販売代理店契約とは?
販売店契約と代理店契約の違い・
契約書作成時の注意点などを解説!

この記事のまとめ

「販売代理店契約」とは、メーカーが販売代理店に対して、自社商品の販売を委託又は許諾する内容の契約です。ディストリビューター方式(販売店契約)とエージェント方式(代理店契約)の2種類があり、販売代理店側の権限等については様々なバリエーションが存在します。

販売代理店契約により、メーカー側は販売代理店の流通網を活用できる一方で、販売代理店側はメーカーのブランド力を活用できるメリットがあります。

販売代理店契約を締結する際には、不当に不利な条件を押し付けられないように、相手方との間で入念な契約交渉を行いましょう。

この記事では「販売代理店契約」について、定義や締結の際の注意点、チェックすべき契約条項などを解説します。

「販売代理店契約」「販売店契約」「代理店契約」という言葉、どう違うのですか?

販売代理店契約の種類として、ディストリビューター方式(販売店契約)、エージェント方式(代理店契約)があるという位置づけです。具体的な違いについて、この記事で勉強していきましょう!

(※この記事は、2022年3月28日時点の法令等に基づいて作成されています。)

販売代理店契約とは?

「販売代理店契約」とは、メーカーが販売代理店に対して、自社商品の販売を委託又は許諾する内容の契約です。

メーカー側は自社商品の販路拡大、販売代理店側は大口受注や市場における知名度向上などを目的として、販売代理店契約を締結するケースが多いです。

販売店契約と代理店契約の違い

販売代理店契約は、メーカーと販売代理店の間の合意内容に応じて、「ディストリビューター方式」「エージェント方式」の2種類に分類されます。

ディストリビューター方式(販売店契約)

ディストリビューター方式の販売代理店契約は、「販売店契約」と呼ばれることもあります。ディストリビューター方式の場合、販売代理店がメーカーから商品を買い取り、自ら顧客に対して販売します。販売代理店の利益は、購入時と売却時の商品価格の差によって生まれます。

メーカー側にとっては、販売代理店に商品を売った時点で売上が立つため収益予測をしやすい点が大きなメリットです。一方販売代理店側にとっては、エージェント方式よりも一商品当たりの利益が大きい傾向にある反面、売れ残った場合の損失を被らなければなりません。

ただし、ディストリビューター方式の場合でも、売れ残った商品をメーカーに返品することを認める場合があります。その場合、ディストリビューター方式はエージェント方式に接近することになります。

エージェント方式(代理店契約)

エージェント方式の販売代理店契約は、「代理店契約」と呼ばれることもあります。エージェント方式の場合、顧客に商品を売るのはあくまでもメーカーであり、販売代理店はメーカーの代理人として取引に関与します。販売代理店は、商品の売約数等に応じて、メーカーから手数料の支払を受けます。

エージェント方式では、販売代理店は商品在庫を抱える必要がないメリットがある一方で、ディストリビューター方式よりも一商品当たりの利益は小さくなるのが一般的です。メーカーの立場では、売行きによって収益が変動するため、売れれば売れるほど利益が出る一方で、売れなければ損失が出てしまうリスクがあります。

販売代理店契約のメリット

販売代理店契約は、メーカー・販売代理店の双方にとってメリットのある契約です。それぞれにとってのメリットを、具体的に見ていきましょう。

メーカーから見た販売代理店契約のメリット

メーカーの立場において、販売代理店契約を締結することの主なメリットは、以下のとおりです。

メーカーから見た販売代理店契約のメリット

✅  販売代理店の流通網を活用できる
→商品販売を専門的に取り扱う販売代理店の流通網を活用し、自社商品の販路を拡大できます。

✅  販促にかかる手間と人員を削減できる
→メーカーが自分で販売活動を行う必要がないため、販促にかかる手間と人員を削減できます。人件費の削減や、他の業務に注力できるようになる点が大きなメリットです。

販売代理店から見た販売代理店契約のメリット

販売代理店の立場において、販売代理店契約を締結することの主なメリットは、以下のとおりです。

販売代理店から見た販売代理店契約のメリット

✅  安定した売上が期待できる
→契約期間中は、メーカーから商品の販売依頼を継続して受けることができるため、売上の安定につながります。

✅  メーカーのブランド力を活用して、自社の知名度を高められる
→メーカーの市場における認知度が高い場合、その信頼を得て商品販売を担当する販売代理店として、自社の知名度を高めることができる可能性があります。

販売代理店契約書作成時の注意点

販売代理店契約を締結する場合、特に再販売価格の拘束に関する独占禁止法の規制と、契約交渉の重要性の2点に注意する必要があります。

再販売価格の拘束は認められない

ディストリビューター方式の場合、販売代理店が販売する商品の価格について、メーカーが指定等を行うことは認められません(再販売価格の拘束の禁止、独占禁止法2条9項4号)。

これは、販売代理店が商品を購入した以上、その商品をいくらで再販売するかについては、販売代理店が自由に決定すべき事柄と考えられているためです。例えば、ある商品がどこの販売店でも、メーカーが指定した3,000円でしか手に入らないとなると、市場での価格競争が起きず、消費者が適正な価格で商品を購入できなくなるなどの弊害が発生する可能性があります。

独占禁止法は、再販売価格の拘束のように、公正かつ自由な競争を阻害する行為を「不公正な取引方法」として禁止しています。不公正な取引方法についてもっと知りたい方は、「不公正な取引方法とは?」も併せてご参照ください。

メーカーとしては、安く叩き売られてはブランドイメージの毀損につながるなどの理由で、自社商品の販売価格を自社で決めたいという場合もあろうかと思います。その場合は、ディストリビューター方式ではなくエージェント方式で販売代理店契約を締結しましょう。

契約条件次第で有利にも不利にもなる|契約交渉がポイント

販売代理店契約は、メーカー・販売代理店の双方にとってメリットのある契約とはいえ、商品の売上によって得られた利益については、メーカー・販売代理店の間で取り合うことになります。

利益をどのように配分するかは、販売代理店契約の規定によって決まります。契約交渉次第では、相手方に利益の大半を持っていかれてしまい、自社は骨折り損という事態にもなりかねません。

販売代理店契約による利益を確保するためにも、次の項目で紹介する契約条項を参考にして、自社にとって少しでも有利な条件を獲得できるように契約交渉を行いましょう。

販売代理店契約書に盛り込むべき主な条項

販売代理店契約は、契約内容によってメーカーと販売代理店の利益配分が大きく異なり得るため、それぞれの立場できちんと条項を精査することが大切です。

販売代理店契約に盛り込むべき主要な条項について、各概要とチェックポイントを解説します。

契約の方式|ディストリビューター方式(販売店契約)orエージェント方式(代理店契約)

大前提として、ディストリビューター方式・エージェント方式のいずれであるのかは、必ず販売代理店契約の中に明記しておきましょう。

ディストリビューター方式(販売店契約)の場合は、「メーカーが販売代理店に商品を販売し、販売代理店が顧客に商品を再販売する」旨を規定しておきます。これに対してエージェント方式(代理店契約)の場合は、「メーカーが顧客に商品を販売する。販売代理店はメーカーの代理人として販売業務を行う」旨を定めておきましょう。

販売を行う商品・地域の範囲

販売の対象となる商品の名称・内容等も、基本的な事項として記載しておく必要があります。

また、メーカーが販売エリアを把握・コントロールする観点から、販売代理店がメーカー商品を販売できる地域の範囲を定めるのが一般的です。商品に対するニーズがありそうな地域を見定めて、その範囲を明確に規定しておきましょう。

独占性・排他性の有無

同一の商品を同一の地域で複数の業者が販売する場合、業者間で売上が分散することになります。そのため販売代理店としては、独占的・排他的な販売権(代理権)の設定を受けることが望ましいでしょう。

一方メーカー側としては、非独占的・非排他的な販売権(代理権)としておくほうが、販路拡大の観点からメリットがあります。ただし、販売ルートの管理や販売代理店のモチベーション向上等の観点からは、独占的・排他的な販売権(代理権)を認めたほうがよい場合もあるので、どちらがよいかはケースごとに総合的に判断しましょう。

独占契約を締結する際、特に注意して取り決めるべきポイントは主に次の3点です。
・直接販売権
・競合品取扱
・最低購入数量

直接販売権

直接販売権とは、販売代理店が販売する商品を、メーカーが自ら売ることができる権利です。

メーカーの直接販売権を認める場合、販売代理店とメーカーの間で競合が発生します。

販売代理店の側から見れば、メーカーに直接販売権を認めることは、純粋な独占契約に比べると不利になってしまうでしょう。販促活動によって商品の認知度を高めたとしても、利益をメーカーに横取りされてしまうかもしれません。

これに対して、メーカーの側から見れば、直接販売権を確保すれば、自社商品の販路について複数の選択肢を保持できるメリットがあります。もし販売代理店の能力や意欲が不足していた場合でも、メーカー自ら商品を販売すれば、一定の売上を獲得することが可能です。直接販売権はメーカーにとって、販売代理店に独占権を与えることのリスクヘッジとしての意味があります。

上記の理由から、メーカーは直接販売権を確保したい、販売代理店は直接販売権を認めたくないという形で、契約交渉における対立が生じる可能性があります。独占契約を締結する場合は、直接販売権の有無が一つのポイントになるでしょう。

競合品取扱

競合品取扱とは、販売代理店がメーカーの競合他社の商品を販売できるかどうかという問題です。

販売代理店は、一般に複数のメーカーと取引を行います。メーカー同士が競合他社であるケースも珍しくないため、販売代理店が取り扱う商品同士が売上を食い合ってしまう事態も想定されます。メーカーにとっては、このような事態は好ましくありません。

そこで販売代理店契約によって、販売代理店による競合他社商品の販売を禁止することが考えられます。全国的に販売を禁止する、一定の地域に限って販売を禁止するなどの違いはありますが、競合による売上の減少を防ぐ観点からはいずれも効果的です。

しかし、競合品の取扱いを制限されることは、販売代理店にとって大きなデメリットとなります。魅力的な商品がメーカーの競合他社からリリースされても、その商品の販売を受注することができないからです。

上記の理由から、メーカー側では競合品の取扱いをできる限り制限したい、販売代理店側では競合品の取扱いを制限されたくないという思惑が働き、契約交渉における対立が生じる可能性があります。

最低購入数量

最低購入数量とは、販売代理店がメーカーから仕入れる商品の最低数量を意味します。

独占契約の場合、販売代理店が商品販売にいつまで経っても着手しない事態を防ぐため、最低購入数量が必ず設定されます。もし最低購入数量に売上数量が満たなければ、不足分を販売代理店が買い取ることになります。

独占契約の交渉において問題となるのは、最低購入数量の設定水準です。

メーカー側は、安定した収益を確保するため、最低購入数量を多めに設定したいと考える傾向にあります。特に、売れるかどうかの見通しが立っていない商品については、その傾向が強まるでしょう。

これに対して販売代理店側としては、あまりにも多いノルマは重荷になるため、最低購入数量を少なめに設定したいと考えるのが一般的です。もし商品の売れ行きが良ければ、その都度メーカーへ個別に追加発注をすればよいので、最低購入数量を少なめにした方が販売活動の自由度も高まります。

上記のように、最低購入数量に関してはメーカーと販売代理店の思惑が対立し、契約交渉における大きな論点になる可能性があります。

販促活動時の遵守事項

メーカーとしては、販売代理店に勝手なことをされて、自社や商品のブランドイメージが失墜してしまう事態は避ける必要があります。そのため、販売代理店が販促活動を行う際の遵守事項を、販売代理店契約の中で定めておくのがよいでしょう。

遵守事項の例

✅  商標(社名・商品名・ロゴなど)の掲載位置
✅  顧客に対する商品紹介の内容
✅  公序良俗に反するキャンペーン等の禁止
など

手数料等の仕組み・支払方法等

エージェント方式(代理店契約)の場合、メーカーが販売代理店に支払う手数料の仕組みを決めておく必要があります。売約数に完全に比例する形にする、一定の最低手数料額を設けるなど、様々な形のアレンジが考えられるところですので、契約交渉によって細かい条件を決めましょう。

また、手数料の計算期間や、支払日・支払方法等についても明確に定めておきましょう。

売れ残りが発生した場合の取扱い

ディストリビューター方式(販売店契約)では、売れずに残ってしまった商品につき、メーカーへの返品を認めるかどうかも大きなポイントです。

メーカーとしては、売れ残り商品の返品を一切認めないことが最も有利です。反対に販売代理店としては、メーカーへの返品を100%認めてもらうことが最も有利となります。

実際の販売代理店契約では、メーカーへの返品を認めるかどうかは、メーカーと販売代理店の間のパワーバランスで決まってしまうことが多いです。しかし、自社が相手方に搾取される事態を防ぐためには、できる限り自社にとって有利な条件を引き出せるように契約交渉を行うべきでしょう。

契約期間・契約終了時の取決め

販売代理店に対して商品の販売を委託する期間についても、契約中に明記しておきましょう。

契約期間はメーカー・販売代理店間の合意により自由に決められます。双方から契約終了の申出がない限りは、期間満了時に自動更新をする旨の規定を盛り込んでおくことも考えられます。

メーカーとしては、商品の販路を見直す機会をコンスタントに設けた方がよいため、契約期間は短めに設定するのが望ましいでしょう。たとえば、1か月から3か月程度ごとに自動更新とすることが考えられます。

一方販売代理店としては、契約期間をどの程度に設定するのが好ましいかはケースバイケースです。

独占権を長期間確保したい場合は、契約期間を長めに設定した方がよいでしょう。ただし、独占契約の場合は必ず最低購入数量がセットになる点に注意が必要です。最低購入数量のノルマが重い場合には、契約期間が長期に及ぶとかえって負担になる可能性があります。

販売代理店の立場では、商品の売上などの見通しをきちんと立てたうえで、どの程度の契約期間が適切であるかを慎重に判断してください。

なお、ディストリビューター方式の場合は、売れ残った在庫商品の取扱いについても定めておく必要があります。在庫商品の取扱いについて、主な論点は以下の2つです。

契約期間・契約終了時の取決め

メーカーと販売代理店の間では、商品や会社に関する秘密情報をやり取りする機会も多いため、秘密保持義務を相互に規定しておくことが重要です。

具体的には、以下の内容を含む秘密保持の規定を、販売代理店契約の中に盛り込んでおきましょう。

契約の解除

相手方当事者に違反行為があった場合には、販売代理店契約を解除できるように定めておきましょう。

販売代理店契約の解除事由としては、以下のものが考えられます。

損害賠償

相手方当事者の契約違反により、自社が損害を被った場合に備えて、損害賠償の範囲を契約内に明記しておきましょう。

民法のルールを基準とするケースが多いですが、以下の例のように、損害賠償の範囲を広げたり狭くしたりすることも考えられます。

損害賠償の範囲の定め方

✅  民法の原則どおりとする場合
→「相当因果関係の範囲内で損害を賠償する」など

✅  民法の原則よりも範囲を広げる場合
→「一切の損害を賠償する」など

✅  民法の原則よりも範囲を狭くする場合
→「直接発生した損害に限り賠償する」、損害賠償の上限額を定めるなど

この記事のまとめ

販売代理店契約の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

参考文献

日本貿易振興機構ウェブサイト「代理店契約と販売店契約の相違点:日本」