時間外労働の上限規制とは?
働き方改革後の残業時間に関する
最新ルールを分かりやすく解説!
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※この記事は、2025年11月22日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
働き方改革関連法による残業時間の上限規制の概要
「働き方改革関連法」とは、労働者の働き方を抜本的に改革する目的で行われた一連の法改正の通称です。2018年の国会で成立し、2019年4月1日から順次施行され、2024年4月1日をもって全面的に施行されました。
働き方改革関連法による主な変更点は、以下のとおりです。
① 時間外労働の上限規制
36協定(=時間外労働および休日労働に関するルールを定めた労使協定)を締結している場合でも、時間外労働が原則として月45時間・年360時間に制限されるなどの上限規制が法律上明記されました。
2019年4月1日からまず大企業向けに施行され、2020年4月1日からは中小企業に対する適用も開始されました。
一部の業種(建設事業・自動車運転の業務・医師など)は適用を猶予されていましたが、2024年4月1日から全面的に時間外労働の上限規制が適用されました。
② 「勤務時間インターバル制度」の導入促進
前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に、一定時間の休息を確保することが使用者の努力義務とされました。2019年4月1日から適用されています。
③ 年次有給休暇の確実な取得(時季指定義務)
年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、毎年5日分につき時季を指定して与えることが義務付けられました。2019年4月1日から適用されています。
④ 労働時間の状況の客観的な把握
産業医による面接指導などに備えて、タイムカードや勤怠管理システムによる客観的な記録や、その他の適切な方法で労働時間を把握することが義務付けられました。2019年4月1日から適用されています。
⑤ 「フレックスタイム制」の拡充
フレックスタイム制の清算期間の上限が1カ月から3カ月に延長され、より柔軟な労働時間の調整が可能となりました。2019年4月1日から適用されています。
⑥ 「高度プロフェッショナル制度」の導入
高度の専門的知識を有する年収1075万円以上の労働者を対象として、高度プロフェッショナル制度が新たに導入されました。高度プロフェッショナルの対象となる労働者については、労働時間・休憩・休日・深夜の割増賃金に関する規定が適用されません。2019年4月1日から適用されています。
⑦ 月60時間を超える時間外労働の割増賃金引き上げ
2010年4月以降、月60時間を超える時間外労働の割増賃金は、通常の賃金に対して50%以上とされましたが、中小企業については猶予措置によって25%以上に据え置かれました。
2023年4月1日以降は猶予措置が撤廃され、中小企業も月60時間を超える時間外労働につき、50%以上の割増賃金の支払いが義務付けられました。
⑧ 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)
正社員と非正規社員(契約社員・パート・アルバイトなど)との間で、不合理な待遇差を設けることが禁止されました。大企業向けには2020年4月1日から、中小企業向けには2021年4月1日から適用されています。
⑨ 産業医の権限強化
労働者の健康管理に関し、産業医の権限が強化されました。具体的には、事業者が産業医に付与すべき権限が明記された点や、事業者の産業医に対する情報提供が義務付けられた点などが挙げられます。2019年4月1日から適用されています。
働き方改革関連法施行後の、残業時間の上限規制の全体像
働き方改革関連法の施行に伴い、残業時間に関する規制のあり方も大幅に変わりました。
残業時間の上限規制の全体像は、以下のとおりです。
① 法定労働時間
② 法定休日
③ 36協定
④ 特殊な労働時間制
(a) 変形労働時間制
(b) フレックスタイム制
(c) 事業場外みなし労働時間制
(d) 専門業務型裁量労働制
(e) 企画業務型裁量労働制
(f) 高度プロフェッショナル制度
⑤ 災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働
⑥ 残業時間の上限規制が適用されないケース
次の項目から、上記の流れに沿って残業時間の上限規制の内容を解説します。
法定労働時間は原則として「1日8時間・1週40時間」
労働基準法では、原則的な労働時間の上限である「法定労働時間」が定められています。
使用者は原則として、労働者に法定労働時間を超える労働をさせてはなりません(労働基準法32条)。法定労働時間は原則として、1日当たり8時間、1週当たり40時間です。
ただし、後述する特殊な労働時間制では、法定労働時間について特別のルールが適用されます。
法定休日は週1日以上、または4週間で4日以上
使用者には労働者に対し、週1回または4週間を通じて4日以上の休日を与えることが義務付けられています(労働基準法35条)。この規定によって付与が義務付けられた休日を「法定休日」と言います。
なお、法定休日以外の休日は「法定外休日」と言います。例えば週休2日制の場合、そのうち1日が法定休日、もう1日が法定外休日となります。
法定休日と法定外休日が混在している場合は、以下の要領で法定休日が決まります。
- 法定休日の決まり方
-
(a) 労働契約や就業規則に定めがある場合
→その定めに従います。(b) 労働契約や就業規則に定めがない場合
【法定休日が週1日の場合】
日曜から土曜までを1週間として、最も後ろに位置する休日が法定休日となります。【法定休日が4週間を通じて4日の場合】
対象となる4週間のうち、最も後ろから数えて4日間の休日が法定休日となります。
時間外労働・休日労働をさせるには、36協定の締結が必要
法定労働時間を超える残業を「時間外労働」、法定休日に行う労働を「休日労働」と言います。
使用者が労働者に時間外労働または休日労働をさせるには、事業場ごとに「36協定」を締結しなければなりません(労働基準法36条1項)。
36協定とは、時間外労働と休日労働のルールを定めた労使協定です。使用者と、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合、または事業場の労働者の過半数を代表する者の間で締結します。
36協定を発効させるには、労働基準監督署に届け出る必要があります。
労働基準監督署への届出後、使用者は労働者に対して時間外労働や休日労働を指示できるようになりますが、その際には36協定の上限などを遵守しなければなりません。
36協定によって認められる時間外労働・休日労働の上限時間
働き方改革関連法の施行により、36協定に定めることができる時間外労働・休日労働の時間数に制限が設けられました。
具体的には、以下の制限を遵守しなければなりません。
【原則】
時間外労働の上限は、原則として月45時間以内かつ年360時間以内
【特別条項を定めた場合】
・1カ月の時間外労働と休日労働の合計は100時間未満
・1年の時間外労働は720時間以内
・限度時間の超過が認められる回数は、1年のうち6回(6カ月)以内
・坑内労働など、健康上特に有害な業務に従事する労働者の時間外労働は1日当たり2時間以内
・2カ月~6カ月間における時間外労働と休日労働の合計は月平均80時間以内
特殊な労働時間制
労働基準法では、以下の特殊な労働時間制が認められています。働き方改革関連法では、フレックスタイム制の清算期間が1カ月から3カ月に延長されたほか、高度プロフェッショナル制度が新たに導入されました。
① 変形労働時間制
② フレックスタイム制
③ 事業場外みなし労働時間制
④ 専門業務型裁量労働制・企画業務型裁量労働制
⑤ 高度プロフェッショナル制度
変形労働時間制
「変形労働時間制」とは、各日の労働時間を柔軟に変化させることができる制度です。繁忙期と閑散期の間で勤務時間を調整したい場合などに役立ちます。
労働基準法では、以下の3つの変形労働時間制が認められています。
(a) 1カ月単位の変形労働時間制(労働基準法32条の2)
1カ月以内の対象期間につき、週平均労働時間が40時間以内となるように、各日の労働時間を変化させることができます。
(b) 1年単位の変形労働時間制(同法32条の4)
1カ月を超え1年以内の対象期間につき、週平均労働時間が40時間以内となるように、各日の労働時間を変化させることができます。
そのほか、労働時間が極端に偏り過ぎないようにするための制限を遵守しなければなりません。
(c) 1週間単位の非定型的変形労働時間制(同法32条の5)
労使協定によって、1週間単位で各日の労働時間を弾力的に定めることができます。対象となる事業は小売業、旅館および料理・飲食業で、常時使用する労働者の数が30人未満のものに限ります。
フレックスタイム制
「フレックスタイム制」は、始業時刻と終業時刻の決定を労働者に委ねる制度です(労働基準法32条の3)。時差出勤やライフスタイルに合わせた勤務時間の設定が可能となり、ワークライフバランスの向上につながります。
フレックスタイム制では、労使協定によって清算期間と総労働時間が定められます。
対象労働者は、清算期間の各労働日に総労働時間を割り振る形で、柔軟に勤務時間を設定します。清算期間中の実労働時間が総労働時間を超過した場合は、超過分について残業代が発生します。
従来は清算期間の上限が1カ月とされていましたが、働き方改革関連法の施行により、2019年4月以降は清算期間の上限が3カ月に延長されました。
事業場外みなし労働時間制
「事業場外みなし労働時間制」とは、事業場外で業務に従事した労働者にみなし労働時間を適用する制度です(労働基準法38条の2)。
労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した労働者につき、労働時間を算定し難いときは、原則として所定労働時間働いたものとみなされます。
専門業務型裁量労働制・企画業務型裁量労働制
「裁量労働制」とは、業務の進め方や時間配分などを使用者が具体的に指示せず、労働者の裁量に委ねる制度です。裁量労働制の労働者にはみなし労働時間が適用され、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間数働いたものとみなされます。
労働基準法では、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2つが認められています。
専門業務型裁量労働制は、省令・告示により定められた20種類の業務を対象とするものです。労使協定の締結によって導入します。
企画業務型裁量労働制は、事業の運営に関する事項に関する企画・立案・調査・分析の業務を対象とするものです。労使委員会の決議によって導入します。
高度プロフェッショナル制度
「高度プロフェッショナル制度」とは、高度な専門知識を有する労働者に対し、業務の進め方などについて広い裁量を与える制度です。年収1075万円以上の裁量にふさわしい労働者が対象とされており、労使委員会決議によって導入することができます。
高度プロフェッショナルが適用される労働者については、労働時間・休憩・休日・深夜の割増賃金に関する規定が適用除外とされています(労働基準法41条の2)。
災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働・休日労働
災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合は、使用者は労働基準監督署長の許可を受けて、その必要の限度において労働者に時間外労働や休日労働をさせることができます(労働基準法33条1項)。
事前許可が原則とされていますが、事態急迫のために事前許可を受ける暇がない場合は、事後に遅滞なく届け出れば足りるとされています。
労働時間の上限規制の適用が猶予・除外されている事業・業務
働き方改革関連法は2024年4月1日をもって全面施行されましたが、以下の事業・業務については、通常とは異なる労働時間の上限規制が適用されています。
① 建設事業
② 自動車運転の業務
③ 医師
建設事業
建設事業については、災害の復旧・復興の事業を除き、労働時間の上限規制が全面的に適用されます。
災害の復旧・復興に関する建設事業については、以下の規制が適用されません。その他の上限規制は適用されます。
- 1カ月の時間外労働と休日労働の合計は100時間未満
- 2カ月~6カ月間における時間外労働と休日労働の合計は月平均80時間以内
自動車運転の業務
トラックなどの自動車運転の業務については、特別条項付き36協定を締結する場合の時間外労働の上限が年960時間とされています(通常は年720時間)。
また、自動車運転の業務については、以下の規制が適用されません。
- 1カ月の時間外労働と休日労働の合計は100時間未満
- 2カ月~6カ月間における時間外労働と休日労働の合計は月平均80時間以内
- 限度時間(月45時間)の超過が認められる回数は、1年のうち6回(6カ月)以内
医師
医師については、特別条項付き36協定を締結する場合の時間外労働・休日労働の合計上限時間が、勤務先の医療機関の水準区分によって異なっています。
通常の医療機関では、原則として時間外労働と休日労働を合わせて月100時間未満、かつ年960時間以内としなければなりません。
地域医療の提供体制を確保する役割を担う医療機関や、高度・専門的な研修を行う役割を担う医療機関では、時間外労働と休日労働の合計が年1860時間以内となります。
残業時間の上限規制が適用されないケース
残業時間の上限規制は、以下の労働者には適用されません。
(a) 農林の事業・水産の事業の労働者
※以下の事業に従事する者
・土地の耕作、開墾の事業
・植物の栽植、栽培、採取、伐採の事業
・その他農林の事業(林業を除く)
・畜産の事業
・養蚕の事業
・水産の事業
(b) 経営者と一体的な立場にある労働者(管理監督者)
※単に「管理職」であるだけでは、管理監督者に当たるとは限りません。
(c) 経営者または管理監督者の活動と一体不可分の職務を行う労働者(機密事務取扱者)
(例)経営者専属の秘書など
(d) 監視・断続的労働に従事する労働者
(例)
監視:守衛・門番・計器類の監視員・踏切番など
断続的労働:炊事番・用務員・専属運転手・マンション管理人など
※使用者が労働基準監督署長の許可を受けた場合に限ります。
(e) 高度プロフェッショナル制度が適用される労働者
上限規制に違反した場合のリスク
残業時間の上限規制に違反した場合は、労働基準監督官から是正勧告を受けるおそれがあります。是正勧告を受けた企業は、速やかに違法状態を是正し、その結果を労働基準監督署へ報告しなければなりません。
是正勧告に従わない場合や、悪質な違反が発見された場合には、刑事罰が科されるおそれもあります。
違反者は「6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」、法人(会社)も「30万円以下の罰金」に処されます(労働基準法119条1号、121条)。
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