準委任契約とは?
委任契約や請負契約との違い・民法のルール・
主な規定事項・注意点などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

準委任契約」とは、当事者の一方が事務(事実行為)委託し、相手方がそれを受託する契約です。

準委任契約と特にセットで覚えておきたい契約として、「委任契約」「請負契約」があります。それぞれの意味は以下のとおりです。
・委任契約:法律行為を委託する契約
・請負契約:何らかの「仕事の完成」を目的とする契約

法務実務においては、業務委託契約が、準委任契約・委任契約・請負契約のどれに該当するのかがよく問題になります。

この記事では準委任契約について、基本から分かりやすく解説します。

ヒー

実務では、業務委託契約書ってタイトルになっていて、準委任契約なのか、委任契約なのか、請負契約なのか、分かりづらいんですよね。

ムートン

業務委託契約がどの契約類型に該当するかは、契約書の内容を読んで判断できるようにならないといけません。今回は、「準委任契約とは何か」について確認していきましょう。

※この記事は、2024年3月11日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 労働者派遣法…労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

準委任契約とは

準委任契約」とは、当事者の一方(=委任者)が事務を委託し、相手方(=受任者)がそれを受託する契約です。

ヒー

「事務」って何ですか?

ムートン

法律行為以外の「事実行為という意味です。具体的には、コンサルティング業務の委託や、web記事の執筆の委託など、弁護士が担当するような業務以外のことを指していますね。

準委任契約の種類|具体例も含め解説!

準委任契約は、以下の2種類に大別されます。

① 成果完成型
② 履行割合型

成果完成型(民法648条の2第1項)

成果完成型」では、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬が支払われます。

言い換えれば、成果物の納品成果目標の達成などを条件に報酬が支払われるのが、成果完成型の準委任契約です。

成果完成型の例

・A社がB社に対して、リサーチ資料の作成および納品を委託した。

・C社がD社に対して、プロジェクトマネジメントの業務を委託した。報酬については、プロジェクトの終了時に報酬を支払うことを合意した。

ムートン

なお、成果完成型の準委任契約は、仕事の完成を目的とする「請負契約」としばしば混同されます。これらの違いについては「準委任契約と請負契約の違い」で解説します。

履行割合型(民法648条2項・3項)

履行割合型」では、委託事務の遂行にかかった工数や時間を基準として報酬が支払われます。成果完成型とは異なり、成果物の納品や成果目標の達成は報酬の発生要件ではありません。

履行割合型の例

・E社がF社に対して、自社の業務効率化に関するコンサルティング業務を委託した。報酬については顧問契約制とし、毎月精算することを合意した。

・G社がH社に対して、自社オフィスで従業員をサポートする常駐担当者の派遣を委託した。

委任契約とセットで覚えておきたい契約類型

委任契約に近い特徴を持つ契約類型として、以下の4つを理解しておきましょう。

① 委任契約
② 請負契約
③ 労働者派遣契約
④ 業務委託契約

準委任契約と委任契約の違い

委任契約」は、当事者の一方が法律行為を相手方に委託する契約です(民法643条)。

準委任契約では法律行為でない事務を委託するのに対して、委任契約では法律行為を委託する点が異なります。

その一方で、委託事務の内容は異なるものの、準委任と委任の性質は非常に似通っています。そのため、準委任には民法の委任に関する規定が準用されます(民法656条)。

準委任契約と請負契約の違い

請負契約」は、当事者の一方がある仕事を完成させることを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払う内容の契約です。

請負契約は仕事の完成を目的としていますが、準委任は業務の遂行自体を目的とする点が異なります。
成果完成型の準委任契約であっても、請負契約とは異なり、あくまでも業務の遂行自体が目的であることに注意しましょう。

ムートン

請負契約と成果完成型の準委任契約の違いをまとめると、以下のとおりです。

内容成果完成型の準委任契約請負契約
目的業務の遂行仕事の完成
受託側が負う義務委任事務を行う義務仕事を完成させる義務(成果物の納品)
報酬の支払い時期成果の引き渡し時成果の引き渡し時
契約解除のタイミング当事者双方がいつでも解除可能
※損害賠償が必要(やむを得ない事由による場合を除く)
注文者に限り、依頼した仕事が完成されるまでなら可能

準委任契約と労働者派遣契約の違い

労働者派遣契約」は、派遣元事業主が雇用する労働者を、派遣先の指揮命令下で働かせることを合意する契約です。

違い1|指揮命令権限の有無

準委任契約と労働者派遣契約の大きな違いは、「(業務遂行者に対する)指揮命令権限」の有無です。準委任契約では、業務遂行者に対して、指揮命令権限をもっていません。一方。労働者派遣契約では、派遣労働者に対する指揮命令権限を有しており、業務の遂行方法や時間配分などを具体的に指示することが可能です。

違い2|業規制の有無

労働者派遣契約では、労働者の地位が不安定になることを防ぐため、労働者派遣法によって許可制などの規制が定められています。これに対して準委任契約は、労働者派遣とは異なり、契約類型そのものに関する業規制は特に設けられていません。

なお、契約が準委任と労働者派遣のどちらに該当するかについては、契約の内容だけでなく、業務の実態も総合的に考慮して判断される点に注意が必要です(詳細は、「偽装請負に要注意」にて後述します)。

準委任契約と業務委託契約の違い

業務委託契約」は、委託者が受託者に対して、何らかの業務を委託する内容の契約です。

業務委託契約は法律上、その委託業務の内容および目的によって、請負契約・委任契約・準委任契約のいずれかに該当します。

【請負契約・委任契約・準委任契約の見分け方】

準委任契約のメリット

準委任契約のメリットとしては、主に以下の2点が挙げられます。

①契約期間の制限が無いため柔軟に対応できる
②高度な人材をスポットでアサインできる

契約期間の制限が無いため柔軟に対応できる

たとえば雇用契約は、正社員と締結する場合は期間の定めがないものとするのが一般的です(=無期雇用契約)。無期雇用契約は、高度の経営危機や労働者の悪質な就業規則違反などの事情がない限り、使用者側から一方的に終了させることはできません。

また、期間の定めがある雇用契約(=有期雇用契約)であっても、契約期間が5年を経過すると労働者に無期転換権が生じます(労働契約法18条)。有期雇用契約が何度も更新されている場合は、期間満了時の雇止めも無効と判断されることがあります(同法19条)。

これに対して、準委任契約は、契約期間について法令上の規制がありません。そのため、準委任契約の契約期間は、当事者の合意によって柔軟に定めることができます。
特に委任者側にとっては、プロジェクトや業務において必要な人材を必要な期間だけ確保できる点が、準委任契約のメリットといえるでしょう。

高度な人材をスポットでアサインできる

準委任契約は、高い専門性を有する外部人材の知見を借りたい場合によく締結されます。受任者の例として挙げられるのは、コンサルタントやエンジニア、バックオフィス系の専門職(法務・経理・監査等)などです。

高い専門性を有する人材を自社で雇用すると、多くの場合は高額の報酬を支払わなければなりません。特に中小規模の企業においては、人件費予算の関係で専門性の高い人材を常時雇用するのは難しいケースが多いでしょう。

準委任契約であれば、専門性の高い人材を常時雇用することなく、必要なときに必要なだけ活用することができます。人件費を抑制する観点からも、準委任契約を効率的に活用することはメリットが大きいといえます。

準委任契約のデメリット

準委任契約のデメリットとしては、主に以下の3点が挙げられます。

①業務の指揮命令権が無い
②期待していた結果を得られなくても報酬を支払う必要がある
③長期的な人材育成には不向き

業務の指揮命令権が無い

雇用契約の場合、使用者は労働者に対して、業務の進め方や時間配分などを具体的に指示することができます。労働者に対して定時勤務を義務付けたり、細かい服務規律の遵守を求めたりすることも可能です。

これに対して準委任契約では、雇用契約について認められている上記のような指揮命令権が認められません。
受任者は、業務の進め方や時間配分などを自分の裁量によって決めることができます。委任者はこれらの事項について、受任者に具体的な指示を行うことができません。
また、定時勤務を義務付けることや、細かい服務規律の遵守を求めることもできないと解されています。

企業が業務担当者をしっかりとコントロールしたい場合は、準委任契約よりも雇用契約の方が適しているケースが多いでしょう。

なお、準委任契約の形式をとっていても、実際には委任者が受任者に対して具体的な指揮命令を行っている場合には、実質的に雇用契約であると判断されて労働法のルールが適用されることがあるのでご注意ください。

期待していた結果を得られなくても報酬を支払う必要がある

準委任契約の報酬は、受任者の業務に対して支払われるものであって、その業務の結果に対して支払われるものではありません。したがって、委任者が期待していた結果が得られなくても、受任者に対して報酬を支払う必要があります。

これに対して請負契約では、完成した仕事(成果物)に対して報酬を支払うため、仕事の結果に不備があれば是正や報酬の減額などを求めることができます。

特に工事やコンテンツの制作など、成果物の質を作業する側が担保すべき業務については、準委任契約ではなく請負契約を締結した方がよいでしょう。

これに対して、オフィスなどにおける常駐業務やアドバイザリー業務などについては、成果物が何であるかが必ずしも明確でないため、請負契約よりも準委任契約が適していると考えられます。

長期的な人材育成には不向き

準委任契約の受任者は、委任者から見ると外部者に過ぎません。

準委任契約の期間が満了すれば、委任者は受任者と取引を続ける義務はありません。そのため、受任者が委任者に対して色々と業務のことを教えても、近い将来には取引が終了してしまう可能性が高いです。準委任契約は、長期的な人材育成には不向きな側面があります。

長期的に人材を育成したい場合は、正社員として無期雇用契約を締結するのがよいでしょう。長期的な雇用を保障することにより、労働者の側にも同じ会社で長く働こうというモチベーションが生じる可能性が高くなります。

準委任契約に適用される民法のルール

準委任契約には、民法委任に関する規定が適用されます(民法656条)。

準委任契約に適用される民法の主なルールは、以下のとおりです。

① 受任者の善管注意義務
② 復受任者の選任等
③ 受任者による報告
④ 受任者による受取物の引渡し等
⑤ 受任者の金銭の消費についての責任
⑥ 受任者の報酬
⑦ 準委任の費用の取り扱い
⑧ 準委任の解除・終了

受任者の善管注意義務

受任者は、準委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務(=善管注意義務)を負います(民法644条)。

受任者が善管注意義務に違反した場合には、委任者に生じた損害を賠償しなければなりません(民法415条1項)。

復受任者の選任等

復受任者」とは、受任者と共同して委任事務を処理する者をいいます。

受任者は、委任者の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができません(民法644条の2第1項)。

代理を付与する委任において、受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは、復受任者は委任者に対して、その権限の範囲内で受任者と同一の権利を有し、義務を負います(同条2項)。
つまり、復受任者は「受任者の代理人」ではなく、委任者を直接代理します。

受任者による報告

受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況報告しなければなりません。また、委任が終了した後は、遅滞なくその経過および結果を報告しなければなりません(民法645条)。

受任者による受取物の引渡し等

受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を、委任者に引き渡さなければなりません。委任事務を処理する過程で得た果実収益)についても同様です(民法646条1項)。

また受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を、委任者に移転しなければなりません(同条2項)。

受任者の金銭の消費についての責任

受任者は、委任者に引き渡すべき金額または委任者の利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければなりません。

また、委任者に利息以外の損害が生じているときは、その損害についても賠償責任を負います(民法647条)。

受任者の報酬

受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができません(民法648条1項)。

ムートン

実務上は通常、準委任契約で報酬について規定します。

報酬は原則として、委任事務を履行した後でなければ請求できません。ただし期間によって報酬を定めたときは、その期間が終了した時に報酬を請求できます(同条2項)。

以下のいずれかの場合には、受任者は委任者に対し、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求可能です(同条3項)。

(a)委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき
(b)委任が履行の中途で終了したとき

成果完成型の準委任契約において、その成果が引き渡しを要するときは、報酬と成果の引き渡しが同時履行とされています(民法648条の2第1項)。

なお、以下のいずれかの場合において、委任者が部分的に完成した成果によって利益を受けるときは、受任者は委任者に対し、委任者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求できます(同条2項、634条)。

(a)委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき
(b)準委任が成果の引渡し前に解除されたとき

準委任の費用の取り扱い

委任事務を処理する際に費用がかかる場合、委任者は受任者の請求により、その費用を前払いしなければなりません(民法649条)。

受任者は委任者に対し、以下の費用等の償還・弁済・賠償を請求できます(民法650条)。

・受任者が支出した、委任事務を処理するのに必要と認められる費用とその利息(同条1項)

・受任者が負担した、委任事務を処理するのに必要と認められる債務(同条2項)
※債務が弁済期にないときは、委任者に相当の担保を供させることができる

・委任事務を処理するために、委任者が過失なく受けた損害(同条3項)

準委任の解除・終了

準委任は、委任者および受任者がいつでも将来に向かって解除できます(民法651条1項、652条)。

その際、以下のいずれかに該当する場合には、相手方の損害を賠償しなければなりません。ただし、委任の解除についてやむを得ない事由があったときは、損害賠償は不要です(同条2項)。

(a)相手方に不利な時期に委任を解除したとき
(b)委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く)をも目的とする委任を解除したとき

また、準委任は以下のいずれかの事由によって終了します(民法653条)。ただし準委任の終了事由は、相手方に通知したとき、または相手方が知っていたときでなければ、その相手方に対抗することができません(民法655条)。

(a)委任者または受任者の死亡
(b)委任者または受任者が破産手続開始の決定を受けたこと
(c)受任者が後見開始の審判を受けたこと

委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、委任者等が委任事務を処理できるようになるまでの間、受任者またはその相続人・法定代理人が必要な処分をしなければなりません(民法654条)。

準委任契約に定めるべき主な事項

準委任契約に定めるべき主な事項としては、以下の例が挙げられます。実際の契約内容は、委任事務の内容や性質などに応じて個別に検討しましょう。

① 委任事務の内容
② 報酬
③ 受任者の委任者に対する報告等
④ 契約期間
⑤ その他一般条項

委任事務の内容

委任者が受任者に対して委託する事務の内容を、できる限り具体的に定めます。

(例)
第○条(準委任)
委任者は受任者に対して、○○に関するコンサルティング業務(以下「委任業務」という。)を委託し、受任者はこれを受託する。

報酬

委任者が受任者に対して支払う報酬について、金額・支払期日・支払方法などを定めます。

(例)
第○条(報酬)
委任者は受任者に対して、委任業務の対価として金○万円を、毎月末日までに受任者が別途指定する銀行口座へ振り込む方法にて支払う。なお、振込手数料は委任者の負担とする。

受任者の委任者に対する報告等

委任業務の処理状況等について、受任者の委任者に対する報告などの義務や手続きを定めます。

(例)
第○条(委任業務に関する報告)
1. 受任者は委任者に対して、委任業務の処理状況等につき、毎月末日までに書面で報告するものとする。
2. 前項のほか、受任者の請求により、委任者は受任者に対して、委任業務の処理状況等につき随時報告するものとする。

契約期間

準委任契約の期間や、自動更新の条件などを定めます。

(例)
第○条(契約期間)
1. 本契約の有効期間(以下「契約期間」という。)は締結日から○年○月○日までとする。
2. 契約期間が満了する1カ月前までに、当事者のいずれからも契約終了の申出がない場合には、本契約は従前と同様の条件でさらに1年間更新されるものとし、以降も同様とする。

その他一般条項

準委任契約には上記のほか、以下のような一般条項を定めるケースが多いです。

・秘密保持
・反社会的勢力の解除
・損害賠償
・合意管轄
など

準委任契約に関する注意点

準委任契約を締結する際には、特に以下の2点に注意しましょう。

収入印紙の貼付の要否
偽装請負に要注意

収入印紙の貼付の要否

準委任契約書を紙で作成する場合において、以下のいずれかに該当するときは、収入印紙の貼付が必要となります。

(a)準委任契約という名称であっても、実際には仕事の完成を目的とする契約である場合
→請負に関する契約書として、契約金額に応じて200円から6万円の収入印紙の貼付を要します。

(b)継続的取引の基本となる契約書である場合
→契約期間が3カ月以内で更新の定めがないものを除き、4,000円の収入印紙の貼付を要します。

なお、契約を電子的に締結する場合には、収入印紙の貼付は不要です。

偽装請負に要注意

準委任契約の体裁をとっていても、実際には受任者が委任者の指揮命令下で働いていると評価される場合には「偽装請負」に当たります。

ムートン

偽装請負とは、実質的に労働者派遣や労働者供給であるにもかかわらず、請負契約や準委任契約などに偽装する行為です。

偽装請負を行った事業者は、労働者派遣法違反などの責任を問われるおそれがあります。

偽装請負に当たるかどうかは、準委任契約の内容のほか、実際の業務の状況も考慮して判断されます。準委任契約において指揮命令関係がないことを明記した上で、実際の業務についても、遂行方法や時間配分に関する具体的な指示が行われないようにチェックを行いましょう。

ムートン

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