企画業務型裁量労働制とは?
専門業務型裁量労働制との違い・
導入手続き・運用上の注意点などを
分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

企画業務型裁量労働制」とは、事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析の業務に従事する労働者を対象とした裁量労働制です。労働者に広い裁量が認められる一方で、実際の労働時間にかかわらず「みなし労働時間」が適用されます。

企画業務型裁量労働制とともに、労働基準法では「専門業務型裁量労働制」が認められています。企画業務型と専門業務型は、対象となる業務や導入の手続きなどが異なっています。

企画業務型裁量労働制を導入する際には、労使委員会決議を行ったうえで労働基準監督署長に届け出なければなりません。
導入後の運用に当たっては、残業代の管理、記録の作成と保存、定期的な労使委員会の開催と労働基準監督署長への報告などに注意する必要があります。

この記事では企画業務型裁量労働制について専門業務型裁量労働制との違いや導入手続き、運用上の注意点などを解説します。

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企画業務型裁量労働制はとはどのような制度なのでしょうか?

ムートン

事業の運営に関する企画や分析などを行う従業員を対象に、広い裁量と実労働時間にかかわらない働き方を認める制度です。専門業務型裁量労働制との違いについてもあわせて解説しましょう。

※この記事は、2025年12月4日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

企画業務型裁量労働制とは

企画業務型裁量労働制」とは、事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析の業務に従事する労働者を対象とした裁量労働制です

裁量労働制では、業務について労働者に広い裁量が与えられます。使用者は裁量労働制の労働者に対し、業務の進め方や時間配分などについて具体的な指示をすることができません
その一方で、実際の労働時間にかかわらず「みなし労働時間」が適用されます

労働者が自らの専門性や得意分野を活かし、主体的に業務を行うことによって生産性を高めることが裁量労働制の目的です。

なお労働基準法では、企画業務型裁量労働制のほかに「専門業務型裁量労働制」も認められています。両者の違いは、次の項目で解説します。

企画業務型裁量労働制と専門業務型裁量労働制の共通点・違い

労働基準法では、業務の種類に応じて2種類の裁量労働制(企画業務型裁量労働制・専門業務型裁量労働制)を認めています。両者の共通点と違いは、以下のとおりです。

企画業務型裁量労働制専門業務型裁量労働制
労働者の裁量あり
※使用者は労働者に対し、業務の進め方や時間配分などを具体的に指示できない
みなし労働時間の適用あり
※実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間働いたものとみなされる
健康・福祉確保措置必要
※労働時間の状況に応じて、労働者の健康・福祉を確保するための一定の措置を講じる必要がある
対象業務事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析の業務
※当該業務の性質上、適切に遂行するには遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるものに限る
省令・告示により定められた20業務
導入に必要な手続き労使委員会の決議労使協定の締結

共通点|労働者の裁量、みなし労働時間、健康・福祉確保措置など

企画業務型裁量労働制と専門業務型裁量労働制では、いずれも業務について労働者に広い裁量が認められます。使用者は労働者に対し、業務の進め方や時間配分などを具体的に指示することができません。

また、みなし労働時間が適用される点も共通しています。企画業務型裁量労働制または専門業務型裁量労働制の労働者は、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間働いたものとみなされます。

さらに、使用者が「健康・福祉確保措置」を講ずる義務を負う点も共通しています
「健康・福祉確保措置」とは、裁量労働制の労働者が健康や福祉(=生活の安定や幸福)が損なわれないように、使用者が講ずべき措置です。以下の措置が該当します。

健康・福祉確保措置の内容

【事業場の対象労働者全員を対象とする措置】
・勤務間インターバルの確保
・深夜労働の回数制限
・労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)
・年次有給休暇の取得促進(まとまった日数連続して取得することを含む)

【個々の対象労働者の状況に応じて講ずる措置】
・医師の面接指導(一定の労働時間を超える者が対象)
・代償休日または特別な休暇の付与
・健康診断の実施
・心とからだの健康問題についての相談窓口設置
・適切な部署への配置転換
・産業医等による助言や指導、保健指導

実際に講ずる健康・福祉確保措置の内容は、企画業務型裁量労働制では労使委員会の決議、専門業務型裁量労働制では労使協定によって定めます。

違い|対象業務、導入の手続きなど

企画業務型裁量労働制と専門業務型裁量労働制では、対象となる労働者の業務が異なります

企画業務型裁量労働制の対象となるのは、事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析の業務です。ただし、当該業務の性質上、適切に遂行するには遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるものに限ります。

これに対して、専門業務型裁量労働制の対象となるのは、以下の20業務です。

専門業務型裁量労働制の対象業務

① 新商品や新技術などの研究開発、または人文科学や自然科学に関する研究の業務
② 情報処理システムの分析または設計の業務
③ 記事や放送番組の取材や編集の業務
④ 新たなデザインの考案の業務
⑤ 放送番組や映画などのプロデューサーやディレクターの業務
⑥ コピーライターの業務
⑦ システムコンサルタントの業務
⑧ インテリアコーディネーターの業務
⑨ ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
⑩ 証券アナリストの業務
⑪ 金融商品の開発の業務
⑫ 大学における教授研究の業務
⑬ 銀行、証券会社におけるM&Aアドバイザリー業務
⑭ 公認会計士の業務
⑮ 弁護士の業務
⑯ 建築士の業務
⑰ 不動産鑑定士の業務
⑱ 弁理士の業務
⑲ 税理士の業務
⑳ 中小企業診断士の業務

また、企画業務型裁量労働制と専門業務型裁量労働制では、導入に必要な手続きも異なります

企画業務型裁量労働制を導入する際には、労使委員会を設置したうえでその決議を得なければなりません。労使委員会の委員の半数以上は労働者側の者でなければならず、決議には出席委員の5分の4以上の賛成が必要です。

専門業務型裁量労働制を導入する際には、労使協定を締結する必要があります。労使協定は、使用者と労働組合または労働者の過半数代表者との間で締結します。

企画業務型裁量労働制に関する2024年4月1日改正のポイント

2024年4月1日より施行された労働基準法施行規則等の改正により、企画業務型裁量労働制について以下の変更が行われました

① 労使委員会の運営規程の規定事項の追加
労使委員会の運営規程に定めるべき事項として、以下の3点が追加されました。
・対象労働者に適用される評価制度およびこれに対応する賃金制度の内容の使用者からの説明に関する事項
・制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項
・開催頻度を6カ月以内ごとに1回とすること

② 労使委員会決議事項の追加
労使委員会で決議すべき事項として、労働者の同意の撤回の手続きや、賃金・評価制度の変更時における説明などが追加されました。

③ 記録の作成・保存義務の新設
対象労働者ごとの記録を作成し、労使委員会決議の有効期間中および期間満了後5年間(当分の間は3年間)保存することが義務付けられました。

④ 健康・福祉確保措置の強化
使用者が講ずべき健康・福祉確保措置として、以下の事項が追加されました。
・勤務間インターバルの確保
・深夜労働の回数制限
・労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)
・医師の面接指導(一定の労働時間を超える者が対象)

⑤ 定期報告の起算日・頻度の変更
労働基準監督署に対する定期報告について、報告期間の起算日と報告の頻度が以下のとおり変更されました。
報告期間の起算日:(旧)決議が行われた日→(新)決議の有効期間の始期
報告の頻度:(旧)6カ月以内ごとに1回→(新)初回は6カ月以内に1回、その後は1年以内ごとに1回

企画業務型裁量労働制を導入している企業は、改正後のルールに適合した運用がなされているかどうかをチェックしてください。

企画業務型裁量労働制のメリット・デメリット

企画業務型裁量労働制には、企業側・労働者側の双方にとってメリットとデメリットの両面があります。導入すべきかどうかは、自社の状況や労働者のニーズなどを踏まえて適切に判断してください

企業側のメリット企業側のデメリット
・労働時間を厳密に管理する必要がないため、労務管理の負担が軽減される
・労働者の満足度が高まり、人材の定着につながる
・業務の進め方や時間配分などを具体的に指示できないため、進捗管理がしにくくなる
・導入や運用に関する手続きの手間がかかる

労働者側のメリット労働者側のデメリット
・幅広い裁量が認められるため、自分のペースで働くことができる
・業務を効率的に進めれば、労働時間を短縮でき、ワークライフバランスを確保しやすくなる
・どんなに働いても追加残業代は支払われない
・仕事が終わらないと長時間働かざるを得なくなる

企画業務型裁量労働制を導入する際の手続き

企画業務型裁量労働制を導入する際には、以下の流れで手続きを行います。

① 労使委員会を設置する
② 労使委員会で導入を決議する
③ 労働契約や就業規則を整備する
④ 労使委員会決議を労働基準監督署長へ届け出る
⑤ 対象労働者の同意を得る
⑥ 健康・福祉確保措置と苦情処理措置を講じる

労使委員会を設置する

企画業務型裁量労働制の設計に関する議論や導入の決議は、労使委員会が行います。まずは労使委員会を設置しなければなりません。

労使委員会の委員の半数以上は、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合、または事業場の労働者の過半数を代表する者に、任期を定めて指名された者とする必要があります

また、以下の事項を定めた労使委員会の運営規程を定めなければなりません

労使委員会の運営規程で定めるべき事項

(a)労使委員会の招集に関する事項

(b)労使委員会の定足数に関する事項

(c)労使委員会の議事に関する事項
※議長の選出、決議の方法

(d)対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容の使用者からの説明に関する事項
※説明を行う賃金・評価制度の項目、決議に先立つ事前説明

(e)制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項
※制度の実施状況の把握の頻度や方法

(f)開催頻度を6カ月以内ごとに1回とすること

(g)その他労使委員会の運営について必要な事項
※使用者が労使委員会に対して開示すべき情報の範囲、開示手続、開示が行われる労使委員会の開催時期、労使委員会の調査事項の範囲、労使委員会が労使協定に代えて決議を行うことができる規定の範囲

労使委員会で導入を決議する

労使委員会では、企画業務型裁量労働制の設計などを話し合ったうえで、以下の事項を決議します。決議には出席委員の5分の4以上の賛成が必要です

企画業務型裁量労働制の労使委員会で決議すべき事項

(a)制度の対象とする業務

(b)対象労働者の範囲

(c)1日の労働時間としてみなす時間(みなし労働時間)

(d)適用労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉確保措置の具体的内容
※後述

(e)対象労働者からの苦情処理のために実施する措置の具体的内容
※苦情処理窓口の設置など

(f)制度の適用に当たって労働者本人の同意を得なければならないこと

(g)制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取り扱いをしてはならないこと

(h)制度の適用に関する同意の撤回の手続き
※撤回の申出先となる部署および担当者、申出の方法など

(i)対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うこと

(j)労使協定の有効期間
※3年以内とすることが望ましい

(k)以下の事項に関する労働者ごとの記録を、決議の有効期間中およびその期間満了後3年間保存すること
・労働時間の状況
・健康・福祉確保措置の実施状況
・苦情処理措置の実施状況
・同意および同意の撤回

労働契約や就業規則を整備する

労使委員会決議によって企画業務型裁量労働制の導入を決定したら、その内容を労働契約または就業規則に定めます

例えば、以下の事項などを就業規則に定める例がよく見られます。

裁量労働制に関して就業規則に定めるべき主な事項

・企画業務型裁量労働制を適用する旨
・労働者からの同意の取得方法
・みなし労働時間
・原則的な就業時間と、労働者の裁量に時間配分を委ねる旨
・休憩時間
・休日
・休日労働、深夜労働のルール
など

労使委員会決議を労働基準監督署長へ届け出る

企画業務型裁量労働制に関する労使委員会決議は、事業場を管轄する労働基準監督署長に届け出る必要があります。届出書面の様式は、労働基準監督署の窓口または厚生労働省ウェブサイトから入手できます。

参考:厚生労働省ウェブサイト「主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)」

対象労働者の同意を得る

企画業務型裁量労働制を適用する労働者については、その適用について個別に同意を取得しなければなりません

同意を取得する際には、労働者に対して以下の事項を説明する必要があります。

労働者に対して説明すべき事項

(a) 労使委員会決議の内容等、企画業務型裁量労働制の概要
※対象業務の内容、労使委員会決議の有効期間、みなし労働時間など

(b) 同意した場合に適用される賃金・評価制度の内容

(c) 同意をしなかった場合の配置および処遇
※同意しなかったことを理由に、解雇その他不利益な取り扱いをすることは認められません。

使用者は、同意に関する労働者ごとの記録を、労使委員会決議の有効期間中、およびその満了後3年間保存しなければなりません。

健康・福祉確保措置と苦情処理措置を講じる

労使委員会決議の定めに従い、健康・福祉確保措置を講じます。事業場の対象労働者全員を対象とする措置と、個々の対象労働者の状況に応じて講ずる措置を1つずつ以上実施することが望ましいです

健康・福祉確保措置の内容

【事業場の対象労働者全員を対象とする措置】
・勤務間インターバルの確保
・深夜労働の回数制限
・労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)
・年次有給休暇の取得促進(まとまった日数連続して取得することを含む)

【個々の対象労働者の状況に応じて講ずる措置】
・医師の面接指導(一定の労働時間を超える者が対象)
・代償休日または特別な休暇の付与
・健康診断の実施
・心とからだの健康問題についての相談窓口設置
・適切な部署への配置転換
・産業医等による助言や指導、保健指導

また、対象労働者からの苦情を処理する措置も講ずることが求められます。具体的には、以下の事項などを定めておきましょう。

苦情処理措置の内容

・苦情の申出の窓口、担当者
・取り扱う苦情の範囲
・苦情処理の手順、方法
など

企画業務型裁量労働制の運用に関してよくある質問

Q. 企画業務型裁量労働制でも残業代が発生するのはどのような場合?

労使委員会決議で定めたみなし労働時間が法定労働時間を超えている場合は、割増賃金を支払う必要があります。
また、休日や深夜に働いた場合は、企画業務型裁量労働制でも残業代が発生します。

Q. 企画業務型裁量労働制について、何らかの記録を作成する必要はある?

以下の事項に関する労働者ごとの記録を作成し、労使委員会決議の有効期間中および期間満了後3年間保存する必要があります

(a) 労働時間の状況
(b) 健康・福祉確保措置の実施状況
(c) 苦情処理措置の実施状況
(d) 同意および同意の撤回

Q. 企画業務型裁量労働制の導入後も、労使委員会は開催する必要がある?

労使委員会は、6カ月以内ごとに1回以上開催し、企画業務型裁量労働制の実施状況をモニタリングしなければなりません。具体的な開催頻度は、労使委員会決議において定めます。

Q. 2024年3月以前に企画業務型裁量労働制を導入しました。2024年4月改正に合わせて、改めて手続きが必要ですか?

法令改正に対応して、以下の手続きが必要となります

(a) 労使委員会の運営規程に以下の事項を追加する
・対象労働者に適用される評価制度およびこれに対応する賃金制度の内容の使用者からの説明に関する事項
・制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項
・開催頻度を6カ月以内ごとに1回とすること

(b) 労使委員会において、新たに以下の事項を決議する
・同意の撤回の手続き
・同意および同意の撤回に関する記録の保存
・賃金や評価の制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うこと

(c) 労働基準監督署に(b)の労使委員会決議を届け出る

参考文献

厚生労働省「裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です」

厚生労働省「企画業務型裁量労働制について」