過労死ラインとは?
危険な残業時間の水準や
企業がとるべき防止措置などを
分かりやすく解説!

無料で資料をダウンロード
 人事・労務部門ですぐに使えるChatGPTプロンプト集 >
✅ 副業解禁のために企業が知っておくべき就業規則の見直しポイント >
この記事のまとめ

過労死ライン」とは、重大な健康障害や死亡のリスクが高まる残業時間の水準を指す言葉です。

脳・心臓疾患の労災認定基準では、以下のいずれかの時間外労働が認められる場合は、業務と発症の関連性が強いと評価できるとされています。この水準を過労死ラインと呼ぶのが一般的です。
・発症前1カ月間で100時間を超える時間外労働
・発症前2~6カ月間で月平均80時間を超える時間外労働

過労死ラインを超えないように、労働基準法では残業時間の上限規制が設けられています。
36協定を締結しても、原則として時間外労働は月45時間までしか認められません。特別条項を定めれば月45時間を超えることもできますが、過労死ラインを超えることはできないようになっています。

労働者の過労死を防ぐため、企業は労働時間の正確な把握、業務負担の分散化、ハラスメント防止措置などに取り組むことが求められます。

この記事では過労死ラインについて、危険な労働時間の水準や企業がとるべき防止措置などを解説します。

ヒー

「過労死ライン」という言葉をよく聞きますが、具体的なラインがわかりません。

ムートン

一般的には、月80時間を超える時間外・休日労働などが目安とされています。企業が知っておくべき法的リスクや防止策と併せて、詳しく解説していきましょう。

※この記事は、2025年11月22日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

過労死ラインとは

過労死ライン」とは、重大な健康障害や死亡のリスクが高まる残業時間の水準を指す言葉です

労働時間が長くなればなるほど、脳や心臓の疾患、精神疾患などを発症するリスクが高まることで知られています。
日本では伝統的に、労働者の間で「会社に貢献しなければならない」という意識が広まったことなどにより、慢性的に長時間労働が行われる傾向が見られました。その結果として、働き過ぎた労働者が「過労死」してしまうケースがしばしば見られ、社会問題となりました。

こうした状況に警鐘を鳴らすため、「過労死ライン」という言葉が用いられるようになりました。企業は過労死ラインを念頭に置いて、労働時間がそれを超えないようにすることが求められます。

労災認定基準における過労死ライン

過労死ラインの定義は必ずしも明確ではないですが、一般的には脳・心臓疾患の労災認定基準が参照されます。

脳・心臓疾患の労災認定基準では、以下の時間外労働(=1週間当たり40時間を超える労働)が認められる場合には、業務と発症との関連性が強いと評価できるとされています。

① 発症前1カ月間で100時間を超える時間外労働
② 発症前2~6カ月間で月平均80時間を超える時間外労働
 
参考:厚生労働省ウェブサイト「脳・心臓疾患の労災補償について」

これを参考にして、「月100時間超」または「2~6カ月の平均が月80時間超」を過労死ラインと言うことが多いです
なお、過労死ラインに至らずとも、これに近い時間外労働があり、不規則な勤務などの「労働時間以外の負荷要因」が認められる場合も、過労死と認定される場合があります。

過労死ラインを超えないようにするための残業時間規制

2019年4月1日以降順次施行された「働き方改革関連法」により、労働基準法における残業時間の規制が厳格化されました。

具体的には、時間外労働のルールを定める「36協定」について、過労死ラインを念頭に置いた上限規制が設けられました。その主な内容を解説します。

36協定によって認められる時間外労働は、原則として月45時間まで

36協定」とは、時間外労働と休日労働のルールを定めた労使協定です。使用者が労働者に時間外労働をさせるには、事業場ごとに労働組合等との間で36協定を締結し、労働基準監督署に届け出なければなりません。

時間外労働・休日労働とは

時間外労働:法定労働時間を超える残業
※法定労働時間は原則として、1日当たり8時間・1週当たり40時間

休日労働:法定休日に行われる労働

2019年4月1日に施行された働き方改革関連法により、36協定を締結している場合でも、時間外労働は原則として「月45時間・年360時間」までに抑えなければならないとされました(労働基準法36条3項・4項)

脳・心臓疾患の労災認定基準では、発症前1~6カ月間にわたって、月45時間を超える時間外労働が認められない場合には、業務と発症との関連性が弱いことが指摘されています。
時間外労働を原則として月45時間までに抑える上記の規定は、この労災認定基準を念頭に置いたものと考えられます。

36協定に特別条項を定めても、過労死ラインを超えることはできない

36協定に「特別条項」を定めれば、「月45時間・年360時間」の限度時間を超えて、労働者に時間外労働をさせることが認められます(労働基準法36条5項)。

36協定の特別条項に定めるべき事項

・1カ月の時間外労働+休日労働の合計時間数
※100時間未満

・1年の時間外労働の時間数
※720時間以内

・限度時間の超過が認められる回数
※1年のうち6回(6カ月)以内

・限度時間の超過が認められる場合
※具体的な記載が必要(「繁忙の場合」などの抽象的な記載は不可)

・限度時間を超過した労働者に対する健康福祉確保措置

・限度時間を超過した労働に係る割増賃金率

特別条項を定めている場合でも、1カ月の時間外労働と休日労働の合計時間数は100時間未満としなければなりません
また、2~6カ月間における時間外労働と休日労働の合計時間数も、平均して月80時間以下としなければなりません(同条6項3号)

これらの規制により、過労死ラインを超えて労働させることは違法であることが明確化されました。

過労死ラインを超えていなくても、過労死のリスクが高いケースはある

労働時間が過労死ラインを超えていなくても、労働者が過労死してしまうリスクが高まるケースはあります。企業としては、労働時間が過労死ラインを超えないようにすることはもちろん、他の要因も含めて労働者に負荷がかかり過ぎないように配慮しなければなりません

時間外労働が月45時間を超えると、過労死のリスクが高まる

脳・心臓疾患の労災認定基準では、時間外労働が45時間を超えると、その時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まることが指摘されています

50時間、60時間、70時間……と時間外労働が長引けば、その分脳・心臓疾患を発症するリスクが高まります。36協定の特別条項によって認められるとしても、このような長時間労働をさせることは健康障害のリスクが高いことを認識すべきです。

企業としては、業務の効率化やバランスのよい人材配置などを通じて、できる限り労働時間を減らすように努めなければなりません。

長時間労働以外に、過労死の原因になり得る主なリスク要因

脳・心臓疾患の労災認定基準では、時間外労働の時間数のほかにも、疾患の発症に寄与し得るさまざまな負荷要因が挙げられています。

(例)
・休日のない連続勤務
・勤務間インターバルが短い勤務
・不規則な勤務、交代制勤務、深夜勤務
・出張の多い業務、その他事業場外における異動を伴う業務
・自分や他人の生命や財産が脅かされる危険性を有する業務
・危険回避責任がある業務
・人命や人の一生を左右しかねない重大な判断や処置が求められる業務
・極めて危険な物質を取り扱う業務
・決められた時間(納期等)どおりに遂行しなければならないような困難な業務
・周囲の理解や支援のない状況下での困難な業務
・業務に関する事故や災害の体験
・重大な仕事の失敗、過重な責任の発生
・仕事内容の大きな変化
・感染症等の病気や事故の危険性が高い業務
・退職の強要
・転勤、配置転換等
・複数名で担当していた業務を1人で担当するようになった
雇用形態や国籍、性別等を理由とする不利益な処遇等
・パワーハラスメント(パワハラ)
・対人関係でのトラブル
・セクシュアルハラスメント(セクハラ)
など

企業としては、単に労働時間を短くすればいいだけではなく、これらのリスク要因も含めて労働者に負荷がかかり過ぎないように配慮しなければなりません。

また、時間外労働が月45~80時間程度(過労死ラインを下回る程度)であっても、上記に挙げたような負荷要因が重なると、労働者の健康障害のリスクが大幅に高まることにご留意ください

過労死に関する企業の法的リスク

自社において過労死が発生すると、企業は以下のリスクを負ってしまいます。

① 刑事責任|刑事罰を受ける可能性あり
② 民事責任|多額の損害賠償責任を負う可能性あり
③ レピュテーションリスク|企業名の報道による評判の低下など

刑事責任|刑事罰を受ける可能性あり

労働者の過労死の背景には、以下のような事情が存在するケースがしばしばあります。これらはいずれも、使用者の労働基準法違反に当たります。

・36協定の上限を超える時間外労働を行っていた。
・休憩が全く与えられず、長時間にわたる連続勤務を強いられていた。
・36協定のルールを無視して、度重なる休日出勤を指示されていた。
有給休暇の取得を拒否されていた。
など

上記の違反を犯した者は「6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」に処されます(労働基準法119条1号)。また、会社(法人)も「30万円以下の罰金」に処されます(同法121条)

民事責任|多額の損害賠償責任を負う可能性あり

過労死をした労働者に対して、使用者である企業は「使用者責任」または「安全配慮義務違反」に基づく損害賠償責任を負うことがあります。

使用者責任・安全配慮義務違反とは

【使用者責任】
自社の他の従業員が過労死の原因を作った場合などに、会社が亡くなった労働者に対して負う損害賠償責任(民法715条1項)

【安全配慮義務違反】
従業員の生命や身体の安全に配慮する義務を怠った結果、従業員が過労死した場合に会社が負う損害賠償責任(労働契約法5条、民法415条)

過労死に関する損害賠償は、数千万円以上に及ぶ可能性が高いです。労災保険によって一部はカバーされますが、会社としても相当多額の損害賠償を支払うことになるおそれがあります。

レピュテーションリスク|企業名の報道による評判の低下など

違法に長時間労働をさせるなど、労務管理を適切に行わない企業に対しては、社会全体で批判的な視線が強まっています。

自社において過労死が発生したことが報道されれば、「労働環境が劣悪である」「従業員を守らない」「利益ばかり追求して違法行為をしている」などの悪いイメージが広まってしまいます。その結果、売上の低下や取引先からの契約打ち切り、入社希望者の減少などにつながるおそれがあるので要注意です。

過労死・過重労働を防ぐために企業がすべきこと

過労死の発生を防ぐため、企業は以下の取り組みを継続的に行うことが求められます。

① 労働時間を正確に把握する
② 業務の負担が偏らないように配慮する
③ ハラスメント防止措置を講じる

労働時間を正確に把握する

労働時間の把握が曖昧だと、企業側が認識しないままに長時間労働が慢性化し、過労死のリスクが高まるおそれがあります。過労死を防ぐには、労働時間を正確に把握することが第一歩です

企業としては、タイムカードや勤怠管理システムを用いて、労働時間を機械的に記録することが望ましいです。また、企業側が把握していない残業が行われないように、持ち帰り残業を許可制にすることも考えられます。

業務の負担が偏らないように配慮する

特定の部署に多くの業務が集中している状況では、その部署の従業員が過労死するリスクが高まります。
他の部署に一部の業務を移管する、人員を増やす、配置転換をするなどの対応を通じて、一部の従業員だけに業務の負担が偏らないように配慮しましょう

ハラスメント防止措置を講じる

長時間労働以外に、パワハラやセクハラなどのハラスメントも、労働者に対して大きなストレスをかける要因となります。ハラスメントが深刻化すると、うつ病などの精神障害や、それに伴う過労死等につながりかねません。

企業としては、ハラスメント防止措置を徹底的に講じることが求められます。ハラスメント防止措置の具体的な内容については、厚生労働省が公表している指針を参考にしてください。

参考:厚生労働省ウェブサイト「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産等、育児・介護休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」
ムートン

最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

無料で資料をダウンロード
 人事・労務部門ですぐに使えるChatGPTプロンプト集 >
✅ 副業解禁のために企業が知っておくべき就業規則の見直しポイント >

参考文献

厚生労働省ウェブサイト「脳・心臓疾患の労災補償について」

厚生労働省ウェブサイト「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産等、育児・介護休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」