英文契約とは?
基本を分かりやすく解説!

この記事を書いた人
Avatar photo
長谷川俊明法律事務所弁護士
国際金融、保険、海外直接投資、知的財産権などの渉外実務のほか、建設、不動産など国内会社法務を幅広く扱う。また、アメリカ合衆国、イギリスをはじめとして、東南アジア、中国、オーストラリアその他の国、地域に業務提携をしている法律事務所がある。
この記事のまとめ

英文契約とは、文字どおり解釈すると、英語を言語として締結される契約のことを指します。

しかし、国際契約としての英文契約は、英米法文化の育んできた法律英語形式(書式)を借りてつくるものであり、単純に和文契約を英訳したものではありません。

本記事では、英文契約の攻略法・有益な英文契約にするための交渉術などについて、基本から分かりやすく解説します。

英文契約には、苦手意識があります…。

この記事では、英文契約の攻略方法・英文契約を扱う際の注意点なども解説しますので、ゆっくり慣れていきましょう。

※この記事は、2023年1月1日時点の法令等に基づいて作成されています。

英文契約とは

英文契約とは、文字どおり解釈すると、英語を言語として締結される契約のことを指します。

和文契約(国内契約)との違い

ビジネス環境が大きく国際化、グローバル化し、海外企業との取引が増えてくると、国際契約としての英文契約を取り交わす機会が多くなります。

本記事で扱う英文契約は、単純に日本語の契約書を「英訳」したものではなく、英米の慣習・法体系をベースに作成された契約です。後者の英文契約は、英語である点を除いても、私たちが見慣れている日本語の和文契約(国内契約)とは、さまざまな点で異なります。

重要なのは、英文契約を英語で書かれた契約書にすぎないと考えないことです。英文契約と和文契約の「違い」を知ることが、英文契約を適切に扱うための第一歩です。

違いは、まず、かたち、すなわち書式に表れます。英文契約には、レターアグリーメント(letter agreement)という、日本にはないタイプの契約書があります。

レターアグリーメントって何ですか?

レター(書簡)のような形式をとった契約書のことです。

日本でも、レターで契約を取り交わせるのですが、実務慣行として定着してはいません。しかし、欧米社会では、レターで契約をする習慣があるのです。

英文契約を扱い慣れていない人は、レターアグリーメントを、契約としての法的拘束力をもたない、ふつうのビジネスレターとして扱って、失敗することがあります。何よりも、レターによる契約書づくりに馴染むことです。

レターアグリーメントは、主に、以下のような場合に使われます。

①秘密保持を権利者に対し約束する場合のように、片面的な契約をする場合
②契約交渉過程で、予備的合意書をつくる場合

レター・オブ・インテント(LOI)との違い

レター・オブ・インテント(LOI:Letter of Intent)とは、その名のとおり、レター形式でつくられる合意書のことです。契約の交渉途中で、ひとまず、合意に達した事項につき、当事者間で確認しておくためにつくる文書と考えられます。

途中段階とはいえ、合意に達した事項を書くため、合意書として位置づけられます。ただ、これを契約書というのかは、捉え方によります。

あくまで、ある契約の締結交渉途上で、確認的、予備的に取り交わした合意書にすぎないとみるのか、これはこれで別の、仮契約的な契約とみるかの違いです。

準拠法にもよりますが、合意内容を書いた文書は、レター形式になっても、契約書の一種といってよいでしょう。

英文契約の内容上の特徴

国内でふつう使う和文の契約を英訳したものは、見た目には英文契約なのですが、ここで検討対象に取り上げる英文契約ではありません。

というのも、私たちが英文契約を、仕事で必要があって作成したりするのは、国際契約としての英文契約がほとんどだからです。

製品を外国の企業に輸出し売却する単純な売買契約で考えてみても、和文の国内契約の英訳版は、多くの点で国際通用性をもたないのです。

国際契約としての英文契約は、英米法文化の育んできた法律英語形式(書式)を借りてつくるものなのです。英文契約を扱う際は、こうした内容上の特徴を頭に入れておく必要があります。

英文契約の“攻略方法”

英文契約は、私たちのほとんどにとって、外国語である英語で書かれている点に最大の“壁”があります。そのうえ、英語といっても法律専門用語としての法律英語が多いと聞くと、もううんざりという人もいそうです。

ただ、法律英語(legal English)は、ふつうの英語とは、意味だけでなく用法も大きく異なるため、英語のネイティブ・スピーカーの間でも、another language「(英語とは)別の言語」とされているほどです。この点は、法律英語のことをlegaleseということからもうかがえます。

_eseは、言語を表す接尾辞で、Japanese「日本語」、Chinese「中国語」は、よく知られています。共通するのは、「チンプンカンプンなことば」という点です。残念ながら日本語も中国語も、とくに欧米人からは、東洋のきわめて異質な言語としてみられているのですが、法律英語も同列にみられているほど特殊です。

英文契約は、法律英語が分からないと扱えず、正しく日本語に訳すこともできません。救いは、法律英語が、ふつうのアメリカ人やイギリス人にとって、「別の言語」であり、外国語のような存在である点です。英語を外国語とする私たちにとっても、法律英語を学び攻略するうえでのスタートラインは同じなのです。

英文契約を攻略するには、法律英語を基礎から学び、英文契約の条項ごとのパターン化した内容に慣れることが重要です。

英文契約を扱う際の注意点

英文解釈スキルと英作文スキルを身につける

英文契約を扱うためには、以下の2つのスキルが必要です。

英文解釈スキル
英作文スキル 

外国企業と英文物品売買契約を取り交わし、貿易取引を行う場合を例に考えてみます。原材料調達先の外国企業から、同英文契約の案文(draft)が送られてきたとします。内容が具体的であれば、これで契約をしましょうとの、相手側による申し込み(offer)になります。

この申し込みに対し、日本企業側が承諾(acceptance)の意思表示をすれば、日本法の下で契約になります。相手の申し込みに対し、「このままの内容で承諾はできない」、○○条のこの部分は「削除してほしい」あるいは「こう変えてほしい」と望むのであれば、英語で相手に伝えられなくてはなりません。英語によるリーガルコミュニケーションの実践です。

上記の例でリーガルコミュニケーションを英語で適切に行うには、英文解釈の力が必要になります。実際に和訳するところまでは必要ないとしても、書いてある意味、内容が分からないのでは、カウンターオファー(対案)すら提示できないからです。

英文契約を作成することを、リーガル・ドラフティング(legal drafting)といいます。実際には、日本側で契約書案を一からドラフトするよりも、相手方のドラフトに“注文”を付けたり、対案をぶつけたりしながら、交渉を経て契約書の締結にこぎつけるケースのほうが多いものです。

いずれの場合においても、重要なのは、英作文スキルを十分に発揮するためには、前提として英文契約スキルが必要になることです。両スキルを、共に磨いて、はじめて、英文契約を作成できるのです。

英文契約特有の慣用的パターンに慣れる

もうひとつ英文契約の作成にあたって注意すべき点は、英文契約特有の慣用的パターンに、「習うより慣れる」ことです。ここでいうパターンには、2段階あります。

第一のパターンは、レターアグリーメントタイプかどうかです。既に述べたように英文契約のうちかなりの割合を占めるレターアグリーメントの扱いに慣れないと、英文契約実務で上達は望めません。

第二のパターンは、契約条項の多さに慣れることです。レターアグリーメントにはそうでないものもありますが、英文契約の場合、契約に、国内契約より多くの一般条項を含むのがふつうです。

一般条項とは

契約の種類に関係なく、一般的にどのような契約においても規定されることが多い標準的な条項のこと

準拠法にかかわらず、英文契約は、英米法流のスタイル、内容面の特徴をもつ、と既に述べましたが、内容面の一大特徴が、一般条項の多さです。

一般条項は、契約の諸類型に共通して登場する条項です。英文契約の一般条項が多いのは、英米法が慣習法不文律の体系だからでもあります。

慣習法・不文律って、どういう意味ですか?

法律として明文化されてはいないけれど、暗黙の了解となっているルールのことです。

成文法主義の下で、民法や商法に明文化されていれば、あえて契約中にくり返さなくてもよいのですが、不文律の下では、そうはいかないのです。リスク管理の視点から気になる点についてはとくに、契約中に明文で書いておくほうがよいと考えるのです。

一般条項のひとつとされる不可抗力条項を例に、そのドラフティング術を考えてみます。英米法とともに世界を2分する法体系である大陸法に基づく日本民法419条3項は、金銭債務不履行の損害賠償については、「不可抗力をもって抗弁とすることができない」とします。

つまり、不可抗力が生じ支払い遅延などの債務不履行が生じたとしても、免責されないため、契約どおりに支払う必要があるというのが日本民法のルールなのです。

通説は、この規定を金銭債務の特則とみて、金銭債務以外の一般債務については、不可抗力の抗弁を出せる(=不可抗力を理由に免責される)と、反対解釈をします。つまり、日本法が準拠法の契約であれば、不可抗力条項が存在しなくても、「不可抗力免責」は受けられるのです。

一方、英米法系の準拠法では、契約書に不可抗力条項を入れておかないと、不可抗力免責を受けることはできません。契約中に免責を受けたい事由を、「地震」や「戦争」、「輸出入規制」のように具体的に書き入れてはじめて免責を受けられると考えます。英文契約中の不可抗力条項における不可抗力事由が、細かく具体的に多く書かれるのは、このためです。

英文契約を扱う際は、このような慣用的パターンに慣れる必要があります。

有益な英文契約にするための交渉術

英文契約にかぎらず、大きく重要な契約であればあるほど、時間をかけた慎重な交渉を経て締結にこぎつけるのがふつうです。外国企業と取り交わすことの多い国際契約としての英文契約であればなおさらです。

欧米と日本の契約観の違いを認識する

有益な英文契約とするためには、まず、「欧米と日本の契約観の違い」を認識する必要があります。

外国、とくにアメリカの大学では「交渉術」の講座を設けるなどして、少しでも有利な契約に向けて、交渉をどう進めたらよいかを学べる環境を身近に整えています。

しかし、日本では、そもそも交渉には、駆け引き的なマイナスイメージを抱く人が多く、交渉術を身につけ有利な契約を、と考える人はあまりいないのが実状です。

まとめて論じることの無理を承知でいいますと、欧米人は概して、性悪説に基づいて契約をしようとしますが、日本では、相手を信用するからこの契約を取り交わすのだと性善説的に考える傾向が強いのです。

欧米でも、信用できない相手と継続的取引の契約をするわけはないのですが、いざ契約書面を作成する段階になると、相手がこれこれの“裏切り行為”に出たときは、契約を解除したうえで巨額の損害賠償を請求できるなどと、まるで信用していないのでは、ととられかねない契約条項を提案したりします。

日本の契約観は、国際的に比較すると、マイノリティ(少数派)に属すると考えられます。欧米人の場合は、契約書は悪いときに備えてつくるもので、いいことばかりだったら契約書はいらないくらいに考えるのです。

こうした契約観の違いが、モロに表れるのが契約締結交渉の場面です。多数派の契約観をもった外国企業側は、それこそ、けんか腰で、本音をモロにぶつけて交渉に挑みます。対する日本側は、友好的かつ平和裡に交渉を進め円満にまとめたいと願います。

交渉を通じて少しでも有利な契約内容を克ち取るとの強い気持ちをもった当事者と、はじめから相手の出方をうかがいながら、“及び腰”で控え目な主張しかしない当事者が交渉するのです。どちらが勝つか、“勝敗”は見えているといわなくてはなりません。

技術面でいえば、相手の主張、提案に対しカウンターで対案をぶつけられるだけの英語力、さらに法律英語力が求められます

交渉の節目ごとに行う、文書による確認作業に慣れる

前述のとおり、欧米人は、交渉を通じて少しでも有利な契約内容を克ち取るとの強い気持ちをもち、「交渉術」の勉強をしています。

日本人がこうした人々と対等に交渉できるようになるためには、英語によるコミュニケーション力を高めてこのハードルを乗り越えていくのが正道ですが、なかなか難しいものがあります。

そこで、交渉の節目ごとに行う、文書による確認作業に慣れることが重要になります。欧米流の契約交渉は、以下のような、パターン化した流れがあります。

①交渉開始とほぼ同時に、秘密保持契約を取り交わす
②交渉会議のたびに議事録を作成する
③ある程度基本的な合意ができたところで確認のためのレター・オブ・インテント(LOI)をつくって、最終契約の締結に至る

LOIは、上述のとおり、合意内容を書き留めた契約書とも評価できるので、最終契約の締結に向けた交渉途上とはいえ、
・不利な内容になっていないか
・合意した覚えはないのに合意したと書いてないか
などの内容を、慎重に検討すべきです。

英文契約交渉は、交渉の最初に取り交わす秘密保持契約の交渉からはじまります。同契約の内容検討で手を抜くと、相手に“足元を見られ”てしまします。リスクマネジメントの視点から、階段を一段ずつ昇るたびに文書で確認し、いわば既成事実を積み重ねていってゴールをめざすのが欧米流です。

交渉会議に際しても、議題(アジェンダ)を作成し、論点ごとの主張、立場を英語で書きまとめておく、場合によっては予め相手方に電子メールなどで送付しておくのがよいでしょう。こうすることで、英語によるコミュニケーション力の足りないところをかなり補うことができるのです。

英文契約レビューする際に覚えておきたい主な英語表現

法律英語は、英語とはいえ、特別な用法をしたり、ふつうでない意味をもったりする、扱いづらい専門語です。英文契約には、この法律英語が随所に登場することを忘れてはなりません。

法律分野の専門語と聞くと、もっぱらいかめしく難解な英語を想像しがちですが、必ずしもそうではありません。初心者が英文契約をレビューするにあたって、これだけはおさえておいてほしい、身近な英語表現をいくつかあげてみます。

⑴ agreement と contract

標準スタイルの英文契約には、冒頭に契約タイトル(表題)を書きます。License Agreementのようにです。日本語でも「ライセンス契約」と訳し、技術ノウハウなどの実施許諾を内容とします。

英文タイトルは、License Contractとすることもよくあります。こちらも訳せば「ライセンス契約」です。agreementとcontractのいずれを「契約」を表すのに使うのが正しいでしょうか。

答えは、どちらも正しいし、どちらも正しくない、のです。なぜそうなのかといえば、英米法と大陸法で契約概念が違うからです。

contractは、「契約」を表す正式な英語ですが、厳密にいうと、大陸法に属する日本の民法や商法にはない概念です。日本の民法は、2017年の改正で新設した522条1項が、契約は、内容を示してその締結を申し入れる意思表示(申し込み)に対し相手方が承諾をしたときに成立するとしています。

申し込みと承諾の意思表示が合致したこの状態は、英米法の下では、合意すなわち、agreementが成立したにすぎないのです。英米法のcontractは、agreementのうち、法律上強行可能な(enforceable by law)ものだけを指します。

細かくなってしまいますが、法律上強行可能といえるためには、agreementが、以下の3要件を満たさなくてはなりません。

約因(=取引上の対価)の存在
②一定の契約における書面性
③合意の明確性

このうち、英米法に特有とされるのが約因で、英語ではconsideration ですがこれを、契約関係でも、「熟慮、考慮」と訳す人がかなりいます。しかし法律英語では、「対価、見返り」を意味します。

標準的な英文契約の前文部分には、かつては約因、すなわち交換する対価の内容を書きましたから、それを受けて、約因文言を入れるのがならわしでした。

In consideration of the mutual covenants~, 「相互の誓約事項を対価として…」とするのが約因文言の典型例ですが、この部分を「相互の誓約事項を考慮して」と訳すのは、正しくありません。

⑵ without prejudiceなどの留保表現

「例外のない規則はない」といいますが、法的ルールにはとくによくあてはまります。契約条項のドラフティングにおいても、原則を書いて、つづけて「ただし…の場合は除く」のように例外を規定することがよくあります。

原則よりも、例外部分がより重要であることが、契約においてはよくあります。英語で「ただし、~」の部分は、“;Provided, however that~”とすることが多いので、定番的な言い方として覚えておくとよいでしょう。文中でも、例外の重要性を強調するためか、Pを大文字にするのがならわしです。

例外表現と似たような役割を果たすのが留保表現です。

留保」って何ですか?

「権利や利益についての主張を残留・保持すること」です。

例えば、相手方の契約違反を理由に「契約を解除しますが、契約違反によって生じた損害賠償請求権は留保します」との解約通知を相手方に送付するとします。

契約実務は、作成・締結に向けた交渉段階の文書作成を含むドラフティングが主になりますが、最終契約を締結したら終わりではありません。締結後の契約義務の履行を催促するレターを作成し送付することが必要になるかもしれません。催促にも応じなければ、解約通知を出すことになるでしょう。

締結後必要となるであろう通知を、有効で適切な内容の英語でドラフトしなくてはなりません。これも重要な英文契約のアフターケア的実務です。

その際、英文解約通知レターの冒頭に、WITHOUT PREJUDICEと、目立つように全て大文字で書き込む例をよく見ます。典型的な留保表現としての使い方です。without prejudiceは、ふつうの英語で「偏見なしに」とつい訳しがちですが、誤訳です。法律英語では、「~といった他の権利に影響を及ぼすことなく」という意味になります。

ただ、留保表現だとしても、解約通知の本文には、留保したい権利や利益の内容が書かれずに省略されることがほとんどです。留保内容を知るには、民法545条4項の「解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない」との規定がヒントになります。

もし解約の準拠法が日本法であるならば、この規定が損害賠償請求権を留保してくれるので、without prejudiceは、不要なのです。一方、準拠法が英米法の場合、留保すべき権利や利益があれば、個々の取引や契約ごとに、留保する旨の意思を明示しておくべきとされます。

なお、解約は、契約解除を略した言い方で、基本的には解除と同義と考えられます。将来に向かって契約関係を解消する場合を解約(告知)といい、契約関係を最初からなかったものとする解除と区別する考えもあります。民法は、将来に向けての約因関係解消も解除といっています(620条参照)。

法律英語では、以下のように使い分けます。

・将来に向けて契約関係を終了させること:termination
遡及効(遡って無効とする効果)をもたせる契約解消:cancellation

ちなみに、解約通知に、「損害賠償請求権を留保しつつ解約します」を英文で省略せずに書き込むには、どうドラフティングしたらよいでしょう。参考英訳は、以下のとおりです。

“We terminate the agreement without prejudice to own right for the damages.”

⑶ damageとdamagesの違い

上記の例で、「損害賠償damages」としてドラフティングしましたが、damagesのかわりにdamageとすると、意味が変わるので、要注意です。

日本語の名詞に複数形はないのですが、英語にはあります。単に単数が複数になるだけでなく、意味を変える名詞が、とくに法律英語には多いのです。

単数のdamageは、「ダメージを受けた」などと日本語で使う場合に近い意味をもちます。これに対し、複数のdamagesは、金銭による損害賠償を表す法律英語です。

したがって、相手方に「損害賠償の請求をします」と正しく伝えたければ、必ず~claim for the damagesのように、複数形のdamagesを使って表現しないといけません。

逆に、~indemnify any damagesとして、「いかなる損害賠償の補償もします」と約束しますと、indirect damager「間接損害」による大きな額の損害賠償責任を負いかねませんので、要注意です。

⑷ lawとlawsの違い

最も基本的な法律英語といってよいlaw複数形lawsの使い分けを考えてみます。

・law:議会の制定する個々の法律を指す
・laws(the law):国の法律の全体を指す

the Japanese lawは、「日本法」と訳すのが正しく、the laws of Japanといっても変わりません。これを「日本の法律」と訳すと、狭義の法律、すなわち、実際に日本の国会が制定した、ある法律ととられかねません。

また、契約の準拠法として日本法を指定する場面で考えてみます。日本法を準拠法とするといっても、民法や商法のようなある特定の法律のみに準拠するわけではありません。法律として明文化されない慣習法や判例法を加えた全体が、準拠法「日本法」を形づくっているのです。

単数と複数で意味が異なる法律英語は、他にも枚挙にいとまがないほどたくさんあります。いくつか列挙してみます。

goodとgoods

名詞形のgoodを使う機会は多くないのですが、数えられない名詞として「福利」や「利 益」を表すことがあります。common goodは「公益」です。

これに対し、goodの複数形というよりは独立し単数扱いでも使うのがgoodsで、法律 英語としては、「物品」を表す用法が重要です。sale of goodsは「物品売買」です。

民法で近いのは、「動産」ですが、goodsとは、範囲が微妙に違うので、「物品」の訳を 当てています。日本が2008年に加盟し、2009年から国内で発効している国際物品売買 契約に関する国際連合条約(通称、ウィーン国際物品売買条約)もSale of Goodsを「物 品売買」としています。

customとcustoms

customは、「慣習、しきたり」を表します。慣習法のもとになる語です。

複数形のcustomsは、「関税、税関」を表し、単数扱いする用法もよくあります。cus‐toms clearanceでは「税関通過」です。

securityとsecurities

securityは、日本語にもなっている「セキュリティ」や「安全」を広く表します。
複数形のsecuritiesとなりますと、がらりと意味を変え、「有価証券」「証券」を表します。

ただ、証券化しておくことで債権の流通などの安全を確保できるとして生まれた語なので、もとの意味は共通です。

この記事のまとめ

英文契約の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!