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食品コンプライアンスの新展開 ―食品衛生法・食品表示法改正に基づくリコール情報の届出義務化―

坂尾佑平 弁護士

坂尾佑平 弁護士

2021/09/15 (公開:2021/08/27)

この記事を書いた人

坂尾佑平 弁護士.jpg

弁護士 坂尾 佑平

三浦法律事務所 パートナー

University of Pennsylvania Law School(LL.M. with Wharton Business & Law Certificate)修了。
2012年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)、ニューヨーク州弁護士、公認不正検査士(CFE)、中級食品表示診断士。長島・大野・常松法律事務所、Wilmer Cutler Pickering Hale and Dorr 法律事務所(ワシントンD.C.)、三井物産株式会社法務部出向を経て、2021年3月より現職。 危機管理・コンプライアンス、コーポレートガバナンス、倒産・事業再生、紛争解決等を中心に、広く企業法務全般を取り扱う。

この記事のまとめ

昨今、食品業界の方々がテイクアウトメニューの新設やインターネット販売の利用など、創意工夫を凝らした新しい取組みを行っていることがニュース等で大きく取り上げられています。

食品事業に関して新しい取組みを開始する際には、「食品コンプライアンス」の重要性をしっかりと認識する必要があります。というのも、食品は消費者の生命や健康に直結するものであり、ひとたび健康被害、異物混入、産地偽装、表示義務違反等の不祥事が発生した際には、事業者は法的責任を負うのみならず、甚大なレピュテーション・ダメージを被る可能性があります。また、食品に関する法令等は頻繁に改正がなされているところ、事業者は、最新の法規制を確実に遵守すべく細心の注意を払って対応することが求められます。

今回は、数ある食品コンプライアンスに関連する制度のうち、食品衛生法及び食品表示法に基づく食品等の自主回収報告制度について、リコール情報の届出義務化を中心に解説していきます。

食品等の自主回収報告制度の概要

食品衛生法及び食品表示法の改正により食品等の自主回収報告制度が新設され、2021年(令和3年)6月1日より施行されています。食品衛生法に基づく制度については厚生労働省のウェブサイト(「自主回収報告制度(リコール)に関する情報」)、食品表示法に基づく制度については消費者庁のウェブサイト(「食品表示法の一部を改正する法律(平成30年法律第97号)」)にて各種情報提供がなされています。

自主回収報告制度は、食品等のリコール情報を行政が確実に把握し、的確な監視指導や消費者への情報提供につなげ、食品による健康被害の発生を防止するためのものとされており、概要、以下のような流れが想定されています。

①営業者/食品関連事業者等(定義は後述のとおりです。)が、食品等の食品衛生法違反若しくはそのおそれ、又はアレルゲン等の安全性に関わる食品表示法違反を探知し、自主回収(リコール)に着手した場合には、都道府県等に対して「届出」を行う。

②届出を受けた都道府県等が健康被害発生等を考慮したクラス分類を行った上で、厚生労働省又は消費者庁に対して「報告」を行う。

③厚生労働省又は消費者庁にてリコール情報を一元管理し、消費者に対して商品名・回収理由・想定される健康被害等の情報の「公表」を行う。

本稿のメインテーマとなっているリコール情報の届出義務は、上記の流れのうち、①の「届出」に関するものです。詳細は食品衛生法及び食品表示法で各々定められていますので、下記第2及び第3にて解説します。届出の方法については、原則としてオンライン上で入力を行うこととされています。

厚生労働省の2021年(令和3年)5月31日付け「 食品等自主回収(リコール)報告制度の創設に関するQ&A」問5への回答では、オンラインによる届出を原則とした上で、「保健所等に紙で届出された場合は、各保健所等で入力し、国に対してオンラインによる報告をお願いします。」と記載されています。

②については、健康被害発生の可能性等を考慮してクラス分類がなされるとされており、以下のとおり、食品衛生法ではCLASS ⅠからⅢの3段階、食品表示法ではCLASS Ⅰ・Ⅱの2段階の分類とされています(厚生労働省リーフレット「事業者の皆さまへ」)。

  食品衛生法 食品表示法
CLASS Ⅰ 喫食により重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る可能性が高い場合(腸管出血性大腸菌に汚染された生食用野菜など) 喫食により直ちに消費者の生命又は身体に対する危害の発生の可能性が高いもの
CLASS Ⅱ 喫食により重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る可能性が低い場合(一般細菌数などの成分規格不適合の食品など) 喫食により消費者の生命又は身体に対する危害の発生の可能性があるものであってCLASS Ⅰに分類されないもの
CLASS Ⅲ 喫食により健康被害の可能性がほとんど無い場合(添加物の使用基準違反など)  

③については、厚生労働省のウェブサイト(「食品衛生申請等システム」)において既に回収事案が公表されており、「公開回収事案検索」のページにおいて、食品衛/生法に関するもののみならず、食品表示法に関するものも一般の消費者が検索・閲覧可能となっています。

改正食品衛生法に基づく自主回収の届出

改正食品衛生法の概要

食品衛生法は、食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もって国民の健康の保護を図ることを目的とする法律であり、1947年(昭和22年)に制定されて以来改正を重ねています。

2018年(平成30年)6月13日に公布されました「食品衛生法等の一部を改正する法律」による最新の改正は、食品等の自主回収報告制度のほかにも、以下のような重大な内容を多く含んでいます。

(ⅰ) 大規模又は広域に及ぶ「食中毒」への対策の強化
(ⅱ) 「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理」の制度化
(ⅲ) 特定の食品による「健康被害情報の届出」の義務化
(ⅳ) 「食品用器具・容器包装」のポジティブリスト制度の導入
(ⅵ) 「輸出入」食品の安全証明の充実
など。

なお、(ⅱ)のHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)とは、厚生労働省ウェブサイトにおいて、「食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法原料の受け入れから製造・調理、製品の出荷までの一連の工程や貯蔵、販売において、食中毒などの健康被害を引き起こす可能性のある危害要因を科学的根拠に基づいて管理する方法」と説明されています。

自主回収の届出の対象

食品衛生法第58条第1項では、営業者は、①同法第6条、第10条から第12条まで、第13条第2項若しくは第3項、第16条、第18条第2項若しくは第3項又は第20条の規定に違反し、又は違反するおそれがある場合、又は同法第9条第1項又は第17条第1項の規定による禁止に違反し、又は違反するおそれがある場合であって、②その採取し、製造し、輸入し、加工し、若しくは販売した食品若しくは添加物又はその製造し、輸入し、若しくは販売した器具若しくは容器包装を回収するとき(同法第59条第1項又は第2項の規定による命令を受けて回収するとき、及び食品衛生上の危害が発生するおそれがない場合として厚生労働省令・内閣府令で定めるときを除く。)は、厚生労働省令・内閣府令で定めるところにより、遅滞なく、自主回収の届出をしなければならないと定められています。

この「営業者」は、食品衛生法では営業を営む人又は法人」と定義されており(同法第4条第8項)、「営業」は「業として、食品若しくは添加物を採取し、製造し、輸入し、加工し、調理し、貯蔵し、運搬し、若しくは販売すること又は器具若しくは容器包装を製造し、輸入し、若しくは販売することをいう。ただし、農業及び水産業における食品の採取業は、これを含まない。」と定められています(同法第4条第7項)。

厚生労働省のウェブサイト(「自主回収報告制度(リコール)に関する情報」)では、上記①に関し、届出の対象は「食品衛生法に違反する食品等」「食品衛生法違反のおそれがある食品等」(違反食品等の原因と同じ原料を使用している、製造方法、製造ラインが同一であることで汚染が生じている等として営業者が違反食品等と同時に回収する食品等)であると簡潔に説明しています。

自主回収の届出の対象外となる場合

自主回収の届出義務については、①食品衛生法第59条第1項又は第2項の規定による命令を受けて回収するとき、及び②食品衛生上の危害が発生するおそれがない場合として厚生労働省令・内閣府令で定めるときは、例外的に除外するとされています。

上記②については、「食品衛生法第五十八条第一項に規定する食品衛生上の危害が発生するおそれがない場合等を定める命令」第1条において、営業者が採取し、製造し、輸入し、加工し、若しくは販売した食品若しくは添加物又は製造し、輸入し、若しくは販売した器具若しくは容器包装の回収に着手する時点において、(ⅰ)当該食品等が不特定かつ多数の者に対して販売されたものでなく、容易に回収できることが明らかなとき、又は(ⅱ)当食品等を消費者が飲食の用に供しないことが明らかなときに該当する場合とすると定められています。

厚生労働省のウェブサイト(「報告対象から適用除外される場合(共同命令第1条関係)」)では、(ⅰ)(ⅱ)の具体例が示されています。

(ⅰ)の具体例としては、(a)地域の催事で販売された焼きそばについて、催事場内での告知等で容易に回収が可能な場合、(b)部外者が利用しない企業内の売店で販売された弁当であって、館内放送等で容易に回収が可能な場合、及び(c)通信販売により会員のみに限定販売されている食品であって、顧客に対して個別に連絡することで容易に回収が可能な場合が列挙されており、(ⅱ)の具体例としては、(a)食品等が営業者間の取引に留まっており、卸売業者の倉庫に保管されている場合、及び(b)食品等が消費期限又は賞味期限を超過している場合(注:期限として不当に長期の期間を表示した場合を除く。)が列挙されています。

自主回収の届出事項

自主回収の届出を行う場合には、以下の事項を届け出なければならないと定められています(「食品衛生法第五十八条第一項に規定する食品衛生上の危害が発生するおそれがない場合等を定める命令」第2条)。

1 営業者の氏名及び住所(法人にあっては、その名称及び主たる事務所の所在地)
2 営業者が回収の事務を他の者に指示し、又は委託した場合には当該者の氏名及び住所(法人にあっては、その名称及び主たる事務所の所在地)
3 当該食品等の商品名及び一般的な名称、当該食品等に関する表示の内容その他の当該食品等を特定するために必要な事項
4 当該食品等が食品衛生法第58条第1項各号のいずれかに該当すると判断した理由
5 当該食品等の回収に着手した時点において判明している販売先、販売先ごとの販売日及び販売数量
6 当該食品等の回収に着手した年月日
7 当該食品等の回収の方法
8 当該食品等が飲食の用に供されたことに起因する食品衛生上の危害の発生の有無

自主回収の届出に関する罰則

営業者が上記届出をせず、又は虚偽の届出をした場合には50万円以下の罰金に処する旨が定められています(食品衛生法第85条第3号)。

改正食品表示法に基づく自主回収の届出

改正食品表示法の概要

食品表示法は、2015年(平成27年)4月1日に施行された比較的新しい法律であり、食品衛生法、JAS法 、健康増進法で各々規定されていた食品表示制度を統合したものです。 2018年(平成30年)12月14日に公布されました「食品表示法の一部を改正する法律」に基づく最新の改正により、食品の自主回収報告制度が新設されました。

なお、JAS法について、2015年(平成27年)4月1日の食品表示法の施行に伴い、食品の表示基準等に関する規定がJAS法から削除され、JAS法の法律名が「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」から「農林物資の規格化等に関する法律」に変更されました。

自主回収の届出の対象

食品表示法第10条の2第1項では、食品関連事業者等が「食品表示法第六条第八項に規定するアレルゲン、消費期限、食品を安全に摂取するために加熱を要するかどうかの別その他の食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項等を定める内閣府令」(以下「6条8項府令」といいます。)で定める事項について食品表示基準に従った表示がされていない食品の販売をした場合において、当該食品を回収するとき(同法第6条第8項の規定による命令を受けて回収するとき、及び消費者の生命又は身体に対する危害が発生するおそれがない場合として内閣府令で定めるときを除く。)は、内閣府令で定めるところにより、遅滞なく、自主回収の届出をしなければならない、と定められています。

この「食品関連事業者等」とは、食品表示法で、(ⅰ) 「食品の製造、加工(調整及び選別を含む。)若しくは輸入を業とする者(当該食品の販売をしない者を除く。)又は食品の販売を業とする者」(食品関連事業者)、又は(ⅱ) 食品関連事業者のほか、食品の販売をする者のいずれかに該当する者をいう、と定義されています(同法第2条第3項)。

上記事項については、6条8項府令第1条において、(ⅰ)名称、(ⅱ)保存の方法、(ⅲ)消費期限又は賞味期限、(ⅳ)アレルゲン、(ⅴ)L-フェニルアラニン化合物を含む旨、(ⅵ)指定成分等含有食品に関する事項、(ⅶ)特定保健用食品を摂取する上での注意事項等が列挙されています(更に食品ごとの個別事項も列挙されています)。

自主回収の届出の対象外となる場合

自主回収の届出義務については、①食品表示法第6条第8項の規定による命令を受けて回収するとき、並びに②当該食品の販売先(消費者を含む。)が特定される場合であって、当該食品の販売をした食品関連事業者等が当該食品の販売先に直ちに連絡することにより、当該食品が摂取されていないこと、及び摂取されるおそれがないことが確認されたときは例外的に除外するとされています。

消費者庁の2021年(令和3年)2月26日付け通知「食品表示法第10条の2第1項の規定に基づく食品の自主回収の届出について」では、上記②の具体例として、(ⅰ)地域の食品製造事業者が、同一地区の個人経営の小売店に消費期限を付していない食品を販売したが、当該製造事業者から当該小当売店に連絡を行い、当該小売店が消費者への販売前に販売を取りやめた場合であって、かつ、当該小売店の職員の摂取についても想定されないとき、(ⅱ)地域の個人経営の小売店が連絡先を知っている消費者に消費期限を付していない食品を販売したが、直ちに当該消費者に連絡し、当該消費者が当該食品を返品するなどして摂取が想定されないときが列挙されています。

自主回収の届出事項

自主回収の届出を行う場合には、以下の事項を届け出なければならないと定められています(6条8項府令第5条第1項)。

1 食品関連事業者等の氏名又は名称及び住所
2 食品関連事業者等が回収の事務を他の者に指示し、又は委託した場合には当該者の氏名又は名称及び住所
3 当該食品の商品名及び名称、当該食品に関する表示の内容その他の当該食品を特定するために必要な事項
4 当該食品が食品表示法第10条の2第1項に該当すると判断した理由
5 当該食品の回収に着手した時点において判明している販売先、販売先ごとの販売日及び販売数量
6 当該食品の回収に着手した年月日
7 当該食品の回収の方法
8 当該食品が摂取されたことに起因する消費者の生命又は身体に対する危害の発生の有無

自主回収の届出に関する罰則

食品関連事業者等が上記届出をせず、又は虚偽の届出をした場合には50万円以下の罰金に処する旨が定められています(食品表示法第21条第3号)。

実務上の留意点

以上を踏まえ、食品を取り扱う事業者としては、以下の点を留意することが重要であると考えられます。

安全面・衛生面の点検

第1に、食品衛生法上の「営業者」に該当する事業者は、食品の安全面・衛生面をしっかりと点検し、食品衛生法違反とならないよう、万全を期することが重要です。

上記のとおり、食品衛生法に基づく自主回収の届出は、食品衛生法の違反又はそのおそれが生じた場合に営業者が対応しなければならない制度ですが、営業者としては、そのような事態を発生させないよう、適切に法令遵守体制を構築するとともに、日々のオペレーションの中でも食品衛生法違反とならないよう安全面・衛生面に細心の注意を払う必要があります。

適正な食品表示の確認

第2に、食品表示法上の「食品関連事業者等」に該当する事業者は、食品表示に関するコンプライアンスを網羅的に見直すことも重要です。上記のとおり、食品表示法に基づく自主回収の届出は、食品表示法違反が発生した場合に営業者が対応しなければならない制度ですが、食品表示の内容については、食品表示基準等で詳細に定められており、適切に対応するためには周到な確認が必要です。

特に、新たな取組みを行う場合には、食品表示法に加えて、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)、不正競争防止法など食品表示に関わる他の法令についても抵触しないようチェックをする必要があります。正確かつ必要十分な食品表示は安全面・衛生面のチェックと並んで食品を取り扱う事業者にとって重要性の高いコンプライアンス事項であると考えられますので、対応の抜け漏れがないよう、丁寧に確認を行う必要があります。

自主回収に関する社内規程・フローの見直し

第3に、万が一自主回収を行わなければならない事態が発生した場合に冷静に対応できるよう、社内規程やインシデント発生時のフローを見直すことも肝要です。インシデントが発生した場合のフローを社内規程等で定めている事業者もいると思いますが、そのフローについても最新の法改正に合わせてアップデートする必要があります。特に自主回収届出の制度は上記フローに直接影響を与えるものですので、適切に対応できるように準備しておく必要があります。

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