検収書とは?
発行目的・発行手続きの流れ・記載例・
保存方法などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「検収書」とは、納品物が検収に合格したことの証として、発注者が受注者に交付する書面です。納品が完了したことや売上の計上時期を明確化する役割があります。また、検収書を請求書の代用とする場合もあります。
検収書を発行するのは、発注者による検収が完了したタイミングです。
発注者は、受注者から受領した納品物につき、その品質・数量・仕様などが発注内容に沿っているかどうかを検査します。不合格の場合は再納品・再検査となりますが、合格の場合は検収書を発行します。検収書には、検収手続きを定めた契約書、納品物の種類・名称・数量・納品年月日、検収年月日・合格の旨などを記載しましょう。
この記事では検収書について、発行目的・発行手続きの流れ・記載例・保存方法などを解説します。
※この記事は、2024年3月28日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 下請法…下請代金支払遅延等防止法
目次
検収書とは
「検収書」とは、納品物が検収に合格したことの証として、発注者が受注者に交付する書面です。
検収とは
「検収」とは、納品物の品質・数量・仕様などが、発注内容に沿っているかどうか検査する手続きです。
受注者が発注者に対して納品した商品等について、発注者が検収を行います。納品物が検収に合格すれば、発注者から受注者に対して報酬が支払われます。
検収についての詳細は、以下の記事を併せてご参照ください。
検収書の目的・役割
発注者は受注者に対して、検収合格の証として検収書を交付することがあります。
検収書を交付する目的は、主に以下の3点です。
① 納品が完了したことを明確化する
② 経費・売上を計上する時期を明確化する
③ 請求書の代わりとする
納品が完了したことを明確化する
検収書を交付することにより、納品が完了したことが明確化されます。
検収書によって納品完了を明確化することには、主に以下のメリットがあります。
- 受注者において、当該納品物に関して追加作業を行う義務がないことが明確化される
- 報酬の支払義務が確定および明確化される
経費・売上を計上する時期を明確化する
検収書を発行することには、発注者および受注者における社内経理との関係でもメリットがあります。
業務委託契約書等においては、検収完了のタイミングに応じて報酬の支払時期が決まるのが一般的です。
この場合、発注者における経費および受注者における売上は、検収完了のタイミングに従ってその計上時期が決まります。
検収書の授受が行われれば、検収完了のタイミングが明確化され、それに伴って経費・売上の計上時期も明確になり、クリアな形で経理を行うことができます。
請求書の代わりとする
発注者・受注者間における文書のやり取りを減らすため、検収書を請求書の代わりとして取り扱うケースもあります。
この場合、発注者は受注者が発行する請求書の受領を待つことなく、検収書の記載に従って、受注者に対する支払いを処理します。
ただし、検収書がインボイス制度に基づく「適格請求書等」と認められるためには、署名や電子メールなどによって受注者側の確認を受けなければなりません。
そのため、消費税の課税事業者(簡易課税制度の適用を受けている事業者を除く)においては、検収書を請求書の代わりとする処理は、かえって煩雑になる可能性がある点に注意が必要です。
インボイス制度に関する詳細は、以下の記事を併せてご参照ください。
検収書を発行する時期
検収書を発行するのは、発注者において検収が完了した時です。
検収の合格基準や手続きについては、受注者と発注者の間の契約において定められます。発注者は契約に従って納品物をチェックし、合格基準に沿っていれば検収合格として、受注者に対して検収書を発行します。
検収書を発行すべき契約の例
検収書を発行すべき契約は、受注者が発注者に対して納品を行う取引を内容とするものです。具体的には、以下のような契約が例に挙げられます。
- 検収書を発行すべき契約の例
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・工事請負契約
・業務委託契約(納品を要するもの)
・システム(ソフトウェア)開発委託契約
など
上記の各契約の詳細については、以下の記事を併せてご参照ください。
検収書に関連するその他の書類との関係・違い
検収書が交付される取引に関しては、そのほかに以下のような文書が授受されることがあります。
① 納品書
受注者が納品を行う際に、発注者に対して交付する書面です。納品の内容や日付などが記載されます。
納品書を受領した発注者は、契約で定められた期間内に検収を行うことが求められます。
② 受領書
発注者が納品物を受領した際に、受注者に対して交付する書面です。受領した納品の内容や受領日などが記載されます。
受領書は、未検収の段階で単に「受領した」旨を確認するために交付されることが多いです。
その一方で、検収完了の意味で受領書が交付されることもあります。この場合、受領書と検収書の性質は同じです。
③ 請求書
受注者が報酬の支払いを請求するために、発注者に対して交付する書面です。検収が完了した納品物の種類・数量、各納品に対応する報酬額、報酬の合計額および消費税額などが記載されます。
請求書には、検収が完了した納品の内容と、それを踏まえた報酬額等を記載することになります。
④ 支払通知書
発注者が報酬の支払いを完了した後、受注者に対して交付する書面です。
基本的には、請求書の内容を踏まえて報酬の支払いが行われ、その支払内容が支払通知書に記載されます。
ただし、検収書を請求書の代わりとする場合には、検収書の内容を踏まえて発注者側で報酬額を計算して支払い、その内容を支払通知書に記載することになります。
⑤ 領収書
受注者が報酬を受領したことを証明するため、発注者に対して交付する書面です。受注者側には、報酬の支払いと引き換えに、発注者に対して領収書などの受取証書を交付する義務があります(民法486条1項)。
検収書を発行するまでの手続きの流れ・注意点
検収書を発行するまでの手続きの流れは、以下のとおりです。
1|受注者による納品
2|発注者による検査
3|検収不合格の場合は再納品・再検査
4|検収完了・検収書の発行
1|受注者による納品
受注者は契約の定めに従って納品物を制作し、発注者に対して納品します。
納品物は、その品質・数量・仕様などについて、契約の内容に準拠していなければなりません。
契約に適合していない納品物は、検収手続きにおいて不合格となり、発注者から納品のやり直しを指示される可能性があります。
2|発注者による検査
発注者は、受注者から受領した納品物を検査します。
発注者は、合理的な基準に従って納品物を検査しなければなりません。理不尽な理由で検収不合格にすると、契約違反や下請法違反の責任を問われ得るので注意が必要です。
検収に関するトラブルを避けるためには、契約においてあらかじめ検収基準を定めることが望ましいでしょう。
下請法の詳細については、以下の記事を併せてご参照ください。
3|検収不合格の場合は再納品・再検査
納品物が検収基準に適合していない場合には、発注者は検収不合格の旨を受注者に通知します。
検収不合格の理由が合理的である限り、受注者は発注者の指示に従って再納品を行わなければなりません。再納品物については、改めて発注者が再検査を行います。
検収不合格の理由が不合理である場合、受注者は発注者に対して異議を申し立てることができます。解決方法は協議で定めることが望ましいですが、訴訟などの法的手続きに発展するケースも少なくありません。
特に発注者においては、検収不合格とする場合には、その合理的な理由をきちんと説明できるようにしておきましょう。
4|検収完了・検収書の発行
納品物が検収基準に適合していれば、発注者は受注者に対して検収書を交付します。検収書の交付をもって納品完了となり、受注者は発注者に対して報酬を請求できるようになります。
検収書の記載例・記載事項
検収書の記載例および主な記載事項を紹介します。実際に検収書を作成する際の参考としてください。
検収書の記載例
検収書 発行日:○年○月○日 ○○株式会社御中東京都○○ 金額 ¥○○ 納品の内容:○○ 発注年月日:2024年○月○日 納期:2024年○月○日 納品年月日:2024年○月○日 検収年月日:2024年○月○日 検収結果:合格 |
検収書の主な記載事項
検収書の主な記載事項は、以下のとおりです。
① 表題
「検収書」と記載します。
② 受注者の氏名・名称
受注者が個人であれば「○○様」、法人であれば「○○御中」と記載します。
③ 発行日
検収書を発行した日付を記載します。
④ 発注者の住所・氏名または名称・連絡先・担当者名
発注者の情報として、住所・氏名(法人の場合は名称)・連絡先を記載します。発注者が法人の場合は、担当者名も記載するのが一般的です。
⑤ 納品・検収の根拠となる契約書
「2024年○月○日付○○契約に基づき」などと、納品および検収手続きについて定めた契約書の名称を記載します。
⑥ 検収の旨
「検収いたしました」と検収が完了した旨を記載します。
⑦ 金額
検収完了に基づいて支払う報酬額を記載します。
⑧ 納品の内容
納品物の品番・品名、数量および単価など、納品の内容を明らかにするに足る情報を記載します。
⑨ 発注年月日
発注者が受注者に対して、発注を行った年月日を記載します。
⑩ 納期
発注時に定められた納期を記載します。
⑪ 納品年月日
受注者が発注者に対して、納品物を交付した年月日を記載します。
⑫ 検収年月日
発注者における検収が完了した年月日を記載します。
⑬ 検収結果
検収合格であれば「合格」と記載します。
検収不合格であれば、不合格の旨とその理由を記載します。
検収書の保存
受注者が発注者から受け取った検収書は、適切な方法によって保存しなければなりません。保存期間についても、法令上の定めに留意しましょう。
検収書の保存方法
書面(紙)で受け取った検収書は、後でスムーズに探して確認できるように、ファイルなどを用いてきちんと整理した上で保存しましょう。
これに対して、電子データで受け取った検収書については、電子帳簿保存法に従った方法により保存する必要があります。具体的には、「真実性」と「可視性」の要件を満たす方法で検収書を保存しなければなりません。
① 真実性
保存した検収書データにつき、改ざんが行われないような仕組みを整備する必要があります。
② 可視性
税務調査等の際に、税務職員の求めに応じて検収書データをスムーズに出力して確認できるようにしておく必要があります。
電子帳簿保存法に基づく電子データの保存方法等の詳細については、以下の記事を併せてご参照ください。
検収書の保存期間
検収書の保存期間は、保存者が個人か法人かによって異なります(5年・7年・10年のいずれか、下表のとおり)。発注者・受注者の双方において、下表の期間にわたり検収書を保存しなければなりません。
原則 | 5年 |
検収書を適格請求書等として取り扱う場合 | 7年 |
原則 | 7年 |
検収書を受領した事業年度において繰越欠損金が生じた場合 | 10年 |
検収書その他の帳簿書類について、法令上の保存義務に違反した場合には、罰則の対象となるおそれがあります。また、税務調査の際に帳簿書類の不備を指摘されて青色申告が取り消されるなど、追徴課税の原因にもなりかねません。
検収書を受領したら、取引に関連するその他の書類と併せて、適切に保存しましょう。
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