合ったルールを整えていきましょう。
制度導入時には、説明会や相談窓口を設けて丁寧にフォローすることも大切です。
参考資料:厚生労働省「モデル就業規則」
労働時間の管理
副業を認めるうえで忘れてはならないのが労働時間の通算管理です。本業と副業の労働時間は合計して管理する必要があり、週40時間を超える場合には残業扱いとなります。
適切な労働管理ができていないと法令違反につながるおそれがあります。そのため、企業としては本業の時間だけでなく、副業先での勤務時間も把握できるよう仕組みを整えておくことがポイントです。
たとえば、副業の時間を報告してもらう簡易フォームをつくる、勤怠管理システムで自動的に通算できるようにするなど、担当者や従業員が運用しやすい方法を選ぶことが大切です。
健康状態の管理
副業をしていると、どうしても労働時間が長くなりがちです。その結果、睡眠不足や疲労がたまりやすくなり、体調やパフォーマンスに影響が出てしまうこともあります。
企業としては、従業員の健康を守るためにも、定期的な体調チェックや面談の機会を設けることが大切です。たとえば、月1回の簡単なアンケートで睡眠時間や疲れ具合を聞くようにしたり、産業医による相談窓口を設置したりするのもひとつの方法です。
また、ストレスチェックや健康ガイドラインの整備など、無理のない副業をサポートする仕組みをつくっておくことで、安心して働ける環境づくりにもつながります。
企業が副業を禁止できるケース
副業は原則として認められる方向に進んでいますが、すべての副業が無条件に許されるわけではありません。企業の業務に支障をきたすような場合など、一定の条件を満たせば、副業を制限・禁止することも可能です。
企業が副業を制限できる代表的なケースは以下のとおりです。
- 競業にあたる業務に従事する場合
- 過重労働により本業に支障が出る場合
- 企業の信用を著しく損なう行為を含む場合
自社にとって不利益にならないように、禁止や制限できるケースを理解することが大切です。
競業にあたる業務に従事する場合
副業の内容が、会社の利益に直接影響するような競合業務である場合、制限の対象となる可能性があります。たとえば、自社と同じ業種・サービスを提供している企業で働いたり、営業ノウハウや顧客情報などを流用したりすることは、企業秘密の漏洩にもつながりかねません。
このような場合には、労働者の誠実義務や競業避止義務を根拠に、副業を禁止または制限することが認められています。副業を禁止または制限する場合は、就業規則などで明文化しておくと、トラブルを防ぎやすくなります。
過重労働により本業に支障が出る場合
副業により過度な疲労がたまり、本業での勤務に支障が出ている場合も、制限の対象となります。たとえば、夜間の副業により睡眠時間が不足し、日中の業務で集中力が続かない、欠勤や遅刻が増えるなどの状態が見られる場合です。
こうしたケースでは、労働契約上の労務提供義務が果たされていないと判断されることがあり、副業を一時的に制限することも選択肢のひとつです。日々の勤務状況を把握し、必要に応じて面談を行うなど、丁寧な対応が求められます。
企業の信用を著しく損なう行為を含む場合
副業の内容が社会的に好ましくないと判断される場合、企業のイメージや信頼性に影響を及ぼす可能性があります。たとえば、反社会的な団体との関わりがある仕事やギャンブル性の高い事業、過激な言動が目立つ発信活動などです。
とくにSNSを通じて発信される情報が企業名と結びついてしまうケースでは、企業のブランドイメージを損なうおそれもあります。企業としては、一定のルールやガイドラインを設けて、従業員の副業における行動に節度を持たせることが大切です。
従業員の副業に関するよくある悩み
副業制度を導入するにあたり、企業や人事担当者がよく抱える悩みについて回答します。
- 副業先の労働時間はどのように取り扱えばいい?
- 自社と副業先の労働時間制度が異なる場合の労働時間通算方法は?
- 起算日が異なる場合の労働時間はどのように通算する?
とくに、労働時間の通算方法は難しい部分でもありますので、しっかり理解しておきましょう。
副業先の労働時間はどのように取り扱えばいい?
労働基準法では、たとえ別の会社で働いている場合でも、労働時間はすべて通算して管理しなければなりません。例えば、本業で1日8時間働き、副業でさらに3時間働いている場合、合計で11時間となり、法定の8時間を超えるため残業扱いになります。
このように、本業と副業を合わせた労働時間が、1日・1週・1カ月の基準を超えていないかを把握することが大切です。36協定で定められた残業の上限(月45時間・年360時間)についても、通算での確認が必要です。
本業と副業の労働時間が基準を超えていないか把握するためには、副業の労働時間を従業員に月単位で申告してもらうなど、シンプルで継続しやすい仕組みを整えることがポイントになります。
ただし、労働時間を通算して割増賃金を算定する方法について、現在見直しが検討されており、将来的には残業代の計算において、本業と副業を通算して割増賃金を払うことが不要になる可能性があります。
自社と副業先の労働時間制度が異なる場合の労働時間通算方法は?
本業と副業の会社で、労働時間の考え方や制度が違う場合は、「管理モデル」という簡単な仕組みの導入が推奨されています。管理モデルとは、本業先と副業先がそれぞれ細かい時間を確認しなくても、ルールを守りながら労働時間を管理できる方法です。
この方法では、本業側の法定外労働時間と副業側の労働時間を合計して単月100時間未満、複数月平均80時間以内となるように、あらかじめそれぞれの事業場における労働時間の上限を設定しておきます。そして、本業側の実際の労働時間に関わらず、副業側の労働時間を全て法定外労働時間として割増賃金を支払います。これにより、本業側も副業側も、それぞれがあらかじめ設定した労働時間の上限範囲内で労働させる限りは互いの事業場での実労働時間を把握する必要なく、労働基準法を遵守することができます。
参考資料:厚生労働省「副業・兼業における労働時間の通算について(簡便な労働時間管理の方法「管理モデル」)」
起算日が異なる場合の労働時間はどのように通算する?
副業先と本業先で、1カ月のスタート日(起算日)が違うこともあります。たとえば、本業が毎月1日スタート、副業が毎月15日スタートといったケースです。
この場合、それぞれの会社で別々に上限時間を設定すれば問題ありません。大事なのは、それぞれの1カ月の中で、時間外労働の上限を守れるようにしておくことです。
副業を認める企業側としては、従業員から副業先の起算日を聞いたうえで、無理のない働き方ができるようサポートすることが求められます。
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参考文献
厚生労働省「副業・兼業における労働時間の通算について(簡便な労働時間管理の方法「管理モデル」)」
監修












