2022年(令和4年)に施行される法改正のまとめ一覧!
法改正の内容を分かりやすく解説

この記事のまとめ

2022年も、様々な法律の改正法施行が予定されています。

企業の法務担当者の方は、自社のビジネスに関連する法改正の内容を理解し、改正法対応を早めに進めていくことが大切です。

この記事では、2022年中に施行予定となっている、主な法改正の概要を解説します。

ヒー

2022年はどんな法改正があるのでしょうか?

ムートン

2022年もいろいろな法改正がありますよ。企業や法務の仕事に影響の大きい法改正もあるので、この記事で内容を把握しておきましょう!

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 電子帳簿保存法…電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
  • 個人情報保護法…個人情報の保護に関する法律
  • 育児・介護休業法…育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
  • 労働施策総合推進法…労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
  • パワハラ防止指針…事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針
  • 女性活躍推進法…女性の職業生活における活躍の推進に関する法律
  • プロバイダ責任制限法…特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律
  • 宅建業法…宅地建物取引業法

(※この記事は、2022年1月27日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。)  

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2022年(令和4年)施行予定の主な法改正一覧

2022年に施行予定の法改正の中から、主に、企業法務の実務や事業に影響を与える可能性のあるものについて、ご紹介します。

2022年に改正法施行が予定されている主な法律

✅電子帳簿保存法(2022年1月1日施行)
✅著作権法(2022年1月1日等施行)
✅個人情報保護法(2022年4月1日施行)
✅特許法(2022年4月1日等施行)
✅育児・介護休業法(2022年4月1日、10月1日施行)
✅労働施策総合推進法(2022年4月1日施行)
✅女性活躍総合推進法(2022年4月1日施行)
✅民法(2022年4月1日施行)
✅宅建業法(2022年5月18日までに施行)
✅公益通報者保護法(2022年6月11日までに施行)
✅厚生年金保険法・健康保険法(2022年10月1日施行)
✅プロバイダ責任制限法(2022年10月27日までに施行)

電子帳簿保存法改正|電子領収書の保管方法の変更等(2022年1月1日施行)

2022年1月1日より、改正電子帳簿保存法が施行されています。

電子帳簿保存法では、請求書・領収書・契約書などの帳簿関連書類を、以下の3つの方法により電子的に保存することを認めています。

電子帳簿保存法上の電子保存方法

✅電子帳簿等保存
→最初から電子的に作成した帳簿等を、そのまま電子保存する

✅スキャナ保存
→紙で受領・作成した書類を、スキャンして画像データとして保存する

✅電子取引の電子保存
→メールやインターネット上からのダウンロードを通じて交付・受領した書類を、そのまま電子保存する

上記のうち、「電子取引」によって交付・受領した書類は、従来であれば印刷して紙で保管することも認められていました。しかし改正電子帳簿保存法では、電子取引によって受領した書面の印刷保管は不可とされ、電子データとして保管することが義務付けられました

ヒー

「『電子取引』によって交付・受領した書類」とは、具体的にはどんな書類ですか?

ムートン

請求書・領収書・契約書・注文書・見積書・送り状などですね。

ただし2021年12月に方針が転換され、2023年12月31日までは経過措置として、電子取引で受領した書類についても印刷保管が許容されます。企業は、経過措置の期間を踏まえつつ、早めに電子保存の体制・システムを整備する必要があるでしょう。

そのほかにも、電子帳簿保存法については様々な改正がなされています。詳しくは、以下の記事で解説しています。

著作権法改正|放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化等(2022年1月1日施行)

2022年1月1日より、改正著作権法が施行されています。

改正著作権法では、主にテレビとインターネットの間で行われる「同時配信」「追っかけ配信」「見逃し配信」について、権利処理の手続が簡素化されました。この改正は、視聴者から見た利便性を第一としつつ、放送事業者やクリエイターの利益にもバランスよく配慮された権利処理を、迅速・円滑に実現することを目的としています。

また、一定の措置を講ずれば、図書館蔵書の一部分を著作権者の許諾なく、電子メール等で利用者に送信することも可能となる予定です(従来は、紙媒体での提供のみ可能でした)。この改正により、図書館サービスの利便性向上も期待されます。(こちらは、2022年6月1日までに施行予定)

個人情報保護法改正|本人の権利保護・事業者の責務の強化(2022年4月1日施行)

2022年4月1日より、改正個人情報保護法が施行される予定です。

改正個人情報保護法では、以下の5点に関連して、多岐にわたるルール変更が行われます。

改正個人情報保護法の5つのポイント

✅本人の権利保護が強化される
✅事業者の責務が追加される
✅企業の特定分野を対象とする団体の認定団体制度が新設される
✅データの利活用が促進される
✅外国の事業者に対する、報告徴収・立入検査などの罰則が追加される

改正個人情報保護法の詳細については、大きな改正となっていることから、以下の記事で別途解説しています。

特許法改正|模倣品流入への規制強化・第三者意見募集制度の導入等(2022年4月1日施行)

2022年4月1日より、改正特許法が段階的に施行される予定です。

本改正は、新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、デジタル化やリモートワークが進んだことを契機として、以下の3つを柱として行われるものです。

具体的には、海外からの模倣品流入への規制が強化され、海外事業者による模倣品の輸入行為が商標権(意匠権)侵害となることが明確化されました。

また、特許権侵害訴訟において、第三者意見募集制度(裁判所が、弁理士等の第三者から意見を募集できる制度)も導入されます。

特許法改正の詳細については、以下の記事で解説しています。

育児・介護休業法改正|柔軟な育児休業取得のための法整備(2022年4月1日、10月1日施行)

2022年4月1日と10月1日に、改正育児・介護休業法が段階的に施行される予定です。

今回の法改正では、育児休業の取得率が低迷している男性を主なターゲットとして、育児休業を取得しやすくなるようなルールの整備が目指されています。

改正育児・介護休業法のポイント

<2022年4月1日施行予定>
✅「育児休業を取得しやすい雇用環境の整備」「妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置」の義務付け
→事業主は、以下いずれかの措置を行うことが義務化
①育児休業に関する研修の実施
②相談窓口の設置
③自社の育休取得の事例を労働者へ提供
④育児休業制度等の方針の周知
→また、事業主は本人、配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、育児休業の取得意向の確認等を、個別に行うことが義務化

✅有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
→継続雇用期間1年未満の有期雇用労働者も、育児休業の取得が可能に(労使協定により別段の定めがある場合は、例外的に認められない)

<2022年10月1日施行予定>
✅出生時育児休業の新設
→出生後8週間以内に最長4週間の追加育休取得が可能に(2週間前までの申出が必要)、育休中の就業が可能に

✅育児休業の分割取得
→最大2回まで分割取得が可能に

改正育児・介護休業法も、大きな改正となっていることから、以下の記事で詳しく解説しています。

労働施策総合推進法改正|中小企業でもパワハラ防止措置が義務化(2022年4月1日施行)

労働施策総合推進法30条の2から30条の8の規定は「パワハラ防止法」とも呼ばれており、事業者に対して、職場でのパワハラを防止するための措置を講ずることを義務付けています。

ヒー

パワハラの要件ってなんでしたっけ・・・?

ムートン

パワハラは、以下の3つの要素をすべて満たす、職場における言動のことです。
・優越的な関係を背景としていること
・業務上必要かつ相当な範囲を超えていること
・労働者の就業環境を害すること
「パワーハラスメントとは? 定義と6つの類型を解説!」で、分かりやすく解説しています。

「パワハラ防止法」は、既に2020年6月1日から大企業向けに施行されていますが、2022年4月1日より、中小企業向けにも施行される予定です。各事業者は、厚生労働省が定めるパワハラ防止指針に沿って、職場におけるパワハラへの対策を講ずる必要があります。

中小企業がとるべきパワハラ対策・改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の詳細については、以下の記事で解説しています。

女性活躍推進法改正|行動計画策定・公表義務の対象範囲が拡大(2022年4月1日施行)

女性活躍推進法は、自社における女性活躍推進のための行動計画の策定と、行動計画の社内周知・外部公表を義務付けています。

従来、義務付けの対象となるのは、常時雇用労働者が301人以上の企業のみでしたが、2022年4月1日施行予定の改正女性活躍推進法では、常時雇用労働者が101人以上300人以下の中小企業にも拡大されます。

ヒー

行動計画って、具体的にはどのような内容を策定すればいいんですか?

ムートン

まず、自社の女性活躍に関する状況を把握し、女性の離職率が高い・管理職の女性割合が低いなどの課題を洗い出します。その後、「いつまでに、何を達成するか」といった数値目標を掲げて、どんな取組をしていくかを考えます。
行動計画のつくり方については、厚生労働省が「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画策定かんたんガイド=令和4年(2022年)4月1日義務化 対応版」で、分かりやすく解説していますよ。

民法改正|成年年齢が20歳から18歳へ引下げ(2022年4月1日施行)

2022年4月1日より、民法上の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられます。成年年齢の改正は、1896年の民法制定以降、初めてのことです。

公職選挙法の選挙権年齢が18歳と定められるなど、国政上の重要な事項の判断に関して、18~19歳を大人として扱う政策が進められてきたこと、世界的にも成年年齢を18歳とするのが主流であることから、今回の改正が行われました。

成年年齢が20歳から18歳に引き下げられることによる主な影響は、以下のとおりです。

成年年齢の引下げによる主な影響

18歳になると……
✅親権から離脱するため、自分の住む場所、進学先や就職などの進路を自分で決められる
✅親の同意がなくても様々な契約(携帯電話の購入、クレジットカードの作成、自動車の購入、賃貸マンションの契約など)を締結できるようになる
✅10年有効パスポートが取得できるようになる
✅公認会計士・司法書士・医師・薬剤師などの国家資格を取得できるようになる
✅性同一性障害の方が、性別の取扱いの変更審判を受けられるようになる

なお、成年年齢を18歳に引き下げることと併せて、結婚可能年齢が男女とも18歳に統一されます(従来は男性18歳、女性16歳)。

ただし、以下の行為については、民法の成年年齢引下げにかかわらず、従来どおり20歳にならなければ行うことができません。

引き続き20歳以上の者にのみ認められる行為

✅飲酒
✅喫煙
✅公営ギャンブル(競馬・競輪・オートレース・競艇)の投票券購入
✅養子縁組(養親側)
✅大型・中型自動車免許の取得

宅建業法改正|押印義務の廃止・書面交付の電子化(2022年5月18日施行)

改正宅建業法は、2021年12月の時点では施行日未定ですが、2022年5月18日までに施行される予定です。

改正宅建業法では、主に以下の2点についてルールの変更が行われる予定です。

改正宅建業法の2つのポイント

✅押印義務の廃止
→以下の書面につき、宅地建物取引士の押印が不要に
・重要事項説明書
・宅地建物の売買契約・交換契約・賃貸借契約成立後の交付書面

✅書面交付の電子化
→以下の書面につき、電磁的方法による交付が可能に
・媒介契約・代理契約締結時の交付書面
・レインズ登録時の交付書面
・重要事項説明書
・売買契約・交換契約・賃貸借契約成立時の交付書面(37条書面)

改正宅建業法の詳細については、以下の記事で解説しています。

公益通報者保護法改正|通報条件の緩和・通報者の保護強化等【2022年6月1日施行】

改正公益通報者保護法は、2022年6月1日から施行される予定です。

改正公益通報者保護法では、事業者の不祥事を実効的に防止すべく、内部通報をより行いやすくするためのルール変更が予定されています。

改正公益通報者保護法の6つのポイント

✅内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備義務
→公益通報対応業務を担当する者の設置、内部通報窓口の設置等、適切な体制の整備が義務化(従業員数300人以下の中小企業は努力義務)

✅内部調査に従事する者の情報の守秘義務
→内部調査等に従事する者は、正当な理由なく、「通報者を特定させる情報」を漏えいしてはならないという守秘義務が新設

✅行政機関等への通報の要件緩和
→行政機関・報道機関等への内部通報条件をそれぞれ緩和

✅保護される通報者の範囲を拡大
→保護対象者の範囲を(現役労働者に加えて)役員、1年以内の退職者まで拡大

✅保護される通報の範囲を拡大
→保護対象となる通報の範囲を、行政罰に該当する行為にまで拡大(従来は刑事罰に該当する行為のみ)

✅保護の内容を拡大
公益通報者の保護の内容に、内部通報に伴う損害賠償責任の免除が追加(従来は内部通報を理由とした解雇の無効、降格・減給などの不利益取扱いの禁止等のみ)

改正公益通報者保護法の詳細については、以下の記事で解説しています。

厚生年金保険法・健康保険法改正|社会保険の適用対象拡大(2022年10月1日施行)

2022年10月1日から、「特定適用事業所」で働くパート・アルバイト等の短時間労働者は、以下の要件をすべて満たす場合、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。

短時間労働者の被保険者要件(健康保険・厚生年金保険)

✅週の所定労働時間が20時間以上であること
✅雇用期間が2か月を超えて見込まれること
✅賃金の月額が88,000円以上であること
✅学生でないこと

「特定適用事業所」とは、従来は被保険者(短時間労働者を除く)の総数が、常時「500人」を超える事業所を意味していました。2022年10月1日に施行予定の改正厚生年金保険法・改正健康保険法では、特定適用事業所の範囲が拡大されます。

具体的には、被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時「100人」を超える事業所が「特定適用事業所」となります。新たに特定適用事業所となった場合、前述の要件を満たす短時間労働者を社会保険に加入させる義務を負います。

プロバイダ責任制限法改正|手続の簡略化・ログイン時情報の開示請求を明文化【2022年10月1日施行】

改正プロバイダ責任制限法は、2021年12月の時点では施行日未定ですが、2022年10月27日までに施行される予定です。

プロバイダ責任制限法は、誹謗中傷等の投稿が行われた際の対抗手段として、被害者がプロバイダ(ウェブサイト管理者・インターネット接続業者)に対して、投稿者の情報の開示を求める「発信者情報開示請求」を認めています。

しかし、現行のプロバイダ責任制限法では、ウェブサイト管理者・インターネット接続業者のそれぞれに対して、2段階で発信者情報開示請求を行う必要があるケースが多数です。いずれも裁判手続による必要があり煩雑なため、被害者保護に欠ける点が指摘されていました。

改正プロバイダ責任制限法では、従来2段階の裁判手続によらねばならなかった発信者情報開示請求を、1回の非訟手続によって行うことができるようにして、被害者側の負担軽減を図っています

さらに、ログイン時情報の発信者情報開示請求についても、一定の条件を付しつつ、明文で認められるようになります。

改正プロバイダ責任制限法の詳細については、以下の記事で解説しています。

この記事のまとめ

ヒー

2022年もいろいろな法改正があるんですね。

ムートン

そうですね。電子帳簿保存法改正・個人情報保護法改正など、企業に影響が大きい法改正がいくつかあるので、各改正の内容はきちんと把握しておきましょう!

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参考文献

内閣府「電子帳簿保存法が改正されました」

文化庁ウェブサイト「令和3年通常国会 著作権法改正について」

個人情報保護委員会ウェブサイト「令和2年 改正個人情報保護法について」

厚生労働省ウェブサイト「育児・介護休業法について」

厚生労働省ウェブサイト「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」

厚生労働省ウェブサイト「女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)」

法務省ウェブサイト「民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について」

消費者庁ウェブサイト「公益通報者保護法と制度の概要」

日本年金機構ウェブサイト「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」

厚生労働省ウェブサイト「社会保険適用拡大特設サイト」

厚生労働省ウェブサイト「【労働者数101人以上~300人以下の事業主の皆様へ】令和4年4月1日改正女性活躍推進法の義務化について」