法律行為とは?
定義・種類・具体例・
成立要件・注意点など分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「法律行為」とは、当事者の意思表示に基づいて法律効果を発生させる行為です。
法律行為には、契約・単独行為・合同行為の3種類があります。意思表示を含まない「事実行為」や、意思表示の内容とは異なる法律効果が生じる「準法律行為」とは区別されます。
法律行為は、意思表示によって成立するのが原則です。ただし、法律によって意思表示以外の要件が定められているケースもあります。
法律行為をする際には、その内容や適用される法規制、意思表示以外に必要な手続きなどを、事前に十分確認しましょう。
この記事では、「法律行為」について、定義・種類・具体例・成立要件・注意点など分かりやすく解説します。
※この記事は、2023年5月25日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
法律行為とは|定義を私的自治の原則も踏まえ解説!
「法律行為」とは、当事者の意思表示に基づいて法律効果を発生させる行為です。原則として、法律行為は各権利主体(個人・法人)が自由にその内容を決定し、行うことができます。
法律行為自由の原則とは
法律行為自由の原則とは、法律行為は各権利主体が自由に行えるとする原則のことです。
民法は、基本原理の一つとして「私的自治の原則(国家権力の干渉を受けずに、私人間の法律関係を自由に形成できるとする原則)」を採用しています。
私的自治の原則からは、「法律行為自由の原則」が導かれます。「私人間の法律関係を自由に形成してよい」ということは、法律関係を形成する行為(=法律行為)も当然自由に行うことができるはずです。
したがって、法律行為は各権利主体が自由にその内容を決定した上で、権利主体の自由意思に基づいて行うのが原則とされています。
ただし例外的に、公序良俗違反や法律上の強行規定違反に当たる場合など、法律行為自由の原則が適用されないケースもあります。
法律行為と事実行為の違い
法律行為は、当事者の意思表示に基づいて法律効果を発生させる行為ですが、意思表示によらずに法律効果を発生させる行為は「事実行為」と呼ばれます。
例えば、以下のような行為が事実行為に当たります。
- 事実行為の例
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・遺失物(落とし物)の拾得
・加工
・住所の設定
など
法律行為と準法律行為の違い
法律行為に類する概念として「準法律行為」があります。
法律行為の場合、表示された意思の内容に沿った法律効果が発生します。これに対して準法律行為は、意思表示を含んでいるものの、表示された内容とは異なる法律効果が与えられる行為です。
例えば、以下のような行為が準法律行為に当たります。
- 準法律行為の例
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・弁済の催告(債務の支払いを求める意思表示をすることで、時効の完成猶予の効果が生じる)
・権利の承認(債権者の権利を認める意思表示をすることで、時効の更新の効果が生じる)
など
法律行為の種類と具体例
法律行為には、以下の3種類があります。
1|契約
2|単独行為
3|合同行為
1|契約
「契約」は、当事者間の意思表示(申込みと承諾)の合致によって、法律上の権利または義務を発生させる法律行為です。
契約には無数の類型がありますが、民法で定められた契約を「典型契約」、それ以外の契約を「非典型契約」といいます。
- 典型契約
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・贈与 (民法549条)
→贈与者が財産を無償で与え、受贈者が受け取る契約・売買 (民法555条)
→売主が財産を譲渡し、買主が代金を支払って譲り受ける契約・交換 (民法586条)
→当事者間で財産(金銭を除く)を交換する契約・消費貸借 (民法587条)
→貸主が物を貸し、借主が借りた物と種類・品質・数量の同じ物を貸主に返す契約
(例)お金を貸し借りする契約(=金銭消費貸借契約)・使用貸借 (民法593条)
→貸主が物を無償で貸し、借主が借りた物と同じ物を貸主に返す契約
(例)親族に居住用物件を無償で貸す契約(=建物使用貸借契約)・賃貸借 (民法601条)
→貸主が物を有償で貸し、借主が借りた物と同じ物を貸主に返す契約
(例)居住用物件を有償で貸す契約(=建物賃貸借契約)・雇用 (民法623条)
→労働者が使用者の指揮命令下で働き、使用者が労働者に対してその報酬(賃金)を支払う契約・請負(民法632条)
→請負人が何らかの仕事を完成し、注文者が仕事の結果に対して報酬を支払う契約
(例)建設工事の請負契約(=工事請負契約)・委任(民法643条)
→委任者が何らかの法律行為を委託し、受任者がこれを受託して、委任者のために法律行為をする契約
(例)弁護士などの士業に依頼する際の契約・寄託 (民法657条)
→寄託者が物の保管を委託し、受寄者がこれを受託して、寄託者のためにその物を保管する契約
(例)預金契約(=金銭消費寄託契約)・組合 (民法667条)
→各当事者が出資をして、共同の事業を営む契約・終身定期金 (民法689条)
→当事者の一方が、自己・相手方・第三者のいずれかが死亡するまで、定期的に金銭などを相手方や第三者に給付する契約・和解 (民法695条)
→当事者が互いに譲歩をして、当事者間の争いをやめる契約
- 非典型契約の例
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・秘密保持契約
→当事者間でやり取りされる秘密情報につき、第三者への開示等を互いに禁止する契約・ライセンス契約
→特許権・商標権・著作権などで保護された知的財産の使用を、ライセンサー(権利者)がライセンシー(相手方)に対して許諾する契約
(例)特許ライセンス契約、商標ライセンス契約、著作権ライセンス契約・コンサルティング契約
→コンサルタントが委託者に対して、事業や経営などに関するコンサルティング(アドバイス)を提供する契約・販売代理店契約
→メーカーが販売代理店に対して、自社商品の販売を委託または許諾する契約・株式譲渡契約
→譲渡人が会社株式を譲渡し、譲受人がこれを譲り受ける契約・人材紹介契約
→人材紹介会社がクライアント企業に対して、採用候補者を紹介する契約・物流委託契約
→荷主企業が材料や商品などの物流作業を委託し、物流業者がこれを受託する契約・製造物供給契約
→委託者が自社製品などの製造・納品を委託し、受託者がこれを受託する契約など
2|単独行為
「単独行為」は、単独の意思表示によって法律効果を発生させる法律行為です。
- 単独行為の例
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・遺言
→遺言者の死亡を停止条件として、遺言によって財産を受け取る者に財産を贈与(遺贈)するなどの法律効果を生じさせる、遺言者による単独行為・債務の免除
→債務者が負担する債務を免除する、債権者による単独行為・契約の解除
→債務不履行や解除事由に該当したことを根拠に、将来に向かって契約を消滅させる、一方当事者による単独行為・契約の取り消し
→取消事由に該当することを根拠に、当初に遡って契約を消滅させる、一方当事者による単独行為など
3|合同行為
「合同行為」は、複数の人々が同じ目的をもって、同一方向の意思表示をすることによって法律効果を発生させる法律行為です。
合同行為については、意思表示のうちひとつが取り消され、または無効となっても、全体の法律効果は維持され得るという特徴があります。
- 合同行為の例
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・社団法人の設立
→複数の人々が出資などを行い、社団法人を設立する合同行為
(例)会社の設立・社団法人の総会決議
→社団法人の社員が、多数決等によって意思決定を行う合同行為
(例)株主総会決議など
法律行為の成立要件
契約の成立要件
契約は原則として、一方が契約内容を示して、その締結を申し入れる意思表示(=申込み)をし、相手方がこれを承諾したときに成立します(民法522条1項)。
契約を成立させるには、原則として特定の方式による必要はありません(同条2項)。例えば書面や電子データを作成せず、口頭で契約を締結することも認められます。
ただし例外的に、民法その他の法令によって特別の定めがある場合には、その定めに従った方式によって契約を締結する必要があります。
(例)保証契約は、書面でしなければその効力を生じない(民法446条2項)
法律行為自由の原則の一環である「契約自由の原則」により、当事者は原則として、契約内容を自由に決められます。
ただし、公序良俗違反(民法90条)や法律上の強行規定違反に当たる場合などには、契約の全部または一部が無効となり得る点に注意が必要です。
単独行為の成立要件
単独行為は、以下のように、行為ごとに成立要件が異なります。
(例)
・遺言
→自筆証書・公正証書・秘密証書など、民法で定められた方式による遺言をしたときに成立します(民法967条以下)。
・債務の免除
→債権者が債務者に対して、債務を免除する意思を表示したときに成立します(民法519条)。
・契約の解除
→原則、債務不履行が発生した場合に、催告等の手続きを経て成立します(無催告解除が可能な場合あり。民法541条、542条)。
契約で解除事由および解除手続きが定められた場合は、その定めに従って契約の解除が成立します。
・契約の取消し
→錯誤(民法95条)や詐欺・強迫(民法96条)など、法律上の取消事由が存在する場合に、相手方に取り消す旨の意思表示をすることによって成立します(民法123条)。
合同行為の成立要件
合同行為は、法律で定められた要件を満たし、かつ法律で定められた手続きを履践することによって成立します。
(例)
・株式会社の設立
→定款の作成、発起人による署名または記名押印、公証人による定款認証、出資の履行、本店所在地における設立の登記など
・株主総会決議
→招集手続き、定足数の充足、一定以上の賛成など
法律行為をする際の注意点
会社が法律行為をするに当たっては、特に以下の各点に十分注意ください。
- 法律行為の内容が想定どおりであることを確認する
- 適用される法規制を確認する
- 意思表示以外の手続きが必要かどうかを確認する
法律行為の内容が想定どおりであることを確認する
法律行為が有効に成立した場合、当事者はその内容に従って権利を取得し、または義務を負います。
法律行為に予期せぬ内容が含まれていると、当事者は不測の損害を被るおそれがあります。例えば、自社の大きな不利益になる条項を見落としたまま契約を締結してしまった場合などが典型例です。
会社が法律行為をする際には、その内容が自社の想定どおりであることを確認する必要があります。
特に契約を締結する場合は、契約書ドラフトを隅々までチェックし、許容できないリスクが含まれていないかを十分確認しましょう。法務担当者(または弁護士)によるチェックのほか、必要に応じてリーガルテックによるチェックを併用することも効果的です。
適用される法規制を確認する
法律行為の効果は、法律上の強行規定によって変更される場合があります。
(例)借地借家法の規定に反する特約で、借主に不利なものは無効(同法9条、16条、21条、30条、37条)
また、事前に官公庁の許認可を受ける必要がある法律行為も存在します。
(例)金融商品取引業に関する契約を締結する際には、内閣総理大臣の登録を受ける必要がある(金融商品取引法29条)
法律行為に適用される法規制を見落とすと、法律行為の内容が予期せず変更されたり、業法違反によって処罰されたりするおそれがあります。
このような事態を避けるため、特にイレギュラーな法律行為をする際には、適用される法規制について十分なリサーチを行いましょう。
意思表示以外の手続きが必要かどうかを確認する
契約は、当事者による意思表示(申込み・承諾)の合致のみによって成立するのが原則です。
しかし契約の種類によっては、意思表示の合致以外の要件や手続きが定められていることもあります。
(例)保証契約は書面による必要がある(民法446条2項)、事業用定期借地権設定契約は公正証書による必要がある(借地借家法23条3項)など
意思表示の合致以外の成立要件等が定められている場合、それを満たさずに締結された契約は無効です。
取引が始まってから契約の無効が問題となるような事態を避けるため、契約を締結する前の段階で、特別の成立要件を定めた法律上の規定がないかどうかを確認しましょう。
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