中途解約条項とは?
業務委託契約や賃貸借契約における条文例・レビューポイントなどを解説!
- この記事のまとめ
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中途解約条項とは、契約期間の途中であっても、当事者のいずれかが一方的に契約を終了させられる旨を定める条項です。
継続的な取引を行う契約や取引が長期間にわたる契約(例:建物賃貸借契約・業務委託契約など)でよく定められるのが特徴です。
これは中途解約条項を定めておくことで、契約当初から事情が変わるなど、何らかの理由で取引を打ち切りたくなった場合に、大きなリスクを負うことなく契約を解消できるためです。中途解約条項を設ける場合は、
✅ 中途解約権を有する者は誰か
✅ 中途解約権を行使できる条件は何か
✅ 損害賠償(違約金)をどうするか
✅ 解約時の報酬の取扱いをどうするか
などについて、ルールを明記しておくことが大切です。また、レビューする際は、相手方に不当に広範な中途解約権を認めていないか、自社にとって十分な内容の中途解約権が留保されているかをきちんと確認しましょう。
今回は中途解約条項について、基本から分かりやすく解説します。
※この記事は、2022年8月15日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
中途解約条項とは
「中途解約条項」とは、契約期間の途中であっても、当事者のいずれかが一方的に契約を終了させられる旨を定める条項です。中途解約できる権利を中途解約権といいます。
<中途解約条項の例>
中途解約条項と契約の解除条項との違い
契約を途中で打ち切ることを認める条項としては、中途解約条項以外にも「解除条項」があります。
中途解約と解除の違いは、以下のとおりです。
- 中途解約と解除の違い
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✅ 中途解約
→理由の如何にかかわらず、契約によって定められた手続を踏めば、契約を終了させることができます。✅ 解除
→契約上の解除事由や、相手方の債務不履行が存在することが、契約を終了させるための条件となります。
中途解約条項を設ける主な目的
中途解約条項は、主に以下のような目的によって契約中に定められることが多いです。
メリットのなくなった契約を早めに終了させる
当事者双方にとって取引のメリットがなくなった状態で、契約だけを期間満了まで存続させておくのは不合理です。
もし取引を続けるメリットがないとすれば、期間途中でも契約を打ち切って、当事者間の法律関係を清算しておく方がよいでしょう。中途解約条項には、役割を終えた契約を早めに打ち切るために活用できます。
取引相手を乗り換えられるようにしておく
取引相手を変更したくなった場合、いつでも契約を打ち切ることができるように、中途解約条項を設けることがあります。
相手方に中途解約権を認めると、期間中は続くと思っていた取引を、突然打ち切られてしまう可能性が生じます。そのため、相手方に中途解約権を認めることはリスクとなりますが、当事者間の力関係などによっては、中途解約条項を受け入れざるを得ないケースもあり得るでしょう。
トラブルが発生した取引関係を早めに打ち切る
当事者間でトラブルが発生した場合などには、早めに契約を打ち切る必要性が生じることがあります。
契約を打ち切る根拠としては、
などが考えられます。しかし、解除の要件などを巡って、当事者間でトラブルになる可能性が否めません。
中途解約条項を設けておけば、理由の如何にかかわらず、手続を踏むことで確実に契約を解消できます。万が一トラブルが発生した場合に備えて、契約をスムーズに打ち切れるようにするため、中途解約条項を設けておくことも考えられるでしょう。
中途解約条項が定められる主な契約と条文例
中途解約条項は様々な契約に定められますが、その代表例は「賃貸借契約」と「業務委託契約」です。
これは、
などにおいては、契約当初から事情が変わるなどして取引を打ち切りたくなった場合に、大きなリスクを負うことなく契約を解消できるようにしておくためです。
賃貸借契約(定期建物賃貸借契約など)
賃貸借契約では、賃借人(借りる人)の中途解約権を認めるのが一般的となっています。
- 賃貸借契約における中途解約条項の記載例
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第○条(中途解約)
1. 賃借人は、賃貸人に対して1か月前までに書面で予告することにより、本契約を中途解約できるものとする。
2. 前項に基づく中途解約が行われる場合、賃借人の賃貸人に対する違約金の支払いその他の損害賠償責任は発生しないものとする。
3. 第1項に基づく中途解約が行われる場合、当該中途解約の日が属する月に係る賃料については、日割りにて精算する。
業務委託契約
当事者間で何らかの業務を発注・受注する業務委託契約においても、中途解約条項が定められることがあります。
- 業務委託契約の例
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✅ 清掃業務委託契約
✅ システムの保守業務委託契約
✅ コンサルティング業務委託契約
✅ 弁護士・税理士などの顧問契約
✅ 営業代行業務委託契約
✅ 店舗運営に関する業務委託契約
など
- 業務委託契約における中途解約条項の記載例
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第○条(中途解約)
1. 本契約の当事者は、相手方に対して1か月前までに書面で予告することにより、本契約を中途解約できるものとする。ただし、本契約締結日から6か月が経過するまでは、本項に基づく中途解約はできないものとする。
2. 前項に基づく中途解約が行われる場合、当該中途解約を行った当事者は、相手方に対して違約金として○万円を支払うものとする。なお、振込手数料等の当該支払いに係る費用は、当該中途解約を行った当事者の負担とする。
3. 委託者が第1項に基づく中途解約を行った場合、当該中途解約の日が属する月に係る業務委託報酬は、その全額が発生するものとする。
4. 受託者が第1項に基づく中途解約を行った場合、当該中途解約の日が属する月に係る業務委託報酬は発生しないものとする。ただし、当該中途解約により、本契約が月末日をもって終了する場合に限り、当該月に係る業務委託報酬は、その全額が発生するものとする。
中途解約条項に含めるべき内容
契約において中途解約条項を設ける場合、当事者間におけるトラブルを防止するため、以下の事項を確実に定めておく必要があります。
中途解約権を有する当事者は誰か
契約当事者のうち、誰が中途解約権を有するかを明確化しておきましょう。どちらか一方のみに中途解約権を認める場合、当事者双方に中途解約権を認める場合のいずれもあり得ます。
中途解約権を行使できる条件は何か
中途解約権を行使する際の条件としては、解約日より一定期間以上前に予告通知を行うべき旨を定めるケースが多いです(解約予告期間)。
また、契約締結後一定期間が経過するまでは中途解約を認めない(解約禁止期間)など、追加の条件を設定する場合もあります。
解約時の損害賠償(違約金)をどうするか
中途解約を受けた側は、契約を打ち切られることによって何らかの損害を被る可能性があります。そのため中途解約条項の中で、損害賠償(違約金)に関する取扱いを決めておきましょう。
なお、損害賠償を行う場合でも、金額などを巡って争いが生じることを防ぐため、違約金額を明確に定めておくことが推奨されます。
解約時の報酬の取扱いをどうするか
不動産賃貸借契約や、毎月定額報酬型の業務委託契約などに中途解約条項を定める場合、報酬(or賃料)の精算についても定めておきましょう。中途解約前後の期間について、報酬の取扱いが明確となる内容を規定する必要があります。
中途解約条項をレビューする際のポイント
契約上の中途解約条項は、これまで紹介した事項を念頭に置きつつ、以下のポイントに留意しながらレビューを行いましょう。
そもそも相手方に解約権を与えてよいか
相手方に中途解約権を与えるということは、自社の予期せぬタイミングで契約が解消されてしまう可能性が生じることを意味します。
将来的な売上・収益の予測も立ちにくくなるので、相手方に中途解約権を与えても大丈夫かどうか、事前によく検討することが大切です。
自社が解約権を確保する必要はないか
自社が中途解約権を確保できれば、取引相手を見直す機会を得られる点で有利に働きます。将来の事業運営を見据えて、中途解約権を確保しておいた方がよいと思われる場合には、相手方との契約交渉を行いましょう。
ただし、中途解約条項について相手方が難色を示したり、他の契約条件について譲歩を求められたりする可能性もあります。自社にとっての優先順位を明確化した上で、優先度の高い条件を獲得できるように努めてください。
解約予告期間・解約禁止期間などの条件は適切か
中途解約条項を定める場合、
などの行使条件を適切に設定することが大切です。
特に、行使条件が相手方の有利な方向に偏っていないか、自社の中途解約権はスムーズに行使できるようになっているかなどをチェックしましょう。行使条件の内容に問題があれば、契約交渉を通じて修正を求めます。
違約金の設定額は適切か
中途解約時の違約金は、解約によって被る損害の見込額に近い金額に設定するのが適切と思われます。
違約金額は自由に設定できるのが原則ですが(契約自由の原則)、あまりにも高額の違約金を定めた場合、中途解約権の行使が事実上不可能となってしまいます。場合によっては、違約金条項自体が公序良俗違反(民法90条)によって無効となってしまうおそれもあるのでご注意ください。
報酬などの取扱いは公平か
報酬の計算期間(月額制であれば1か月)の途中で中途解約が行われる場合、報酬が公平に精算されるようなルールを定めておくことが大切です。
例えば、報酬が月末締めの業務委託契約において、委託者が月末間近の段階で中途解約権を行使するとします。
仮にその月の委託報酬が一切発生しないとすれば、受託者は相手方主導で契約を打ち切られた上に、ほぼ1か月間タダ働きになってしまうため不公平でしょう。
このような事態が生じないように、「誰が」「いつ」中途解約したかによって報酬の取扱いを変えるなどして、公平なルールを設定することが望ましいです。
この記事のまとめ
中途解約条項の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!