契約管理(契約書管理)とは?
重要性・企業が講ずべき措置・
システム化のメリットなどを解説!

この記事のまとめ

契約管理(契約書管理)」とは、過去に締結した契約を管理することをいいます。契約管理を適切に行うことは、情報セキュリティや業務の効率化の観点から非常に重要です。

契約管理を行うに当たって、企業は以下のような措置を講ずる必要があります。
管理担当者の決定
・契約書の保管方法の決定
・契約管理に関する社内規程の策定
・契約管理ルールの社内向け教育・周知
契約管理台帳の作成

契約管理を効率化するためには、契約管理システムを導入することも検討すべきでしょう。

今回は契約管理について、その重要性と企業が講ずべき措置、契約管理をシステム化するメリットなどを解説します。

ヒー

契約締結後は、原本を保管しておくだけではないのですか?

ムートン

それだけでは不十分ですね。契約は締結して初めて効力を発揮します。つまり、締結してからがスタートです。契約管理の重要性をこの記事で学んでいきましょう。

※この記事は、2023年1月12日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

契約管理(契約書管理)とは

契約管理(契約書管理)」とは、過去に締結した契約を管理することをいいます。

ヒー

契約管理って、とりあえず、契約書の原本保管しておけば良いんですよね? それ以外にやることありますか?

ムートン

残念ながら、それのみでは適切な契約管理ができている状態とはいえません。どのような状態が適切な契約管理ができているといえるのか、解説しますね。

適切な契約管理ができている状態とは

契約書が「適切管理できている状態」とは、一言でいえば、「必要な人が、すぐに取り出せる状態」になります。

この状態を実現するためには、以下の4つがポイントになります。

1.保管ルールがある
→契約書の保管方法や保管期間などにつき、ルールを定める必要があります。なお、理想的な「保管」は原本+データです。これは、書面保管のみの場合に「原本紛失」と「情報漏えい」という2つのリスクがあるためです。

2.情報の検索性が高い
→契約書は、必要な時にすぐに確認できる状態にしておく必要があります。そのためには、以下の2つが必要です。
①全社で契約情報を一覧化すること
②案件ごと・顧客ごとに契約書が整理されていること

3.有効期間の管理ができている
→契約の有効期間がきちんと管理できていないと、知らないうちに契約が失効したり、更新するつもりがなかったのに自動更新されたりする事態になりかねません。契約書の有効期間を管理することも、契約管理の重要な要素の一つです。

4.関係者のみ閲覧できる
→契約書を閲覧できるのは、必要最小限の者に限定すべきです。「誰でも見られる状態」にしておくと、情報漏えいリスクが高まるためです。もっとも、閲覧制限を行うことにより、権限の煩雑化、見たい時に見られないなどの、業務の非効率化を招く可能性もあります。その場合は、契約管理システムの導入などで解決が可能です。

契約管理が重要である理由

企業にとって契約管理が重要なのは、主に「リスクマネジメント」と「業務の効率化」の2つの面に大きく影響するためです。

リスクマネジメント|情報セキュリティ対策

契約に関する情報は、企業にとって大切な財産であり、他社に知られてはならない秘密情報です。

例えば競合他社に契約に関する情報が漏れてしまったら、その情報を分析・利用された結果、顧客獲得競争に敗北して売り上げ・利益を失いかねません。

また、契約に関する情報の流出は、取引先からの信頼失墜にもつながります。さらに、情報漏えいの事実が大々的に報道されれば、消費者からも「情報セキュリティが甘い企業」と認識され、企業としてのレピュテーションが悪化します。

ムートン

リスクマネジメントの観点から、企業は、適切に契約管理を実施し、情報セキュリティ対策を講じる必要があるのです。

業務の効率化|検索性の確保

企業にとって、過去に締結した契約書を確認したい場面は、たくさんあります。

(例)
・取引に疑問が生じたため、契約内容を確認したい場合
・相手方との間でトラブルが発生したため、損害賠償や解除などのルールを確認したい場合
・関連契約を締結するため、過去の契約書との整合性を確認したい場合
など

ムートン

この点、過去の契約書をスムーズに探し出せれば、契約業務大幅な効率化につながります。契約管理を行うときは、情報の検索性が確保された仕組みをつくることが大切です。

契約管理の4つの要素・ポイント

契約管理では、以下の4つの要素を意識した体制を構築できると、契約リスクを制御しやすくなります。

・一元管理
・項目管理
・期限管理
・内容管理

一元管理

一元管理とは、締結した全ての契約書を契約管理部門の元に集約し、一元的管理することです。契約書を保管する部門がバラバラだと、「必要な人が、すぐに取り出せる状態」をつくるのが難しくなります。

この点、契約書を一元管理することで、以下のような利点が生まれます。

・契約書へのアクセス権を適切に設定できる
・検索性を向上させることができる

項目管理

一方で、一元管理を実現し、契約管理部門の書類庫に契約書が格納されているだけではリスクマネジメントの観点からは、不十分です。

そこで重要になるのが、「項目管理(=契約管理台帳を作成して、締結した契約書の主要項目を整理すること)」です。

項目管理すべき契約上の項目の例

①契約書に関する情報
・当事者名(契約の相手方)
・取引金額
・契約締結日
・契約期間
・支払いの周期
・自動更新の有無
など

②管理情報
・所管部門
・担当者
・稟議番号
など

項目管理を適切に行えば、個々の契約についての注意点を一覧的に把握できるとともに、自社が締結している契約の傾向を知ることもできます。

期限管理

契約のステータスを把握し、適切なタイミングで更新や解約の手続きを行うため、契約の「期限管理」を行う必要があります。

期限管理に当たって把握すべき事項

・有効期間の開始日
・有効期間の終了日
・自動更新の有無
・解約の条件、手続き
など

期限管理は、項目管理の一環として位置づけられます。

期限管理が重要な契約としては、例えば、

・ソフトウェアなどのライセンス契約
定期建物賃貸借契約
システム(ソフトウェア)開発委託契約
コンサルティング契約

などが挙げられます。これらの契約には、自動更新条項が含まれているケースが多々あります。

ヒー

自動更新条項って何ですか?

ムートン

当事者のいずれかから更新拒絶の申し入れがなければ、従前と同条件で自動的に契約が更新されることを定めた条項ですね。

自動更新条項の存在を忘れてしまうと、更新拒絶の申し入れを適切な時期に行えず、継続を望まない契約が更新されてしまい、思わぬ支出が発生してしまった、といった損害を被ることになります。

こうした損害を避けるためには、「期限管理」をきちんと行うことが重要です。

内容管理

多くの企業は、業務効率化の観点から、自社ひな形を用意し、自社の通常のオペレーションを定めているかと思います。しかし、時には、自社の通常のオペレーションとは異なる運用での契約を締結することもあります。

このような自社基準から外れる、特別な内容を含む条項は、個別に把握・管理する必要があります。これを契約の「内容管理」といいます。

内容管理では、以下の事項を把握・管理します。

・契約条項の内容
・懸念事項

また、契約管理担当部門と実際に取引を行う部門の間で、これらの情報を共有し、契約違反の有無について、年次などで定期的な監査を行うことが望ましいです。

契約管理について企業が講ずべき措置

企業が契約管理を行うときは、以下の措置を講ずることが求められます。

①管理部門・管理担当者の決定
②契約書の保管方法の決定|セキュリティに配慮
③契約管理に関する社内規程の策定
④契約管理ルールの社内向け教育・周知
⑤契約書管理台帳の作成

①管理部門・管理担当者の決定

まずは、契約管理を担当する部門と、管理担当者を決定します。

特段の事情がない限り、取引を担当する事業部門ではなく、法務部門や総務部門など、バックオフィスに当たる部門にし、その中から担当者を選出するのが良いでしょう。

②契約書の保管方法の決定|セキュリティに配慮

次に、契約書の保管方法を決めます。保管の方向性としては、

・原本のみ
・原本+データ(PDFなど)

が考えられますが、情報の検索性などを考えると、後者が望ましいです。

いずれの方法をとるにしても、情報セキュリティに十分配慮しなければなりません。具体的には、以下のような対策を取る必要があります。

・契約書にアクセスできる者を必要最小限に絞る
・契約書の流出を防止できるような仕組みを整える
・万が一流出してしまった場合に備え、流出元を特定できるような仕組みをつくる

しかし、自社でこうした体制を整えたり、一からシステムを構築したりするのは非常に労力がかかります(特に、紙媒体の原本のみで保管する場合には、セキュリティ対策の限界があります)。そこで、契約管理システムを導入することも一案です。

③契約管理に関する社内規程の策定

契約書管理部門や保管ルールなどが定まったら、具体的な契約管理のフローや遵守すべき事項などを定めた社内規程(マニュアルを含む)を策定しましょう。

契約管理に関する社内規程に定めるべき事項の例

・契約管理の担当部署、担当者
・契約書の保管場所、保管方法
・契約管理の申請方法
・契約書の取り扱いルール(アクセス権、パスワード、メール送信の方法など)
など

契約管理に関する社内規程を定める際は、情報漏えいなどのリスクを最小限に抑えられるような規定を盛り込むことが大切です。また、業務効率化の観点から、会社全体で契約に関する工程を減らせるような工夫をすることも求められます。

④契約管理ルールの社内向け教育・周知

契約管理に関する社内規程を定めたら、その内容を社内全体に教育・周知しましょう。適切に教育・周知を行うことが、一元管理による契約管理の適正化につながります。

教育・周知に当たっては、イントラネットやメールなどでの案内に加えて、研修も併せて開催すべきでしょう。契約管理の担当部門が主導して、細かいフローや順守すべき事項などをレクチャーすれば、契約管理ルールを早期に浸透させることができます。

⑤契約管理台帳の作成

契約管理を行うときは、契約書管理台帳の作成が必須です。「契約管理の4つの要素・ポイント」を参考に、自社にあった台帳を作成しましょう。

なお、契約管理台帳の作成は、エクセルなどの表計算ソフトでも可能ですが、契約管理システムを導入するといっそう効率化できる可能性があります。

契約管理システムを導入するメリット

自社のニーズに合った契約管理システムを導入すると、契約管理業務を適正化・効率化できます。契約管理システムを導入する主なメリットは、以下のとおりです。

・契約書の保管コストが下がる
・アクセス権・パスワードの設定により、セキュリティを強化できる
・過去の契約の検索が容易になる

契約書の保管コストが下がる

紙ベースで締結していた契約書を電子化して、契約管理システムを使って管理すれば、保管スペースを削減でき、保管にかかるコストを減らせます。

テレワークの浸透に伴い広まっている、オフィススペースを削減する動きにも、契約書の電子化と契約管理システムの導入は親和的といえるでしょう。

アクセス権・パスワードの設定により、セキュリティを強化できる

一般的に、契約管理システムには、アクセス権やパスワードの設定が可能であるなど、契約書データの流出防止に役立つ機能が整っています。

自社で独自に対策を行うよりも、ノウハウの詰まった契約管理システムの機能を活用すれば、より効果的に情報セキュリティを強化できるでしょう。

過去の契約の検索が容易になる

契約管理システムを導入する最大のメリットは、過去の契約を検索しやすくなることです。

紙媒体で保管している場合は、「鍵を持って保管場所にいく→該当のファイルを探し、さらに契約書を一ページずつ探す」といったかたちで、該当の契約書を探し出すまでに、手間と時間がかかります。

一方、契約管理システムには、登録された契約書全てに対して、全文検索できる機能が備わったものもあります。「○○社」と検索すれば○○社の契約書が一瞬で表示される、「再委託」などで検索すれば該当の条文がヒットするなど、うまく活用できれば、見たい契約書を一瞬で探し出せます。

契約管理に関する課題を分析した上で、自社のニーズに合った契約管理システムを導入するのが良いでしょう。

この記事のまとめ

契約管理(契約書管理)の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!