LGBTQとは?
定義・職場で起こりがちなトラブル・
企業が講ずべきセクハラ防止措置などを
分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「LGBTQ」とは、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・クエスチョニング(またはクィア)をまとめた略称で、性的マイノリティ(性的少数者)全般を指しています。
・レズビアン(Lesbian=女性を恋愛対象とする女性)
・ゲイ(Gay=男性を恋愛対象とする男性)
・バイセクシュアル(Bisexual=両性を恋愛対象とする人)
・トランスジェンダー(Transgender=生物学的な性と性自認が一致していない人)
・クエスチョニング(Questioning=性的指向や性自認が定まっていない人)
・クィア(Queer=レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーには当てはまらない性的少数者)LGBTQである労働者については、本人に無断で性的指向や性自認を暴露する(アウティング)、LGBTQであることをからかうような言動を受ける、LGBTQであることを理由に不利益な取り扱いを受けるなどのトラブルが職場で起こりがちです。
企業は、LGBTQに対する正しい理解を基に、当事者である労働者に対するハラスメント等を防止するため、必要な措置を講じなければなりません。この記事ではLGBTQについて、定義・職場で起こりがちなトラブル・企業が講ずべきセクハラ防止措置などを解説します。
※この記事は、2023年10月17日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・LGBT法…性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律
目次
LGBTQとは
「LGBTQ」とは、以下の5つをまとめた略称で、性的マイノリティ(性的少数者)全般を指しています。
・レズビアン
・ゲイ
・バイセクシュアル
・トランスジェンダー
・クエスチョニング(またはクィア)
レズビアンとは
「レズビアン(Lesbian)」とは、女性を恋愛対象とする女性をいいます。
レズビアンの生物学的性は女性で、自分のことを女性であると認識しています(=性自認も女性)。その一方で、恋愛対象も女性である点に着目して、レズビアンは性的マイノリティとされています。
ゲイとは
「ゲイ(Gay)」とは、男性を恋愛対象とする男性をいいます。
ゲイの生物学的性は男性で、自分のことを男性であると認識しています(=性自認も男性)。その一方で、恋愛対象も男性である点に着目して、ゲイは性的マイノリティとされています。
バイセクシュアルとは
「バイセクシュアル(Bisexual)」とは、両性を恋愛対象とする人をいいます。
バイセクシュアルの生物学的性は、男性・女性のどちらもあり得ます。性自認は生物学的性と一致している場合もあれば、異なる場合もあります。
特に両性を恋愛対象とする点に着目して、バイセクシュアルは性的マイノリティとされています。
トランスジェンダーとは
「トランスジェンダー(Transgender)」とは、生物学的な性と性自認が一致していない人をいいます。
トランスジェンダーの生物学的性は、男性・女性のどちらもあり得ます。恋愛対象についても、男性・女性のどちらの場合もあります。
その一方で、性自認が生物学的性と異なる点に着目して、トランスジェンダーは性的マイノリティとされています。
クエスチョニング・クィアとは
「クエスチョニング(Questioning)」とは、性的指向や性自認が定まっていない人をいいます。
自分のセクシュアリティを決められない、分からない、あるいは敢えて決めないという人を総称して、「疑問がある」「探している」というような意味を持つ「クエスチョニング」が用いられています。
また、性のあり方が非常に多様であることを考慮して、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーには当てはまらない性的少数者を総称する「クィア(Queer)」という呼称が用いられることもあります。
「クィア」には、「不思議な」「風変わりな」などの意味があります。
性のあり方の主な構成要素
性のあり方の構成要素には、主に以下の3つがあります。
① 生物学的性(Biological Sex)
② 性的指向(Sexual Orientation)
③ 性自認(Gender Identity)
生物学的性(Biological Sex)
「生物学的性(Biological Sex)」とは、外性器・内性器・性染色体・性ホルモン分泌など、身体的な特徴に基づいて決まる性です。
染色体異常等によって両性の特徴を持って生まれる方も稀にいらっしゃいますが、ほとんどのケースでは、生物学的性は、生まれた時から明確に男女どちらかに決まります。日本では、生物学的性に従って戸籍上の性別が登録されます。
性的指向(Sexual Orientation)
「性的指向(Sexual Orientation)」とは、恋愛感情または性的感情の対象となる性別についての指向をいいます(LGBT法2条1項)。言い換えれば、「誰を(男女どちらを)好きになるか」が性的指向です。
LGBTQの性的指向は、それぞれ以下のとおりです。
性的指向 | |
---|---|
レズビアン | 女性 |
ゲイ | 男性 |
バイセクシュアル | 男性・女性(両性) |
トランスジェンダー | どちらもあり得る |
クエスチョニング(クィア) | どちらもあり得る(または決まっていない) |
性自認(Gender Identity)
「性自認(Gender Identity)」とは、自己の属する性別についての認識に関するその同一性の有無または程度に係る意識をいいます(LGBT法2条2項)。言い換えれば、「自分を男性・女性のどちら(またはどちらでもない)と認識しているか」が性自認です。
LGBTQの性自認は、それぞれ以下のとおりです。
性自認 | |
---|---|
レズビアン | 女性 |
ゲイ | 男性 |
バイセクシュアル | どちらもあり得る(または決まっていない) |
トランスジェンダー | 生物学的性と異なる性(生物学的性が男性であれば性自認は女性、生物学的性が女性であれば性自認は男性) |
クエスチョニング(クィア) | どちらもあり得る(または決まっていない) |
性同一性障害とは
「性同一性障害」とは、生物学的性と性自認が一致しないために、自らの生物学的性について嫌悪感を覚えたり、性自認に沿った役割を果たそうとしたりする状態をいいます。
性同一性障害とトランスジェンダーは同義として用いられることもありますが、近年ではややニュアンスの異なる用語として捉えられています。
「トランスジェンダー」は、生物学的性と性自認が一致しない客観的な状態のみを意味し、そこに価値判断は含まれていません。本人としては、トランスジェンダーのままで問題ないと考えているケースもあれば、生物学的性と性自認を一致させたいと考えているケースもあります。
これに対して「性同一性障害」は、生物学的性と性自認が一致しないことについて、本人が何らかのネガティブな認識や感情を持っているのが特徴です。多くの場合、本人は精神療法・ホルモン治療・外科的治療(性別適合手術)などによって、生物学的性と性自認を一致させたいと考えています。
LGBTQについて職場で起こりがちなトラブル
LGBTQに関しては、職場において以下のようなトラブルが発生しがちです。会社としては、これらのトラブルを防止するために、社内における啓発等に取り組みましょう。
① 本人に無断で性的指向や性自認を暴露する(アウティング)
② LGBTQであることをからかうような言動を受ける
③ LGBTQであることを理由に不利益な取り扱いを受ける
①本人に無断で性的指向や性自認を暴露する(アウティング)
本人に無断で、その性的指向や性自認を暴露することを「アウティング」といいます。
アウティングは、パワハラやセクハラに当たり得る行為です。他の従業員によってアウティングが行われた場合、会社は本人に対して、安全配慮義務違反(労働契約法5条)や使用者責任(民法715条1項)に基づく損害賠償責任を負うおそれがあります。
②LGBTQであることをからかうような言動を受ける
LGBTQであることをからかうような言動も、パワハラやセクハラに当たり得るものです。従業員によってこのような言動が行われた場合、会社は本人に対して安全配慮義務違反や使用者責任に基づく損害賠償責任を負うおそれがあります。
LGBTQに関する正しい認識を持っていない従業員は、安易に性的指向や性自認をからかうような言動を行いがちです。会社としては、従業員に対してきちんと啓発を行い、LGBTQの従業員への言動に配慮するよう指導しましょう。
③LGBTQであることを理由に不利益な取り扱いを受ける
LGBTQであることを理由に行われた解雇や左遷などの不利益な取り扱いは、公序良俗違反により無効となるおそれがあります(民法90条)。
特に解雇が無効となる場合は、従業員を復職させる必要が生じるほか、職場を離れていた期間の賃金も全額支払わなければなりません。解雇に関する紛争が長引けば、対応に多大なコストを要する点も懸念されます。
このような事態を避けるため、LGBTQであることを理由に従業員を不利益に取り扱うことは厳に慎みましょう。
企業が講ずべきセクハラ防止措置|LGBTQも対象
厚生労働省が公表しているセクハラ防止指針では、セクシュアルハラスメントは同性に対するものも含むほか、被害者の性的指向または性自認を問わない旨が明記されています。
2 職場におけるセクシュアルハラスメントの内容
事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成 18 年厚生労働省告示第 615 号)【令和2年6月1日適用】 – 厚生労働省
⑴ ……なお、職場におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれるものである。また、被害を受けた者(以下「被害者」という。)の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となるものである。
会社としては、セクハラ防止指針に従い、LGBTQが被害者になることも想定した上で、以下の措置を講じることが求められます。
- 会社がとるべき措置
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① 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
② 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③ 職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
④ その他、併せて講ずべき措置
①事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針の明確化、および労働者に対するその方針の周知・啓発として、次の措置を講じることが求められます。
- 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発に関する措置
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・職場におけるセクシュアルハラスメントの内容と、セクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発する。
・職場におけるセクシュアルハラスメントに当たる言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針と対処の内容を就業規則等に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発する。
②相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、次の措置を講じることが求められます。
- 相談・苦情に応じる体制の整備に関する措置
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・相談への対応窓口をあらかじめ定めて、労働者に周知する。
・相談窓口の担当者が、相談に対して、内容・状況に応じ適切に対応できるようにする(被害を受けた労働者が相談を躊躇する例があることなども踏まえ、広く相談に対応する)。
③職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
実際にセクシュアルハラスメントの相談を受けた場合において、次の措置を講じることが求められます。
- セクハラ発生時の迅速・適切な事後対応に関する措置
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・セクシュアルハラスメントに関する事実関係を迅速・正確に把握する。
・セクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合は、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行う。
・セクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合は、行為者に対する措置を適切に行う。
・改めて職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を周知・啓発するなど、再発防止に向けた措置を講じる。
④その他、併せて講ずべき措置
上記のほか、次の措置を併せて講じることが求められます。
- その他の措置
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・セクシュアルハラスメントに関する事後対応に当たり、相談者・行為者などのプライバシーを保護するために必要な措置を講じるとともに、その旨を労働者に対して周知する。
・セクシュアルハラスメントの相談をしたことなどを理由として、労働者が解雇その他の不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発する。
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