コンプライアンス推進の基本的な手法とは?
企業が注意すべきポイント・
実施すべき対策・優先順位を解説!
- この記事のまとめ
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コンプライアンスの推進は、不祥事による法的責任を回避しつつ、企業のレピュテーションの維持・向上の観点から重要な取り組みです。
全社的にコンプライアンスを浸透させるには、多角的なアプローチを行うことが重要になります。経営陣・社内体制・従業員・外部人材やツールなどの観点から、コンプライアンス違反のリスク要因を解消すべく、自社の状況に合わせた取り組みを行いましょう。
今回はコンプライアンス推進の基本的な手法を、企業が注意すべきポイントとともに解説します。
※この記事は、2023年2月22日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
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目次
コンプライアンスとは
コンプライアンス(compliance)とは、法令をはじめとした社会規範を遵守することをいいます。
「法令遵守」と訳されることが多いコンプライアンスですが、その対象は法令に限らず、社会規範を幅広く含むと捉えるのが現代の常識です。例えば、以下のような社会規範がコンプライアンスの対象となります。
✅ 法令(法律、政令、省府令、条例、命令など)
✅ 社内規程
✅ 契約
✅ 慣習
✅ 条理
など
コンプライアンスを推進することが重要な理由
常に社会の監視の目にさらされている企業は、以下の理由からコンプライアンスを徹底することが特に重要です。
① 不祥事による法的責任の回避
② レピュテーションの維持・向上
不祥事による法的責任の回避
法令違反の行為をした企業は、行政処分や刑事罰の対象となる可能性があります。契約違反や不法行為をした企業は、相手方や被害者から損害賠償を請求されるかもしれません。
コンプライアンス違反の不祥事によって法的責任を負うことになった場合、企業にとっては経営基盤への大きなダメージが生じかねません。このような事態を防ぐため、企業にはコンプライアンスの徹底が求められます。
レピュテーションの維持・向上
企業が法令をはじめとする社会規範に反する行為をした場合、社会に不祥事として受け取られてしまいます。特に近年ではSNSを通じて、企業不祥事は即時に広範囲へ拡散されてしまうので要注意です。
企業が築き上げてきたブランドイメージや評判を維持し、今後いっそう向上させるためには、コンプライアンスの徹底が不可欠といえます。
コンプライアンス推進の基本的な手法
企業がコンプライアンスを推進するに当たっては、自社の状況に応じた多角的なアプローチが必要になります。
以下に挙げるアプローチを参考に、効果的なコンプライアンスの推進策を検討しましょう。
① 経営陣に関するアプローチ
・経営陣の意識改革
・社外役員の設置
② 社内体制に関するアプローチ
・チェック体制の整備
・社内規程の整備
・コンプライアンス部門の設置
③ 従業員に関するアプローチ
・内部通報制度の導入
・従業員に対する研修・教育
④ 外部人材・ツールの活用に関するアプローチ
・外部弁護士によるリーガルチェック
・AIツールの導入|契約書のレビューなど
経営陣に関するアプローチ
経営陣は、全社的にコンプライアンスを推進するに当たっての先導役を担います。
そのため経営陣においては、コンプライアンスに焦点を当てられるような意識と体制を作っていくことが大切です。具体的には、以下の取り組みが求められます。
✅ 経営陣の意識改革
✅ 社外役員の設置
経営陣の意識改革
経営陣には第一に、コンプライアンスに関する正しい認識を持つことが求められます。遵守すべき規範の種類や内容、自社の事業において問題になりやすいポイントなどをきちんと理解しなければなりません。
また、短期的な売上や利益に関心を奪われて、コンプライアンスがおろそかになるようではいけません。中長期的な安定した成長を目指すためには、コンプライアンスの徹底が必要不可欠であるという認識を持つことが求められます。
社外役員の設置
経営陣がその権限を悪用すると、コンプライアンス違反は簡単に発生してしまいます。
経営陣の独善的な行為・暴走に起因するコンプライアンス違反を防ぐには、経営陣相互の監視体制を強化することが大切になります。その一環として、社外役員を設置することが効果的です。
社外役員は、社内の人間関係などに由来するしがらみにとらわれず、公平な視点から意見を述べやすい立場にあります。社外役員が参画することで、経営陣の間で緊張感が増し、違法行為などに走るリスクを抑えることができます。
社内体制に関するアプローチ
会社組織としてコンプライアンスを徹底するためには、違反行為を予防・早期発見できるような社内体制を整えることも重要です。社内体制の観点からは、以下の取り組みがコンプライアンスの徹底につながります。
✅ チェック体制の整備
✅ 社内規程の整備
✅ コンプライアンス部門の設置
チェック体制の整備
個人情報の流出や重要ファイルの誤送信など、コンプライアンス違反は人為的ミスによって発生する場合もあります。人為的ミスによるコンプライアンス違反を防ぐには、二重・三重のチェック体制を整えることが大切です。
例えば金融機関などでは、以下の3つの各段階でコンプライアンスチェックを行う「三つの防衛線」(Three Lines of Defense)の考え方が浸透しており、参考になります。
① 現業部門(営業など)
② 管理部門(法務、コンプライアンス、経理など)
③ 内部監査部門
また、各部門においても複数の担当者がチェックすることをルール化すれば、人為的ミスによるコンプライアンス違反のリスクをかなり抑えられます。
社内規程の整備
社内規程を策定する際には、法令で求められている水準を上回る義務を自社に課し、コンプライアンスの徹底を図るべきです。法令違反の予防や、強固なコンプライアンス体制の対外的なアピールにつながります。
具体的な業務手順を定めるマニュアル類を整備する際には、法令や社内規程との関係で注意すべき事項を逐一明記し、実際の業務を担当する従業員への意識付けを図りましょう。
コンプライアンス部門の設置
コンプライアンスを重視する企業においては、法務部門から独立したコンプライアンス部門を設置している場合があります。
法務部門が法令や契約などに焦点を当てた業務を担当するのに対して、コンプライアンス部門は幅広い社会規範を意識し、社会からのレピュテーションの観点も踏まえながらコンプライアンスの浸透を図ります。
コンプライアンス部門を設置することは人件費の観点から負担になりますが、特に一定規模以上の企業においては、中長期的に安定した成長を目指す観点から検討の価値があるでしょう。
従業員に関するアプローチ
経営陣だけでなく、従業員も社内におけるコンプライアンスの担い手です。むしろ、実際に業務を担当する従業員にコンプライアンスの意識が浸透していなければ、全社的なコンプライアンスは達成不可能といえます。
従業員の間でコンプライアンスの意識付けを図るためには、以下の取り組みが効果的です。
✅ 内部通報制度の導入
✅ 従業員に対する研修・教育
内部通報制度の導入
内部通報制度とは、社内における違法行為の通報窓口を設けるとともに、通報した従業員等を不利益に取り扱うことを禁止する制度です。公益通報者保護法によって、内部通報制度のルールが定められています。
内部通報制度を導入すれば、従業員等が現場レベルで発見した違法行為を、会社として早期に把握できる可能性があります。その結果、コンプライアンス違反の深刻化を未然に防止することにつながります。
また、内部通報制度の導入には、個々の従業員がコンプライアンスの担い手であることを意識付ける効果もあると考えられます。
従業員に対する研修・教育
全ての従業員が必ずしも、コンプライアンスについて正しく理解しているとは限りません。会社としては、定期的に研修・教育を実施して、従業員全体にコンプライアンスの浸透を図る必要があります。
コンプライアンス強化に取り組む企業の間では、四半期または半期に1回程度、従業員にコンプライアンス研修の受講を義務付けているケースが多いです。
外部講師を招聘する、eラーニング教材を利用するなど方法はさまざまですが、自社の業務において問題になりやすいコンプライアンス違反や注意点を従業員にインプットしましょう。
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外部人材・ツールの活用に関するアプローチ
コンプライアンスを徹底するためには、社内人材による人的なチェックにとどまらず、外部人材やツールを活用したチェックを行うことも効果的です。
特に以下の取り組みは、法令遵守をはじめとしたコンプライアンスへの貢献度が高いと考えられます。
✅ 外部弁護士によるリーガルチェック
✅ AIツールの導入|契約書のレビューなど
外部弁護士によるリーガルチェック
社内規程の策定や契約の締結、各種業法の遵守などに関しては、外部弁護士によるリーガルチェックを受けることが推奨されます。法務担当者だけでは気づかなかった法的リスクにつき、弁護士としての専門性や経験を活かした指摘がなされ、会社は改善に取り組むきっかけを得られる可能性があります。
外部弁護士のリーガルチェックは、案件ごとに依頼するパターンと、顧問契約を締結した上で随時依頼するパターンに大別されます。予算や依頼頻度などを考慮して、自社に合った方を選択しましょう。
AIツールの導入|契約書のレビューなど
契約書のレビューなどに関しては、近年急速にAIツールが発達を見せています。
AIツールは機械的・網羅的に契約書などをチェックし、利用者にとってリスクとなる条項を指摘します。法務担当者や外部弁護士による目視チェックと併用すれば、いっそう効率的かつ漏れなく契約書のレビューなどを行うことができるでしょう。
コンプライアンスを推進する際の注意点
コンプライアンスを推進するに当たっては、特に以下の各点を意識して取り組むことが大切です。
① コンプライアンス違反が生じやすい事業領域を把握する
② 重要なリスクを最優先で解消する|優先順位を立てる
③ コンプライアンス推進は長期投資|適切にコストをかける
④ 優秀なコンプライアンス人材の確保も重要
コンプライアンス違反が生じやすい事業領域を把握する
業法によって規制されている事業や、個人情報を取り扱う事業などは、特にコンプライアンス違反のリスクが高い領域といえます。
自社が抱える事業の中で違反リスクが高いものを把握し、そこへ集中的に対策を行うことが、効果的なコンプライアンスの強化につながります。
重要なリスクを最優先で解消する|優先順位を立てる
コンプライアンス強化に割くことのリソース(人員、資金など)は有限であり、社内におけるリスクを一挙に解消することは不可能です。中長期的には全社的なコンプライアンス強化を目指すとしても、短期的には優先順位を立てて対策を進める必要があります。
早急なコンプライアンス強化が求められるのは、違反が発生した場合に大きなダメージを受ける可能性がある事業領域です。自社の主要事業、多数の取引先や顧客と関わる事業、法令によって重いペナルティが課されている事業などについては、特に優先してコンプライアンス強化を図りましょう。
コンプライアンス推進は長期投資|適切にコストをかける
コンプライアンスの推進は短期的に利益を生むものではないため、企業においてはどうしても後回しにされてしまいがちです。
しかし、企業のレピュテーションを維持・向上させ、中長期的な成長を遂げるためには、コンプライアンス強化に取り組むことは必要不可欠です。短期的には利益につながらなくても、適切にコストをかけてコンプライアンス体制を整えましょう。
優秀なコンプライアンス人材の確保も重要
社内全体でコンプライアンス強化を図るためには、コンプライアンス実務に精通した優秀な人材を確保することも大切です。コンプライアンス強化に取り組んだ経験のある人材を、中途採用などを通じて確保しましょう。
例えば、金融会社のコンプライアンス部門や内部監査部門に所属していた人、監査法人において監査業務を担当したことのある人などは、コンプライアンス強化に取り組む企業において貴重な人材となるでしょう。
この記事のまとめ
コンプライアンス違反が発生したときの対応方法の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!
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