定款とは?
記載事項・作り方・フォーマット・
認証手続き・変更手続きなどを
分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

定款(ていかん)」とは、会社に関する基本的な事項を定めた文書です。社内規程の中で、定款は最も重要な文書に位置づけられます。

定款に記載または記録すべき事項は、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つに分類されます。
絶対的記載事項は、定款に必ず記載・記録しなければなりません。
相対的記載事項は、定めるかどうかは任意ですが、定款に定めなければ効力を生じません。
任意的記載事項は、絶対的記載事項と相対的記載事項を除く定款の記載・記録事項です。会社の実情に応じて、会社法に違反しない範囲内で記載・記録することができます。

会社を設立する際には、必ず定款を作成しなければなりません。
定款を変更する際には、株主総会の特別決議が必要とされています。また、会社の登記事項を変更した場合には、法務局に対して変更登記を申請しなければなりません。

この記事では定款について、記載事項・作成手続き・変更手続きなどを詳しく解説します。

ヒー

「新たな事業を始めるなら、定款も変更しておかないとね」と言われました。「定款」って、そんなに重要なんですか?

ムートン

定款は「会社の憲法」と言われるように、社内規程の中でも特に重要なものです。定款に書くべき内容や手続きは主に会社法に定められています、確認していきましょう!

※この記事は、2024年10月30日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

定款とは

定款(ていかん)」とは、会社に関する基本的な事項を定めた文書です。

社内規程の中で、定款は最も重要な文書に位置づけられます。会社を設立する際には、必ず定款を作成しなければなりません。

定款に記載・記録すべき事項

定款に記載または記録すべき事項は、以下の3つに分類されます。

  • 絶対的記載事項
  • 相対的記載事項
  • 任意的記載事項

絶対的記載事項

絶対的記載事項」は、会社の定款に必ず記載し、または記録しなければならない事項です(会社法27条・576条)。絶対的記載事項が記載・記録されていない定款は無効となります。

定款の絶対的記載事項

<株式会社の場合>
・目的
・商号
・本店の所在地
・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
・発起人の氏名または名称および住所

<持分会社の場合>
・目的
・商号
・本店の所在地
・社員の氏名または名称および住所
・社員が無限責任社員または有限責任社員のいずれであるかの別
・社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る)およびその価額または評価の標準

相対的記載事項

相対的記載事項」は、定めるかどうかは任意であるものの、定款に記載または記録しなければ効力が認められない事項です。

定款の主な相対的記載事項

・変態設立事項(会社法28条)
※原始定款(=会社設立時に作成される最初の定款)に記載または記録しなければ効力を生じない事項
・設立時取締役および取締役選任についての累積投票の排除(会社法89条・342条)
・株主名簿管理人の設置(会社法123条)
・譲渡制限株式の指定買取人の指定を、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)以外の者の権限とする旨(会社法140条5項)
・相続人その他の一般承継者に対する、譲渡制限株式の売渡請求(会社法174条)
・単元株式数(会社法188条1項)
・株券の発行(会社法214条)
・株主総会、取締役会および監査役会の招集通知期間の短縮(会社法299条1項・368条1項・376条2項・392条1項)
・取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人および委員会の設置(会社法326条2項)
・取締役、会計参与、監査役、執行役および会計監査人の責任の免除(会社法426条)
・社外取締役、会計参与、社外監査役および会計監査人の責任限定契約(会社法427条)
・取締役会設置会社における中間配当の定め(会社法454条5項)

任意的記載事項

任意的記載事項は、絶対的記載事項と相対的記載事項を除く定款の記載・記録事項です。会社の実情に応じて、会社法に違反しない範囲内で任意的記載事項を記載・記録することができます。

定款の任意的記載事項の例

・株主名簿の基準日(会社法124条)
・株主名簿の名義書換手続(会社法133条・134条)
・株券の再発行手続(会社法228条2項)
・定時株主総会の招集時期(会社法296条1項)
・株主総会の議長(会社法315条)
・株主総会における議決権の代理行使(会社法310条)
・取締役の員数(会社法326条1項・331条5項)
・監査役の員数(会社法335条3項)
・執行役の員数(会社法402条1項)
・代表取締役(会社法349条3項)
・役付取締役(会長、社長、副社長、専務取締役、常務取締役など)
・取締役会の招集権者(会社法366条1項)
・事業年度(会社法296条1項、会社計算規則91条2項)
・公告の方法(会社法939条1項)
など

会社設立時の定款作成手続き

会社を設立するに当たって、定款を作成する際の手続きの流れは、以下のとおりです。持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)に比べると、株式会社の方が必要な手続きが多くなっています

<共通>
① 定款案文の作成
② 発起人または社員全員の署名・記名押印・電子署名

<株式会社のみ>
③ 公証人による定款の認証
④ 本支店等への定款の備え置き
⑤ 変態設立事項に関する検査

定款案文の作成

まずは、定款の案文を作成します。

定款の案文には、絶対的記載事項を必ず定めましょう。
また、相対的記載事項も定款に定めなければ効力を生じないので、該当する項目を漏れなく定めます。

定款の記載例・フォーマット

定款の内容は会社の実情に応じて定めるべきであるものの、実際には多くの会社が同じような内容の定款を定めています。

日本公証人連合会のウェブサイトには、定款の記載例が掲載されています。手間なく会社を設立したいときは、同記載例を参考にするとよいでしょう。

参考:日本公証人連合会ウェブサイト「定款等記載例(Examples of Articles of Incorporation etc)」

定款作成時の主なチェックポイント

定款に記載する事項のうち、会社の状況に応じて個別にチェックすべきものとしては、以下の例が挙げられます。

・事業目的
→会社がどのような事業を行うかを、具体的に記載します。

・取締役の人数
→1人以上の人数を定めます。上限はありませんが、多くの取締役がいると意思決定が煩雑になるので、会社の規模に応じた人数を定めましょう。

・事業年度(決算の時期)
→確定申告の対象となる事業年度の期間を定めます。決算期を何月にするかは自由です。

・資本金の額
→設立時に払い込んだ金額のうち2分の1以上を、資本金として計上します。課税や信用力などの観点から、適切な資本金の額を定めましょう。

発起人または社員全員の署名・記名押印・電子署名

株式会社の場合は、発起人が定款を作成した上で、その全員が定款に署名・記名押印・電子署名のいずれかを行います(会社法26条)。

持分会社の場合は、社員になろうとする者が定款を作成した上で、その全員が定款に署名・記名押印・電子署名のいずれかを行います(会社法575条)。
持分会社ではこれ以降の手続きが必要ないので、社員全員の署名・記名押印・電子署名のいずれかをもって、定款の作成手続きは完了です。

【株式会社のみ】公証人による定款の認証

株式会社原始定款(=会社設立時に作成される最初の定款)は、公証人の認証を受けなければ効力を生じないものとされています(会社法30条1項)。公証人の認証を受けた原始定款は、株式会社が成立するまでの間変更することができません(同条2項)。

原始定款の認証を受けるためには、公証役場に申し込んで必要書類を提出します。

定款認証の必要書類

原始定款を書面で作成した場合は、公証役場に以下の書類を提出します。

書面による定款の認証の必要書類

・認証を受ける定款 3通(公証役場用、法務局用、会社保管用)
・発起人全員の印鑑証明書
※発起人が法人の場合は、代表者印の印鑑証明書および会社の登記簿謄本または代表者の資格証明書
・実質的支配者となるべき者の申告書

参考:日本公証人連合会「実質的支配者となるべき者の申告書(株式会社用)」

<代理人が公証役場へ行く場合>
・委任状
・代理人の本人確認書類

参考:日本公証人連合会ウェブサイト「公証事務 11必要書類 Q5」

電子的に原始定款を作成した場合は、定款案について公証人の事前チェックを受け、登記・供託オンライン申請システムへの申請等を行った後、公証役場で電子定款の認証を受けます。
その際には、以下の書類を提出する必要があります。

電子定款認証の必要書類

・電子署名をした人の本人確認書類
・電子署名をしない発起人全員の印鑑証明書
※発起人が法人の場合は、代表者印の印鑑証明書および会社の登記簿謄本または代表者の資格証明書
・実質的支配者となるべき者の申告書

<代理人が公証役場へ行く場合>
・委任状
・代理人の本人確認書類

参考:京橋公証役場ウェブサイト「電子定款の認証」

定款認証の費用

株式会社の定款につき、公証人の認証を受ける際の費用は以下のとおりです。

<定款認証手数料> ※書面の定款・電子定款共通
資本金の額定款認証手数料
100万円未満3万円
100万円以上300万円未満4万円
300万円以上5万円

<謄本の請求手数料> ※書面の定款
1通につき、250円×(定款の枚数+1)
※「+1」は認証用紙1枚分

<電磁的記録の保存> ※電子定款

300円

<同一情報の提供手数料> ※電子定款
1通につき、700円+(20円×(定款の枚数+1))
※「+1」は認証用紙1枚分

【株式会社のみ】本支店等への定款の備え置き

株式会社の成立前においては発起人が、自ら定めた場所に原始定款を備え置かなければなりません(会社法31条1項)。
株式会社の成立後は、株式会社の本店および支店において、現在有効な定款を備え置く必要があります(同項)。

株主および債権者は、株式会社の本支店等に備え置かれている定款について、営業時間内はいつでも閲覧や謄抄本の交付などを請求することができます(同条2項)。

【株式会社のみ】変態設立事項に関する検査

変態設立事項」とは、株式会社の原始定款に定めなければ効力を生じない事項をいいます(会社法28条)。

変態設立事項

① 金銭以外の財産を出資する者(=現物出資者)に関する以下の事項
・現物出資者の氏名または名称
・現物出資する財産およびその価額
・現物出資者に対して割り当てる設立時発行株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合は、設立時発行株式の種類および種類ごとの数)

② 株式会社の成立後に譲り受ける財産に関する以下の事項
・財産の内容および価額
・譲渡人の氏名または名称

③ 株式会社の成立により、発起人が受ける報酬その他の特別の利益に関する以下の事項
・利益の内容
・利益を受ける発起人の氏名または名称

④ 株式会社の負担する設立に関する費用(以下のものを除く)
・定款に係る印紙税
・設立時発行株式と引換えにする金銭の払込みの取扱いをした銀行等に支払うべき手数料および報酬
・変態設立事項に関する検査に要する検査役の報酬
・株式会社の設立の登記の登録免許税

原始定款に変態設立事項を定めた場合、発起人は公証人の認証を受けた後遅滞なく、裁判所に対して検査役の選任を申し立てなければなりません(会社法33条1項)。

検査役は、変態設立事項について必要な調査を行い、その結果を裁判所に対して報告します(同条4項)。
裁判所は、変態設立事項を不当と認めたときは、決定によってその内容を変更します(同条7項)。

ただし例外的に、以下のいずれかに該当する場合には、現物出資および株式会社の成立後に譲り受ける財産(=現物出資財産等)に関する事項の検査が免除されます(同条10項)。

現物出資財産等に関する事項の検査が免除される場合

① 現物出資および株式会社の成立後に譲り受ける財産(=現物出資財産等)について、定款に記載・記録された価額の総額が500万円以下である場合
→全ての現物出資財産等に関する検査が免除されます。

② 現物出資財産等のうち、市場価格のある有価証券について定款に記載・記録された価額の総額が、当該有価証券の市場価格以下である場合
→当該有価証券に関する検査が免除されます。

③ 現物出資財産等について、定款に記載・記録された価額が相当であることにつき、以下の者の証明を受けた場合
(a) 弁護士、弁護士法人、弁護士・外国法事務弁護士共同法人
(b) 公認会計士(外国公認会計士を含む)、監査法人
(c) 税理士、税理士法人
※現物出資財産等が不動産である場合は、上記の証明に加えて、不動産鑑定士の鑑定評価が必要です。
→当該証明を受けた現物出資財産等に関する検査が免除されます。

定款を変更する際の手続き

定款を変更する際には、株式会社では株主総会の特別決議、持分会社では総社員の同意が必要です。また、登記事項を変更した場合には、法務局に対して変更登記を申請しなければなりません。

株主総会の特別決議 or 総社員の同意

株式会社の定款変更は、株主総会の特別決議によって行います(会社法466条・309条2項11号)。

株主総会の特別決議は、行使可能議決権の過半数を有する株主が出席し、かつ出席株主の議決権の3分の2以上の賛成があった場合成立します。
ただし、定足数要件は行使可能議決権の3分の1以上の範囲で軽減または加重することができます。賛成数要件は加重することができます(賛成数要件の軽減は認められません)。

持分会社の定款変更は、総社員の同意によって行います(会社法637条)。

【登記事項を変更した場合】法務局に対する変更登記の申請

会社の登記事項について定款を変更した場合は、本店所在地を管轄する法務局または地方法務局に対し、2週間以内に変更登記を申請しなければなりません(会社法915条1項)。

会社の登記事項は、その種類に応じて会社法911条~914条に定められています。

ムートン

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