法務業務をアウトソーシングするときのポイントを解説!

この記事のまとめ

この記事では、「法務業務をアウトソーシングするときのポイント」について解説します。

ヒー

法務部って、契約書をレビューするというイメージがありますが、その他にも様々な業務がありますよね。

ムートン

そうですね。会社のコンプライアンスの重要性も増していますし、法務部の重要性は今後ますます高まっていきそうですね。法務業務にはどんなものがあるのか、見てみましょう。

※この記事は、2020年12月11日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

多岐にわたる法務業務

契約法務

法務業務と一口に言っても、様々な業務が含まれています。

法務業務の一つとして、契約業務があります。
契約業務とは、契約書の作成、作成された契約書の内容についてのレビュー、 契約の締結交渉など、契約に関する一切の業務をいいます。

企業活動においては契約を締結する場面が多くあります。
例えば、自社の製品を購入してもらう際の売買契約、従業員を雇い入れる際の雇用契約、 事業上必要な物品やサービスを自社が購入する場合の購入契約などです。

この場合、契約の内容についてしっかりと確認していない、そもそも契約書を作成しておらず 口約束のみで契約を進めてしまった、となると、いざトラブルとなったときに不測の損害が生 ずる可能性があります。

例えば、契約書をそもそも作成していないような場合には、代金や納期、納入すべき物や 提供するサービスの品質など、当事者間で認識の違いがあったような場合には、 契約の内容を確認する証拠となる契約書がないために、契約の内容をめぐって当事者間で トラブルになる可能性があります。

また、契約書が作成されているような場合であっても、契約書の内容をしっかりと確認していな かったために、自社に著しく不利な取引条件が含まれていたりする可能性や、 トラブルが発生した際の規定がないためにうまく紛争処理ができない、 といった事態が考えられます。

将来のトラブル防止のためには、契約書を作成して、作成された契約書が自社のとって 適正な内容のものになっているかどうかをチェックする必要があります。

しかし、契約書の内容は一見して難解なことも多く、将来のトラブルを防止するためには、 契約書について、一定の専門知識・実務経験を有する者がチェックする必要があり、 この機能を担うのが法務における契約業務となります。

機関法務(ガバナンス)

法務の業務の一つとして、機関法務があります。

機関法務とは、名前そのものからは何をするのか具体的にイメージしにくいですが、 ここでいう「機関」とは、会社における機関、例えば株主総会や取締役会のことです。

したがって、機関法務とは、主にこれら機関に関する業務、すなわち株主総会対応や、 取締役会対応などのことをいいます。会社の機関の運営や、その意思決定が適法に行われる ような対応が機関法務の内容となっています。

取締役会や株主総会などの機関は、会社法上その開催方法や運営方法、意思決定の方法が定められています。

法令を遵守せずに行った取締役会や、株主総会による決定事項などは、 その有効性が問題になることもあり、法令を遵守した機関の運営は、 企業活動において不可欠なものとなります。

契約業務と同じく、機関法務に関しても、会社法などの関係法令を把握したうえで、 機関の運営、意思決定をサポートする必要があり、高度な専門性が求められます。

労務

法務の業務として、労務関連業務も重要な業務の一つです。

労務関連業務は、会社の労働者に関する一切の業務をさし、具体的な業務は多岐にわたります。 労務は近年の働き方改革の影響もあり、特にその重要性が増してきている業務であるといえます。

労務関連業務として主にあげられるのは、給与計算や勤怠管理などの労務管理、就業規則などの 各種規則の作成及び運用、また労使関係や労働組合への対応があります。

まず、労務管理の中でも、給与計算の際の各種手当の計算や労働時間の管理は、労働基準法などの 各種法令でも規律がなされているものであり、関係法令を遵守する必要があります。

法令遵守がなされていない場合には、労働紛争につながる可能性もあり、労務管理においては、 専門知識を有する者が、適切な管理を行う必要があります。

また、就業規則などの各種規則の作成、及び規則の運用も労務関連業務の重要な一つです。 就業規則は、労働基準法上10人以上の労働者を使用する事業場では必ず定める必要があるとされており、 多くの会社で定められています。
作成については、外部の弁護士、社労士などへのアウトソーシングも考えられますが、 社内の法務部が作成することも考えられます。
また、制定された就業規則が適切に運用されているか、については、 会社の内部にいる法務部が確認することが望ましいです。

さらに、労使紛争対応や労働組合への対応も、労務関連業務の一つとしてあげられます。 労働者が条件の改善などを求めて、個人で行う労働争議や、労働組合などを通じて行う 集団的労使紛争について、適切な対応をする必要があります。

紛争(訴訟)対応

法務の業務の一つとして、紛争対応があります。
契約法務や機関法務が、どちらかといえば事前に紛争を予防する予防法務の性質を有しますが、 紛争対応はすでに発生したトラブルに対応する業務です。

紛争対応は、顧客などによるクレームの処理、また顧客、取引先などから起こされた訴訟の対応などが挙げられます。

顧客や取引先からのクレームや訴訟に対して、自社のダメージは最低限に抑えた上で、 顧客や取引先も納得するような円満な解決を図ることが紛争対応の目的となります。
訴訟そのものの直接の対応は、外部の弁護士を用いることが多いですが、 外部の弁護士へ社内の事情などを的確に伝えて意思疎通をすることも法務の重要な役割の一つです。

法律相談

法務の業務の一つとして、社内の法律相談への対応があります。

企業活動は、事業活動に関連する様々な法令に違反しないか適宜注意しながら行う必要があります。 しかし、事業活動に伴う法的リスクについては、実際に事業活動を行う部署のみではその判断が難 しいことがあります。

ある法令に違反しないかどうかの判断や、そもそも行おうとしている事業活動にいかなる法令が関係 するのか、ということは、法的知識・実務経験を有する法務部が判断するのが望ましいです。

法務部は、会社の事業活動が直面しうる法的リスクについて、法律相談に応じ、 適法性やリスクの大きさなどについて判断します。

例えば、新たな商品を売り出すために広告を出す場合には、景品表示法の規制を守らなければなりません。

例えば、景表法では、その商品の効用や価格等について、 消費者をだますような表示が禁じられています(不当表示の禁止)。 それにもかかわらず、事業部が過大な広告を打とうとしているような場合には、 その適法性をチェックしたうえで、不当表示に当たるような場合には法務部が ブレーキをかけることが必要となります。

コンプライアンス

法務部は、社内における法令遵守(コンプライアンス)を実現する体制づくりを行う機能も担っています。
コンプライアンス業務も、企業の法令遵守体制を確立して違法行為などを予防する、 という点で予防法務の性質があるといえます。

具体的には、ハラスメント対策内部監査体制の構築・運用内部通報制度の構築・運用、 また、法令遵守に向けた各種規則の制定などを行います。

知的財産

最後に、知的財産業務について説明します。

会社によっては、法務部とは別に知的財産部が存在し、知財財産業務は知財財産部が行うことも多いです。 知的財産は、その性質上特に専門性が要求される領域であるためです。

近年は無形財産の重要性が増しており、知的財産の保護やこれに関する業務は近年重要性を増し続けています。

知的財産業務は、知的財産の出願、知的財産にかかわる紛争対応、知的財産の調査などがあげられます。

知的財産の出願は、自社の発明について公開する代わりに独占的に発明を使用するための特許出願、 自社の考えたデザインを同様に独占的に使用するための意匠出願などの業務があります。

知的財産にかかわる紛争対応は、自社の知的財産が侵害され、事業活動が阻害されている場合の、 侵害している会社に対する対応、逆に他社の知的財産権を侵害したとしてクレームを受けた場合などの 対応などがあります。

知的財産の調査は、たとえば、特許出願する前に、同様の発明が先願されていないかを確認する、 自社の行う事業について、他社の特許などを侵害していないか確認する、などの調査があります。
また、競合がそのような特許出願をしているのかを調査することで、競合の事業展開について 推測することなども可能です。

誰にアウトソーシングするのか?

ヒー

会社の顧問をお願いしている外部の弁護士の人と打合せがあるんですけど、緊張します・・・。 何か気を付けた方がいいことってありますか?

ムートン

法務業務を外部の専門家にアウトソーシングするときに気を付ける点についておさらいしておきましょう。

ここまで、法務の業務内容にいかなるものがあるのか、ということを解説してきました。

法務の仕事は多岐にわたり、また専門性が非常に高い分野です。
したがって、専門の法務部が存在していたとしても、その業務の量や専門性の高さから、 一定の場合には外部の専門家に対してアウトソーシングせざるを得ないような場合が出てきます。

具体的には、弁護士や弁理士などの専門家に対してアウトソーシングすることが考えられます。
以下、法務の業務のどの部分を、どのような専門家にアウトソーシングすればいいのか、 について検討していきます。
各専門家の強みがあることはもちろん、弁護士法などにより委託できる業務が規制されている場合 もあるので、アウトソーシング先の選定は法令遵守の観点もふまえて行う必要があります。

まず、弁護士以外の法律専門職、例えば司法書士や弁理士に対して業務委託をする際には、 各職種の取り扱うことのできる職務の範囲内かどうか、という点に注意する必要があります。 具体的には、弁護士法72条との抵触に注意する必要があります。

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第72条 
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、 再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは 和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。 ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

弁護士法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

弁護士法72条は、上記のように規定し、弁護士以外のものが、報酬を得る目的で法律事務を取り扱うこと、 これのあっせんをすることを業とすることを禁じています。

そして、法は、72条ただし書きの場合、すなわち法令により除外事由があるような場合には、 例外的に弁護士以外の者でも法律事務を取り扱うことを許容しています。
司法書士や行政書士、弁理士など職種が、法律事務のある分野について 業として取り扱うことができるのは、司法書士法、弁理士法などの各業法により例外的に その事務の取り扱いが許容されているから、ということになります。

したがって、弁護士以外の法律専門職に対して法律事務の委託をする際には、 委託しようとする法律事務が、各専門職の取り扱うことのできる業務に含まれているのか、 という点に注意する必要があります。

具体的に見てみると、司法書士は登記や供託手続の代理、法務局に提出する書類の作成や、 (法務大臣の認定を受けた司法書士については)簡易裁判所における訴額140万円以下の訴訟や民事調停、 和解等の代理や関連する法律相談について取り扱うことができます(司法書士法3条参照)。

弁理士は、特許、実用新案、意匠、商標などの知的財産権に関する出願代理業務や審査請求業務、 特許などの権利売買やライセンス交渉に関する契約関連業務などについて取り扱うことができます (弁理士法4条参照)。

法務業務をアウトソーシングして得られるメリット

法務業務を弁護士などの外部の専門家にアウトソーシングすることのメリットについて解説します。

まず、弁護士などの法律専門職は、資格試験に合格し、専門職としての実務経験を有しており、一定の専門性が保証されています。
専門性の高い外部の専門職へのアウトソーシングにより、業務の質の向上や、効率の向上が期待できます。
さらに、法律専門職の中には、ある特定の分野を自身の強みとして有している者も多く、 特定の分野に強い法的専門職に対してアウトソーシングすることで、専門性の高い業務についても、 質の高いアウトプットが期待できます。

また、外部専門家を活用することにより業務の切り出しができ、業務の切り出しによって社員が 他の業務に集中することができる、ということも、メリットとしてあげられます。

以上のように、高い専門性を有する外部専門家の活用による業務の質の向上・効率化、及び、 アウトソーシングにより法務部の社員が他の業務に従事することができる、といった点が、 アウトソーシングのメリットとしてあげられます。

法務業務をアウトソーシングする際の注意点

業務の切り分けをしっかり行う

では、法務業務をアウトソーシングする際に何に気を付ければよいのでしょうか。

まずは、業務をアウトソーシングする範囲をしっかりと検討する、すなわち、 アウトソーシングする業務の範囲の切り分け作業を丁寧に行う必要があります。

社内の法務業務のうち、どの業務をアウトソーシングしどの業務を内製化するのか、 という点はコストパフォーマンスや、業務の性質から検討する必要があります。

外部の専門家へのアウトソーシングは、費用が高額になることも少なくありません。 また、外部の専門家は専門性は高いものの、会社の事業や内部事情を完全に把握しているわけでもなく、 法務業務の種類によっては、内部事情に精通している社内の法務部が取り扱ったほうが望ましいものも考えられます。

社内の事情などをしっかり説明する

次に、外部の専門家に対して、社内の事情などをしっかりと説明する必要があります。

外部の専門家はあくまで「外部」の者であり、会社内部の事情に必ずしも詳しくありません。 事業に関する知識、内部事情や背景を認識していないと、的確なアウトプットを行うことはできません。

したがって、社内の法務から外部の専門家へ、内部事情についてしっかりと共有しておくことが重要です。

外部の専門家の知見を学ぶ

最後に、たとえ外部の専門家にアウトソーシングした業務であっても、可能な範囲で、 その業務に関する理解や知識を深め、勉強・研鑽は怠らないようにするのが望ましいです。

外部の専門家へのアウトソーシングは、高い専門性を有する専門家の質の高いアウトプットが期待できます。他方で、業務をアウトソーシングすると、業務を内部で行わないため、アウトソーシングした業務に関する知識やノウハウが社内で蓄積しにくいおそれもあります。

ある業務の知識やノウハウが社内にないままでは、外部の専門家のアウトプットを 十分に生かすことも難しくなります。したがって、外部の専門家にアウトソーシングする際は、 可能な範囲で、外部の専門家の知見を学ぶよう努め、アウトソーシングした業務であっても、 社内において勉強や研鑽を行うのが望ましいです。

リーガルテックツールの積極活用

ここで、リーガルテックツールの導入による法務業務の効率化、について述べていきます。

リーガルテックとは、その名の通り、”Legal”と”Technology”を組み合わせた言葉であり、 法務業務を支援するテクノロジーです。

リーガルテックツールの導入により、法務業務の効率化が期待できます。
リーガルテックツールは、今まで企業の法務部員が地道に行っていた作業を代替することで、 企業の法務部員がさらに高度な業務に専念することを可能にします。

リーガルテックツールには、例えば契約業務関連ですと、AIによる契約書レビュー支援ツールや、 契約書の管理ツールなどがあります。
法務部の代表的な業務の一つである契約業務についてリーガルテックツールを用いた場合、 AIの自動レビューによって契約書レビューの時間の削減が期待でき、難易度の高い契約書の作成、 レビューなど、より高度な業務への集中が可能になります。
また、契約書のバージョン管理など、人の手による作業では非効率になる部分について 効率化の支援が期待できます。

AI契約書レビュー支援ソフト「LegalForce」では効率的に契約チェックが行える

最後に、リーガルテックツールの一つとして、AIによる契約書レビュー支援ソフトウェア 「LegalForce」について説明したいと思います。

LegalForceは、契約業務に関するリーガルテックツールであり、AIによる契約書の自動レビューなどを行います。
AIが数秒で契約書に潜むリスクを洗い出し、修正の参考となる修正文例や、 修正の指針となる解説を閲覧することも可能です。
契約書の作成、レビューにおいて、自社のひな形や過去の契約書データベースから、 瞬時に関連する条文を検索することも可能です。
また、法改正に伴いアップデートされ続ける弁護士監修の契約書ひな形もあります。

LegalForceを利用することにより、契約書に潜むリスクを、AIにより瞬時に洗い出せるため、 契約業務の質の向上及び効率化が期待でき、法務部内でLegalForceを利用することにより、 契約書レビューに関する質のばらつきを抑えることも期待できます。

LegalForceは、弁護士が監修したリーガルテックツールです。社内の開発選任の弁護士、 提携法律事務所の弁護士による監修がなされています。

この記事のまとめ

この記事では、法務業務の内容、そして、法務業務をアウトソーシングするときのポイントについて解説しました。
この記事が、皆さまの法務業務のさらなる質の向上、効率化に役立てば幸いです。

参考文献

日本弁護士連合会「隣接士業・非弁活動・非弁提携対策(業際・非弁・非弁提携問題等対策本部)」