リース契約とは?
仕組み・メリット・中途解約できるか・
印紙の要否などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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リース契約とは、借り手(ユーザー)が指定したリース物件を貸し手(リース会社)が購入し、借り手に貸与する契約をいいます。
リースの対象は、OA機器、備品、プログラム、自動車など多岐にわたります。また、物品をリースで導入するメリットも多いことからリース取引は、多くの企業で行われています。
リース契約では、その種類により対価の定め方や中途解約の取り扱いなど、さまざまな点が異なります。
この記事では、リース契約の定義、仕組み、メリットやリース契約の条項などを分かりやすく解説します。
※この記事は、2024年4月4日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
リース契約とは
リース契約の定義
リース契約とは、借り手(ユーザー)が指定した物件を貸し手(リース会社)が購入し、一定の対価(リース料)で一定期間、借り手に貸与する契約をいいます。
リース契約は、法律上定義されたものではなく、「リース契約の仕組み」で述べるような、仕組みの契約を一般的に指す用語です。
リース契約の対象となる物件は、OA機器やIT機器、デスクなどの備品、プログラム、自動車、飛行機など多岐にわたります。
リース契約の仕組み
リース取引は、一般的に以下のような仕組みで行われます。
①リース物件の選定
②ユーザー・リース会社間でのリース契約の締結
③リース会社によるリース物件の購入
④リース物件の搬入
⑤リース開始・リース料支払い
①リース物件の選定
リース契約では、リース物件の選定はユーザーが行います。
②ユーザー・リース会社間でのリース契約の締結
ユーザーとリース会社は、①で選定されたリース物件について、リース料やリース期間などを定めたリース契約を締結します。
このリース契約により、リース会社には、リース物件を貸す義務が、ユーザーには一定期間リース料を支払う義務が生じます。
③リース会社によるリース物件の購入
リース会社は、ユーザーが選定したリース物件について、物件販売会社(サプライヤー)との間で売買契約を締結し、リース物件を購入します。
④リース物件の搬入
③により購入したリース物件をユーザーに搬入します。
リースでは、サプライヤーが直接ユーザーに搬入するのが一般的です。
⑤リース開始・リース料支払い
ユーザーは、搬入された物品の品質などに瑕疵がないかを確認し、問題がなければリース会社に対し物件借受証を発行します。この借受証発行時にリースが開始されます。
ユーザーは、契約で定められた期間、リース物件を使用し、リース会社にリース料を支払います。
リース契約の種類
リース契約は、ファイナンスリースとオペレーティングリースに大別されます。
種類1|ファイナンスリース
ファイナンスリースとは、以下の特徴のある、金融的要素の強いリースをいいます。
- リース会社がリース取引に要した資金(購入資金・金利・固定資産税・保険料など)のほぼ全額をユーザーがリース料として支払う(フルペイアウト)
- 原則、解約ができない
ファイナンスリースは、法律上の分類ではなく、会計関連規定に基づく会計処理の違いによる分類です。
ファイナンスリース契約は、具体的には以下のような内容となっています。
①契約期間
税務上の規定により、リース期間は、原則として耐用年数の70%以上とする必要があるため、比較的長期です。
②リース料
リース料は、
- リース物件の購入価格
- リース期間中リース物件を保持するために必要な資金(固定資産税、保険料など)
- これらに対する金利
を合計した金額になります。
ファイナンスリースでは、リース料算出の際、リース期間終了時のリース物件の残価値を考慮せず、リース契約期間中に、リース物件の購入資金やリース期間中にかかる費用を全額回収できるように設定されます。
③解約
原則リース期間中の解約(中途解約)はできません。
中途解約が認められる場合、中途解約時に残リース期間の残リース料に相当する額の違約金を支払います。
④リース物件の瑕疵・修繕等
リース会社は、リース物件に瑕疵があった場合も責任を負いません。また、ユーザーがリース物件の修繕義務を負います。
リース物件について保守契約が必要な場合には、ユーザーが物件販売会社や物件製造会社と締結するのが一般的です。
種類2|オペレーティングリース
オペレーティングリースとは、ファイナンスリース以外のリース契約をいいます。
オペレーティングリースは、契約を締結する前に、リース期間満了時点での残存価格をあらかじめ見積もり、その残価を差し引いた金額でリース料が決められ、リース物件価格全額をユーザーから回収しない形式の取引です(ノンフルペイアウト)。
当事者の法律関係
リース取引では、ユーザー、リース会社、サプライヤーの三者間の法律関係は以下のようになります。
ユーザー・リース会社のリース契約とリース会社・サプライヤー間の売買契約は、別個の契約ですが、相互に密接に関係しており、特にリース物件の引き渡し、契約不適合責任などに関する条項は契約間で矛盾が生じないように調整されています。
リース契約のメリット・デメリット
リース契約のメリット
リース契約のメリットは、主に以下のとおりです。
①リース物件導入時の初期費用が少ない
②コストの平準化が可能
③会社の都合に合わせた機種の入れ替えが可能
メリット①設備投資時に多額の資金が不要
リース契約では、月々、一定額をリース会社に支払いますから、リース物件を購入する場合と異なり、リース物件導入時に購入資金を用意する必要がなく、初期費用が抑えられます。
メリット②コストの平準化が可能
物件を購入する場合、原則として代金を一括支払いする必要がありますが、リースの場合、月々、一定額をレッサーに支払うかたちのため、費用が平準化できます。
メリット③会社の都合に合わせた機種の入れ替えが可能
リース契約では、リース物件の使用予定期間にあわせてリース期間を設定できます。
そのため、
- リース期間を耐用年数に比べて短めにして最新機種に入れ替える
- 長めにして月々のリース料を安くしながら長く使用する
など、ユーザーの都合にあわせた柔軟な機種入れ替えが可能です。
なお、ファイナンスリースの場合、リース期間を原則耐用年数の70%以上とする必要があるなど、税法上の制限がある点、注意が必要です。
リース契約のデメリット
リース契約のデメリットは、主に以下のとおりです。
①費用の総額が購入の場合より割高になる
②設備の所有権がない
③中途解約ができない(ファイナンスリースの場合)
デメリット①支払い総額が購入の場合より割高になる
リース料は、リース物件の購入価格にリース期間中リース物件を保持するために必要な資金(固定資産税、保険料など)と金利を上乗せした金額をもとに算出されます。
そのため、直接購入する場合に比べ、支払い総額が割高になります。
デメリット②リース物件の所有権がない
リース契約は、ユーザーがリース会社からリース物件を借りる契約のため、対象物の所有権はリース会社にあります。
そのため、ユーザーは、リース物件の売却やリース物件を担保にした借入など、所有者であれば可能な物件を利用した資金調達を行うことはできません。
デメリット③中途解約ができない(ファイナンスリースの場合)
ファイナンスリースでは、原則として中途解約が認められません。
そのため、ファイナンスリース方式によりリース物件を導入した場合、物件の利用が想定より早く終了した場合でも中途解約はできません。
リース契約に関するよくある疑問
リース契約書に収入印紙は必要?
リース契約は、法的には動産についての賃貸借契約です。
そして、賃貸借契約は、土地に関する賃貸借を除き、印紙税法上、不課税文書です。
そのため、リース契約書には印紙税は課されません。
なお、リース契約に伴い保守契約を締結する場合、
- 請負に関する文書(第2号文書)
- 継続的契約に関する基本契約(第7号文書)
として印紙税が課され、収入印紙が必要となる可能性があります。
リース契約は中途解約できる?
前述のとおり、ファイナンスリース契約は、原則中途解約が禁止されており、中途解約する場合には、残リース料相当額の違約金を支払う必要があります。
これに対し、オペレーティングリースでは、中途解約が認められる契約が多くなっています。
リース契約と賃貸借契約・割賦販売契約・レンタル契約との違いは?
リース契約とレンタル契約の法的性質は、ともに賃貸借契約です。
この2つの契約は、リース契約では、ユーザーが対象物件を選び、リース会社がその物件を購入したうえで賃貸するのに対し、レンタル契約では、レンタル会社がすでに有している物件から選んで賃借する点が異なります。
また、一般的に、レンタル契約のレンタル期間は、リース契約に比べ短期となります。
割賦販売契約は、物件を購入するにあたり、売買代金を分割して支払う契約であり、法的性質は売買契約です。
割賦販売契約にもさまざまな種類がありますが、リース契約と異なり、物件の売買のための契約ですから、物件の所有権は購入者にうつります。
リース契約に定める主な条項
リース契約は、法的には賃貸借契約ですから、契約では主に賃貸借に必要な条項を定めます。
しかし、リース取引の性質上、その定め方は一般的な賃貸借条項とは異なる場合もあります。
以下、具体的にみていきます。
リース対象
リース契約は、賃貸借契約ですから、賃貸借の対象となる物件を明確にする必要があります。
一般的な賃貸借契約では、対象物件はもともと貸し手が所持しているものですが、リース取引の場合、リース物件の選定は、ユーザーが行い、レッサーは、ユーザーが選定した物件を購入して賃貸しますから、ユーザーが選定した物品をリース物件として明記します。
リース料
リース契約では、賃貸料であるリース料の条項を設けます。
リース料の額は、ファイナンスリースとオペレーティングリースで異なり、概ね以下のかたちで設定されます。
- ファイナンスリース:リース契約期間中に、物件の購入資金やリース期間中にかかる費用が全額回収できるように設定
- オペレーティングリース:物件の購入価格からリース期間満了時の物件の残存価値を控除したうえでリース料を計算
リース期間
リース期間とは、ユーザーがリース物件を借り、使用する代わりにリース料を支払う期間です。
通常の賃貸借契約では、賃貸借期間を日付で指定しますが、リース契約では、通常、ユーザーが搬入された物件を検査し、リース会社に物件借受証を発行した時点でリース期間が開始しますから、その旨を定めます。
なお、リース期間は、ファイナンスリースとオペレーティングリースでは、以下のように異なります。
- ファイナンスリース・・・原則、物件の耐用年数の70%以上
- オペレーティングリース・・・自由に定めることができる
リース物件の引き渡し
リース契約では、一般の賃貸借契約と異なり、物件はサプライヤーから搬入されます。
そこで、リース契約では、ユーザーが搬入された物件を検査したうえで物件借受証をレッサーに発行し、レッサーが物件借受証を受け取ったときに、リース会社からユーザーにリース物件が引き渡されたものとする旨を定めます。
契約不適合責任
一般的な賃貸借契約では、貸し手は契約不適合責任を負います。(民法562条、559条)
しかし、リース取引では、リース会社はユーザーの指定に応じて物件を購入し、リースするため、リース会社に物件についての責任を負わせるのは妥当ではないとの価値判断から、一般的に、リース会社は契約不適合責任を負いません。
その代わりに、リース会社が買主としてサプライヤーに対して有する契約不適合についての請求権をユーザーに譲渡するなどの方法により、ユーザーがサプライヤーに直接請求できるかたちとしており、リース契約では、その旨を記載します。
危険負担
賃貸借期間中に貸し手・借り手いずれの責もなくリース物件の一部が滅失した場合、一般的な賃貸借契約では、その損失は貸し手が負担し、賃料が減額されます。(民法611条)
しかし、リース契約では、このような場合、ユーザーの危険負担とし、ユーザーは、リース会社に対し、滅失部分についてのリース期間満了までのリース料にかわる損害賠償金を支払う義務を負うかたちとするのが一般的です。
禁止事項
リース契約は、リース物件を貸与する契約ですから、物件管理等の観点から、ユーザーに対する禁止事項を定めます。
- リース会社の所有権を侵害する行為
- 他者への転貸・占有移転
- リース会社の承諾のない使用場所の移動
- 現状変更
- 譲渡や担保設定
リース物件の維持管理
ファイナンスリースの場合、維持管理はユーザーの責任ですから、ユーザーは自らの費用負担によりリース物件を維持・管理する義務を負う旨を定めます。
他方、オペレーティングリースにおいては、リース物件の維持管理義務をユーザーが負う場合とリース会社が負う場合の両方があり、両者が合意した内容を契約条項として記載します。
保険
上記のとおり、特にファイナンスリースでは、ユーザーがリース物件の危険を負担し、また、維持管理義務を負います。
そのため、リース物件の滅失・毀損時の損害賠償リスクの回避・軽減のため、一定の保険を付保すべき旨を定めるのが一般的です。
契約の更新
契約の更新については、契約ごとに規定が異なります。
具体的には、以下のような定め方があります。
- 契約の更新を認めない
- ユーザーが契約の更新を希望する場合、協議とする
- ユーザーの希望により更新可能とし、その場合の条件をあらかじめ定めておく
- ユーザー・リース会社いずれからも更新拒絶がない場合、自動更新とする
契約更新後のリース料の定め方は、フルペイアウトとノンフルペイアウトで異なります。
フルペイアウトのリースでは、リース会社はリース期間中にリースに要した資金(物件購入費など)を回収しているため、リース料は、元のリース料の10分の1以下など、低廉な価格となります。(再リース)
他方、ノンフルペイアウトのリースでは、当初のリース期間終了時点では、リースに要した費用は未回収のため、リース料は、契約更新時点での残存価値等を考慮して算出され、再リースほど低廉となりません。(2次リース)
中途解約
中途解約については、契約ごとに規定が異なります。
ファイナンスリースでは、原則として途中解約は認められておらず、途中解約を認める場合にも残リース期間のリース料相当額を違約金として支払う旨を規定します。
これに対し、オペレーティングリースでは、途中解約を認めるかは契約ごとに判断され、途中解約を認める場合もあります。
なお、途中解約を認めるときでも、解約不可期間を定めたり、一定の違約金の定めを置いたりする場合もあり、両者が合意した内容を契約条項として記載します。
期間満了時の処理
リース契約は賃貸借契約ですから、リース契約が終了した場合、ユーザーは、リース物件をリース会社に返却する義務を負う旨を定めます。
返却されたリース物件は、通常、売却、廃棄または他社へリースされることとなりますが、リース物件はサプライヤーからユーザーへ直接納品されるため、リース会社自体は、リース物件の保管場所を有していないこともあります。
そこで、特に売却や廃棄の場合には、法的にはリース会社に返還されたものとして扱われるが、実際には、ユーザーが保管している状態で売却や廃棄の手続きをとり、リース物件をユーザーから直接売却先や廃棄先に移し、ユーザーはこれに協力する旨を定めることもあります。
おわりに
リース対象は、OA機器、備品、プログラム、自動車など多岐にわたり、物品をリースで導入するメリットも多いことから、リース取引は、多くの企業で行われていますが、その種類により対価の定め方や中途解約の取り扱い、メリット・デメリットなど、さまざまな点が異なります。
しかし、リース契約はリース会社が用意するひな形により行われることも多いため、リース契約を締結するにあたって、契約条項をよく検討することなく締結することもありえます。
本記事を参考に、自社にあったリースの種類を見定め、リース契約を締結する際には、リース料や中途解約の有無などを含めたリース契約の内容が自社の実情や希望にあっているか確認すると良いでしょう。
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