社会保険料とは?
5つの種類とそれぞれの
計算方法や控除について解説!
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- この記事のまとめ
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社会保険料とは、健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険・労災保険の保険料のことです。
・健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険・労災保険の5つがあります。
・社会保険料は制度により原則的に労使折半または事業主の全額負担となります。
・社会保険料の計算には、標準報酬月額という基準額が用いられます。本記事では、社会保険料について、基本から詳しく解説します。
※この記事は、2025 年7月31日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
社会保険料とは
社会保険料とは、健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険・労災保険の保険料のことを指します。社会保険料の基本的な仕組みについて以下の点を紹介します。
- 社会保険料の種類
- 社会保険料の負担割合
- 社会保険料の徴収方法
それぞれの仕組みについて解説します。
社会保険料の種類
社会保険料には、健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険・労災保険の5種類があり、いずれも従業員の生活や将来を支える役割を担っています。
そして、企業には、厚生年金保険法第82条や健康保険法第161条などの法律に基づき半分または全額を負担する義務があります。
| 制度名 | 概要 |
|---|---|
| 健康保険 | ・病気やケガ、出産時の医療費を一部補助 ・業務外の傷病による休業時には傷病手当金を支給 ・出産日以前42日、産後56日の給与を受けない期間に出産手当金を支給 |
| 厚生年金 | 老後の年金給付のほか、在職中の病気やケガにより障害状態になった場合に障害給付、在職中や退職後の死亡時に残された遺族に対する遺族給付を行う |
| 介護保険 | 要介護・要支援と認定された場合、介護サービス利用時の費用を一部補助 |
| 雇用保険 | 失業給付、育児・介護休業給付、教育訓練給付などにより、生活保障と就労の継続を支援 |
| 労災保険 | 業務中または通勤中のケガ・病気・障害に対し、治療費や休業補償、障害補償などを支給 |
これらの制度を正しく理解し、適切に対応することは、企業としての社会的責任を果たすだけでなく、従業員の安心感を高め、採用力や定着率の向上にもつながります。
社会保険料の負担割合
社会保険料は労使折半または企業全額負担が原則です。
それぞれの社会保険料の主な負担割合は以下のとおりです。
| 保険の種類 | 負担割合 |
|---|---|
| 健康保険 | 労使折半 |
| 介護保険 | 労使折半 |
| 厚生年金 | 労使折半 ※主に児童手当の原資となる「子ども・子育て拠出金」は、事業主負担のみ(令和7年度の負担率は0.36%) |
| 雇用保険 | 事業によって異なる |
| 労災保険 | 事業主全額負担 |
給与計算や労務管理を行う際には、保険料の計算根拠や変更タイミングを正確に把握しておく必要があります。
社会保険料の徴収方法
社会保険料は原則、従業員の翌月の給与から前月分を徴収する翌月徴収方式で処理します。給与計算時には、標準報酬月額に基づく定額の社会保険料を天引きします。そして、企業負担分と合わせて日本年金機構や健康保険組合などに納付するのが一般的な流れです。
企業の人事・労務担当者はこの徴収ルールを理解し、従業員からの問い合わせや異動・昇給時にも柔軟に対応できるよう備えておくことが求められます。
社会保険料の計算方法
社会保険料の計算方法は、各制度によって異なります。各社会保険の計算に使われる標準報酬月額および月額が決定される3つのタイミングと、それぞれの保険料計算方法について解説します。
社会保険料の計算に使われる標準報酬月額と3つの決定タイミング
社会保険料の算出には、実際の給与額そのものではなく、標準報酬月額という基準額が用いられます。標準報酬月額の意味や決定タイミングを紹介します。
標準報酬月額とは
標準報酬月額とは、社会保険料を計算するための基準となる金額です。実際の給与額に基づいて一定の等級に区分され、等級ごとに決められた額が標準報酬月額として適用されます。
標準報酬には、基本給のほかに残業代や通勤手当なども含まれます。算出された金額をもとに、健康保険料や厚生年金保険料の金額が決まる仕組みです。給与額が同じでも、居住地や保険組合によって保険料の金額は異なる場合があります。
そして、標準報酬月額の見直しには、主に以下の3つのタイミングがあります。
- 定時決定
- 随時改定
- 資格取得時決定
それぞれの決定タイミングについて詳しく解説します。
定時決定
毎年1回、4月・5月・6月に支払われた給与をもとに、その年の9月から適用される標準報酬月額が決定されます。これを定時決定と呼び、すべての被保険者を対象に行われる年次の手続きです。
対象期間中に残業や歩合給、手当などの支給が一時的に増えると、実際より高い等級で決定されてしまう可能性があります。特に不定期な手当の支給がある場合は、それが標準報酬月額に含まれるかどうかを慎重に判断する必要があります。
随時改定
昇給や降給などにより従業員の給与が大きく変動した場合、標準報酬月額を再計算する必要があります。これが随時改定と呼ばれるもので、給与の変動が継続的かつ一定以上であることが条件になります。
随時改定は以下の条件すべてを満たす場合に行います。
- 昇給または降給で固定的賃金に変動がある
- 変動月以降3カ月間の給与の平均月額に該当する標準報酬月額と変動前の標準報酬月額の間に2等級以上の差がある
- 3カ月とも報酬の支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上あるとき
上記全てに該当する場合は、原則3カ月間の平均給与をもとに標準報酬月額が改定されます。
例えば、職種変更による手当の増減や、時短勤務への切り替えなどが対象となるケースです。
資格取得時の決定
新たに社会保険に加入する従業員については、最初の報酬額をもとに標準報酬月額が決定されます。
この決定を資格取得時決定と呼び、従業員の入社時に行われる手続きです。
試用期間中であっても、支払予定の報酬額をもとに決定を行います。実際の給与が見込みと大きく異なる場合は、後に随時改定の対象となる可能性もあります。
健康保険料の計算方法
健康保険料は、従業員の標準報酬月額に、事業所所在地の都道府県ごとに定められた保険料率を掛けて計算します。保険料の負担割合は労使折半が基本です。
都道府県によって保険料率が異なるため、複数拠点をもつ企業では地域別の管理が必要になります。また、保険料率は年度ごとに見直されることがあるため、最新情報の確認と給与システムの反映も大切です。
厚生年金保険料の計算方法
厚生年金保険料は、標準報酬月額に全国一律の18.3%の料率(2025年7月時点)を掛けて算出し、企業と従業員がそれぞれ9.15%ずつを負担します。給与に変動があるたびに、保険料も連動して変わる仕組みです。
昇給や降給などによって標準報酬月額が変わった際には、随時改定を行い、正しい保険料額を届け出る必要があります。
厚生年金は将来の年金給付に直結する制度であり、従業員にとっても重要な保障となります。企業としては、正確な報酬管理を行うことが重要です。
介護保険料の計算方法
介護保険料は、40歳以上65歳未満の従業員が対象となり、標準報酬月額に設定された介護保険料率を掛けて計算します。企業と従業員が半分ずつ負担する点は、健康保険や厚生年金と同様です。
対象年齢に達した従業員については、資格や控除開始時期の確認が必要になります。また、65歳の誕生日以降は会社側での介護保険料の徴収が不要になり、年金からの「特別徴収」または納付書によって、自治体から徴収されます。そのため、切り替えに関して該当の従業員への説明が必要です。
対象者に対しては、年齢にともなう保険料の変化を丁寧に説明することで、不安の軽減と制度への理解が深まります。
雇用保険料の計算方法
雇用保険料は、毎月の実際の給与総額に対して料率をかけて計算されます。
企業は、労働者負担分(一般事業で0.55%など)と、業種に応じた事業主負担分(一般事業で0.9%など)を合わせて納付します(料率はいずれも令和7年度)。
従業員の給与明細では0.55%が控除されますが、企業側では残りの事業主負担分も含めた総額を正確に計算し、納付期限を遵守することが求められます。また、業種によって料率が異なるため、雇用保険料率の更新や事業区分の確認も定期的に行いましょう。
労災保険料の計算方法
労災保険料は、全て事業主が負担する仕組みで、従業員の給与からの天引きは行いません。給与総額に対して、業種別に定められた労災保険料率を掛けて算出します。
業種によって料率が異なるため、建設業や製造業などの場合は、業種分類を正確に確認しておくことが大切です。一般的に、労災リスクが高い業種の労災保険料率ほど高く設定されています。
労災保険は、業務中や通勤途中に起きた事故・ケガに対する保障制度であり、企業が責任をもって加入・納付することで、従業員の安心にもつながります。あわせて、万が一の事故時に備えた社内の手続きフローを整えておくことも重要です。
賞与にかかる社会保険料の計算方法
賞与は毎月の給与とは別に支給されるため、支給のたびに社会保険料を計算して納付する必要があります。健康保険・厚生年金・雇用保険の各保険料について、賞与額に対して料率を掛けて算出し、健康保険・厚生年金は企業と従業員で半分ずつ負担します。
賞与支給前に手取り額を試算し、従業員に説明しておくと安心です。また、健康保険では年度累計額573万円、厚生年金では1カ月あたり150万円という上限額もあるため、高額賞与の場合は注意が必要です。
システムでの上限設定や納付スケジュールの確認を事前に行い、スムーズな処理ができるよう準備しておくとよいでしょう。
社会保険料に関する注意点
社会保険料には以下の注意点があります。
- 産休・育休中は社会保険料が免除になる
- 社会保険料は日割り計算しない
- パート・アルバイトも条件を満たせば加入対象になる
制度の仕組みを理解しておくことで、社内対応や従業員への説明もスムーズになります。
産休・育休中は社会保険料が免除になる
従業員が産前産後休業や育児休業を取得する場合、所定の申請を行うことで、該当期間(育児休業等を開始した日の属する月から終了する日の翌日が属する月の前月までまたは14日以上の育児休業等を取得した月)の社会保険料が全額免除されます。企業としては、健康保険と厚生年金それぞれの免除申請を日本年金機構に提出する必要があります。
免除期間中も保険の資格は継続され、将来の年金額にも不利益は生じません。こうした制度を活用することで、従業員の経済的な負担を軽減でき、安心して休業期間を過ごすことにもつながります。
手続きの漏れを防ぐためにも、社内でフローを整え、必要書類や対応時期を担当者が把握できるようにしておくと安心です。
社会保険料は日割り計算しない
社会保険料は、月末時点で在籍しているかどうかで判断され、月途中の入退社に関わらず、日割り計算は行われません。
例えば、4月29日に退職した場合(資格喪失日:4月30日)は4月分の保険料は発生しませんが、4月30日に退職した場合(資格喪失日:5月1日)は4月分の保険料が発生します。これは、社会保険料が月の末日に在籍しているかどうかに基づいて計算されるためです。
退職日による保険料の扱いを知らないと、従業員との間でトラブルになりやすい点に注意が必要です。
特に入退社が多い時期には、保険料の発生有無を丁寧に説明することで、誤解や混乱を防げます。
パート・アルバイトも条件を満たせば加入対象になる
パート・アルバイトであっても、以下の条件を全て満たす場合は社会保険に加入する必要があります。
- 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
- 所定内賃金が月額8.8万円以上
- 2カ月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない(休学中、定時制、通信制の場合は加入対象)
出典:厚生労働省「社会保険適用拡大 対象となる事業所・従業員について」
企業には、対象となる従業員を正しく把握し、漏れなく手続きすることが求められます。
加入により企業の保険料負担は増えるものの、福利厚生の充実や従業員の定着につながるなど、前向きな効果も期待できます。
令和6年10月から社会保険の適用が拡大
令和6年10月から、社会保険の適用範囲がさらに広がり、従業員51人以上100人以下の企業に勤務するパート・アルバイトも、一定の条件を満たせば社会保険への加入が必要になっています。
企業としては、対象となる従業員の洗い出しや勤務条件の見直し、社内規程の整備など、早めの準備が求められます。
一方で、社会保険への加入によって従業員の安心感が高まり、働きやすい環境づくりにもつながります。制度変更をきっかけに、労務環境を見直すチャンスとして前向きに活用するとよいでしょう。
また、該当する従業員には、制度の内容を丁寧に説明し、納得感をもってもらえるような対応が大切です。
年末調整で行う社会保険料控除について
年末調整では支払った社会保険料が控除されます。社会保険料控除について以下の点を解説します。
- 社会保険料は全額が所得控除の対象
- 従業員自身が納付した国民年金も控除可能
保険料の控除を正しく処理することで、従業員の納得感や信頼感の向上につながります
社会保険料は全額が所得控除の対象
給与や賞与から差し引かれた社会保険料は、年末調整において全額が所得控除の対象になります。企業側では、控除対象額を正確に計算し、源泉徴収票へ正しく反映させることが求められます。
従業員による年末調整での申告は不要ですが、源泉徴収票に誤りがあると従業員からの問い合わせや修正申告につながるため、チェック体制を整えておくと安心です。
また、従業員に対しては、控除の内容や税負担の軽減効果を分かりやすく説明することで、制度への理解と納得感が深まります。
従業員自身が納付した国民年金も控除可能
従業員が転職期間中や家族の国民年金保険料を従業員自身が納めた場合も、年末調整で申告すれば控除の対象になります。
企業では、従業員から提出される「保険料控除申告書」や「社会保険料控除証明書」をもとに、控除額を年末調整に反映させます。
証明書は日本年金機構から郵送されるため、提出の案内を社内であらかじめ行っておくと誤った処分を防げて安心です。もし書類が年末調整に間に合わなかった場合でも、確定申告で控除を受けられることを伝えると、従業員の不安軽減にもつながります。
従業員が副業している際の社会保険料について
副業をしている従業員に関する社会保険の取り扱いについて以下の2点を紹介します。
- 二以上事業所勤務届を提出しなければならないケース
- 業務委託契約(フリーランスや個人事業主)の副業は社会保険対象外
副業が一般化する中で、企業側でも制度の理解と適切な対応が求められています。
二以上事業所勤務届を提出しなければならないケース
従業員が複数の企業と雇用契約を結び、それぞれで社会保険の加入条件を満たす場合は、「二以上事業所勤務届」の提出が必要です。
企業側では、従業員の副業状況を把握し、該当する場合は本人に手続きを案内する必要があります。報酬は合算されて保険料が決定され、選択された事業所から保険証が発行されます。
届け出を怠ると保険料の未納や給付トラブルにつながる可能性もあるため、社内での確認体制を整えておくことが大切です。
業務委託契約(フリーランスや個人事業主)の副業は社会保険対象外
従業員が本業とは別に、業務委託やフリーランスとして副業している場合、報酬は社会保険料の対象にはなりません。
雇用契約ではなく、業務委託であれば社会保険の加入義務は生じないため、保険料の合算も不要です。ただし、税務上は所得に含まれるため、従業員自身が確定申告での対応が必要になります。
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参考文献
監修者












