是正勧告とは?
対象となる主な違反行為・手続きの流れ・
受けた場合の対処法などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「是正勧告」とは、労働基準法または労働安全衛生法に違反している事業主に対して、その是正を求める勧告です。勧告は労働基準監督官が行います。
是正勧告は、違法な時間外労働・残業代の未払い・健康障害防止措置の不実施などをはじめとして、労働基準法違反や労働安全衛生法違反について幅広く行われています。令和6年度(2024年度)の実績では、合計2万1495事業場が是正勧告を受けました。
是正勧告は、労働基準監督官による臨検(立ち入り調査)によって法令違反が判明した場合に行われます。
是正勧告を受けた事業主は、指定された期限までに違法状態を是正し、その内容を労働基準監督署に報告しなければなりません。是正勧告に従わないと、刑事処分や行政処分に発展するおそれがあるため、速やかに是正を行う必要があります。この記事では是正勧告について、対象となる主な違反行為・手続きの流れ・受けた場合の対処法などを解説します。
※この記事は、2025年12月4日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
是正勧告とは
「是正勧告」とは、労働基準法または労働安全衛生法に違反している事業主に対して、その是正を求める勧告です。労働基準監督官が行います。
是正勧告の目的|労働基準法違反・労働安全衛生法違反の是正を求める
是正勧告の目的は、強制力を伴う処分を行う前に、労働基準法または労働安全衛生法に違反する状態の是正を求めることです。
刑事罰や行政処分などの強制力を伴う処分を受けると、事業主は大きな不利益を受けます。違反が悪質であればそれがふさわしいかもしれませんが、軽微な違反に過ぎない場合や、事業主が違反に気づいていなかった場合などには酷な面があります。
そこで、強制力を伴う処分を行う前の段階で、労働基準監督官が事業主に対して是正勧告を行う例が多く見られます。是正勧告を受けて速やかに違反状態を是正すれば、強制力を伴う処分を回避できる可能性があります。
是正勧告の法的拘束力
是正勧告は行政指導に過ぎず、対象者に対する法的拘束力はありません。したがって、是正勧告に従わなかったとしても、直ちに罰則が科されるとは限りません。
ただし実際には、是正勧告に従わなかった事業主に対しては、改めて刑事訴追や行政処分が行われる可能性がきわめて高いです。事業主としては、是正勧告を受けたらそれに従い、速やかに違反状態を是正するのが賢明と言えます。
是正勧告と行政処分の違い
行政指導である是正勧告には法的拘束力がありませんが、行政処分には法的拘束力があります。
一例として、労働安全衛生法98条に定められている使用停止命令等は行政処分に当たります。例えば、違反状態にある建設物等の使用停止を命じられた事業者は、その命令に従う法的な義務を負います。
使用停止命令等に違反した者には、刑事罰が科されます(6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。同法119条2号)。このように、行政処分に従わなかった場合は刑事罰の対象となるケースが多いです。
是正勧告と指導票の交付の違い
是正勧告のほか、労働基準監督官が行う行政指導には「指導票の交付」があります。
是正勧告と指導票の交付はいずれも行政指導であり、対象者に対する法的拘束力はありません。
是正勧告と指導票の交付の違いは、労働基準法または労働安全衛生法の違反が発見されたか否かです。
是正勧告は、違反状態が発見された場合に行われます。これに対して指導票の交付は、違反状態が発見されなかったものの、改善することが望ましいと考えられる場合に行われます。
指導票の交付を受けた場合も、是正勧告を受けた場合と同様に、一定期間内に指導された事項を改善して労働基準監督署へ報告することが求められます。
ただし、指導票の交付にとどまった場合に比べると、違反状態が発見されて是正勧告を受けた場合の方が、労働基準監督署の監視は厳しくなる傾向にあります。
是正勧告が行われる主なケース
労働基準監督官が是正勧告を行うのは、例えば以下のようなケースです。
① 違法な時間外労働が行われている
② 残業代が適切に支払われていない(賃金不払残業)
③ 過重労働による健康障害防止措置が適切に実施されていない
④ その他|休憩・休日・年次有給休暇の不適切な運用、労災隠しなど
違法な時間外労働が行われている
労働基準法では、過度な長時間労働を防ぐためのさまざまな規制が設けられています。
特に近年では、法令改正によって長時間労働の制限が厳しくなっており、労働基準監督署も違法な時間外労働に対する監視を強めている状況です。
例えば以下のような事実が判明すると、労働基準監督官から是正勧告を受けることがあります。
・36協定(=時間外労働などのルールを定めた労使協定)を締結していないのに、時間外労働をさせている
・36協定に定められた上限を超えて、長時間にわたる時間外労働をさせている
・管理監督者(=経営者と一体的な地位にある労働者)に当たらない店長や係長などを管理監督者として扱い、労働時間の規制を無視して長時間働かせている
など
残業代が適切に支払われていない(賃金不払残業)
所定労働時間(=労働契約や就業規則で定められた労働時間)を超えて働いた労働者に対しては、残業代を支払う必要があります。また休日に働いた労働者や、午後10時から午前5時までに働いた労働者に対しても、休日手当や深夜手当などを支払わなければなりません。
これらの残業代や手当を適切に支払っていない場合は「賃金不払残業」に当たり、労働基準監督官から是正勧告を受けることがあります。
過重労働による健康障害防止措置が適切に実施されていない
事業者には、労働者の危険や健康障害を防止するための措置を講じることが義務付けられています(労働安全衛生法20条~25条の2)。必要な措置を講じていない場合は、労働基準監督官から是正勧告を受けることがあります。
事業者が講ずべき措置の中には「労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置」が含まれています(同法24条)。労災防止の観点からは、特に過重労働を抑制するための措置を講ずることが重要です。
厚生労働省は「過重労働による健康障害防止のための総合対策」を公表し、事業主に対して、労働者の過重労働を防ぐための取り組みを求めています。
その他|休憩・休日・年次有給休暇の不適切な運用、労災隠しなど
上記のほか、以下のような違反が発覚した場合には、労働基準監督官から是正勧告を受けることがあります。
・休憩を適切に与えていない
・週1日以上(または4週を通じて4日以上)の休日を与えていない
・年次有給休暇の取得申請を、正当な理由なく拒否している
・常時10人以上の労働者を雇用する事業場において、就業規則を作成していない
・就業規則を労働者に対して周知していない
・法定三帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)を作成していない
・法令上要求されている衛生管理者や安全管理者などの設置を怠っている
・労働者に対する健康診断を実施していない
・労働災害を隠蔽している(労働者死傷病報告を行っていない)
など
令和6年度(2024年度)における是正勧告の状況
令和6年度(令和6年4月~令和7年3月)には、2万6512事業場に対して労働基準監督官による監督指導が実施され、そのうち2万1495事業場(81.1%)で労働基準関係法令違反によって是正勧告が行われました。
主な違反の内容としては、以下の例が挙げられています。
| 違法な時間外労働:1万1230事業場(42.4%) 賃金不払残業:2118事業場(8.0%) 過重労働による健康障害防止措置の未実施:5691事業場(21.5%) |
是正勧告が行われるまでの流れ
是正勧告は、労働基準監督官による臨検(立ち入り調査)によって違反状態が発覚した場合に、是正勧告書を交付する形で行われます。
労働基準監督官による臨検(立ち入り調査)
「臨検」とは、労働基準監督官が行う事業場等への立ち入り調査です。労働基準監督官は臨検において、対象者に対して帳簿や書類の提出を求め、または使用者・労働者に対して尋問を行うことができます(労働基準法101条1項)。
臨検の拒否、尋問の拒否や虚偽陳述、帳簿書類の提出拒否や虚偽書類の提出は刑事罰の対象とされており、「30万円以下の罰金」に処されます(労働基準法120条4号)。
臨検は予告なしに行われるケースもありますが、事前に日程を予告したうえで行われるケースもあります。
臨検の種類
労働基準監督官による臨検は、以下の4種類に分類されます。
(a) 定期監督
当該年度の監督計画に基づき、任意に選択された対象者に対して行われます。最初から特定の違反が疑われているわけではなく、法令全般にわたる事項が幅広く調査されます。
(b) 災害時監督
一定規模以上の労働災害が発生した場合に、その原因究明や再発防止を指導するために行われます。
(c) 申告監督
労働者から違反の申告があった場合に、その申告内容について確認するために行われます。
(d) 再監督
是正勧告を受けた事業主に対し、是正がなされたかどうかを確認するために行われます。
是正勧告書の交付
臨検によって労働基準法または労働安全衛生法の違反が判明したときは、労働基準監督官が事業主に対して是正勧告書を交付します。
是正勧告書の主な記載事項は、以下のとおりです。
・違反を是正し、遅滞なく報告するよう勧告する旨
・違反している法条項等
・違反事項(違反の内容)
・是正期日
・是正しない場合は送検手続きをとることがある旨
など
企業が是正勧告を受けた場合の対応
是正勧告書を受け取った企業は、以下の対応を行うことが求められます。
① 指摘された違法状態を速やかに是正する
② 労働基準監督署に是正報告書を提出する
指摘された違法状態を速やかに是正する
是正勧告書に記載された違反事項については、対応する是正期日までに是正することが求められます。違反の是正が遅れると刑事訴追や行政処分のリスクが生じるので、速やかに対応する必要があります。
労働基準監督署に是正報告書を提出する
是正勧告書によって指摘された違反を是正したら、その結果をまとめた是正報告書を作成し、労働基準監督署に提出します。
是正報告書の書き方
是正報告書の様式は法令上定められていないので、任意の書式で作成して構いません。都道府県労働局のウェブサイトには、是正報告書の参考様式が掲載されていることがあります。
是正報告書は、指摘された違反事項をどのように是正したかが分かるように記載する必要があります。主な記載事項は以下のとおりです。
・違反を指摘された法条項
・是正期日
・是正状況
・違反の繰り返しを防止するために点検箇所、点検実施者および補習責任者を定めた場合は、点検箇所の概要およびその者の職氏名
など
是正勧告に従わなかった企業が負うリスク
是正勧告に従わなかった企業は、労働基準法違反によって送検(検察官送致)が行われて刑事訴追を受けたり、労働安全衛生法違反によって行政処分を受けたりするおそれがあります。
刑事訴追や行政処分を受けると、業務に支障が生じることがあるうえに、大々的に報道されたりSNSで拡散されたりして、企業としての評判を大きく落としてしまうおそれがあります。
労働基準監督官から是正勧告を受けた場合、指定された期日までに確実に是正を行うことが強く推奨されます。
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