著作権の活用方法は?
無断利用への対抗手段・
ライセンス契約締結時の注意点などを解説!
おすすめ資料を無料でダウンロードできます ✅ 著作権研修資料 |
- この記事のまとめ
-
著作権者は、著作物を独占的に利用できるほか、著作物の利用を第三者に許諾してライセンス料収入を得ることができます。
また、自身が創作した著作物を無断利用する者に対しては、
・差止請求
・損害賠償請求
・名誉回復措置請求
が可能です。著作権の侵害が発生している情報をつかんだら、速やかにこれらの対抗手段を講じましょう。著作物の利用を第三者に許諾する際には、必ず著作物ライセンス契約を締結しましょう。利用許諾の条件については、自社にとって不利益な内容にならないように、契約交渉を通じて慎重に取り決めることが大切です。
今回は著作物の活用方法について、無断利用への対抗手段・ライセンス契約締結時の注意点などを解説します。
※この記事は、2023年3月2日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
著作権者ができること
著作権をもつ者(以下、著作権者)は、自由に著作権を活用可能です。例えば著作権には、以下に挙げるようにさまざまな活用方法があります。
①著作物の独占的利用(自己利用)
②著作物の利用許諾等
③著作権の移転(譲渡)
④著作権への担保権の設定
次の項目から、各活用方法について詳しく解説します。
著作権の活用方法①|著作物の独占的利用(自己利用)
著作権者は、以下の権利をいずれも専有します。
①複製権(著作権法21条)
→著作物を複製する権利
例:漫画の出版(原稿を複製し印刷している)
②上演権・演奏権(同法22条)
→著作物を公に上演し、または演奏する権利
上演の例:漫画の舞台化
演奏の例:楽曲をライブハウスで歌う
③上映権(同法22条の2)
→著作物を公に上映する権利
例:市販のDVDをカフェなどで流す
④公衆送信権等(同法23条)
→インターネットなどを通じて、著作物を公衆送信または公衆伝達する権利
公衆送信の例:テレビやラジオで、映画を流す
公衆伝達の例:ライブ配信で、新聞記事を映し配信する
⑤口述権(同法24条)
→言語の著作物を公に口述する権利
例:詩をイベントで朗読する
⑥展示権(同法25条)
→美術の著作物または未発行の写真の著作物を、原作品により公に展示する権利
例:原画展を行う
⑦頒布権(同法26条)
→映画の著作物を、その複製物により頒布する権利
頒布の例:映画のブルーレイディスクを販売する
⑧譲渡権(同法26条の2)
→著作物(映画の著作物を除く)を、その原作品または複製物の譲渡により公衆に提供する権利
譲渡の例:絵画を販売する
⑨貸与権(同法26条の3)
→著作物(映画の著作物を除く)を、その複製物の貸与により公衆に提供する権利
貸与の例:漫画のレンタルサービス
⑩翻訳権・翻案権(同法27条)
→著作物を翻訳・編曲・変形・脚色・映画化し、その他翻案する権利
翻案の例:小説を映画化する
⑪二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(同法28条)
→二次的著作物の著作者が有する上記の各権利につき、それと同一の種類の権利
上記の各権利によって保護されている行為は、著作権者が許諾しない限り、他人が行うことは禁止されます。したがって著作権者は、当該著作物を自ら独占的に利用して利益を得ることができます。
著作物の無断利用への対抗手段
- 差止請求
- 損害賠償請求
差止請求
差止請求とは、他人から権利を侵害されたとき(または恐れがあるとき)に、その行為をやめるよう請求することをいいます。
著作権の侵害があったとき、著作権者は、著作権を侵害する者または侵害するおそれがある者に対し、侵害の停止または予防を請求できます(著作権法112条1項)。
さらに、
- 侵害行為を組成した物
- 侵害行為によって作成された物
- 専ら侵害の行為に供された機械や器具
の廃棄など、侵害の停止・予防に必要な措置の請求も可能です(同条2項)。
損害賠償請求
損害賠償請求とは、契約違反・不法行為により損害が発生した場合に、その損害の賠償を請求することをいいます。
故意または過失によって著作権を侵害した者に対しては、著作権者は不法行為に基づく損害賠償を請求できます(民法709条)。
なお、民法上、損害額は請求者が立証するのが原則ですが、著作権侵害による被害は、例えば物の破損のように分かりやすいものではないので、損害額を立証することが困難です。
そこで著作権法は、114条に損害額の推定規定を設け、損害の計算方法を具体的に定めることで、損害額の立証がしやすいよう配慮しています。
著作権の活用方法②|著作物の利用許諾等
著作権者は、著作物の利用を他人に有料で許諾することにより、ライセンス料収入などを得ることもできます。
著作権のライセンス料収入などを得る方法
ライセンス料収入を得る方法としては、ライセンシー(許諾を受ける者)との間で著作物ライセンス契約を締結して他人に著作物の利用を認めるのがもっとも一般的です。
そのほか、
- 裁定制度による補償金を受ける方法
- 出版権を設定する方法
などがあります。
以下それぞれ詳しく解説します。
利用権の設定
著作物の利用権を設定する際には、ライセンシーとの間で著作物ライセンス契約を締結します。
著作物ライセンス契約では、著作物の利用条件や対価などを定めます。どのような事項を定めるべきかについては、「著作物ライセンス契約に定めるべき主な事項」にて解説します。
裁定制度による補償金
公表された著作物、または相当期間にわたり公衆に提供・提示されている事実が明らかな著作物については、相当な努力を払っても著作権者と連絡が取れない場合、文化庁長官の裁定を受けて利用できます(著作権法67条1項)。
この場合、利用者は著作権者のために、文化庁長官が定める額の補償金を供託する必要があります。著作権者は、供託金から使用料相当額の弁済を受けることが可能です(同法67条の2第8項)。
出版権の設定
複製権または公衆送信権を有する著作権者は、著作物を文書・図画として出版することや、インターネットなどを通じて公衆送信することを他人に許諾できます。
上記の許諾は「出版権」の設定として、著作権法上特別のルールが設けられています(同法79条以下)。
著作物ライセンス契約に定めるべき主な事項
他人に対して著作物の利用を許諾する際には、ライセンシーとの間で著作物ライセンス契約を締結します。
著作物ライセンス契約に定めるべき主な事項は、以下のとおりです。
①ライセンスの内容・範囲
→ライセンスの種類(独占or非独占)、契約期間、利用許諾の対象地域などを定めます。
②ライセンス料に関する事項
→ライセンス料の金額や計算方法などを定めます。
③ライセンシーの遵守事項(義務)
→著作物を利用するに当たり、ライセンシーが遵守すべき利用条件などを定めます。
④利用状況等の報告
→ライセンスの範囲や遵守事項などが守られているかどうかをライセンサー(著作権者)が確認できるように、ライセンシーに定期報告義務等を課すのが一般的です。
⑤帳簿の保管・閲覧
→ライセンス料を実績ベースで計算する場合には、適切な計算が行われているかどうかをライセンサーがチェックできるように、ライセンシーの帳簿保管義務およびライセンサーの帳簿閲覧権を定めるのが一般的です。
⑥第三者との紛争に関する対応
→ライセンスの対象著作物に関して、第三者との間で紛争が発生した場合に、ライセンサーとライセンシーのどちらが主導的に対応するか、どのように協働するかなどを取り決めます。
著作権の活用方法③|著作権の移転(譲渡)
著作権は、その全部または一部を譲渡できます(著作権法61条1項)。
利用許諾(ライセンス)との違いは、著作権が移転するかどうかです。利用許諾では、著作権は保持したまま、利用を認めます。一方、譲渡では、権利ごと譲渡するので、もともと著作権をもっていた者は、譲渡した権利全てを失います。譲渡後に、著作物を利用すると、譲渡した相手から著作権侵害として訴えられることになります。
著作権譲渡を行うと、対価の支払いを一括で受けることが可能です。中長期的に収益を得られる著作物の利用許諾とは異なり、短期間でまとまった収益を得られることが、著作権譲渡のメリットといえます。
なお、著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権)については、譲渡ができないため(同法59条)、著作権譲渡契約において、「著作者人格権を行使しない」という定めを入れ、著作者人格権の行使を制限して対応します。
著作権譲渡契約に定めるべき主な事項
他人に対して著作権を譲渡する際には、譲り受け人との間で著作権譲渡契約を締結します。
著作権譲渡契約に定めるべき主な事項は、以下のとおりです。
①譲渡する著作権の種類
→全部譲渡・一部譲渡のどちらなのか、一部譲渡であればどの種類の著作権を譲渡するかを明記します。なお、翻訳権・翻案権と二次的著作物の利用に関する原著作者の権利については、全部譲渡であっても特に明記することが必要です(著作権法61条2項)。
②著作者人格権の不行使
→譲り受け人による著作物の利用につき、譲渡人のクレームによるトラブルが生じることを防ぐため、譲渡人に著作者人格権を行使しない旨の誓約をさせることがあります。ただし、譲渡人は拒否することもできます。
③譲渡人による表明保証
→譲渡される著作権に係る著作物が、他人の著作権その他の知的財産権を侵害していないことにつき、譲渡人が表明および保証します。
④譲渡対価に関する事項
→譲渡対価の金額や支払い方法などを定めます。
著作権の活用方法④|著作権への担保権の設定
著作権には、質権その他の担保権を設定することもできます。
担保としての著作権の価値が発揮されるのは、主に金融機関から融資を受けようとする場合です。価値が高いコンテンツの著作権を有していれば、それを担保にすることで、金融機関から多額の融資を受けられる可能性があります。
担保権設定契約に定めるべき主な事項
著作権に担保権を設定する際には、債権者(担保権者)との間で担保権設定契約を締結します。
担保権設定契約に定めるべき主な事項は、以下のとおりです。
①担保権の設定
→設定する担保権の種類や順位、被担保債権などを明記します。
②対抗要件具備
→著作権に担保権を設定したことにつき、第三者対抗要件を備えるための手続きについて定めます。なお、著作権を目的とする質権の設定については、登録が対抗要件とされています(著作権法77条2号)
文化庁ウェブサイト「著作権登録制度」
③担保権の実行
→被担保債権について期限の利益を喪失した場合などにおいて、担保権を実行するための要件や手続きなどを定めます。
著作権を活用する際の注意点
著作権を活用する際には、特に以下の各点に十分注意ください。
- 著作権侵害の有無について情報収集を行う
- 利用許諾等の際には必ず契約書を締結する
- 利用許諾条件等の契約交渉は慎重に行う
- 著作権が制限される場合に注意する
著作権侵害の有無について情報収集を行う
著作権の活用に当たっては、自社が制作したコンテンツが他人の著作権を侵害していないか、また反対に他人が自社の著作権を侵害していないかを、それぞれ漏れなく把握することが大切です。
著作権侵害の有無を把握するには、日頃から自社の競合コンテンツなどに関する情報収集を行うことが欠かせません。自社コンテンツの制作についてコンプライアンスを強化するため、および著作権侵害行為に対して速やかに抗議するため、綿密な情報収集を行いましょう。
利用許諾などの際には必ず契約書を締結する
著作物の利用許諾や著作権の譲渡などを行う際には、必ず契約書を締結しましょう。
契約書には、当事者間の合意内容を明確化して、トラブルを予防する効果があります。また、万が一トラブルが発生した際にも、解決基準を契約書に明記しておけば、トラブルの深刻化を防ぐことができます。
どんなに小規模な取引であっても、当事者間で不測の事態が生じ、深刻なトラブルになってしまうリスクは常に潜んでいます。契約書を作成・締結しておくことで、これらのリスクを最小限に抑えることができます。
利用許諾条件等の契約交渉は慎重に行う
著作物の利用許諾条件や譲渡の条件などについては、契約交渉の段階で慎重に調整し、自社が過大なリスクを背負わないようにする必要があります。
特に、相手方が契約書のひな形を作成した場合には、自社に不利益な条項が含まれている可能性が大いにあります。そのような条項は、見逃さずに修正することが大切です。
著作権が制限される場合に注意する
私的使用目的の複製など、特定の目的による著作物の利用については、著作権の効力が及ばないものとされています(著作権法30条など)。また、引用の要件を満たす場合にも、著作物の利用に当たって著作権者の許諾を得ることは不要です(同法32条)。
著作権が制限される場合であるのに、著作権侵害を主張して差止請求や損害賠償請求を行うと、時間やコストが無駄になってしまうばかりでなく、レピュテーションの毀損などにもつながりかねません。
著作権に関する問題点を検討する際には、著作権法上の権利制限規定にも注意を払うことが必要です。
この記事のまとめ
著作権の活用方法の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!
おすすめ資料を無料でダウンロードできます ✅ 著作権研修資料 |