取締役会の招集の流れとは?
招集権をもつ者・招集通知の
記載事項・例文などを解説!
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※この記事は、2023年2月1日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
取締役会とは
取締役会とは、全ての取締役で構成される合議体(機関)のことです(会社法362条1項)。取締役会では、会社の業務執行に関する意思決定などが行われます。
取締役会を開催するには、会社法のルールに従い、取締役会の招集権をもつ者が、適切な手続きを踏む必要があります。この記事では、取締役会を開催するために必要な招集手続について解説します。
取締役会の招集権をもつ者
まず、取締役会を招集する権限をもつ者について解説します。
取締役
取締役会を招集する権限をもつのは、原則として、取締役会の構成員である取締役です。そして、各取締役は、原則として、それぞれ自由に取締役会を招集できます(会社法366条1項本文)。例えば、いわゆる平取締役や、社外取締役も、原則として、自由に取締役会を招集できます。
ただし、定款や取締役会で、取締役会を招集する取締役を定めた場合、各取締役は、自由に取締役会を招集できなくなります。以下、具体的に説明します。
招集権をもつ取締役
まず、定款や取締役会で、取締役会を招集する取締役を定めたときは、当該取締役が取締役会を招集する権限をもち、当該取締役は取締役会を自由に招集できます(会社法366条1項ただし書)。
会社法の原則どおり、各取締役が自由に取締役会を招集できるとすると、
・同じ議題について何度も取締役会が招集される
・場合によっては同じ議題について矛盾する決議がされる
など、実務が煩雑になる可能性があります。
そのため、特に大会社など多くの会社では、取締役会を招集する取締役を定めることが多いです。
招集権をもたない取締役
一方、取締役会を招集する取締役として定められなかった取締役は、自由に取締役会を招集することはできません。
ただし、招集権限をもたない取締役も、招集権限をもつ取締役に対し、取締役会の目的である事項を示して、取締役会の招集を請求できます(会社法366条2項)。
そして、招集権限をもつ取締役に対して、取締役会の招集の請求をしたにもかかわらず、当該請求をした日から5日以内に、当該請求の日から2週間以内の日を取締役会とする招集通知が発せられない場合は、取締役会の招集の請求をした取締役は、自ら取締役会を招集できます(会社法366条3項)。
なお、適法な招集請求を受けたにもかかわらず、適時に取締役会の招集をしなかった取締役会の招集権限をもつ取締役は、任務懈怠責任を負うこととなり(会社法423条1項)、また解任の正当事由にもなると考えられています(会社法339条2項)。
その他の者|株主・監査役など
取締役以外にも、
・株主
・監査役
なども一定の場合は、取締役会を招集できます。
株主
まず、株主(監査役設置会社や委員会型の会社の株主を除きます)は、
・取締役が会社の目的の範囲外となる行為
・その他法令・定款に違反する行為
をしている、またはそのおそれがあるときは、取締役に対して、取締役会の目的である事項を示して取締役会の招集を請求できます(会社法367条1項・2項)。
そして、取締役会の招集を請求したにもかかわらず、当該請求をした日から5日以内に、当該請求の日から2週間以内の日を取締役会とする招集通知が発せられない場合は、取締役会の招集の請求をした株主は、自ら取締役会を招集できます(会社法367条3項、366条3項)。
監査役
また、監査役は、
・取締役が不正行為をしているとき
・そのおそれがあるとき
・法令・定款に違反する事実や著しく不当な事実があるとき
は、取締役に対し、取締役会の招集を請求できます(会社法383条2項)。
そして、取締役会の招集を請求したにもかかわらず、当該請求をした日から5日以内に、当該請求の日から2週間以内の日を取締役会の日とする招集通知が発せられない場合は、取締役会の請求をした監査役は、取締役会を招集できます(会社法383条3項)。
その他
その他、以下の者なども取締役会を招集できます(会社法399条の14、417条1項)。
・監査等委員会設置会社における、監査等委員会が選定する監査等委員
・指名委員会等設置会社における指名委員会等がその委員の中から選任する者
特別取締役による決議の定めがある場合
特別取締役による決議の定め(会社法373条1項)がある場合は、各取締役ではなく、各特別取締役が、特別取締役による取締役会の招集権限をもちます(会社法373条2項後段)。
また、特別取締役による取締役会については、
・定款や取締役会で招集権限をもつ取締役を定めること
・特別取締役以外の取締役や株主、監査役が取締役会の招集を請求すること
はできません(会社法373条2項後段・4項、383条4項)。
- 特別取締役による決議とは
-
取締役の人数が6人以上であり、かつ社外取締役がいる会社は、以下の2つの事項について、あらかじめ選定した3人以上の取締役(特別取締役)で決議(特別取締役の過半数の出席とその過半数の賛成)できる旨を、取締役会で定めることができる制度です(会社法373条1項)。
①重要な財産を処分することおよび譲り受けること(会社法362条4項1号)
②多額のお金を借りること(同項2号)例えば、取締役の人数が増えてきて迅速な意思決定が難しくなったような場合に、特別取締役による決議の定めをすることで、迅速な意思決定ができるようになります。
取締役会の招集手続
招集通知の作成・発送
取締役会を招集するにあたっては、原則、取締役会の1週間前までに、各取締役と各監査役に、招集通知を発する必要があります(会社法368条1項)。
ただし、この1週間という期間は、定款で定めることで短縮できます。定款に定めがない場合には、以下の場合を除き、取締役会の招集の日から1週間おかないと取締役会を開催できず、必要な決議や報告をできなくなりますので、定款で取締役会の招集期間を短縮することも多いです。
・取締役等全員の同意を得て取締役会の招集手続を省略する場合(会社法368条2項、「招集手続を要しない場合」参照)
・取締役全員が決議事項に書面等で同意することで取締役会の決議が省略される場合(会社法370条)
・取締役等全員に対して報告事項を通知することで取締役会への報告が省略される場合(会社法372条1項)
なお、取締役会の決議について、「特別の利害関係を有する取締役」は、議決に加われませんが(会社法369条2項)、当該「特別の利害関係を有する取締役」に対しても、招集通知を発する必要があります。
例えば、取締役会で審議・決議したい議題の中で、ある議題に関してのみ、特別の利害関係を有する取締役がいたとします。この場合、特別の利害関係を有する取締役は、利害関係のある議題の議決には参加できませんが、その他の議題には参加できます。そのため、当該「特別の利害関係を有する取締役」も含め招集通知を発することが必要です。
招集通知の発送はメールでも可能
取締役会開催にあたっては、期限までに各取締役に招集通知を発する必要があります。
もっとも、「招集通知」といっても、必ずしもきっちりとした書面を準備して郵送する必要はありません。各取締役にメールを送付する方法でも全く問題ありませんし、場合によっては口頭で招集通知をすることでも足ります
期間の数え方ですが、初日は参入しませんので(民法140条本文)、例えば、2023年1月23日に招集通知を発した場合、(招集通知の期間を短縮する定款の定めがなければ、)取締役会を開催できるのは、2023年1月31日になります。招集通知を発した日から、取締役会まで、中7日空けることが必要ということになります。
【期間の数え方】
招集通知の記載事項と例文
取締役会の招集通知には、必ず記載しなければならない法定の記載事項はありません。もっとも、会議の案内なので、最低限、開催日時と場所は記載されている必要があります。
その他、議題も、必ず招集通知に記載しなければならないわけではありませんが、各取締役などがしっかり準備できるようにするため、また、取締役会を効率的に運営できるようにするために、可能な範囲で、議題を記載する・関連する資料を添付するなどの対応をするほうが望ましいと考えられます。
なお、仮に、取締役会の招集通知に議題を記載していたとしても、取締役会では、招集通知に記載されていた議題以外の事項についても、審議・決議などをすることができます。
以下に、取締役会の招集通知のサンプルを掲載します。
- 取締役会の招集通知のサンプル
-
○年○月○日
取締役各位
監査役各位東京都○○区○○町○番○号
株式会社○○
代表取締役社長 ○○取締役会招集通知
当社の取締役会を下記のとおり開催いたしますので、ご出席くださいますようお願いいたします。
記
1.開催日時 ○年○月○日(○)午前○時
2.開催場所 東京都○○区○○町○番○号
当社本店○○会議室
3.目的事項
第1号議案 代表取締役の選定の件
第2号議案 ○○の件以上
招集手続を要しない場合
会社法では、以上のとおり取締役会の招集手続について定めていますが、取締役と監査役全員の同意があるときは、招集手続を経ることなく、取締役会を開催できます(会社法368条2項)。
取締役会の招集手続が規定されている趣旨は、取締役と監査役に取締役会に出席する機会を与えることにありますので、取締役と監査役全員が招集手続の省略に同意しているときには、あえて招集手続を経る必要がないためです。
取締役と監査役全員の同意を取得し、招集手続を経ることなく、取締役会を開催したところ、取締役会に一部の取締役や監査役が出席しなかったとしても、当該取締役会は有効に開催できます。
急遽取締役会を開催する必要が生じたような場合には、開催まで1週間(や定款で定めた期間)も待つことはできませんので、この方法(取締役と監査役全員の同意を得る方法)で、取締役会を開催することを検討することとなります。
取締役会の招集手続の瑕疵
以上のとおり、取締役会を招集するには会社法で定められた手続きを経る必要があります。
それでは、会社法上必要とされる手続きを経ないで、取締役会が招集・開催された場合、取締役会の効力はどうなるでしょうか。
仮に、
・招集通知が発せられなかった場合
・招集通知の発出が取締役会の1週間(定款の定めがあるときはその期間)前までにされなかった場合
は、原則として、当該事由は取締役会の無効事由(=取締役会で審議・決議された内容を無効にする理由および事実)となります。
ただし、上記に該当する場合でも、取締役と監査役全員が当該取締役会に出席して、同意したときは、当該取締役会は有効になると考えられています。
では、取締役会の開催にあたり、取締役の一部に対する招集通知を欠き、当該取締役が取締役会に出席できなかった場合、取締役会の効力はどうなるでしょうか。判例は、以下のとおり判示しています。
「取締役会の開催にあたり、取締役の一部の者に対する招集通知を欠くことにより、その招集手続に瑕疵があるときは、特段の事情のないかぎり、右瑕疵のある招集手続に基づいて開かれた取締役会の決議は無効になると解すべきであるが、この場合においても、その取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるときは、右の瑕疵は決議の効力に影響がないものとして、決議は有効になる」
最判昭44・12・2民集23巻12号2396頁
つまり、取締役の一部に対して招集通知を発出し忘れた場合は、原則として取締役会決議が無効となりますので、十分注意して取締役会の招集手続きを行うことが必要です。
この記事のまとめ
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参考文献
落合誠一編『会社法コンメンタール8 機関[2]』商事法務、2009年