訴訟費用とは?
弁護士費用との違い・内訳・計算方法・
支払いや請求の手続きなどを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

訴訟費用」とは、民事訴訟に伴って発生する費用のうち「民事訴訟費用等に関する法律」によって定められたものをいいます。
裁判所に対して支払う手数料や、書面の送達に要する郵便料などが訴訟費用の代表例です。これに対して、弁護士費用は訴訟費用に含まれません

訴訟費用のうち、最も大きな金額を占めることが多いのは、裁判所に納付する手数料です。
手数料は原則として、訴状に収入印紙を貼付する方法によって納付します。手数料の額は、請求額などに応じて計算する「訴額」に応じて決まります。

この記事では訴訟費用について、弁護士費用との違い・内訳・計算方法・支払いや請求の手続きなどを解説します。

ヒー

訴訟を提起したいのですが、訴訟費用はどのくらいかかるのでしょう? 弁護士さんに払う着手金とは別に、裁判所にも納付しないといけないんですよね?

ムートン

訴訟費用は訴状に貼る手数料や、郵便料のことをいいます。どのくらいかかるかなども解説していきますね。

※この記事は、2025年1月21日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 法…民事訴訟費用等に関する法律
  • 規則…民事訴訟費用等に関する規則

訴訟費用とは

訴訟費用」とは、民事訴訟に伴って発生する費用のうち「民事訴訟費用等に関する法律」によって定められたものをいいます。

民事訴訟に関する費用には、裁判所職員(裁判官・書記官・事務官など)の人件費や、訴状などの書面を送達する際にかかる郵便料などが含まれます。これらの費用の大部分は公費によって賄われていますが、応益負担の観点から、訴訟当事者にも一定の範囲で訴訟費用を負担することが義務付けられています。

訴訟費用と弁護士費用の違い

民事訴訟の当事者は、弁護士に代理人としての対応を依頼するケースが多いです。

しかし、弁護士費用は訴訟費用に含まれません。訴訟費用は、あくまでも「民事訴訟費用等に関する法律」に基づいて当事者が負担すべきとされている費用に限られます。

訴訟費用の金額は、法令によって決まります。
これに対して、弁護士費用の金額は、依頼者と弁護士の合意によって決まります。

ムートン

弁護士に相談した際に、費用面の説明を受けることもできます。

訴訟費用の主な内訳

訴訟費用には、主に以下の費用などが含まれます。

① 手数料(訴状に貼る収入印紙)
② 郵便料(郵便切手)
③ 当事者や証人などの旅費・日当・宿泊料
④ 書類の作成・提出の費用

手数料(訴状に貼る収入印紙)

民事訴訟を提起する原告、および控訴や上告を行う控訴人・上告人は、訴状などに収入印紙を貼って手数料を納めなければなりません(法2条1号・3条・8条本文)。
手数料を納付しないと、民事訴訟等の提起が不適法として却下されてしまいます(法6条)。

貼付すべき収入印紙の金額は、訴額(訴訟での解決により得られる経済的利益=請求額など)に応じて決まります。訴額および手数料額の計算方法は、後述します。

ただし、納付する手数料の額が100万円を超える場合は、収入印紙の貼付に代えて、現金をもって手数料を納めることができます(法8条但し書き、規則4条の2)。

郵便料(郵便切手)

裁判所は民事訴訟の当事者に対して、訴状や判決書正本の送達などを郵便によって行います。その際の郵便料の実費は、当事者の負担となります。

裁判所は、郵便料を郵便切手等によって予納させることができます(法13条)。
実務上は、原告(または控訴人・上告人)に対して、訴訟等を提起する段階で数千円分程度の郵便切手を予納させる運用となっています。

なお、予納した郵便切手が余った場合は、その裁判所での審理が終了した段階で、予納した当事者に返還されます。

当事者や証人などの旅費・日当・宿泊料

当事者・代理人・証人などが民事訴訟に出頭した場合は、その旅費・日当・宿泊料が訴訟費用として認められます(法2条4号・5号・18条・19条)。

旅費・日当・宿泊料を請求できる人

当事者等(=当事者もしくは事件の関係人、その法定代理人もしくは代表者またはこれらに準ずる者)

代理人(=弁護士など。法定代理人および特別代理人を除く)

証人、鑑定人、通訳人
※鑑定人と通訳人は、鑑定料または通訳料も別途請求できます。

説明者、参考人、事実の調査のために裁判所から呼出しを受けた者

これらの者の旅費・日当・宿泊料の額は、下表のとおりです(法2条4号・5号、21条~23条、規則2条、6条~8条)。

旅費日当宿泊料
当事者等原則として300円
※出頭場所から500メートル以内の場所から出発しているときは0円
※実際にかかった費用が300円を超えるときは、領収書などを提出すれば実費相当額を請求できます。
1日当たり3950円一夜当たり8500円または7500円
※地域によって異なります。
代理人当事者等と同様
※当事者等の旅費の額を超えることはできません。
当事者等と同様
※当事者等の日当の額を超えることはできません。
当事者等と同様
※当事者等の宿泊料の額を超えることはできません。
証人、参考人、事実の調査のために裁判所から呼出しを受けた者① 鉄道賃・船賃
・旅客運賃
・急行料金
・裁判所が支給を相当と認める特別車両料金、特別船室料金
・裁判所が支給を相当と認める座席指定料金
 
② 路程賃
1キロメートルにつき37円以内
 
③航空賃
現に支払った旅客運賃
1日当たり8000円以内一夜当たり8700円以内または7800円以内
※地域によって異なります。
鑑定人、通訳人、説明者証人等と同様1日当たり7600円以内証人等と同様

書類の作成・提出の費用

以下の書類の作成および提出の費用は、訴訟費用に含まれます(法2条6号)。

書類の作成・提出の費用

・訴状その他の申立書
・準備書面
・書証の写し
・訳文等の書類

※いずれも、当該民事訴訟等の資料とされたものに限ります。

民事訴訟における書類の作成・提出の費用の額は、下表のとおりです(規則2条の2)。

基本1500円
主張書面の合計通数が5通を超える場合超える通数15通までごとに1000円加算
(例)40通なら2000円加算
当該民事訴訟等の資料とされた書証の写しの通数が15通を超える場合超える通数50通までごとに1000円加算
(例)120通なら2000円加算

民事訴訟の手数料の計算方法

訴訟費用の中で、通常もっとも大きな割合を占めるのが、訴状等に収入印紙を貼って支払う手数料です。手数料の計算方法を解説します。

訴額に応じた手数料額早見表

手数料の額は、訴額(訴訟での解決により得られる経済的利益=請求額など)に応じて決まります。訴額に応じた手数料の金額は、下表のとおりです(法4条1項、別表第一)。

請求額訴訟費用
100万円以下の部分10万円までごとに1000円
100万円超500万円以下の部分20万円までごとに1000円
500万円超1000万円以下の部分50万円までごとに2000円
1000万円超10億円以下の部分100万円までごとに3000円
10億円超50億円以下の部分500万円までごとに1万円
50億円超の部分1000万円までごとに1万円
※控訴の手数料は上記の1.5倍、上告の手数料は上記の2倍です。

裁判所が公表している早見表を参照すると、訴額に応じた手数料の額が簡単に分かります。

参考:裁判所「手数料額早見表」

訴額の計算方法

手数料の額を計算する際に用いる「訴額」とは、訴訟の目的の価額をいいます。

訴額=訴えによって主張する利益

訴額は原則として、「訴えによって主張する利益」によって算定します(法4条1項、民事訴訟法8条1項)。

訴えによって主張する利益の額は、「訴訟物の価額の算定基準について」という通達などに基づいて算定します。
例えば、金銭支払請求の場合は請求金額が訴額となりますが、所有権に基づく引渡請求(明渡請求)の場合は、目的物の価格の2分の1が訴額となります。

参考:裁判所「訴訟物の価額の算定基準について」

また、知的財産権に関する訴額については、東京地方裁判所が算定基準を定めています。

参考:裁判所ウェブサイト「訴額の算定基準」

1回の訴えで数個の請求をする場合における訴額の計算方法

1回の訴えで数個の請求をする場合は、その価額を合算したものが訴額となります(民事訴訟法9条1項本文)。

ただし、主張する利益が各請求について共通である場合は、合算せずその利益の額が訴額となります(同項但し書き。例えば、債務不履行に基づく損害賠償請求と、不法行為に基づく損害賠償請求の原因が同じである場合など)。

なお、メインの請求に附帯して果実・損害賠償・違約金・費用を請求するときは、その価額は訴額に算入しません(同条2項)。

非財産上の請求・訴額の算定が困難な場合|訴額は160万円

財産上の請求でない請求に係る訴え(行政訴訟など)、または財産権上の請求に係る訴えで訴額を算定することが極めて困難なものについては、訴額は160万円とみなされます(法4条2項)。

民事訴訟の手数料の計算例

手数料の計算例

(例1)
原告が被告に対して、不法行為に基づき300万円の損害賠償を請求する民事訴訟を提起する場合
→訴額は300万円、手数料は2万円

(例2)
原告が被告に対して、所有権に基づき2000万円の不動産の引渡しを請求する民事訴訟を提起する場合
→訴額は1000万円、手数料は5万円

(例3)
債務不履行に基づく400万円の損害賠償請求訴訟に敗訴した被告が、控訴を提起する場合
→訴額は400万円、手数料は3万7500円
※訴えの提起(第一審)の1.5倍

参考:裁判所「手数料額早見表」

訴訟費用は、最終的に誰が負担する?

訴訟費用は、原則として敗訴した当事者が負担しますが、例外的に勝訴した側が負担するケースもあります。

訴訟費用は「敗訴者負担」|負けた側が支払うのが原則

訴訟費用は「敗訴者負担」、すなわち負けた側が支払うのが原則とされています(民事訴訟法61条)。

ただし、勝訴した当事者に不必要な行為があった場合や、勝訴した当事者の責に帰すべき事由によって訴訟を遅滞させた場合には、訴訟費用の全部または一部の負担が命じられることがあります(同法62条・63条)。

一部認容の場合は、当事者間で訴訟費用を分担する

原告の請求の一部のみが認められた場合は、裁判所が裁量によって訴訟費用の負担を定めます(民事訴訟法64条)。

実務上は、認容された割合に応じて訴訟費用の分担割合を定めるのが一般的です。
例えば、原告が被告に対して300万円の請求を行い、200万円のみが認容されたとします。この場合の訴訟費用の負担割合は「原告1:被告2」となります。

和解の場合、訴訟費用は各自負担が原則

民事訴訟では、当事者間の合意によって和解が成立することもあります。和解が成立した場合は、特別の定めがない限り、訴訟費用は各自の負担となります(民事訴訟法68条)。

訴訟費用を支払う(請求する)タイミングと手続き

訴訟費用のうち手数料郵便料は、原則として訴訟提起時に支払います。ただし、経済的に困難な状況にある場合は、訴訟上の救助によって支払いが猶予されることがあります。
その他の費用については、民事訴訟が終了した後で「訴訟費用額確定処分」を申し立てて請求を行います。

手数料と郵便料は、訴訟提起時に支払う

手数料は原則として、訴状を裁判所に提出する段階で、収入印紙を貼ることによって支払わなければなりません(法8条)。したがって、手数料は原告が訴訟提起時に支払うことになります。

また郵便料についても、訴訟提起時に郵便切手で予納させる運用がなされています。実際に予納する郵便切手の額は、裁判所の担当者に確認しましょう。

訴訟上の救助について

訴訟費用を支払う資力がない者、またはその支払によって生活に著しい支障を生ずる者に対しては、申立てによって裁判所が「訴訟上の救助」を決定することがあります(民事訴訟法82条1項)。

訴訟上の救助が決定されると、手数料の納付が一時的に猶予されます(同法83条1項1号)。猶予された手数料は、対象者が資力を回復した段階で、裁判所の決定に従って支払うことになります(同法84条)。

訴訟上の救助を申し立てる際には、無資力であること、または訴訟費用を支払うと生活に著しい支障を生ずることを疎明する必要があります。
具体的には、申立書と併せて以下の資料などの提出が求められます。

訴訟上の救助を申し立てる際の疎明資料

・生活保護受給者の場合
→受給証明書

・生活保護を受給していない場合
→収入に関する資料、預貯金通帳

など

なお、訴訟上の救助が決定された場合でも、郵便切手の予納については免除されません。

勝訴した側は「訴訟費用額確定処分」を申し立てることができる

民事訴訟で勝訴した場合は、判決に基づいて相手方に訴訟費用を請求できます。

ただし、判決では訴訟費用の負担割合が示されるものの、具体的な負担額は示されません。訴訟費用の具体的な負担額は、裁判所書記官による「訴訟費用額確定処分」によって別途決定されます。

訴訟費用額確定処分の申立て方法

訴訟費用額確定処分の申立ては、第一審裁判所の裁判所書記官に対して行います(民事訴訟法71条1項)。仮執行宣言が付されていれば判決確定前でも申立てができますが、判決が確定してから申し立てるのが一般的です。

訴訟費用額確定処分を申し立てる際には、申立書に費用計算書を添付する必要があります。費用計算書には、民事訴訟費用等に関する法律などの法令に基づき、請求する費用の内訳を記載します。
裁判所に提出した申立書と費用計算書は、相手方にも直送しなければなりません(民事訴訟規則24条2項・47条1項)。

裁判所書記官による訴訟費用額確定処分

申立てを受理した裁判所書記官は、相手方に対して陳述書の提出を催告します(民事訴訟規則25条1項)。
相手方から陳述書が提出された場合は、その内容も考慮した上で、裁判所書記官が訴訟費用額確定処分を行います。

訴訟費用額確定処分は、相当と認める方法で告知することによって発効し、直ちに強制執行を申し立てることができます(民事訴訟法71条3項、民事執行法22条4号の2)。

裁判所書記官に対する異議申立て・即時抗告

訴訟費用額確定処分に対しては、告知を受けた日から1週間以内に限り、異議を申し立てることができます(民事訴訟法71条4項)。適法に異議申立てがなされた場合は、訴訟費用額確定処分の強制執行が停止されます(同条5項)。

裁判所は、異議申立てに理由があると認めた場合は、新たな訴訟費用の負担額を自ら定めます(同条6項)。理由がないと認める場合は、異議申立てを棄却します。

異議申立てについての決定について不服がある場合は、即時抗告をすることができます(同条7項)。即時抗告の期間は、決定の告知を受けた日から1週間以内です(同法332条)。

ムートン

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参考文献

裁判所「民事訴訟費用等に関する規則」