【民法改正(2020年4月施行)に対応】
契約解除とは?
契約書のレビューポイントを分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
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改正民法(2020年4月1日施行)に対応した契約解除の条項のレビューポイント
を解説!!解除条項は、あらゆる契約書に定められている重要な定めです。
解除条項に関連する主な改正点は、3つです。ポイント1│解除の要件から「債務者の帰責性」を削除された
ポイント2│催告解除の要件が明確になった
ポイント3│無催告解除の要件を整理した
それぞれの改正点を分かりやすく解説したうえで、 解除条項をレビューするときに、どのようなポイントに気を付けたらよいのかを解説します。
この記事では、解除条項の基本的な事項と改正点も解説しています。レビューで見直すべきポイントのみ確認したい方は、 解除条項のレビューで見直すべきポイント からお読みください。
※この記事は、2020年6月1日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・民法…2020年4月施行後の民法(明治29年法律第89号)
・旧民法…2020年4月施行前の民法(明治29年法律第89号)
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目次
契約解除とは?
契約の解除とは、契約当事者の一方の意思表示によって、契約の効力をさかのぼって消滅させることをいいます。 解除権には、解除の発生原因が、契約と法律のいずれに定められているものであるかによって、「約定解除権」と「法定解除権」の2種類に分けることができます。
- 解除権の種類
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・約定解除権とは
契約当事者が、契約で解除の発生原因を定めておくことで、与えられる解除権・法定解除権とは
法律上、定められた発生原因によって与えられる解除権
契約が解除されると、まだ履行されていない債務は、履行する必要がなくなります。 また、既に履行された債務について、原状回復の義務(元に戻す義務)が生じます。 さらに、一方当事者が解除することによって、相手方に損害が生じた場合には、損害賠償責任が生じることもあります。
解除に関する主要改正ポイント(民法541条〜)
解除に関する主な改正ポイントは次の3つです。以下、それぞれ解説します。
- 改正ポイント(3つ)
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ポイント1
ポイント2
ポイント3
今回、改正された事項は、その性質に応じて、次の2つに分けることができます。
①従来の判例・一般的な解釈を明文化したもの
②従来、解釈に争いがあった条項を明文化したもの/従来の条項・判例・一般的な解釈を変更したもの
すなわち、①は、実質的には、今までと同じ運用となるため、実務には大きな影響はないものと考えられます。そのため、従来の民法を理解されていた方にとっては、あまり気にされなくてもよい改正といえるでしょう。 他方で、②は、実務上、従来とは異なる運用がなされますので、しっかり理解しておく必要があります。 改正点とあわせて、①と②のいずれの性質の改正であるか(改正の性質)を記載します。
ポイント1│解除の要件から「債務者の帰責性」を削除した
- 改正の性質
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②従来、解釈に争いがあった条項を明文化したもの/従来の条項・判例・一般的な解釈を変更したもの
改正により、旧民法543条ただし書の文言(「ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りではない」)が削除されました。すなわち、解除の要件から「債務者の帰責性(責任)」が取り除かれたのです。 その代わり、債権者の債権者の帰責性(責任)によるときは解除できないことが明文化されました(民法543条)。
(債権者の責めに帰すべき事由による場合)
民法 – e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
第543条 債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。
もともと、旧民法では、解除の要件について「債務者の帰責性」を明文では要求していませんでした。 「債務を履行しない場合」に催告解除ができる、と定めるだけだったのです(旧民法541条)。 しかしながら、旧民法543条(履行不能解除)とのバランスや、 旧民法415条(債務不履行による損害賠償)との類似性から、 解除においては債務者の帰責性(責任)が要件に含まれると 解釈されていました。
このような考え方について、近時の学説では、契約解除は、履行を怠った債務者に対する「制裁」ではなく、 契約の拘束力から解放する制度であると考えられています。 そのため、債務者に帰責性(責任)がないときであっても、解除権を認めるべきである、と言われていました。 今回の改正は、従来の解釈を改めて、このような学説を反映したものなのです。
ポイント2│催告解除の要件が明確になった
- 改正の性質
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①従来の判例・一般的な解釈を明文化したもの
旧民法では、催告解除について、「当事者の一方がその債務を履行しない場合において」と定めるのみでした(旧民法541条)。 しかし、判例では、 相当期間経過時の不履行の部分が数量的にわずかである場合や、付随的な債務の不履行に過ぎない場合については、 契約解除を認めない と示されていました(たとえば最判昭和36年11月21日民集15巻10号2507号)。
そこで、このような判例法理を明確化する趣旨で、「ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りではない。」と定められました(新民法541条ただし書)。
(催告による解除)
民法 – e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
第541条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
ポイント3│無催告解除の要件を整理した
- 改正の性質
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②従来、解釈に争いがあった条項を明文化したもの/従来の条項・判例・一般的な解釈を変更したもの
改正により、無催告解除の要件について、場面ごとに整理して規定されました。 旧民法には、無催告解除が可能な場合として、定期行為の履行遅滞による解除(旧民法542条)と履行不能解除(同法543条) のみが定められていました。 しかしながら、次のような点については、明文の規定がありませんでした(同法543条)。
- 解除に関して不明瞭であった事項
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・債務の全部の履行不能と一部の履行不能の関係
・履行期前に、債務者が履行を拒絶した場合の解除の可否
そこで、改正により、これらを明確にするために、次のように、無催告解除の要件を場面ごとに整理しました。
債務の全部または一部の履行不能の関係を明確化 | |
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①債務の履行が全部不能となった場合 | 契約全部の無催告解除可 (542条1項1号) |
②債務の一部が不能となった場合 | 契約の一部の無催告解除可 (542条2項1号) |
②債務の一部が不能となった場合 | 残存部分では契約の目的を達することができなければ、 契約全部の無催告解除可 (542条1項3号) |
債務者が債務の履行を拒絶する意思を明確にした場合を明確化 | |
---|---|
①債務の全部を履行拒絶している場合 | 契約全部の無催告解除可 (542条1項2号) |
②債務の一部の履行を拒絶している場合 | 契約の一部の無催告解除可 (542条2項2号) |
これらに加えて、 「債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが 明らかであるとき」に無催告で解除することができます(民法542条1項5号)。
(催告によらない解除)
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第542条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
⑴~⑷ (略)
⑸ 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき
もっとも、同法号については、適用対象が必ずしも明確とはいえません。 今後の判例や学界における議論の動向を確認する必要があるでしょう。
解除条項のレビューで見直すべきポイント
それでは、今回の改正をふまえて、解除条項のレビューで見直すべきポイントについて解説します。
改正された民法では、債務不履行を理由として契約を解除するために、相手方の帰責性(責任)は不要となりました(民法541~542条)。 そこで、解除条項については、民法の規定をベースにしながら、これに比べて、自分にとって有利(または不利)な条項となっていないかを確認をする必要があります。
たとえば、民法とは異なり、相手方の帰責性(責任)を問わず解除するためには、次のように定めなければなりません。
- 記載例
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(解除)
1. 本契約の当事者が次の各号のいずれかに該当する場合(以下該当する当事者を「該当者」という。)、該当者の相手方(以下「非該当者」という。)は、何らの通知又は催告をすることなく、直ちに本契約、個別契約、その他当事者間の契約(以下併せて「本契約等」という。)の全部又は一部を解除することができる。この場合、非該当者は、本契約等の解除の有無にかかわらず、自らが被った損害の賠償を該当者に請求することができる。
⑴本契約等の全部又は一部に違反し、相手方が期間を定めて催告したにもかかわらず当該期間内に当該違反が是正されないとき
⑵その責に帰すべき事由により非該当者に損害を与えたとき
⑶代表者が刑事上の訴追を受けたとき、又はその所在が不明になったとき
⑷監督官庁により事業停止処分、又は事業免許若しくは事業登録の取消処分を受けたとき
⑸手形又は小切手が不渡となったとき、その他支払停止又は支払不能状態に至ったとき
⑹破産手続、特別清算手続、会社更生手続、民事再生手続、その他法的倒産手続(本契約締結後に制定されたものを含む。)開始の申立てがあったとき、若しくは私的整理が開始がされたとき、又はそれらのおそれがあるとき
⑺差押え、仮差押え、仮処分、競売の申立て、租税滞納処分、その他公権力の処分を受けたとき、又はそれらのおそれがあるとき。ただし、本契約等の履行に重大な影響を与えない軽微なものは除く。
⑻資本減少、事業の全部若しくは重要な一部の譲渡、廃止、若しくは変更、会社分割、合併、又は解散(法令に基づく解散を含む。)
⑼法令に違反したとき、又は違反するおそれがある行為を行ったとき
⑽その他本契約等を継続しがたい重大な事由が発生したとき
2. 本契約の当事者は、非該当者の責に帰すべき事由の有無を問わず、前項に基づく解除をすることができるものとする。
契約書をレビューするときは、自身が解除する必要性が高いのか、解除される可能性が高いのか、という 個別具体的な事情を考慮したうえで、「なるべく解除したくない」ということであれば、具体化された解除要件の内容について、 過度に自由な解除を認める条項となっていないかどうか、十分に確認する必要があります。
まとめ
民法改正(2020年4月1日施行)に対応した解除のレビューポイントは以上です。
実際の業務でお役立ちいただけると嬉しいです。
改正点について、解説つきの新旧対照表もご用意しました。
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