ハラスメントを放置するリスクとは?
企業が注意すべきハラスメントの種類や
対策などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

職場におけるハラスメント放置すると、損害賠償請求行政指導行政処分などを受けるリスクがあります。また、従業員のモチベーションの低下や休職・退職、企業イメージの低下などにより、事業活動全般に悪影響が生じてしまいかねません。

企業が注意すべきハラスメントとしては、セクハラ・パワハラ・マタハラ・ケアハラ・カスハラなどが挙げられます。普段から社内全体で対策を講じるとともに、実際にハラスメントが発生したら迅速かつ適切に対応してください。

この記事ではハラスメントを放置するリスク、企業が注意すべきハラスメントの種類、講ずべきハラスメント対策などを解説します。

ヒー

管理職が部下からのハラスメント相談を放置してしまい、不満を持った部下がSNSに書き込んだため炎上してしまいました…。

ムートン

ハラスメントを見て見ぬフリをするなど、放置することは企業にとって大きなリスクとなります。注意喚起が必要ですね。

※この記事は、2026年6月24日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • ・労働施策総合推進法…労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
  • ・改正労働施策総合推進法…労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第63号)による改正後の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
  • ・男女雇用機会均等法…雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
  • ・育児介護休業法…育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

企業がハラスメントを放置するリスクとは?

職場におけるハラスメントを放置すると、企業は次のようなリスクを負ってしまいます。これらのリスクの顕在化を防ぐため、適切にハラスメント対策を講じなければなりません。

(1) 被害者から損害賠償を請求される|安全配慮義務違反・使用者責任
(2) 法令違反により行政指導や行政処分を受ける
(3) 従業員全体のモチベーションが失われ、生産性が低下する
(4) 被害者の休職や退職により、人員不足に陥る
(5) 世間に悪評が広まり、企業イメージ・レピュテーションが低下する

被害者から損害賠償を請求される|安全配慮義務違反・使用者責任

企業は、従業員が心身の安全を確保しながら労働できるように、必要な配慮を行う義務を負っています(=安全配慮義務。労働契約法5条)。適切な対策を怠ったためにハラスメントが発生した場合、企業は被害者である従業員に対し、安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。

また、業務の中で従業員がハラスメントを行った場合は、使用者である企業も被害者に対し、使用者責任に基づく損害賠償責任を負う可能性が高いです(民法715条1項)。

損害賠償の金額は、ハラスメントの内容や被害者の状況などによって異なります。特に被害者が自殺してしまった場合などには、数千万円以上の損害賠償責任が生じることもあり得るので要注意です。

法令違反により行政指導や行政処分を受ける

セクハラパワハラなどのハラスメントについては、男女雇用機会均等法や労働施策総合推進法などの各種法令により、企業に対して防止措置義務付けられています。

ハラスメントを防止するための対策を適切に講じていないことが発覚すると、監督官庁によって法令違反を指摘され、行政指導行政処分を受けるおそれがあります。違反の内容によっては企業名が公表されるケースもあり、レピュテーションの低下に繋がり得るので要注意です。

従業員全体のモチベーションが失われ、生産性が低下する

ハラスメントが放置されている職場では、被害者本人だけでなく、周囲の従業員も不安や不信感を抱きやすくなります。

会社は従業員を守ってくれない」という認識が広がると、仕事への意欲や組織への帰属意識が低下しがちです。その結果、コミュニケーションの停滞やチームワークの悪化を招き、組織全体の生産性の低下に繋がるおそれがあります。

被害者の休職や退職により、人員不足に陥る

ハラスメントによって大きな精神的ショックを受けた被害者は、休職や退職に追い込まれてしまうこともあります。

特に経験や専門知識を有する人材がいなくなると、企業にとって大きな損失となるでしょう。人員が減少したために残された従業員の業務負担が増加し、さらなる離職を招く悪循環に陥るおそれもあります。

世間に悪評が広まり、企業イメージ・レピュテーションが低下する

近年ではSNS口コミサイトなどを通じて、職場の問題が短期間で広く拡散されるケースが少なくありません。

ハラスメント問題への不適切な対応が明らかになると、「従業員を大切にしない企業」といった評価が定着してしまうおそれがあります。そうなると、取引先からの信頼を失う、採用活動に悪影響が及ぶなど、業績の悪化に直結する事態に発展し得るので要注意です。

企業が対策を講ずべきハラスメントの主な種類

企業に対しては法令により、次に挙げるハラスメントを防ぐため必要な措置を講じることが義務付けられています。

(1) セクシュアルハラスメント(セクハラ)
(2) パワーハラスメント(パワハラ)
(3) マタニティハラスメント(マタハラ)
(4) ケアハラスメント(ケアハラ)
(5) カスタマーハラスメント(カスハラ)

セクシュアルハラスメント(セクハラ)

セクシュアルハラスメント(セクハラ)」とは、職場における性的な言動により、労働者に対して不利益を与え、または労働者の就業環境を害することをいいます。次の①②をいずれも満たす言動がセクハラに当たります。

セクハラの要件

① 職場において行われる性的な言動であること

② 次のいずれかに該当すること
(a) 労働者の対応により、当該労働者が労働条件について不利益を受けること(=対価型セクハラ
(例)
性的な言動に対して不快感を示した従業員を降格させた。

(b) 労働者の就業環境を害する言動であること(=環境型セクハラ
(例)
過去の交際関係についてしつこく問い詰めた。

事業主はセクハラの防止や適切な対応のため、雇用管理上必要な措置を講じなければなりません(男女雇用機会均等法11条1項)。

パワーハラスメント(パワハラ)

パワーハラスメント(パワハラ)」とは、職場における優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境を害することをいいます。次の①~③をいずれも満たす言動がパワハラに当たります。

パワハラの要件

① 職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であること
(例)上司の部下に対する言動、集団の個人に対する言動、専門的知識を有する者のそうでない者に対する言動など

② 業務上必要かつ相当な範囲を超えていること

③ 労働者の就業環境を害する言動であること
(例)
身体的な攻撃(暴行など)、精神的な攻撃(脅迫や侮辱など)、人間関係からの切り離し(隔離や無視など)、過大な要求、過少な要求、プライバシーの過度な詮索

事業主はパワハラの防止や適切な対応のため、雇用管理上必要な措置を講じなければなりません(労働施策総合推進法30条の2第1項、改正労働施策総合推進法31条1項)。

マタニティハラスメント(マタハラ)

マタニティハラスメント(マタハラ)」とは、職場における妊娠・出産・育児等に関する言動により、女性労働者の就業環境を害することをいいます。次の①②をいずれも満たす言動がマタハラに当たります。

マタハラの要件

① 職場において行われる、女性労働者に対する次の事項に関する言動であること
・妊娠
・出産
・健康管理措置の請求、または当該措置を受けたこと
・妊娠を理由とする就業制限
・軽易な業務への転換
・時間外労働の制限
・休日労働の制限
・深夜労働の制限
・産前産後休業の請求、取得
・育児時間の請求、取得
・妊娠または出産に起因する症状により、労務の提供ができず、または労働能率が低下したこと
・子の養育に関する制度や措置(育児休業や子の看護等休暇など)の利用

② 女性労働者の就業環境を害する言動であること
(例)
妊娠を申し出た女性労働者に対して「いつ退職する予定なのか」と聞いた。
育児休業の取得を不当に拒否した。

事業主はマタハラの防止や適切な対応のため、雇用管理上必要な措置を講じなければなりません(男女雇用機会均等法11条の3第1項、育児介護休業法25条1項)。

なお、子の養育に関する制度や措置の利用に関する言動により、男性労働者の就業環境を害することは「パタニティハラスメント(パタハラ)」と呼ばれています。企業はパタハラについても、その防止や適切な対応のため、雇用管理上必要な措置を講じなければなりません(育児介護休業法25条1項)。

ケアハラスメント(ケアハラ)

ケアハラスメント(ケアハラ)」とは、家族の介護に関する制度・措置の利用に関する言動により、労働者の就業環境を害することをいいます。次の①②をいずれも満たす言動がケアハラに当たります。

ケアハラの要件

① 職場において行われる、家族の介護に関する制度または措置(介護休業や介護休暇など)の利用に関する言動であること

② 労働者の就業環境を害する言動であること
(例)
正当に介護休業を申し出た労働者に対して「そんなに休まれたら迷惑だ」などと嫌味を言った。
介護休業の取得を不当に拒否した。

事業主はケアハラの防止や適切な対応のため、雇用管理上必要な措置を講じなければなりません(育児介護休業法25条1項)。

カスタマーハラスメント(カスハラ)

カスタマーハラスメント(カスハラ)」とは、職場において行われる顧客等の言動であって、社会通念上許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境を害することをいいます。次の①~③をいずれも満たす言動がカスハラに当たります。

カスハラの要件

① 職場において行われる顧客等の言動であること
※顧客等:顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者

② 労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えていること

③ 労働者の就業環境を害する言動であること
(例)
従業員に対して土下座を強要した。
店内で大声を上げて騒いだ。
店員に対して無償でサービスを提供するよう理不尽に要求した。

2026年10月以降、事業主はカスハラの防止や適切な対応のため、雇用管理上必要な措置を講じなければなりません(改正労働施策総合推進法33条1項)。

企業が取り組むべきハラスメント対策

職場におけるハラスメントを防止するため、企業が取り組むべき対策の主な内容は次のとおりです。自社の状況に適した対策を講じてください。

(1) ハラスメント防止に関する方針の明確化と周知・啓発
(2) ハラスメントに関する相談・対応体制の整備
(3) 従業員同士のコミュニケーションの円滑化
(4) ハラスメント発生時の迅速・適切な対応

ハラスメント防止に関する方針の明確化と周知・啓発

企業としてハラスメントを許容しない姿勢を明確に示すことが重要です。就業規則社内規程に方針を定めるとともに、研修社内広報などを通じて従業員に対する周知・啓発を行い、ハラスメントを許さない職場風土を醸成しましょう。

ハラスメントに関する相談・対応体制の整備

ハラスメントの被害を受けた従業員が、いつでも相談できる窓口を整備しておきましょう。また、実際にハラスメントが発生した際の対応手順や注意点などをマニュアル化しておくことも有効です。

相談窓口の設置に当たっては、特に次のポイントに留意してください。

① 相談窓口では、さまざまなハラスメントを一元的に取り扱う
② 相談者のプライバシー保護に配慮すべき
③ 相談者を不利益に取り扱ってはならない

相談窓口では、さまざまなハラスメントを一元的に取り扱う

ハラスメントは、複数の種類が重なって生じることもあり得ます。そのため相談窓口では、パワハラ・セクハラ・マタハラ・パタハラ・ケアハラ・カスハラなど、さまざまな種類のハラスメントを一元的に取り扱うことが望ましいです。

相談者のプライバシー保護に配慮すべき

相談内容や調査で得られた情報が無関係の従業員や外部者に漏れると、相談者が二次被害を受けるおそれがあります。相談や調査を担当する者には守秘義務を徹底させ、必要な範囲を超えて情報を共有しないなど、プライバシー保護に十分配慮した運用を行いましょう。

相談者を不利益に取り扱ってはならない

ハラスメントの相談や調査への協力を理由として、降格や解雇などの不利益な取扱いをすることは違法です。相談者に対する不利益な取扱いは決して行わない旨を明確化したうえで、従業員に対してもその旨を周知しましょう。

従業員同士のコミュニケーションの円滑化

ハラスメントは、従業員間における相互理解の不足や、コミュニケーションの欠如が原因で発生することも少なくありません。定期的な面談や社内交流の機会を設け、従業員同士が気軽に意見交換できる環境を整えることが、ハラスメントの予防に繋がります。

ハラスメント発生時の迅速・適切な対応

ハラスメントの相談を受けた場合は、速やかに調査を行って事実関係を正しく把握しましょう。被害者を加害者から引き離すなど、職場で安心して過ごせる環境を整えることも大切です。

ハラスメントの事実が認められる場合は、加害者に対する処分再発防止策を検討・実施します。
特に加害者に対する懲戒処分は、ハラスメントの性質・態様に見合ったものとすることが大切です。重すぎる懲戒処分は無効になり得るので、事実関係と法律のルールを踏まえて慎重に検討してください。

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参考文献

厚生労働省ウェブサイト「職場におけるハラスメントの防止のために」