【2026年10月義務化】
カスタマーハラスメント防止措置の実務対応・
厚労省指針のポイントと
企業が講ずべき具体策を分かりやすく解説!

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汐留社会保険労務士法人社会保険労務士
企業の労働保険・社会保険各種手続きや給与計算代行をするほか、えるぼし・くるみん認定取得の支援など女性活躍推進にも注力している。 また、社内YouTubeやX(旧Twitter)を通じて法改正情報や試験対策をわかりやすく発信し、社労士をより身近に感じていただけるよう活動している。
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この記事のまとめ

2026年10月1日以降、カスタマーハラスメント対策は「事業主の措置義務」となります
厚生労働省の指針を踏まえた早急な対策が求められますが、これは単なるコンプライアンス対応にとどまらない重要な経営課題です。

適切なカスハラ対策は、優秀な人材の定着や企業のブランド価値を守る「人的資本への投資」に他なりません。この記事では、最新の指針やデータに基づき、人事担当者が知っておくべきカスハラの基礎知識から実践的な現場対応までを解説します。

目前に迫る法改正を見据え、組織として講ずべき義務化のポイントを分かりやすくお伝えします。

ヒー

カスハラ対策が義務化するというので、担当部署で必要な対応を整理したいと思います。参考になるものはありますか?

ムートン

厚生労働省の指針の内容や、パンフレットを参考に、適切な仕組みや対応方法を定めましょう。ポイントを解説していきます。

※この記事は、2026年6月10日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • ・労働施策総合推進法…労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
  • ・独占禁止法…私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
  • ・取適法…製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律

カスタマーハラスメントの深刻な実態

近年、顧客や取引先からの理不尽な要求や暴言、いわゆる「カスタマーハラスメントカスハラ」が深刻な社会問題となっています。厚生労働省の「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によれば、過去3年間に各ハラスメントの相談があったと回答した企業のうち、カスハラについては約27.9%の企業で相談が寄せられています。

さらに注目すべきは、他のハラスメント(パワーハラスメントセクシュアルハラスメントなど)の相談件数が「減少している」傾向にある中で、カスハラだけは「件数が増加している」(23.2%)と回答した企業の割合が、「件数は減少している」(11.4%)を大きく上回っているという事実です。従業員規模別に見ると、100人以上の企業において「増加している」と回答する割合が「減少している」を上回る結果となっており、企業規模が大きくなるほどカスハラの相談件数が増加傾向にあることがわかります。

業種別に見ると、顧客と直接接する機会の多い「医療、福祉」(53.9%)、「宿泊業、飲食サービス業」(46.4%)、「不動産業、物品賃貸業」(43.4%)などで相談があった企業の割合が特に高くなっています。

カスハラが企業にもたらす損害は甚大です。該当する事案があった企業において被害内容を見ると、「通常業務の遂行への悪影響」が63.4%、「労働者の意欲・エンゲージメントの低下」が61.3%と多くを占めています。さらに、「労働者の休職・離職」に発展したケースも22.6%にのぼります。人材不足が叫ばれる昨今において、優秀な人材の流出や現場のモチベーション低下は、企業にとって防ぐべき損失です。

また、同調査の労働者へのアンケート結果では、非常に胸の痛む実態が明らかになっています。カスハラを受けた後の労働者の行動として、「社内の上司に相談した」(38.2%)に次いで「何もしなかった」(35.2%)と回答した人が多く、その理由として「何をしても解決にならないと思ったから」(56.1%)が最多となっています。

現場の従業員の中には、相談をためらったり、「仕方がない」と受け止めてしまったりすることで、問題が表面化しないケースも少なくありません。企業には、こうした状況を見過ごさず、従業員が安心して相談できる環境を整備し、組織として適切に対応することが求められます。

企業に必要な「安全配慮義務」と法的リスク

なぜ企業はカスハラ対策に本腰を入れなければならないのでしょうか。もちろん、従業員の心身の健康を守るためですが、同時に企業自身の「法的リスク」を回避するためでもあります。

企業および事業主は、従業員が安全で健康に働くことができるよう配慮する「安全配慮義務」を負っています。カスハラに対して適切な対応をせず放置した場合、被害を受けた従業員からこの安全配慮義務違反を問われ、損害賠償責任を追及される可能性があるのです。

厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」には、実際の裁判例が紹介されています。ある市立小学校の教諭が児童の保護者から理不尽な言動を受けたことに対し、校長が事案を的確に把握することなく、安易に保護者に謝罪するよう求めた事案です。このケースでは、校長の対応が不法行為と判断され、市および教員の給与を支払う県に対して損害賠償責任が認められました。

一方で、企業としてカスハラ対策を十分に講じていたことで、責任を免れた事例もあります。買い物客とトラブルになった小売店の従業員が会社に損害賠償を求めた裁判では、会社がサポートデスクや近隣店舗のマネージャー等に深夜でも連絡できる体制を整え、深夜においても店舗を2名体制にしていたことなどから、安全配慮義務違反が否定されました。

これらの判例からも明らかなように、カスハラ対策は単なる「クレーマー対応」ではなく、経営層が責任を持って取り組むべき「コンプライアンス(法令遵守)」の課題です。組織として従業員を守るための十分な対応策・体制を構築しているかどうかが、企業の法的責任を左右する重要なポイントとなります。

カスタマーハラスメントの定義と判断基準

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