企業法務で勉強するべき法律とは?
自己研鑽と情報収集方法をご紹介!

この記事のまとめ

企業法務の担当者には、伝統的に、対外的・対内的な法的紛争を防ぐとともに、発生した紛争を早期に解決することが求められてきました。近年では、これらに加え、法的なスキルを積極的に活用して、より戦略的に企業活動を後押しすることや、社会の変化に応じて新たに生じるリスクへの対応を行うことも重要な役割となってきています。

これらの役割を果たすためには、特に ①法律知識 ②文書・資料作成 ③プレゼンテーション といったスキルが必要であり、それらを学び続けることが重要です。

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企業の法務担当者として、日々の業務におけるスキルアップに試行錯誤されている方も多いのではないでしょうか。

ムートン

企業法務は専門性が高く、法改正や社会の変化に対して適切かつ迅速に対応することが求められます。そのため、日々の自己研鑽が欠かせず、その勉強方法・情報収集方法を知っておくと効果的です。

(※この記事は、2021年5月13日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。)

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企業法務担当者が押さえておきたい重要法令まとめ

企業法務の役割と継続した自己研鑽・情報収集が必要な理由

現代社会は、ガバナンスやコンプライアンスを重視する企業経営が主流となっており、また、グローバル化や事業の多角化が急速に進んでいます。
このように企業をとりまく環境が大きく変化していく中で、法務担当者にもその変化に対応し続けることが求められます

ここでは、法務部門の役割とその担当領域について解説し、なぜ継続した自己研鑽・情報収集が必要なのかを説明していきます。

企業法務の役割

企業法務には、伝統的に、対外的・対内的な法的紛争を防ぐとともに、発生した紛争を早期に解決すること(契約書作成や審査、訴訟やトラブル対応)が求められてきました。

これらは今後も重要な役割ではありますが、近年はこれらに加え、法的なスキルを積極的に活用して、より戦略的に企業活動を後押しすること(経営や事業の支援、知的財産権の権利主張など)も求められています。

また、それだけに留まらず、社会の変化に応じて新たに発生してきたリスク(レピュテーションリスクやブランド毀損のリスク、内部統制強化)への対応を行うことも、その役割となってきています。

企業法務に求められる役割
伝統的な役割・契約書作成、審査
・訴訟・トラブル対応 など
近年求められている役割
・経営や事業への支援
・知的財産などの権利主張
・レピュテーションリスクやブランド毀損のリスク対応
・内部統制強化 など

継続した自己研鑽・情報収集が必要な理由

このように、企業法務の役割の拡大に伴って、担当者の業務領域も拡大してきています。
従って、企業法務の担当者としての業務を遂行するためには、その拡大に対応できる知識を身に付けておく必要があります。
企業法務の担当者には、継続した自己研鑽と情報収集を行ことが求められているのです。

なお、企業法務の具体的な業務内容と役割については、以下の記事で解説しています。

企業法務は何を勉強すれば良いのか?

上記の表で示した「企業法務に求められる役割」を改めて確認すると、やはり法律知識を駆使するという共通点がみてとれます。また、実際に法律知識を駆使して法務の実務を進めていくにあたっては、文書・資料を作成し、プレゼンテーションを行う機会もあります。

そこで、企業法務の担当者としては、自己や自社の状況に応じて以下の知識や能力を身に付ける必要があるでしょう。

身につけるべき知識・能力

1 法律知識

2 文書・資料作成

3 プレゼンテーション

法律知識(企業法務が知っておくべき法律)

企業法務の特徴的な役割は「法知識・法務スキルを活かした」業務を担当することであり、これは企業法務の中核をなします。

契約書作成や審査、対外的な交渉、紛争・トラブル対応、さらには社内のコンプライアンス活動まで、企業法務の担当は、法律を使いこなしながら、その対処をしなければなりません。
企業法務の担当者として、避けて通れないのが「法律」に関する勉強であり、それが業務の土台となります。

では、企業法務に従事するうえで、どのような法律を知っておく必要があるのでしょうか。
各企業によって異なる部分はありますが、今回は以下のような法律を紹介します。

法務担当者が知っておくべき法律

1 民法

2 会社法

3 労働法

4 独占禁止法

1 民法

民法は、企業活動を行う上で避けては通れない「取引」や「契約」について定められており、法務担当者だけではなく、ビジネスマンにとっても基本的かつ重要な法律です。

従って、民法の知識は企業法務の担当者として習熟しておきたい事項です。

しかし、民法が定める範囲は広く、全てを網羅的に学ぶのは時間を要します。そこで、まずは、企業活動に関わりの深い範囲から勉強していきましょう。

民法は、大きく以下の5つに分類されます。

・総則
・物権
・債権
・親族
・相続

この中でも、契約をめぐる法律関係について定めているのが債権であり、企業活動との関わりが深いです。民法の総則物権も、債権と同様企業活動に関わりの深い部分があり、学習を進めておきたい分野です。

民法は近年大きな改正があり、2020年に改正法が施行されました。改正民法に関しては、以下の記事で解説しています。

2 会社法

会社法は、会社の設立、組織、運営および管理について定めた法律です。
機関法務やガバナンスを担当する場合、会社の運営や、株主総会・取締役会などの株式会社の各機関について知っている必要があります。
特に以下の項目について勉強しておくと、業務に活かせるでしょう。

・株式会社の設立
・株式と株主
・各機関(株主総会、取締役・取締役会、監査役・監査役会など)とその運営
・資金調達
・会社運営上必要となる各書類について(計算書類、事業報告、株主総会参考書類など)

会社法の知識は専門性が高い反面、会社という組織運営には必須の分野です。改正が比較的多い分野でもあるので、その点も含めた勉強と情報収集をしておきましょう。

2021年3月に施行された改正会社法に関しては、以下の記事で解説しています。

3 労働法

労働者、使用者、労働組合などの労働者代表組織、そして国との相互関係を規律する法律を総称して労働法といいます。労働基準法、労働契約法、労働組合法、職業安定法などの法律が労働法に含まれます。

企業への法令遵守が強く求められることに伴って、労働環境への意識も高まっています。

労働法は人事・労務と密接に関連するので、主に人事・労務部門の担当領域となっている企業もありますが、働き方改革関連法の改正などの昨今の流れを受けて、法知識を有する法務部門も連携して取り組むべき領域という認識が浸透してきました。

労働法や働き方改革などに関しては、以下の記事で解説しています。

4 独占禁止法

企業間の公正かつ自由な競争を促進することを目的として定められた独占禁止法は、日々の企業活動における他の事業者との関係に深く関わってくる法律です。

この独占禁止法は、特に違反した際に企業に与える影響が大きく、レピュテーションリスクやブランド毀損リスクを孕んだ、注意すべき分野です。
自社の従業員へのコンプライアンス教育としても必要な知識だけに、企業法務の担当者として勉強しておくべき法律です。

独占禁止法に関しては、以下の記事で解説しています。

文書・資料作成

チャットやSNSなどの電子ツールが普及した現在ではありますが、企業法務にとって、文書・資料作成力は情報を正確に記録し、分かり易く伝えるための重要なスキルです。

法務担当者が文書・資料作成を行うシチュエーションとしては、以下のような場面が考えられます。

文書・資料作成を行う場面

1 情報の記録化

2 社外・社内への説明

1 情報の記録化

情報の記録化を目的とする文書・資料作成の例としては、以下のようなものがあります。これらは、会社や従業員を法律知識を使って守るという企業法務の役割を果たすツールになります。

・契約書
契約書は、取引の相手方とのビジネスのルールを定めておく文書であり、紛争・トラブルになった際の解決基準をもたらす、相手方との合意の記録です。
従って、自社と相手方との関係を明確にし、また、紛争・トラブルになった場合に備え、第三者である裁判所においても一義的に理解できる表現が重要です。
・議事録

議事録は、社内運用やそのプロセスが適切に機能していたことを証明するための記録です。
従って、書類を後から見返した際に、議論状況や決定事項が過不足なく的確に記載されている必要があります。

2 社外・社内への説明

法務担当者が対外的な会社としての説明に関わる、または対内的に法務組織として意見を述べる機会には、以下のようなものがあります。

・対外的な公表文書
会社としての姿勢や取り組みを対外的に公表する際には、法的に正確で整理された文書を作成する必要があります。
・経営層・決裁者へのプレゼンテーション資料
経営層や決裁者に対し、法務組織としての取り組みを報告する際や、法的リスクの説明を行う際には、正確で理解が容易な資料を作成する必要があります。資料の質で意思決定の結論が分かれることも生じ得ますので、文書・資料作成力を磨くことは、より法務が成果を出すツールとなります。

プレゼンテーション

企業法務の担当者には、コンプライアンス研修を行う、法務部内での勉強会を行う、依頼部門に対して法務の見解を説明するといった、プレゼンテーションを行う機会もしばしば訪れます。

法務が行うプレゼンテーションの例

1 社内研修(法務・コンプライアンス)

2 会議での発表(法改正の影響、法的リスクなど)

3 経営層への報告(法改正への対応方針、法的事項に関する意思決定など)

従業員向けのプレゼンテーションにおいては、分かりやすく、かつ、当事者意識を抱いてもらえるような説明が求められます。また、経営会議などの経営層向けでは、短時間で、かつ、要点を押さえたプレゼンテーションが求められます。企業法務の担当者としては、内容や説明相手の属性を踏まえた説明力を身に付けておく必要があります。

企業法務の自己研鑽方法・情報収集方法

法務としての自己研鑽・情報収集には様々な方法があります。
法務として、また自社の一員として何を学習するべきなのか、自己や自社をとりまく環境を確認したうえで、自分に合った方法を選択しましょう。

ここでは、代表的な勉強方法・情報収集方法をご紹介します。

書籍・雑誌・論文

法律知識を業務の土台とする企業法務の担当者として、書籍、法律・実務雑誌、論文による勉強は欠かせないものです。
法務に有益な文献は充実しており、独力で自らの都合のよい時間に自己研鑽をすることができますので、積極的に活用したいところです。

セミナー受講

各省庁、法務関連団体、リーガルテック企業などが定期的に開催しているセミナーを受講することで、詳細で、かつ最新の法務情報を入手することができます。
ある特定の分野、法律または実務についてわからないことがある場合、それらを解説をしてくれるセミナーは、知識の穴を埋めてくれる機会になるでしょう。

契約ウォッチを運営している株式会社LegalOn Technologiesでは、以下のような無料セミナーを実施していますので、是非ご活用ください。

OJT

改めて言うまでもないことですが、実務の中での経験は、最も多くのことを学べる機会となります。
先輩や上司の指導を受けながら、法律相談、契約書のレビュー・作成、文書・資料作成などを担当し、また、各種打合せや経営の意思決定の場に参加して業務を進めることで、法務担当としての自覚を育むことができ、実務に必要なスキルが身に付きます。

SNS・オンラインメディア

多種多様な情報を容易に取得できるようになった昨今、企業法務に関する知識やノウハウもSNSやオンラインメディアに溢れています
情報の正確性や信頼性は取捨選択する必要がありますが、これらを上手に活用することで、有益な情報のインプットにつながります。
また、SNSでは、弁護士や企業法務担当者による投稿から企業法務業界の動向を探ることができることもあります。

この記事のまとめ

企業法務の担当者には多様な役割が求められるようになっており、この役割を果たすためには、①法律知識②文書・資料作成③プレゼンテーションといったスキルを、それぞれの状況にフィットした方法で学び続けることが重要です。

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参考文献

瀧川 英雄「レベルアップをめざす企業法務のセオリー 応用編 一段上の実務とマネジメントの基礎を学ぶ」第一法規

一色 正彦、竹下 洋史「法務・知財パーソンのための契約交渉のセオリー 交渉準備から契約終了後までのナレッジ」第一法規

芦原 一郎「説得力が劇的に上がる 法務の文書・資料作成術!」学陽書房