公益通報者保護法とは?
公益通報の定義・事業者がとるべき措置・罰則などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

公益通報者保護法とは、公益のために通報を行った労働者や役員が不利益な取扱いを受けることがないよう、保護を図るための法律です。

公益通報者保護法では、社内で違法行為などを発見した労働者や役員が、
✅事業者が定める内外の通報窓口
✅行政機関・報道機関
などに公益通報を行うことを認めています。

2022年6月に施行された公益通報者保護法改正では、事業者による不正の早期是正、また通報者がより安心して通報できる制度を目指した改正が行われました。

事業者は、消費者庁が定める指針等に従い適切な体制を整備し、内部統制コンプライアンスを今以上に確保することが求められます。

今回は公益通報者保護法について、公益通報の定義・事業者がとるべき措置・罰則などを解説します。

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公益通報と似た言葉に、内部通報がありますよね。よく混同します。

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内部通報は、企業内部の問題を知る労働者から、違法行為等に関する情報を早期に入手し、未然防止・早期是正を図る仕組みのことで、法律で定められた用語ではありません。一方、公益通報は、公益通報者保護法によりその定義が定められています。この記事で詳しく勉強していきましょう。

(※この記事は、2022年7月5日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。)

公益通報者保護法とは

公益通報者保護法とは、公益のために通報を行った労働者や役員が不利益な取扱いを受けることがないよう、保護を図るための法律です。

社内で違法行為などを発見した労働者や役員などは、事業者が定める内外の通報窓口や、行政機関・報道機関などに対して、公益通報を行うことができます。一方で、事業者は公益通報を行った者に対して、解雇その他の不利益な処分を行うことは禁止されています。

このように公益通報を行った労働者や役員を保護することで、違法行為などの発生を予防し、早期に発見することが、公益通報者保護法の目的です。

公益通報と内部告発の違い

「公益通報」はしばしば「内部告発」と混同されますが、両者は似て非なるものです。

「内部告発」は一般に、会社に属する役員や従業員が、その職務上知り得た会社の不正行為などにつき、捜査機関や報道機関にリークする行為を意味します。しかし、すべての内部告発が公益通報に当たるわけではありません。

公益通報は単なる内部告発ではなく、公益通報者保護法に基づく要件を満たし、公益通報者が不利益な取り扱いを受けないことを保障される通報をいいます。

公益通報者保護法では、会社における違法行為の早期発見を重視しつつも、会社の不利益や行政リソースの浪費を防ぐため、公益通報の範囲を制限しています。したがって、濫用的な内部告発は公益通報に該当せず、公益通報者保護法によって保護されない点に注意が必要です。

なお、公益通報によって会社が損害を受けたとしても、公益通報者に対する損害賠償を請求することはできません(同法7条)。

これに対して、公益通報に当たらない内部告発によって会社が損害を受けた場合、内部告発者に対して、不法行為に基づく損害賠償を請求できる可能性があります(民法709条)。

公益通報者保護法と内部通報制度との関係

内部通報制度とは、企業内部の問題を知る労働者から、違法行為等に関する情報を早期に入手し、未然防止・早期是正を図る仕組みのことです。

従来、内部通報制度を設けなければならないといった法的義務はなく、コンプライアンス経営が厳格に求められる上場企業や大企業を中心に設置されていました。

しかし、2022年6月1日の公益通報者保護法改正により、従業員数300人を超える事業者について、内部通報に適切に対応するための必要な体制の整備が義務付けられたため、今後はより多くの企業が、内部通報制度を設置することになります。

内部通報制度」を導入する際は、公益通報者保護法の規定を踏まえて設計することが求められます。公益通報者保護法により保護されるという安心感を与えることが、労働者や役員からの積極的な通報を促すことにつながるからです。

したがって、企業の経営者や法務・コンプライアンス担当者は、内部通報制度の設計・導入に当たり、公益通報者保護法の全体像をよく理解しておく必要があります。

【2022年6月1日施行】公益通報者保護法改正

2022年6月1日より、改正公益通報者保護法が施行されました。公益通報者の保護をより実効的なものにするため、以下の変更が行われています。

  •  内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備義務
  • 内部調査に従事する者の情報の守秘義務
  • 行政機関等への通報の要件緩和
  • 保護される通報者の範囲を拡大
  • 保護される通報の範囲を拡大
  • 保護の内容を拡大

本記事では、改正後の公益通報者保護法の内容を解説します。同改正による具体的な変更点については、以下の記事をご参照ください。

【2022年6月1日施行】公益通報者保護法改正とは?改正点を解説!

公益通報者保護法で保護されるための要件|「公益通報」に該当するかどうか

公益通報者保護法で保護されるには、同法が定める「公益通報」に該当する必要があります。

公益通報とは

公益通報とは、①「公益通報者」に該当する者が、②通報対象事実(通報の対象となる法令違反)を、③「公益通報を行うことができる窓口」に通報すること、を言います。

※ただし、不正な目的で通報を行った場合は、上記①~③の要件を満たしていたとしても「公益通報」から除外されます(公益通報者保護法2条1項)。

公益通報の①~③の要件を具体的に、詳しく見ていきましょう。

①「公益通報者」に該当する者とは

「公益通報者」とは、以下に該当する者を指します(公益通報者保護法2条1項各号、2項)。

公益通報者の主体

✅正社員・アルバイト・パートタイマーなど、労働基準法9条に規定される労働者(退職後1年以内の者を含む)
✅派遣労働者(退職後1年以内の者を含む)
✅請負契約などに基づき業務に従事する者・従事していた労働者(従事後1年以内の者を含む)
✅役員

②「通報対象事実(通報の対象となる法令違反)」とは

通報対象事実とは、以下の行為に関する事実です。(公益通報者保護法2条3項)

  •  犯罪行為|(公益通報者保護法が定める)法令に違反する行為
  • 過料対象行為|同法が定める法令で、過料の対象とされている行為
  • 上記2つにつながるおそれのある行為|同法が定める法令で、刑罰・過料につながる可能性のある行為

なお、公益通報者保護法で、公益通報の対象とされている法令は以下のとおりです。

公益通報の対象となる法令の種類
公益通報者保護法別表に掲げられたもの・刑法
・食品衛生法
・金融商品取引法
・日本農林規格等に関する法律
・大気汚染防止法
・廃棄物の処理及び清掃に関する法律
・個人情報の保護に関する法律
公益通報者保護法別表8にて、政令に定められたもの特定商取引に関する法律
不当景品類及び不当表示防止法
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
不正競争防止法
下請代金支払遅延等防止法
など
※2022年6月現在、約460個が定められています。全て確認したい方は、「公益通報者保護法別表第八号の法律を定める政令」を参照してください。

③「公益通報を行うことができる窓口」とは(通報先・窓口)

公益通報として保護を受けるには、以下のいずれかの窓口に対して、一定の要件を満たした状況で、通報を行う必要があります(公益通報者保護法2条1項)。

公益通報の通報先

①会社が定めた社内窓口/社外窓口
要件:以下のいずれかに該当する場合
   ・通報対象事実が生じていること
   ・まさに生じようとしていると思われること 

②通報対象事実について処分・勧告等の権限を有する行政機関、又はその行政機関が定めた外部窓口
要件:以下のいずれかに該当すると信ずるに足りる相当の理由がある場合
   ・通報対象事実が生じていること
   ・まさに生じようとしていると思われること
   ※単なる憶測や伝聞等ではなく、通報内容が真実であることを裏付ける証拠や関係者による信用性の高い供述など、相当の根拠が必要

③その者に対し当該通報対象事実を通報することが、その発生や被害拡大の防止に必要と認められる者(通報対象事実により被害を受ける者・受けるおそれがある者を含む)
要件:②と同様の要件に加え、以下のいずれか1つに該当する場合
   ・事業者内部・行政機関に公益通報をすれば解雇その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある
    (例:以前、同僚が内部通報したところ、それを理由として解雇された例があるなど)
   ・事業者内部(労務提供先等)に公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある
    (例:事業者ぐるみで法令違反が行われている場合など)
   ・事業者内部・行政機関に公益通報をしないことを正当な理由なく要求された場合
    (例:誰にも言わないように上司から口止めされた場合)
   ・書面(紙文書以外に、電子メールなど電子媒体への表示も含む。)により事業者内部に公益通報をした日から20日を経過しても、当該事業者から調査を行う旨の通知がない場合・事業者が正当な理由がなく調査を行わない場合
    (例:勤務先に書面で通報して20日を経過しても何の連絡もない場合)
   ・個人の生命・身体に危害が発生している場合・発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合
    (例:安全規制に違反して健康被害が発生する急迫した危険のある食品が消費者に販売されている場合)

公益通報者保護法によって禁止される行為

公益通報者を保護するため、通報の対象となった事業者に対しては、以下の行為が禁止されます。

  • 公益通報をしたことを理由とする解雇
  • 公益通報をしたことを理由とする労働者派遣契約の解除
  • 公益通報をした労働者などに対する不利益な取扱い
  • 公益通報をした役員の解任
  • 公益通報者に対する損害賠償請求

それぞれ詳しく解説します。

公益通報をしたことを理由とする解雇

公益通報を行ったことを理由として、使用者が労働者を解雇した場合、その解雇は違法・無効となります(公益通報者保護法3条)。

公益通報をしたことを理由とする労働者派遣契約の解除

派遣労働者が公益通報を行ったことを理由として、派遣先の事業者が労働者派遣契約を解除した場合、その解除は違法・無効となります(公益通報者保護法4条)。

公益通報をした労働者などに対する不利益な取扱い

労働者・派遣労働者・役員が一定の公益通報をしたことを理由として、事業者が下記その他不利益な取扱いをすることは禁止されます(公益通報者保護法5条)。

禁止される不利益な取扱いの例

✅ 労働者による公益通報の場合
→降格・減給・退職金の不支給など

✅ 派遣労働者による公益通報の場合
→派遣元事業者に対して派遣労働者の交代を求めることなど

✅ 役員による公益通報の場合
→報酬の減額など

公益通報をした役員の解任

役員が公益通報をしたことを理由に解任された場合、事業者に対して、解任によって生じた損害賠償を請求できます(公益通報者保護法6条)。

役員の選任・解任は多数決によるべきであるため、解任自体は認められていますが、公益通報者である役員を保護する観点から、特別に損害賠償請求を認めたものです。

公益通報者に対する損害賠償請求

事業者は、公益通報によって損害を受けたとしても、公益通報者に対して損害賠償を請求することはできません(公益通報者保護法7条)。

公益通報に関して事業者がとるべき措置

公益通報者保護法及び同法に基づく指針に基づき、公益通報への対応に関して、事業者には以下の措置を講じることが求められます。

  • 公益通報対応業務従事者を選任する ※労働者数300人以下の場合は努力義務
  • 内部公益通報への対応体制を整備する

それぞれ詳しく解説します。

公益通報対応業務従事者を選任する|労働者数300人以下の場合は努力義務

常時使用する労働者数が300人を超える事業者は、公益通報に係る通報対象事実を調査し、是正に必要な措置をとる業務に従事する者を選任しなければなりません(公益通報者保護法11条1項)。

同業務の担当者を「公益通報対応業務従事者」と言います。

なお、常時使用する労働者数が300人以下の事業者については、公益通報対応業務従事者の選任は努力義務とされています(同法3項)。

内部公益通報への対応体制を整備する

事業者は、(常時使用する労働者数にかかわらず)公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制整備等の措置をとらなければなりません(公益通報者保護法11条2項)。

消費者庁の指針では、事業者が公益通報に関して講ずべき措置について、以下の内容が示されています。

 ・内部公益通報受付窓口の設置等
→公益通報の社内窓口を設置し、担当部署と責任者を明確化することが求められます。

 ・組織の長その他幹部からの独立性の確保
→取締役などの幹部に関する事案については、当事者から独立した窓口・担当部署で取り扱う必要があります。

・公益通報対応業務の実施
→公益通報を受けた際には必要な調査を実施し、法令違反行為が明らかになれば、速やかに是正措置をとる必要があります。また、実際に講じた措置の検証・改善も求められます。

 ・利益相反の排除
→公益通報事案の関係者は、調査等の業務に関与させないことが求められます。

・公益通報者に対する不利益な取扱いの防止
→不利益な取扱いの防止措置を講じた上で、実際に不利益な取扱いが発生していれば適切に救済・回復の措置をとる必要があります。また、不利益な取扱いを行った当事者については、懲戒処分等も検討すべきです。

 ・範囲外共有等の防止
→公益通報者を特定させる事項は、必要最小限の範囲を超えて共有してはなりません。

 ・労働者・役員・退職者に対する教育・周知
→公益通報者保護法及び自社の内部通報体制について、労働者・役員・退職者に対して教育・周知を行うことが求められます。

 ・是正措置等の通知
→適正な業務遂行の範囲、利害関係がある人の秘密・信用・名誉・プライバシー等の保護に支障がない範囲で、公益通報者に対して、調査結果や是正措置等の内容を速やかに通知することが求められます。

 ・内部通報に関する記録の作成・保管
→内部通報を受けて実施した調査の結果や、実際に講じた是正措置の内容などを記録・保管する必要があります。

 ・対応体制の定期的な評価・点検・改善・開示
→内部通報への対応体制を定期的に評価・点検し、必要に応じて改善を行うことが求められます。また、内部通報制度の運用実績を、労働者・役員などに開示することも求められます。

・内部通報に関する社内規程の作成
→内部通報制度を適切に運用できるように、必要な事項を定めた社内規程を整備する必要があります。

公益通報者保護法に違反した場合の罰則

公益通報者保護法違反に当たる行為のうち、以下の行為は罰則の対象となります。

公益通報対応業務従事者、又は公益通報対応業務従事者であった者が、正当な理由なく公益通報者を特定させる事項を漏らす行為(同法12条)30万円以下の罰金(同法21条)
事業者に対して内閣総理大臣の報告要求があった場合に、報告をせず、又は虚偽の報告をする行為(同法15条)20万円以下の過料(同法22条)

この記事のまとめ

公益通報者保護法の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

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参考文献

消費者庁「公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第 118 号)の解説」

消費者庁「公益通報者保護法第 11 条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」

消費者庁「公益通報ハンドブック」

消費者庁ウェブサイト「公益通報者保護法において通報の対象となる法律について」

厚生労働省ウェブサイト「公益通報者の保護」