契約書作成で気をつけるべきポイントを解説!

この記事のまとめ

この記事では、契約書を作成するときに気を付けるべきポイントを解説します。

契約書レビューをするときに知っておきたいWordの使い方・機能については、こちらの記事で解説しています。

(※この記事は、2020年11月26日時点の法令等に基づいて作成されています。)

そもそも契約書とは?

契約とは、「2人以上の当事者間で、相対する意思表示(申し込みと、それに対応する承諾)が合致することによって 成立する、法的な権利と義務が発生する行為」です。

そして、「契約書」とは、「契約」内容が記載された書面ということになります。

契約書を作成する理由

契約書を作成する理由としては以下のようなことが挙げられます。

契約書を作成する理由

✅当事者間の合意内容を明確にする
✅契約履行の指針とする 
✅紛争となった場合に証拠とすることができる

契約書作成の際に気をつけるべきポイント

契約書作成の際に気をつけるべきポイント

✅ひな形に頼りすぎない
✅バランスのとれた契約書を心がける
✅事業(契約の背景)を理解した上で作成する

ひな形に頼りすぎない

契約書を作成する場合に、ひな形を使うことがあります。

会社において、一定の類型の取引を繰り返し行うことが多い場合には、ひな形を使うことにより、 業務の効率化を図ることができます。

また、ひな形を使うことで、類型的に検討すべき項目の漏れを防止することもできますし、ひな形と相違する内容について、 チェックする体制にしておくことで、想定し得ないリスクを排除することができます。

他方、取引の個性に応じたリスクを検討することなく、漫然とひな形に頼って契約を締結するようなことがあれば、 意図した法律効果が得られなかったり、想定しなかったリスクの発生に対処できなかったりして、トラブルの元となる可能性があります。

また、 取引の類型にかかわらず、契約当事者の力関係、利害関係はケースバイケースで異なってきます。

したがって、ひな形を利用する場合も、 ひな形に依存しすぎず、個別の取引に応じてひな形を修正すべき点はないか、または、 ひな形を使わずに契約書を一から作成すべきなのかを検討することが大切です

バランスのとれた契約書を心がける

契約書作成においては、特に当事者間の力関係において、一方当事者が強い場合、 当該当事者に有利すぎる条件を入れる場合があります。

しかし、一方当事者に有利すぎる条項は、相手方との今後の取引関係を悪化させるおそれもありますし、 あまりにも有利な場合は、公序良俗違反(民法90条)や独占禁止法違反となり条項が無効となる可能性があります。

一方当事者に有利すぎる内容にしないよう、バランスの取れた契約書の作成を心がけましょう。

事業を理解した上で作成する

契約書は、当事者が互いに特定の取引を行う上で必要な権利義務を発生させるものでなければなりません。
そして、契約書は、それぞれ、相手方、契約の背景、取引の内容などが異なるものであり、 全ての契約書がオーダーメイドだといえます。

したがって、契約書を作成するときは、 想定する事業を理解した上で、当該事業ではどういうリスクが生じ得るのかを想像し、 当該事業ではどういう契約上の手当てを講ずる必要があるのかを検討する必要があります。

契約書の項目

タイトル

契約書にはタイトルを付けるのが通常です。

不動産の売買であれば不動産売買契約書、金銭の貸し借りであれば金銭消費貸借契約書というように、 契約の内容を端的に表現するのが原則です。

なお、契約書の表題が契約書の内容を正確に表現するものでなかったとしても、 内容が当事者間に権利義務を生じさせるのに十分なものであれば、その締結によって記載の内容通りの契約の効力が生じます。

相手方から契約書などの提示を受けた場合には、表題にとらわれることなく、内容を精査することが必要となります。

前文

前文については、 契約当事者、締結する契約書の内容などを記載するのが一般的です。
契約当事者、目的物など、本文によくでてくる言葉の定義を定めることも多いです。

本文

本文には、契約の内容を条項に分けて記載します。
内容は、契約に応じて様々ですが、一般的には、「契約の目的」、「権利義務の内容」、 「条件・期限・期間」、「解除・損害賠償」、「費用負担」、「準拠法合意管轄などを定めます。

以下、順に説明します。

契約の目的

契約書には、契約書作成の目的あるいは契約の目的を記載することが通常です。

例えば、「契約の目的を達しない場合に契約を解除できる」旨を定めた場合には、 何が契約の目的なのかが重要な意味を持つため、目的を明確に定めておくことが重要です。

権利義務の内容

契約書では、当事者間の「権利義務の内容」を定める部分が中心となります。 想定する事業内容を前提として、意図する法律効果をイメージし、リスクも想定しながら作成します。

また、契約の目的物がある場合、契約の類型によっては、目的物を別紙などでできる限り詳細に特定し、 疑義が残らないようにするのが望ましいです。

条件・期限・期間

権利義務の発生に条件を付する場合には、当該条件を明確に特定する必要があります。 併せて、条件の成就・不成就によって、契約関係がどのようになるのか明確にすることが重要です。

また、権利義務の履行に期限を付する場合には、期限を経過した場合のぺナルティ(遅延損害金など)や、期限の利益の喪失について定めるのが一般的です

さらに、継続的な契約関係について、有効期間を定める場合には、 期間内解約の可否、期間満了時の取扱い (更新・延長の有無、更新拒絶などの場合の事前通知の要否など)を定めるのが一般です。

解除・損害賠償

相手方が契約の本旨に従った履行をしない場合、相手方の信用が低下した場合など、 一定の事由が生じた場合に解除できる旨を明確にしたり、無催告解除の特約を定めるのが一般的です。

また、契約の義務を履行しなかった当事者に対し、損害賠償請求をなし得る旨を定め、損害賠償の額について、 損害賠償額の予定、損害賠償額の上限などを定めることも考えられます。

費用負担

契約の締結・履行に関連して費用が発生する場合には、その費用の負担を定めるのが望ましいです。

準拠法・合意管轄

契約当事者間において契約に関連して紛争が発生した場合に、紛争解決において、 準拠する法律は何か(準拠法)、どの裁判所にて解決するのか(管轄)、などを定めるのが一般的です。

後文

「後文」には、 契約書の作成通数、原本の所持・保管者、特殊な締結手続きであればその旨 (例えば、委任状による締結や、電子契約での締結であればその旨)などが記載されるのが一般的です。

「当事者の数、契約書の原本を作成し、各当事者が当該原本を保管する」と定めることが多いです。

紛争に至ったときに、契約書の作成通数、原本の所持者、契約の締結方法などが意味を持つ場合もあり得るため、記載されるものです。

日付欄

「日付欄」には、実際に契約書が作成された日を記載するのが原則です。

裁判での証拠として契約書を利用する場合などに、いつ契約書が作成されたかが重要な意味を持つ場合があります。

署名押印欄

「署名押印欄」には、契約当事者が、契約当事者が企業などである場合は契約締結の権限のある者(代表取締役など)が署名捺印もしくは記名捺印します。

紙の契約書と電子契約

最近では、紙の契約書による契約締結だけでなく、電子契約による契約締結も徐々に増加してきています。

電子契約とは、電子ファイルをインターネット上で交換して電子署名を施すことで契約を締結し、 企業のサーバーなどに電子データを保管しておく契約方式をいいます。

電子契約を用いることで、特に企業間の取引においては、契約に関する費用(郵送代、封筒代など)を削減できたり、 契約締結および管理の業務効率化に資することが期待されます。

AI契約書レビュー支援ソフト「LegalForce」でレビュー・作成ができる

AI契約書レビュー支援ソフト「LegalForce」は、AIが契約書のリスクを自動で抽出し、また、重要な条項・自社に有利な条項の抜け漏れを自動で指摘します。
他にも、以下のような機能があります。

・自社の過去の契約書の中から、条文を検索することができます。
・自社のひな形などと、特定の契約書の差分を表示することができます。
(このとき、同じ内容の条項を、条番号が異なっていても、自動的に隣に並べる機能も有しています)

契約書のひな形(テンプレート)

契約書を作成するときは、各省庁・業界団体などが提供しているひな形を参考にすることが多いです。 上述のように、ひな形に依存しすぎないことは大切ですが、ベースとなるひな形があれば、効率的に契約書を作成することが可能です。
LegalForceでは、法律事務所ZeLo作成・監修の契約書ひな形を300種類以上提供しております。

この記事のまとめ

契約書は、取引において契約当事者が意図する権利義務関係を書面で明確に残すことにより、紛争を予防し、また、 紛争が発生した場合にその解決指針となるものです。

契約書作成にあたっては、 当事者間の力関係・利害関係などに注意しつつ、想定する事業を十分理解した上で作成することが重要です。

参考文献

阿部・井窪・片山法律事務所「契約書作成の実務と書式」第2版