裁量労働制でも残業代は発生する?
発生するケース・計算方法・
運用上の注意点などを分かりやすく解説!

無料で資料をダウンロード
 人事・労務部門ですぐに使えるChatGPTプロンプト集 >
✅ 副業解禁のために企業が知っておくべき就業規則の見直しポイント >
この記事のまとめ

裁量労働制ではみなし労働時間が適用されますが、残業代が発生するケースもあります。具体的には、以下の場合に残業代が発生します。
・みなし労働時間が法定労働時間を超える場合
・休日に労働した場合
・深夜に労働した場合

裁量労働制を導入している企業は、残業代の未払いを防ぐため、対象となる労働者の休日や深夜における労働時間を正確に把握する必要があります。
また、裁量労働制は働き過ぎにつながりやすいので、法令の規定に従って健康・福祉確保措置を適切に講じてください。

この記事では裁量労働制の残業代について、発生するケース・計算方法・運用上の注意点などを解説します。

ヒー

裁量労働制でも、残業代が発生するケースはあるのでしょうか?

ムートン

休日・深夜労働や、みなし労働時間が法定を超える場合などは発生します。計算方法や運用の注意点を解説しますので、確認していきましょう。

※この記事は、2025年12月4日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

裁量労働制における残業代の考え方

裁量労働制の労働者には「みなし労働時間」が適用されるため、残業に関する規制は通常の労働者よりも緩やかです。
しかし、一切残業代が発生しないわけではありません。裁量労働制だからといって、無制限に長時間労働させてよいわけではないのでご注意が必要です

そもそも裁量労働制とは|2種類の裁量労働制

裁量労働制」とは、業務について労働者に広い裁量を与える制度です。

使用者は裁量労働制の労働者に対し、業務の進め方や時間配分などを具体的に指示することができません。その代わり、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間数働いたものとみなされます(=みなし労働時間

労働基準法では、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」が認められています。

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制」は、省令・告示により定められた以下の20業務を対象とする裁量労働制です。専門業務型裁量労働制を導入する際には、労使協定を締結する必要があります

専門業務型裁量労働制の対象業務

① 新商品や新技術などの研究開発、または人文科学や自然科学に関する研究の業務
② 情報処理システムの分析または設計の業務
③ 記事や放送番組の取材や編集の業務
④ 新たなデザインの考案の業務
⑤ 放送番組や映画などのプロデューサーやディレクターの業務
⑥ コピーライターの業務
⑦ システムコンサルタントの業務
⑧ インテリアコーディネーターの業務
⑨ ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
⑩ 証券アナリストの業務
⑪ 金融商品の開発の業務
⑫ 大学における教授研究の業務
⑬ 銀行、証券会社におけるM&Aアドバイザリー業務
⑭ 公認会計士の業務
⑮ 弁護士の業務
⑯ 建築士の業務
⑰ 不動産鑑定士の業務
⑱ 弁理士の業務
⑲ 税理士の業務
⑳ 中小企業診断士の業務

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制」は、事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析の業務を対象とする裁量労働制です。

企画業務型裁量労働制を導入する際には、労使委員会の決議が必要となります。労使委員会の委員の半数以上は労働者側の者でなければならず、決議には出席委員の5分の4以上の賛成が必要です

裁量労働制でも残業代は発生する

裁量労働制では「みなし労働時間」が適用されるため、残業代が発生するケースは通常の労働者よりも限定されます。
しかし、残業代が一切発生しないわけではありません。後述するように、みなし労働時間が法定労働時間を超える場合や、休日・深夜に労働した場合は残業代が発生します

企業としては、裁量労働制の労働者についても、労働の状況を適切に把握することが重要です。

裁量労働制と固定残業代制の違い

裁量労働制はみなし労働時間が適用され、一方で「固定残業代制」はみなし残業制と呼ばれることもあるため、これらが混同されたり、比較されたりすることがあります。両者は異なるものなので、その違いを理解しておきましょう。

裁量労働制固定残業代制
対象となる業務【専門業務型裁量労働制】
省令・告示により定められた20業務
 
【企画業務型裁量労働制】
事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析の業務
※当該業務の性質上、適切に遂行するには遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるものに限る
特に限定されていない
業務の進め方や時間配分などに関する具体的な指示不可可能
導入の手続き【専門業務型裁量労働制】
労使協定の締結
 
【企画業務型裁量労働制】
労使委員会の決議
労働者に対する以下の事項の明示
固定残業代を除いた基本給の額
・固定残業時間数と固定残業代の計算方法
・固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨
残業代が発生するケース・みなし労働時間が法定労働時間を超える場合
・休日に労働した場合
・深夜に労働した場合
・固定残業時間を超えて時間外労働、休日労働または深夜労働をした場合

固定残業代制」は、時間外労働・休日労働・深夜労働が一定の時間数に達するまでは、実際の時間数にかかわらず一律で固定残業代を支給する制度です。

裁量労働制とは異なり、固定残業代制の対象業務は特に限定されていません。また、使用者は固定残業代制の労働者に対して、業務の進め方や時間配分などを具体的に指示することもできます

固定残業代制の導入に当たっては、裁量労働制のような労使協定の締結や労使委員会の決議は必要ありません。しかし、固定残業代や固定残業時間などに関する一定の事項を労働者に明示する必要があります

残業代が発生するケースも、裁量労働制と固定残業代制では異なります。上記の表および「裁量労働制で残業代が発生するケース」をご参照ください。

裁量労働制では「みなし労働時間」が適用される

裁量労働制の労働者には「みなし労働時間」が適用されます。実際の労働時間にかかわらず、労使協定または労使委員会決議で定めた時間数働いたものとみなされます

例えばみなし労働時間が1日8時間とされていて、ある日に9時間働いたとします。この場合、いずれの場合も使用者が支払うべき賃金は8時間分のみです。
他方で、7時間しか働かなかった日についても、みなし労働時間である8時間分の賃金を支払う必要があります。

ただし、法定休日に働いた場合はみなし労働時間が適用されないため、実際の労働時間に応じた賃金を支払う必要があります。詳しくは「休日に労働した場合」で解説します

裁量労働制で残業代が発生するケース

裁量労働制の労働者についても、以下に挙げる場合には時間外手当・休日手当・深夜手当などが発生します。

① みなし労働時間が法定労働時間を超える場合
② 休日に労働した場合
③ 深夜に労働した場合

みなし労働時間が法定労働時間を超える場合

みなし労働時間が法定労働時間を超える場合には、超える部分について時間外手当を支払わなければなりません

例えば、みなし労働時間が1日9時間だとします。法定労働時間は1日当たり8時間なので、1時間分の時間外手当が労働日ごとに発生します。
仮に労働日が月20日だとすれば、その月は20時間分の時間外手当を支払わなければなりません。

なお、時間外手当には、通常の賃金に対して25%以上(月60時間を超える部分は50%以上)の割増賃金を上乗せする必要があります。

休日に労働した場合

裁量労働制の労働者が休日に労働した場合の取り扱いは、法定休日と法定外休日で異なります。

法定休日」とは、労働基準法35条によって付与が義務付けられた休日です。1週間につき1日、または4週間を通じて4日が法定休日となります。
法定外休日」とは、法定休日以外の休日です。

法定休日と法定外休日は、以下の方法で区別します。

法定休日と法定外休日の区別

(a) 労働契約または就業規則に定めがある場合
→その定めに従います。

(b) 労働契約または就業規則に定めがない場合
【週1日を法定休日とする場合】
→日曜から土曜を1週間として、もっとも後ろに位置する休日が法定休日、それ以外の休日が法定外休日となります。

【4週間を通じて4日を法定休日とする場合】
→4週間のうち、もっとも後ろに位置する4日間の休日が法定休日、それ以外の休日が法定外休日となります。

法定休日の労働については、みなし労働時間を適用できないと解されています。したがって、裁量労働制の労働者が法定休日に働いた場合は、休日手当を支払わなければなりません
休日手当には、通常の賃金に対して35%以上の割増賃金を上乗せする必要があります。

法定外休日の労働については、労使協定または労使委員会の決議により、みなし労働時間の対象とすることができます。
特に定めがないときは、実際の労働時間に従って法定内残業手当または時間外手当を支払わなければなりません。法定労働時間を超えない部分は法定内残業手当(割増なし)、超える部分は時間外手当(25%以上割増)が発生します

深夜に労働した場合

裁量労働制の労働者が午後10時から午前5時までの間に働いた場合は、深夜手当を支払う必要があります。深夜手当の額は、通常の賃金に対して25%以上としなければなりません。

裁量労働制における残業代の計算方法

裁量労働制の労働者に支払うべき残業代の額は、以下の手順で計算します。

① 1時間当たりの基礎賃金を計算する
② 残業時間を種類ごとに集計する
③ 残業代の額を計算する

1時間当たりの基礎賃金を計算する

1時間当たりの基礎賃金」とは、残業代の「時給」に相当するものです。以下の式によって計算します。

1時間当たりの基礎賃金=給与計算期間中の基礎賃金÷給与計算期間に対応する所定労働時間

基礎賃金」とは、給与計算期間中に労働者に対して支給されたすべての賃金から、以下の賃金を除いたものです(労働基準法37条5項、労働基準法施行規則21条)。

基礎賃金から除く賃金

・法定内残業手当
・時間外手当
・休日手当
・深夜手当
・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当
・臨時に支払われた賃金
・1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金

例えば、月給制の労働者の1カ月の基礎賃金が48万円、所定労働時間が160時間の場合、1時間当たりの基礎賃金は3000円(=48万円÷160時間)となります。

残業時間を種類ごとに集計する

以下の種類に応じて、残業時間を集計します。

残業の種類概要割増率
法定内残業法定労働時間を超えない部分の残業
※法定外休日の労働のうち、法定労働時間を超えない部分(みなし労働時間が適用される場合は、そのうち法定労働時間を超えない部分)を含む
※裁量労働制の場合、労働日の法定内残業は集計不要(みなし労働時間が適用されるため)
時間外労働法定労働時間を超える部分の残業
※法定外休日の労働のうち、法定労働時間を超える部分(みなし労働時間が適用される場合は、そのうち法定労働時間を超える部分)を含む
※裁量労働制の場合、労働日の時間外労働は集計不要(みなし労働時間が適用されるため)
25%以上(月60時間を超える部分は50%以上)
休日労働法定休日の労働35%以上
深夜労働午後10時から午前5時までに行われる労働25%以上

残業代の額を計算する

最後に、以下の式によって残業代を計算します。

残業代=1時間当たりの基礎賃金×割増率×残業時間数

(例)
1時間当たりの基礎賃金:3000円
時間外労働:20時間
休日労働:10時間

残業代
=3000円×(1.25×20時間+1.35×10時間)
=11万5500円

2024年4月改正による裁量労働制の残業代の影響

2024年4月1日から施行された労働基準法施行規則等の改正により、裁量労働制に関するルールが一部変更されました。同改正に伴い、裁量労働制を導入している企業においては、以下の対応が必要になります。

【専門業務型裁量労働制】
(a) 労使協定で以下の事項を定める
・労働者本人の同意を得ること
・同意をしなかった場合に不利益な取り扱いをしないこと
 
(b) 労働基準監督署に(a)の労使協定を届け出る
 
 
【企画業務型裁量労働制】
(a) 労使委員会の運営規程に以下の事項を追加する
・対象労働者に適用される評価制度およびこれに対応する賃金制度の内容の使用者からの説明に関する事項
・制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項
・開催頻度を6カ月以内ごとに1回とすること
 
(b) 労使委員会において、新たに以下の事項を決議する
・同意の撤回の手続き
・同意および同意の撤回に関する記録の保存
・賃金や評価の制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うこと
 
(c) 労働基準監督署に(b)の労使委員会決議を届け出る

上記の対応を行わないと、裁量労働制が無効となり、みなし労働時間の適用が認められないおそれがあります。多額の残業代未払いが生じるリスクがあるので、未対応の企業は速やかに手続きを行ってください。

参考:厚生労働省「裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です」

企業が裁量労働制を運用する際の注意点

企業が裁量労働制を運用する際には、特に以下の2点にご注意ください。

① 休日や深夜の労働時間を正確に把握する
② 健康・福祉確保措置を適切に講じる

休日や深夜の労働時間を正確に把握する

前述の通り、裁量労働制においても、法定休日の労働には休日手当、午後10時から午前5時までの労働には深夜手当が発生します。また、法定外休日の労働についても、みなし労働時間の適用が定められていなければ、通常の賃金を支払わなければなりません。

裁量労働制を導入している企業においては、労働時間の把握が疎かになりがちです。上記のルールを踏まえて、特に休日や深夜の労働時間を正確に把握するよう努めましょう。

健康・福祉確保措置を適切に講じる

使用者は、裁量労働制で働く労働者に対し、労使協定または労使委員会の決議で定めた「健康・福祉確保措置」を講じなければなりません。

「健康・福祉確保措置」とは、裁量労働制の労働者が健康や福祉(=生活の安定や幸福)が損なわれないように、使用者が講ずべき措置です。以下の事業場の対象労働者全員を対象とする措置と、個々の対象労働者の状況に応じて講ずる措置を1つずつ以上実施することが望ましいとされています

健康・福祉確保措置の内容

【事業場の対象労働者全員を対象とする措置】
・勤務間インターバルの確保
・深夜労働の回数制限
・労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)
・年次有給休暇の取得促進(まとまった日数連続して取得することを含む)

【個々の対象労働者の状況に応じて講ずる措置】
・医師の面接指導(一定の労働時間を超える者が対象)
・代償休日または特別な休暇の付与
・健康診断の実施
・心とからだの健康問題についての相談窓口設置
・適切な部署への配置転換
・産業医等による助言や指導、保健指導

健康・福祉確保措置は、裁量労働制の労働者が持続的に働けるようにする観点から重要です。自社に合った措置を検討したうえで実施してください。

ムートン

最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

無料で資料をダウンロード
 人事・労務部門ですぐに使えるChatGPTプロンプト集 >
✅ 副業解禁のために企業が知っておくべき就業規則の見直しポイント >