借用書とは?
書き方・テンプレート(フォーマット)・
貼るべき収入印紙・法的効力などを
分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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借用書とは、借金の返済を約束するため、借主が作成して貸主に提出する書面です。
借用書を作成する目的は、金銭の貸し借りの内容を明確化するとともに、借主に返済義務を認識させることです。また、返済遅延などのトラブルが発生し、訴訟などで解決を図る場合には、借用書が貸し借りの事実や条件に関する証拠となります。
借用書には、借り入れる金額に応じて収入印紙を貼付しなければなりません。
この記事では借用書について、基本から分かりやすく解説します。
※この記事は、2023年8月9日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
借用書とは
借用書とは、借金の返済を約束するため、借主が作成して貸主に提出する書面です。
借用書と金銭消費貸借契約書の違い
借用書と同じく、お金の貸し借りに関して作成される書面として「金銭消費貸借契約書」があります。
金銭消費貸借契約書は、貸主と借主が共同で作成する契約書です。これに対して借用書は、借主が単独で作成して貸主に提出する書面です。
借用書を作成する目的
借用書を作成する目的は、主に以下の3点です。
・貸し借りの内容を明確化する
・借主に返済義務を認識させる
・トラブルが発生した場合の証拠となる
貸し借りの内容を明確化する
お金の貸し借りは、民法上の消費貸借契約に該当し口頭でも成立します。しかし、借用書を作成することで、貸し借りがあった事実やその内容が明確になります。
借りた金額や返済条件などについて、当事者間で認識を共有できるため、トラブルの予防につながります。
【口頭のみだと言った言わないのトラブルに…】
借主に返済義務を認識させる
借主に自ら借用書を作成させれば、口頭の約束のみでお金を貸し借りする場合よりも、借主に返済義務を強く認識させる効果が期待できます。
その結果、債務不履行(不払い)のリスクが低下し、債権回収の可能性が高まります。
トラブルが発生した場合の証拠となる
前提として、法的な手続きでお金の返済を請求する際には、
- お金を貸した(交付した)事実
- 相手が返済を約束したこと
などを貸主側が証明しなければなりません。
返済遅延・返済拒否などのトラブルが発生した場合、借用書の提出を受けていれば、それを証拠として貸金返還請求訴訟などができ、請求がスムーズに認められる可能性が高いです。
借用書の法的効力
必要な事項を記載した上で、適切な方法で作成された借用書は法的効力を有し、借主の返済義務の根拠となります。
ただし、
- 必要な事項が漏れている借用書
- 不適切な方法で作成された借用書
などは、貸主が期待する法的効力が認められないおそれがあります。
法的に有効な借用書の書き方|記載すべき主な事項を解説
借用書には、主に以下の事項を記載する必要があります。
①表題(タイトル)
②貸主の氏名・名称
③借り入れる金額・借入日
④返済期日・返済方法
⑤利息
⑥遅延損害金
⑦期限の利益喪失条項
⑧借用書の作成日
⑨借主の氏名(名称)・住所
表題(タイトル)
借用書の冒頭には表題(タイトル)を記載します。
「借用書」と記載するのが一般的ですが、「借用証書」「念書」など別の表題が用いられる場合もあります。
貸主の氏名・名称
貸主が誰であるかを明確化するため、貸主の氏名または名称を記載します。
貸主が個人であれば「○○ 殿」、法人であれば「○○株式会社 御中」と記載しましょう。
借り入れる金額・借入日
借主が貸主から借りるお金の金額と、借入日を記載します。
借り入れる金額については、大きめの文字で分かりやすく記載するのがよいでしょう。借入日は、借用書の作成日ではなく、実際にお金を借りた日を記載しましょう。
返済期日・返済方法
借りたお金の返済期日と、返済方法を記載します。
返済期日については、一括返済と分割返済の2パターンに大別されます。
【一括返済の場合】
○年○月○日付で、元本全額を一括で返済します。
【分割返済の場合】
毎月○月○日付で、元本のうち○万円を返済し、○年○月○日付で、元本残額を一括で返済します。
返済方法については、証拠が残るように銀行振込等とすることが望ましいです。振込手数料の負担についても明記しておきましょう(借主負担とするのが一般的です)。
利息
借りたお金にかかる利息について、利率や計算方法を明記します。
利息に関する定めがないと、貸主は借主から利息を受けることができません(民法589条1項)。無利息とする場合を除き、必ず利息の定めを明記しましょう。
なお、利息の利率については、利息制限法の上限規制が適用される点にご注意ください(詳細は、「法令(民法・利息制限法など)に違反している場合」にて後述)。
遅延損害金
借りたお金の返済が遅延した場合に、損害賠償として発生する遅延損害金について、利率や計算方法を明記します。
遅延損害金を特に定めない場合は、法定利率(年3%)が適用されます(民法419条1項)。法定利率を超える約定利率を定める場合は、借用書にその利率を明記しましょう。
なお、遅延損害金の利率についても、利息制限法の上限規制が適用されます(詳細は、「法令(民法・利息制限法など)に違反している場合」にて後述)。
期限の利益喪失条項
元本を分割返済とする場合は、返済遅延などが発生した場合に、貸金全額の返済を請求できる旨(=期限の利益喪失条項)を借用書に明記しておくことが望ましいです。
- 期限の利益喪失条項とは
-
「期限の利益」とは、一定の期日が到来するまでの間、債務を履行しなくてよい利益を意味します。
例えば、「100万円を3月末に返済します」と約束したとして、逆から考えると「3月末までは、100万円を返済しなくてよい」という利益を得ているといえます。これを「期限の利益」といいます。
そして、「期限の利益喪失条項」とは、返済遅延などが発生した場合に、この期限の利益を喪失させ、前倒しで全ての債務を履行させる(お金を返済させる)旨を定めた条項です。
借主が期限の利益を喪失する条件については、さまざまなバリエーションが考えられます。
(例)
・1回の返済遅延により、すべての元本について期限の利益を喪失する
・2回以上連続で返済を遅延した場合、すべての元本について期限の利益を喪失する
・返済を遅延した場合でも、返済期日から3日以内に返済すれば不問とする
など
借用書の作成日
借用書の作成日を記載します。
実際にお金を借り入れた日と借用書の作成日が異なる場合は、そのことが明確に分かるように記載しましょう。
借主の氏名(名称)・住所
借用書の末尾に、借主の氏名(名称)および住所を記載します。
借主が個人である場合、氏名を自書した上で押印することが望ましいです(=署名捺印)。
借主が法人である場合は、名称を印字した上で、印鑑登録された実印を押印するのが一般的です(=記名押印)。
借用書のテンプレート(ひな形・フォーマット)
借用書 【貸主の氏名(名称)】 殿(御中) 金 百萬円也 私は貴殿より、上記金額の金銭を借り入れました。下記の条件に従い、当該金銭を返済することを約束します。 記 借入日:○年○月○日 返済期日:毎月○月○日付で、元本のうち○万円を返済し、○年○月○日付で、元本残額を一括で返済します。 返済方法:貴殿が指定する銀行口座へ振り込む方法で返済します。その際の振込手数料は、私が負担します。 利息:借入日(同日を含む)から返済期日(同日を含む)まで年10%とし、1年に満たない端数は日割にて計算します。 遅延損害金:返済期日に遅れた場合、返済期日の翌日(同日を含む)から支払済み(同日を含む)まで年20%とし、1年に満たない端数は日割にて計算します。 期限の利益の喪失:返済期日に遅れた場合、貴殿の請求によって、私は元本全額について期限の利益を失います。この場合、請求日以降は、元本全額について利息ではなく遅延損害金が発生するものとします。 以上 ○年○月○日 【借主の住所】 |
借用書を作成するときの注意点・ポイント
借用書は、後日のトラブルを防止するため、以下のポイントに注意して作成しましょう。
- 借入額は「大字」で記載する
- 借用書には収入印紙の貼付を要する場合がある
- 手書きの場合|ボールペン等で書く
- PCで作成する場合|署名捺印または記名押印をしてもらう
- 原本と写しを各1通作成する
- 公正証書化も検討する
借入額は「大字」で記載する
借用書に借入額を記載する際には、大字(壱・弐など)を用いることが望ましいです。
【算用数字・漢数字・大字 対応表】
借用書には収入印紙の貼付を要する場合がある
借用書を書面(紙)で作成する場合は、借入額に応じて以下の金額の収入印紙を貼付しなければなりません。
借入額 | 印紙税額(収入印紙) |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円超50万円以下 | 400円 |
50万円超100万円以下 | 1,000円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 |
5億円超10億円以下 | 20万円 |
10億円超50億円以下 | 40万円 |
50億円超 | 60万円 |
記載がない場合 | 200円 |
収入印紙の貼付を怠ると、後に税務調査でそれが発見された際、過怠税や刑事罰の対象になり得るので要注意です。
なお、借用書を電子的にのみ作成し、書面(紙)を作成しない場合には、収入印紙を貼付する必要はありません。
手書きの場合|ボールペン等で書く
手書きで借用書を作成する場合は、鉛筆などではなく、消せないボールペンなどを用いましょう。借用書が改ざんされるリスクを防げます。
ただし、ボールペンの中にも消しゴムで消せるものがあるので、借用書を作成する際には使用を避けましょう。
PCで作成する場合|署名捺印または記名押印をしてもらう
借用書はPCを用いて作成することもできます。貸し借りの条件を整然と記載できるため、手書きよりも便利です。
PCで借用書を作成する際には、完成した書面について、借主に署名捺印(押印)または記名押印をしてもらいましょう。
- 署名捺印 → 氏名・名称は自書(サイン)+印鑑を押す
- 記名押印 → 氏名・名称は印字+印鑑を押す
署名または押印がされた借用書は、特に疑わしい事情がない限り、真正に成立したものとして推定され、裁判で証拠として認められます(民事訴訟法228条4項)。ゆえに、返済遅延などのトラブルが発生した際に役立ちます。
なお、署名または押印のない借用書は、相手方が認めない場合、偽造でないことの立証が必要となります。
原本と写しを各1通作成する
借用書の原本は貸主が保管しますが、それとは別に、借主が保管するための写しを1通作成しましょう。借主が写しを保管しておけば、返済条件などをすぐに確認できます。
なお、原本を2通作成することも可能ですが、その場合は収入印紙を両方の原本に貼付しなければなりません。印紙税を節約したい場合は、原本と写しを各1通作成するのがよいでしょう。
公正証書化も検討する
借用書の法的有効性を確保し、証拠としての価値を高めるためには、公正証書として作成することも検討しましょう。
公正証書は、公的な立場にある公証人が権限にもとづいて作成して内容を証明する公文書であり、高い証拠力が認められます。
返済遅延などのトラブルに万全の備えをしておきたい場合は、公証役場に相談して、公正証書の形式で借用書を作成しましょう。
なお、借用書に「執行力(強制執行が認められる効力)」を付したい場合は、「執行受諾文言付公正証書」にしましょう。
借用書が無効になり得る場合とは
借用書を作成しても、以下の場合にはその法的効力が否定される可能性があるので、十分ご注意ください。
- 法令(民法・利息制限法など)に違反している場合
- 消滅時効が完成した場合
- 借主が制限行為能力者である場合
法令(民法・利息制限法など)に違反している場合
民法や利息制限法などの法令に違反する借用書は、全体または一部が取り消されるまたは無効となる場合があります。
(例)
①詐欺・強迫によって借用書を作成させた場合
→借主は、借用書全体を取り消すことができる(民法96条1項)
②利息制限法の上限規制に違反する場合
→以下の上限利率を超える利息・遅延損害金は無効(利息制限法1条、4条)
(a)利息
元本額が10万円未満:年20%
元本額が10万円以上100万円未満:年18%
元本額が100万円以上:年15%
(b)遅延損害金
(a)の1.46倍
消滅時効が完成した場合
貸金返還請求権は、以下のいずれかの期間が経過すると時効により消滅します(民法166条1項)。
①権利を行使できることを知った時から5年
②権利を行使できる時から10年
貸したお金についての消滅時効が完成しそうになったら、内容証明郵便の送付や訴訟の提起などを行いましょう。
借主が制限行為能力者である場合
借主が以下の制限行為能力者である場合、借用書が取り消される可能性があります。
①未成年者
→法定代理人の同意を得ずに未成年者が作成した借用書は、取り消すことができる(民法5条2項)
②成年被後見人
→成年被後見人が作成した借用書は、取り消すことができる(民法9条)
③被保佐人
→保佐人の同意を得ずに被保佐人が作成した借用書は、取り消すことができる(民法13条1項2号)
④被補助人
→借財をすることにつき補助人の同意を得なければならない旨の審判がなされている場合、補助人の同意を得ずに被補助人が作成した借用書は、取り消すことができる(民法17条1項)
借用書の提出を受ける際には、借主が上記いずれかの制限行為能力者に当たるか否かを確認しましょう。借主が制限行為能力者である場合は、法定代理人や後見人等の同意を得る必要があります。
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