大会社とは?
中小会社(非大会社)との違い・定義・資本金などの要件(基準)・課される義務などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

大会社」とは、最終事業年度に係る貸借対照表において、資本金として計上した額が5億円以上、または負債の部の合計額が200億円以上である株式会社をいいます。大会社については、その社会的影響力の高さを考慮して、会社法において通常の株式会社よりも厳格な規制が設けられています。

大会社に適用される会社法の規制は、公開会社に限定して適用されるものと、非公開会社にも適用されるものの2つに大別されます。
<公開会社に限定して適用されるもの>
社外取締役の設置義務
・監査役会の設置義務
・取締役の個人別報酬等に関する方針の決定義務
・連結計算書類の作成義務

<非公開会社にも適用されるもの>
・会計監査人の設置義務
・内部統制システムの決定義務
・損益計算書の公告義務
・清算時における監査役の設置義務

増資や借入れなどをきっかけに大会社となる場合は、新たに適用される会社法の規制へ適切に対応しましょう。

この記事では大会社について、基本から分かりやすく解説します。

※この記事は、2023年9月21日時点の法令等に基づいて作成されています。

ヒー

大きい会社のことを「大企業」と何となく呼んでいますが、会社法では「大会社」なんですね。

ムートン

そうです。どのような会社を「大会社」というのか、会社法で定義されています。適用される規制も含めてこの記事で勉強しましょう。

大会社とは|中小会社(非大会社)との違い含め解説!

「大会社」とは、以下のいずれかに該当する株式会社です(会社法2条6号)。

① 最終事業年度に係る貸借対照表において、資本金として計上した額が5億円以上
② 最終事業年度に係る貸借対照表において、負債の部の合計額が200億円以上

大会社については、その社会的影響力の高さを考慮して、会社法において通常の株式会社よりも厳格な規制が設けられています。

大会社ではない株式会社は「中小会社」「非大会社」などと呼ばれることがありますが、いずれも会社法上の用語ではありません。

その他の会社の分類の例|公開会社と非公開会社など

会社法では、大会社とそうでない会社(いわゆる中小会社)という分類のほか、株式会社を以下の観点から分類しています。

① 株式に譲渡制限を付しているか否か
発行する全部または一部の株式について、会社の承認を要する旨の定款の定め(=譲渡制限)を設けていない会社を「公開会社」といいます。
反対に、発行する全部について譲渡制限を設けている会社を「非公開会社」と呼ぶことがあります(「非公開会社」は会社法上の用語ではありません)。

② 各機関を設置しているか否か
株式会社の機関設計は比較的自由度が高いため、各機関が設置されているかどうかは会社によって異なります。会社法では、各機関を設置している会社を以下のように呼称しています。
取締役会設置会社
・会計参与設置会社
・監査役設置会社
・監査役会設置会社
・会計監査人設置会社
・監査等委員会設置会社
・指名委員会等設置会社

これに対して、各機関を設置していない会社は「○○非設置会社」と呼ばれることがあります(会社法上の用語ではありません)。

③ 種類株式を発行しているか否か
株式会社が内容の異なる2以上の株式を発行する場合、各株式は「種類株式」と呼ばれます。
種類株式を発行する株式会社は、会社法において「種類株式発行会社」と定義されています

なお、1種類しか株式を発行していない株式会社を、「種類株式非発行会社」と呼ぶことは一般的ではありません。

大会社に適用される会社法の規制

大会社に適用される会社法の規制は、公開会社に限定して適用されるものと、非公開会社にも適用されるものの2つに大別されます。

公開会社に限定して適用される規制

社外取締役の設置義務
・監査役会の設置義務
取締役の個人別報酬等に関する方針の決定義務
・連結計算書類の作成義務

非公開会社にも適用される規制

・会計監査人の設置義務
・内部統制システムの決定義務
・損益計算書の公告義務
・清算時における監査役の設置義務

次の項目から、各規制の内容について解説します。

公開会社である大会社に限って適用される規制

公開会社である大会社には、以下の規制が適用されます。

① 社外取締役の設置義務
② 監査役会の設置義務
③ 取締役の個人別報酬等に関する方針の決定義務
④ 連結計算書類の作成義務

規制1|社外取締役の設置義務

監査役会設置会社・公開会社・大会社のすべてに該当し、有価証券報告書の提出義務を負う株式会社は、社外取締役の設置が義務付けられています(会社法327条の2)。

公開会社である大会社では、監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社である場合を除いて、監査役会の設置が義務付けられているため(会社法328条1項)、上記の規定に従って社外取締役の設置が必要です。
また、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では、いずれも社外取締役の設置が義務付けられています(会社法331条6項、400条3項)。
したがって、公開会社である大会社では、必ず社外取締役を設置しなければなりません。

社外取締役は、以下の要件をすべて満たす者であることが必要です(会社法2条15号)。

社外取締役の要件

① 現在および過去の一定期間において、当該会社または子会社の業務執行取締役等でないこと
② 親会社等またはその役員もしくは使用人でないこと
③ 親会社等が経営を支配している別の会社(いわゆる「兄弟会社」)の業務執行取締役等でないこと
④ 経営陣や重要な使用人などの配偶者または二親等内の親族でないこと

なお、各証券取引所の上場規則では、社外取締役の確保に加えて「独立役員」の確保が求められています

例えば、東京証券取引所の上場内国会社は、1名以上の独立役員を確保しなければなりません(有価証券上場規程436条の2第1項)。独立役員は社外取締役または社外監査役から、一般株主と利益相反が生じるおそれのない者を選任する必要があります

規制2|監査役会・委員会の設置義務

公開会社である大会社では、原則として監査役会の設置が義務付けられています(会社法328条1項)。

ただし例外的に、監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社である場合は、監査役会の設置が不要とされています(同項括弧書き)。

① 監査等委員会設置会社
取締役会が経営を行う一方で、取締役で構成される監査等委員会が経営の監督を行います。

② 指名委員会等設置会社
取締役会を監督機能に特化し、経営は執行役が行います。取締役を委員として、指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3委員会が設置されます。

したがって、公開会社である大会社では、監査役会・監査等委員会・指名委員会等のいずれかを設置しなければなりません

規制3|取締役の個人別報酬等に関する方針の決定義務

以下のいずれかに該当する株式会社の取締役会は、取締役(監査等委員である取締役を除く)の報酬等が定款または株主総会決議で定められている場合には、当該取締役の個人別報酬等の決定に関する方針を決定しなければなりません(会社法361条7項1号)。

① 監査役会設置会社・公開会社・大会社のすべてに該当し、有価証券報告書の提出義務を負う株式会社
② 監査等委員会設置会社

公開会社である大会社では、監査役会・監査等委員会・指名委員会等のいずれかの設置が義務付けられています。したがって、指名委員会等を設置している場合を除き、取締役会において個人別報酬等の決定に関する方針を決定することが必須となります。

個人別報酬等の決定に関する方針としては、以下の事項を定める必要があります(会社法施行規則98条の5)。

(a) 取締役の個人別の報酬等(業績連動報酬等および非金銭報酬等のいずれでもないものに限る。以下同じ)の額またはその算定方法の決定に関する方針

(b )取締役の個人別の報酬等のうち、業績指標を基礎としてその額または数が算定される報酬等(=業績連動報酬等)がある場合には、以下の事項
・当該業績連動報酬等に係る業績指標の内容
・当該業績連動報酬等の額または数の算定方法の決定に関する方針

(c) 取締役の個人別の報酬等のうち、金銭でないもの(=非金銭報酬等)がある場合には、以下の事項
・当該非金銭報酬等の内容
・当該非金銭報酬等の額もしくは数またはその算定方法の決定に関する方針

(d) 以下の報酬等が、取締役の個人別の報酬等の額に対して占める割合の決定に関する方針
・(a)の報酬等の額
・業績連動報酬等の額
・非金銭報酬等の額

(e) 取締役に対し報酬等を与える時期・条件の決定に関する方針

(f) 取締役の個人別報酬等の内容についての決定の全部または一部を、取締役その他の第三者に委任するときは、以下の事項
・当該委任を受ける者の氏名、または会社における地位および担当
・委任する権限の内容
・受任者により権限が適切に行使されるようにするための措置を講ずるときは、その内容

(g) 取締役の個人別の報酬等の内容を決定する方法((f)の事項を除く)

(h) (a)~(g)のほか、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する重要な事項

規制4|連結計算書類の作成義務

事業年度の末日において大会社であり、かつ有価証券報告書の提出義務を負う株式会社は、当該事業年度に係る連結計算書類を作成しなければなりません(会社法444条3項)。

公開会社の大半は上場会社であり、上場会社には有価証券報告書の提出義務が課されています(金融商品取引法24条1項1号)。そのため、公開会社である大会社は、ほとんどの場合連結計算書類を作成する必要があります。

連結計算書類は、監査役(監査等委員会設置会社では監査等委員会、指名委員会等設置会社では監査委員会)および会計監査人の監査を受けなければなりません(会社法444条4項)。
さらに取締役会の承認を受けた上で(同条5項)、定時株主総会に提出・提供し、その内容と監査結果を報告する必要があります(同条6項)。

非公開会社である大会社にも適用される規制

公開会社であるか非公開会社であるかにかかわらず、大会社には共通して以下の規制が適用されます。

① 会計監査人の設置義務
② 内部統制システムの決定義務
③ 損益計算書の公告義務
④ 清算時における監査役の設置義務

規制1|会計監査人の設置義務

公開会社であるか否かにかかわらず、大会社であれば会計監査人の設置が義務付けられます(会社法328条1項、2項)。

会計監査人の役割は、株式会社の計算書類等を監査して、その結果を監査役に報告することです(会社法396条1項)。計算書類の法令・定款への適合性について、監査役と意見が異なるときは、会計監査人自身が定時株主総会に出席して意見を述べることができます(会社法397条1項)。

会計監査人は、公認会計士または監査法人でなければなりません(会社法337条1項)。

規制2|内部統制システムの決定義務

公開会社であるか否かにかかわらず、大会社では「内部統制システム」を決定する必要があります。取締役会設置会社であれば取締役会が、そうでなければ取締役が内部統制システムを決定します(会社法348条4項、362条5項)。

内部統制システムとは、取締役の職務の執行が法令・定款に適合することを確保し、その他子会社を含めたグループ会社の業務の適正を確保するために必要な体制です。具体的には、以下の体制を整備する必要があります(会社法施行規則98条1項)。

① 取締役の職務の執行に係る情報の保存・管理に関する体制
② 損失の危険の管理に関する規程その他の体制
③ 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
④ 使用人の職務の執行が法令・定款に適合することを確保するための体制
⑤ 会社・親会社・子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制

規制3|損益計算書の公告義務

株式会社には、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表を公告する義務が課されています(会社法440条1項)。さらに大会社については、貸借対照表に加えて損益計算書も公告しなければなりません(同)。

ただし、公告方法が官報掲載または日刊新聞紙への掲載である場合には、貸借対照表の要旨を公告することで足ります(同条2項)。

規制4|清算時における監査役の設置義務

清算開始原因(解散など)に該当した時に大会社であった清算株式会社は、監査役を置かなければなりません(会社法477条4項)。

清算株式会社における監査役は、清算手続きにおいて、清算人による職務の執行が法令・定款に適合しているかどうか監査します。

ムートン

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