【東京高判令和7年6月6日】
原子力発電所事故について、
取締役らの具体的な予見可能性と
損害賠償責任が否定された事例
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- この記事のまとめ
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東京高裁令和7年6月6日判決は、東京電力株式会社(東電)の株主らが、福島第一原子力発電所事故について、事故当時の取締役らの責任を追及した株主代表訴訟に関するものです。株主らは、取締役らが大規模津波の襲来による過酷事故(=原子炉から放射性物質を大量に放出する事故)の発生を予見し得たにもかかわらず、必要な津波対策を講じなかったと主張して、東電に生じた損害の賠償を求めました。
東京高裁は、取締役らの具体的な予見可能性を否定し、株主らの損害賠償請求を退けました。その理由として東京高裁は、株主らが予見可能性の根拠として示した長期評価の見解等が、具体的な予見可能性を基礎づけるものとして必ずしも十分でなかった点などを挙げています。
本件では「被害者救済」という結論ありきではなく、あくまでも取締役らに具体的な予見可能性があったか否かについて丁寧な検討を行った点が注目されます。
ただし、企業の取締役においては、事故などの不祥事を起こすことがないよう、十分な注意を払って経営判断を行うことが求められます。特に科学的知見が一定程度確立し、社会的にも具体的な対策が期待される段階に至れば、事故予防等の対策を怠ると取締役としての責任を問われ得る点に注意が必要です。
※この記事は、2025年12月25日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
事案の概要
本件は、東京電力株式会社(東電)の株主らが、福島第一原子力発電所事故について、事故当時の取締役らが善管注意義務に違反したとして、東電に生じた損害の賠償を求めた株主代表訴訟です。
株主らは、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震およびこれに伴う津波によって原発事故が発生したことにつき、取締役らは、事故発生以前から大規模津波が襲来して過酷事故(=原子炉から放射性物質を大量に放出する事故)が発生することを予見し得たにもかかわらず、必要な津波対策を講じなかったと主張しました。
その結果、廃炉費用・被災者への損害賠償・除染費用など巨額の損害が東電に発生したとして、取締役らに対して合計20兆円を超える損害賠償を求めました。
原審の東京地裁は、一部の取締役について責任を認め、合計13兆3210億円もの損害賠償を命じました。これに対し、被告の取締役らと原告の株主らの双方が控訴しました。
控訴審では、取締役らに「過酷事故を防止すべき津波の予見可能性」があったか否か、ひいては善管注意義務違反が成立するかが中心的争点となりました。












