契約書レビューのお悩みは?
ランキング形式でご紹介!
バックオフィス担当者が困るポイントを
分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
-
契約書をレビュー(チェック)する際には、問題のある条項をどのように修正すればいいのか分からない、部署間でのコミュニケーションの取り方が難しいなどの悩みが生じがちです。
契約ウォッチでは、主にバックオフィス業務に従事しているユーザーを対象として、契約書レビューの際に困ったことについてアンケートを行いました。
この記事ではアンケート結果を基に、契約書レビューについて困りやすいポイントのランキングや、ユーザーから寄せられたエピソードの内容などを紹介します。
※この記事は、2025年1月29日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
契約書レビューについて困りやすいポイントは?ランキングで紹介
契約ウォッチでは、主にバックオフィス業務に従事しているユーザーを対象として、契約書レビューの際に困ったことについてアンケートを行いました(「契約ウォッチご利用者様アンケート」2024年12月実施、有効回答数370人)。
アンケート結果を基に、契約書レビューについて困りやすいとの回答があったポイントを、ランキングでご紹介します。
第1位|損害賠償(42.7%)
契約書レビューについて困りやすいポイントの第1位は「損害賠償」でした(158人、42.7%)。
損害賠償条項では、契約違反があった場合における損害賠償の条件を定めます。
契約当事者の間で条件交渉がまとまらないケースや、譲歩できるラインについて社内で認識を統一できないケースがあるなどの回答が寄せられました。
- 損害賠償について困ったエピソード
-
損害賠償の上限設定や、納期遅延に対する賠償の設定について、契約交渉がなかなかまとまらなかった。(50代、メーカー、総務)
損害賠償の条件をどこまで譲歩してよいか、社内ステークホルダー間での認識統一ができず、取り引き自体を諦めざるを得なくなった。(40代、IT・情報通信、人事)
第2位|権利の帰属・移転(34.9%)
契約書レビューについて困りやすいポイントの第2位は「権利の帰属・移転」でした(129人、34.9%)。
権利の帰属・移転に関する条項では、所有権や知的財産権などの権利を当事者のどちらに帰属させるか、または当事者間でどのようなタイミングや条件で移転させるかなどを定めます。
権利の帰属・移転に関する条件が契約上不明確で、対応に困ったなどの回答が寄せられました。
- 権利の帰属・移転について困ったエピソード
-
所有権の移転時期が明確になっていない契約書が多く、困ることがあった。(20代、士業事務所)
第3位|免責・不可抗力・危険負担(33.8%)
契約書レビューについて困りやすいポイントの第3位は「免責・不可抗力・危険負担」でした(125人、33.8%)。
免責・不可抗力・危険負担に関する条項では、災害など当事者に責任がない事由によって契約上の債務が履行できなくなった場合に、損害賠償などを免責する旨を定めます。
不可抗力や危険負担による免責については、範囲をどのように定めるかが契約交渉で問題になりがちです。条項自体になじみが薄い面もあるため、契約書のレビューに当たって困った人が多かったと思われます。
第4位|業務・成果物の内容(29.7%)
契約書レビューについて困りやすいポイントの第4位は「業務・成果物の内容」でした(110人、29.7%)。
業務委託契約などでは、受委託の対象となる業務を契約書に明記する必要があります。受託者が対応すべきことと、対応しないことを明確に区別することが重要です。
しかし、具体的な業務内容の予測が難しい、相手の要求が厳しいなどの理由で、不明確な記載をせざるを得ず困ってしまうケースがあるようです。
- 業務・成果物の内容について困ったエピソード
-
受託業務の範囲が不明確だったため、業務量が増加した。相手方の力が強く、業務範囲記載を「~に関わる業務」「~に付随する業務」などとせざるを得なかったため。(50代、サービス、総務)
第5位|印紙(23.2%)
契約書レビューについて困りやすいポイントの第5位は「印紙」でした(86人、23.2%)。
契約書の種類によっては、契約金額に応じた収入印紙を貼付する必要があります。
しかし、印紙税に関するルールはかなり複雑です。そもそも印紙を貼るべきなのか、いくら貼る必要があるのかなどが分からないといった回答や、相手方との間で認識が異なってしまったなどの回答が寄せられました。
- 印紙について困ったエピソード
-
印紙金額の判定に自信がない。(50代、メーカー、総務)
当社の想定と異なる金額の印紙が契約書に貼られてきた。(40代、建設・不動産、マーケティング)
明らかに印紙が必要な契約書なのに、先方は「必要ない」と言ってきた。税務署に確認して結局貼ることになった。(40代、飲食・宿泊・小売、法務)
第6位以下はこちら
契約書レビューについて困りやすいポイントの第6位から第10位までには、以下のポイントが挙がりました。
第6位|個人情報の取扱い (75人、20.3%)
第7位|秘密保持義務 (70人、18.9%)
第8位|契約期間・更新・中途解約 (63人、17.0%)
第9位|契約の目的 (60人、16.2%)
第10位|解除 (53人、14.3%)
契約書ではこんなことにも悩みがち|バックオフィス担当者が困ったエピソードを紹介
ランキングに挙げたポイント以外にも、契約書レビューに関して困ったというエピソードがたくさん寄せられました。
その中でも特に多かった、または注意を要する以下のパターンについてエピソードを紹介します。
- 法務担当者と現場担当者のコミュニケーションのずれ
- 安易なバックデートの依頼
- 大手企業に対する契約交渉の分の悪さ
- 外国企業と契約書を締結する際の難しさ
- 事務的なケアレスミスなどのトラブル
法務担当者と現場担当者のコミュニケーションのずれ
法務担当者と現場担当者の間では、契約書のレビューに関して、しばしばコミュニケーションのずれが生じてしまうようです。
慎重を期したい法務担当者と、契約を急ぎたい現場担当者
法務担当者はリスク管理を担っているため、契約書の内容を慎重に作り込みたい、きちんと契約交渉を行いたいと考える傾向にあります。
これに対して現場担当者は、業績を上げるために契約を急ごうとする傾向にあります。
慎重を期したい法務担当者と、契約を急ぎたい現場担当者の間では、契約書に関してすれ違いが生じてしまいやすいので注意しましょう。
- 慎重を期したい法務担当者と、契約を急ぎたい現場担当者に関するエピソード
-
もしもに備えてなるべく詳細な条件を契約書に定めたい法務部門と、契約交渉をスムーズに進めたいので当たり障りのない契約内容を希望する事業部門が対立した。話し合うほかないが、どの程度の詳細さで折り合いをつけるか判断に迷うことがある。(30代、メーカー、法務)
自社に不利な条件でも、担当部署が契約書をちゃんと見ずに受け入れようとする。(20代、メーカー、法務)
明らかに不利な条件が提示されている契約書について、会社内部でその問題点を指摘したところ、担当者や上長が先方と交渉するのが面倒だという理由でそのまま契約締結に至ったことがある。(30代、士業事務所、法務)
現場担当者の理解や情報共有の不足
法務担当者からは、現場担当者が取引の内容を理解していない、現場担当者からの情報共有が不足しているなどのエピソードが寄せられました。
たしかに、取引について正確な情報を教えてもらえなければ、法務担当者が契約書を適切にレビューすることはできません。
現場担当者の側では「常識」「阿吽の呼吸」などと認識されていることでも、現場に通じているとは限らない法務担当者に対しては、丁寧に説明する必要があります。
また、法務担当者の側においても、現場担当者に対して詳しく質問をするなど、認識を共有する努力を怠らないようにしましょう。
- 現場担当者との理解や情報共有の不足に関するエピソード
-
事業部からの情報共有が不完全で、取引の実態がつかめない。(30代、メーカー、法務)
担当者から契約の背景、締結目的、経緯等の詳細な説明がなく丸投げをされたときは、手のつけようがない。相手方が作成した契約書のドラフトに担当者が目を通しておらず、質問しても修正箇所や修正理由を理解してもらえない。「急ぎ」と言われて優先的にレビューしたのに、結局契約は締結されず、しかもその連絡すらなかった。(40代、メーカー、法務)
営業側の担当者自身が取引のスキームをよく理解していないので、確認しても的確な回答が返ってこない。(40代、建設・不動産、法務)
業務内容を事業部が完全に理解していない中で、法務に連絡をしてくることがある。(30代、IT・情報通信、法務)
当該営業部門の話にもかかわらず、契約を他人事として法務部門に取引の是非の判断を求めてくる。営業としての意見や見解を持たずに、契約書を丸投げしてくる。(60代、その他、法務)
営業担当が契約書そのものの意図が分からないまま、相手先と話をしてしまうので、修正時に認識の相違が生じることがある。(40代、サービス、総務)
既に業務が始まっており、レビューしている間に完了していた。(30代、IT・情報通信、法務)
安易なバックデートの依頼
契約書の締結日を過去の日付にする「バックデート」は、契約の発効時期や経理のタイミングが不明確になるなど、さまざまなリスクがあります。
法務担当者や経理担当者においては、バックデートを避けるのが鉄則です。しかし、現場担当者はリスクをよく理解しておらず、安易にバックデートを求められて困ってしまったとのエピソードが寄せられました。
- 安易なバックデートの依頼に関するエピソード
-
バックデートのデメリットやリスクについて、理解が不足している。(50代、商社・貿易、経理)
バックデート(締結日の変更)を平気で求めてくる現場が多かった。(30代、広告・メディア・クリエイティブ、法務)
大手企業に対する契約交渉の分の悪さ
契約の相手方が大手企業である場合は、交渉力の差が原因で、相手方が提示する契約条件を呑まざるを得ないケースもあります。
本来は契約書を修正してリスクをコントロールすべきなのに、それができないもどかしさが表れたエピソードが複数寄せられました。
- 大手企業に対する契約交渉の分の悪さに関するエピソード
-
相手の会社が大手企業だと、明らかにこちらが一方的に不利だと思われる内容であっても変更されず、押し切られる。こちらには選択肢がない。(50代、メーカー、営業)
取引先が大手企業だと、条件の見直しなど要望が聞き入れられず、平等性に欠けるような場合がある。(60代、メーカー、総務)
外国企業と契約書を締結する際の難しさ
外国企業と締結する契約書については、英文契約書であるためチェックが大変、和文契約書では見かけない条項が入っている、準拠法や合意管轄の問題があるなど、注意すべきポイントがたくさんあります。
実際に、外国企業と締結する契約書のレビューに当たっては、苦労したことが分かるエピソードが多数寄せられました。
- 外国企業と契約書を締結する際の難しさに関するエピソード
-
外資系の顧客が作成した、ところどころおかしな日本語や、日本の契約書では見かけない条文が入った契約書のチェックが困難。こちらに不利な条件が多く、相手との話の折り合いもつけづらい。(30代、建設・不動産、法務)
海外との契約では、準拠法の問題や、電子署名での締結がどの国はOKで、どの国は紙締結にするかなどが問題になりがち。(60代、メーカー、法務)
複数言語で契約書を締結する場合、英語を「正」とする合意を相手機関から得ることが大変だったケースがあった。(40代、政府・官公庁・公的団体、開発)
外資系企業との契約で、域外適用される外国法が記載されていた時には、経験がなく苦労した。(40代、建設・不動産、法務)
事務的なケアレスミスなどのトラブル
契約書のレビューに当たっては、事務的なケアレスミスにも注意しなければなりません。
例えば、メールの誤送信やコメントの消し忘れなどは単純なケアレスミスですが、重大な不祥事や取引の決裂につながり得るものです。契約書ファイルを外部に送信する際には、宛先や添付ファイルの内容に問題がないかどうかを慎重にチェックしましょう。
- ケアレスミスに関するエピソード
-
社内向けコメントが原文のままで契約交渉者まで伝わってしまい、手の内が丸見えになった。(40代、IT・情報通信、総務)
契約書レビューのお悩み解決方法|e-ラーニングで実務の知識を学ぼう!
契約書レビューのお悩みを解決するには、オンライン学習教材である「eラーニング」を活用することも効果的です。eラーニングでは、法律や契約書に関する幅広い知識を、オンラインで手軽に学ぶことができます。
法務の知識を動画で学べる「Legal Learning」には、法務の実務を学べるさまざまなコンテンツが掲載されています。契約書レビューの実用的な知識を身に付けたいと考えている方は、「Legal Learning」の活用をご検討ください。